昨年末、頑張れ日本!全国行動委員会の幹事長を務める水島総氏が、田母神俊雄閣下に東京都知事選挙に立候補することを請うた。
田母神閣下はこれを受け、今年2月の都知事選に立候補した。
票読みすらしていない勝ち目のない強行出撃で、案の定負けた。
田母神陣営の選挙対策本部長を務めた水島氏は、敗戦の弁として、オレは孔明(http://youtu.be/AlXRNuYpi18?t=8m10s)、都民は愚民(https://www.youtube.com/watch?v=VssHZqTw53s)、61万票はすごい成果だ(どの動画だったかな・・・)、などと開き直った。
田母神閣下は、今回の総選挙で次世代の党から立候補した。
田母神新党として太陽の党を復活させた田母神閣下だが、太陽の党から立候補できるのは、公職選挙法上、来年からだった(https://www.youtube.com/watch?v=upkykwKFgzQ)。
解散総選挙があまりに早かった。
次世代の党およびその支持者としては、おそらく、東京都知事選での田母神61万票を期待したと思う。
田母神閣下としても、61万票を獲得した自分ならば公明党に対抗できるという感触を持っていたのではないか。
では、実際の得票数はどうだったのだろうか。
「NHK衆院選2014 東京12区」
http://www3.nhk.or.jp/senkyo/#skh_1312
「NHK衆院選2014 比例代表東京ブロック」
http://www3.nhk.or.jp/senkyo/#hsm_05
小選挙区では生活の党を下回る最下位。
これは別に構わない。
問題は比例区で、次世代の党は25万3107票にとどまった。
これは田母神閣下が都知事選で獲得した票数の半分以下であり、今回の総選挙で公明党が獲得した票数の半分以下であり、議席も1つも獲得できなかった。
田母神61万票があり、さらに上積みがあれば、比例区で少なくとも山田幹事長は当選できるのではないかと、淡い期待を抱いていた支持者もいただろうが、その期待は無惨なまでに打ち砕かれた。
そのせいか、京都市伏見区で次世代の党に入った1500票が日本共産党に計上されるという誤集計があり(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141215/k10013977691000.html)、こういう誤集計が東京でもあったのではないか、田母神閣下の小選挙区での得票数を考えると東京12区でも3万票くらいこういうのがあってもおかしくない、などと言う意見がネットに出てくるようになった。
錯乱していると思う。
いくらかは誤集計があってもおかしくないとは思うが、小選挙区で田母神閣下に投票した人が比例区でも次世代の党に投票すると期待するのは早計だ。立論に無理がある。
上の画像を見ればわかるが、東京12区には自民党は候補者を立てていない。田母神閣下の立候補記者会見を思い出してほしいが、東京12区には保守的な人の選択肢がないということが指摘されていた(http://youtu.be/gpPSxCB8Ek0?t=7m28s)。
他方、比例区では、東京12区の有権者にも自民党に投票するという選択肢がある。したがって、小選挙区で田母神閣下に投票した有権者が、比例区でも次世代の党に投票するとは限らない。
そして、田母神閣下に投票した保守層は、おそらく、民主党の大物を落選させたい、比例復活を許さない、という気持ちがあるだろう。そして、これを達成するために、比例区において自民党と次世代の党のどちらに投票するかと考えたら、おそらく、自民党に票を集中させようと考える人がかなりいるのではないかと思う。実際に計算してみると、自民党に票を集中させることによって民主党の議席数を減らすという効果はないのだが(https://twitter.com/akichi_3kan4on/status/544740047618985985)、直感的にこう考えてしまうものだと思う。
私は、東京12区の小選挙区田母神票と比例区次世代票が一致しないのは不正集計が行われているからだという意見は、被害妄想の域を出ない陰謀論だと思う。次世代の党に対する過大評価でもあると思う。やめた方がいい。
東京12区不正集計陰謀論者は、東京12区に自民党の候補者がいないことを見落としていると思う。
ちなみに、東京12区での次世代の党の比例区得票数は、北区で9340票、足立区で2829票で、合計12169票である(http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/h26syuugiin/h26shu_hkai_034.pdf)。
では自民党のはどうかというと、北区で46667票、足立区で16716票で、合計63383票である。
次世代の党と自民党の比例区での合計得票数が田母神閣下の小選挙区での得票数を下回ったのであれば、私も誤集計を大いに疑うが、「小選挙区は田母神、比例は自民」という人が大勢いたということだと思う。
一応、東京12区の公明党の得票数を見てみると、北区で23898票、足立区で13924票で、合計37822票である。太田昭宏候補の88499票との差は50677票である。てっきり似たような票数が出てくるだろうと思っていたが、意外にも差は大きかった。田母神票・次世代票の差である27064票よりも大きな差だ。
あれ?「田母神票より次世代票が少ないのは不正だ!」と言う人は、「太田票より公明票が少ないのは不正だ!」と言うべきでは。数字を一面的にしか見ないからおかしな話になる。
仮に、「小選挙区は田母神。比例は自民。」が39233ー12169=27064票あったとする。これに36319票を加算すれば、東京12区で自民党が獲得した63383票になる。そして、「小選挙区は太田。比例は公明以外。」の投票をした50677人の7割強が自民党に投票したならば、自民党のこの獲得票数になる。
こういうことがあってもさほどおかしくないだろう。
総選挙後、チャンネル桜は次世代の党の山田宏幹事長を招き、今回の敗戦について話を聞いた(https://www.youtube.com/watch?v=QkvT7wPu_y8)。
が、水島総氏は田母神61万票の価値を今まで誇っておきながら、この点について触れなかった。
都知事選について言及はしているが(http://youtu.be/QkvT7wPu_y8?t=11m51s)、票数について言わなかったのが不思議だ。
次世代の党が再起を図る上で、この分析はした方がよいのではないか。
田母神閣下が都知事選で獲得すると当初予測されていた票数は、20万~30万票程度であった。
おそらく、石原慎太郎票なのだろう。
今回の総選挙では、この通りの得票数になったという格好だと思う。
都知事選では票数を積み増すことができたが、今回の総選挙ではできなかった。
三橋貴明氏は、田母神閣下が都知事選で獲得した61万票を見て、これで公明党に対抗する勢力を作れると評価した(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11768813096.html)。
そして、「国政選挙で考えると7、800万票を獲得する可能性があり、参議院選挙の全国比例にチャレンジした場合、7、8人が当選するほどの数字なのです。」と言う。
しかし、今回の総選挙を見ると、そう簡単には計算通りに事は運ばないようだ。
この計算の通りに事が運ぶのなら、今回の総選挙で次世代の党は61万票を比例区で獲得できたことになる。
田母神61万票は、なぜ次世代の党に投じられなかったのか。
私は選挙戦術について何も知らないが、庶民感覚で少し述べる。
単純に考えて、「顔」が違う。
都知事選では、自民党については、舛添要一の顔が前面に出た。おぞましい顔だ。
他方、国政選挙になると、自民党の顔は安倍総理だ。頼もしい顔だ。
都知事選の時の自民党の顔はひどすぎたが、国政選挙で自民党がまともな顔を示すと、都知事選で田母神閣下に投票した人たちも自民党に流れやすいだろう。
また、都知事選を一過性のものにしてしまい、集票組織を作ることに十分な力を注いでいなかったのではないかと思う。
次世代の党が今回の総選挙で、田母神閣下が都知事選で獲得するとされた当初の予測票数しか比例区で獲得できなかったということは、この1年間、組織が全く拡大していないということではないか。
組織と呼ぶものかどうかはわからないが、とにかく、次の選挙でも投票されるように、票を繋ぎとめる工夫が必要だと思う。
そういう工夫をしなければ、票はいとも簡単に雲散霧消してしまう。
対照的なのは公明党で、集票組織がしっかりしている。
だから自民党の連立相手になることができる。
次世代の党が自公分断を果たしたいなら、組織作りが課題になるのだろう。
言うは易し行うは難しではあるが。
敗北も、次に繋がるなら意味がある。
しかし、都知事選での敗北は、次に繋がる経験になっていたのだろうか。
61万票を輝かしい実績として満足していなかったか(輝かしくもない惨敗だが)。
都知事選で見えた課題を見ようとせず、今回の総選挙の悲惨な大敗北に繋がってしまった側面があるのではないか。
水島氏が都民は靖国神社を理解しない愚民だと言うのであれば、靖国神社の理解を広げる活動にどれだけ注力したのかが問われるだろう。
そして、東京12区不正集計陰謀論は、今回の総選挙の課題から目を背けるものだと思う。