子供は育っていく過程に於いて、まず一番身近にいる親から「何か」を感じ取って行く。その親から感じ取った「何か」がその子の、その後の人格形成に大きく影響していく。その「何か」が優しさであったり、包容力であったり、怒りであったりと様々な訳だが、とにかく子供は敏感にそれを感じ取る。


 しかし、マリーは物心が付き始める3歳という時期に両親を亡くした。


 だが彼女は、いつも大自然の中から「何か」を感じ取り、そばにいる沢山のおおじさん達から色んな「何か」を感じ取り、彼女が感じ取ってきた「何か」は、恵まれた環境にある子供達よりも、遥かに多くの蓄積となって、彼女の心を大きく大きく養っていった。


 マリーは一人、薪の横でロッキング・チェアーに揺られながら夜空を見据えていた。


 彼女は空を見上げるのが大好きで、昼間の澄み渡る青空には、大地の全ての生命に燦々と降り注ぐ太陽のエネルギーと包容力を感じ、それは彼女にとっては父親のような存在でもあった。


 大学の寮生活の中でたった一人で、傷つき挫けそうになっても、夜空に輝く満天の星たちが、優しく彼女を包み込んでくれた。




      「ありがとう、、、」




「俺にありがとうってか?」


ふと横を見るとトレーラーからキングが、皮ジャンを引っ掛けてくわえタバコで薪にあたりに来た。


「キングにもだけどね、、、パパとママに・・・


 私ね、パパとママと一緒に過ごした記憶殆どないけど、、、
 子供の頃は、パパとママのいる子達が

 うらやましかったりもしたんだけど、、、
 でも、私のパパとママは、

 私に一杯色んなものをプレゼントしてくれたの、、、」


「俺もそのプレゼントの中に含まれてますかね?」


「もちろんよ、、、」


「俺もマリーから一杯プレゼントもらったぜ、、、ありがとな」

そう言ってキングはタバコをふかした。


「どんなプレゼント?」


「さぁあな、それは内緒だ」


キングは皮ジャンをマリーの膝にかけて、


「じゃあ、俺はそろそろ寝る」


と言ってタバコを薪に投げ捨てると背中ごしに

「おやすみ、マリー」と言ってトレーラーに入っていった。



    きらめく夜空に

    マリーの

    Amazing grace の歌声だけが

    透き通るように

    とけこんでいった。




 巨大国家アメリカを象徴する広大なる大河ミシシッピを夕日が真っ赤に染め上げる頃、一台のバイクと車がマリー達をお迎えにやってきた。


 BMWR1200Cモントーク に跨った男の黒の革ジャンの背には、Barracudaのロゴが刺繍されている。ピアーズ・ブロスナン似のちょっとダンディな彼の名はマックス・デニーロ 。歳はロンより一つ若い34歳。ロンと一緒に西海岸側で情報活動に付いている彼は、ロンと交代で休暇をとって、ハマー達と一緒にキャンプに参加している。


「マリーちゃん、後ろに乗ってくか?」


 子供の頃からロンに、バイクで海や山に連れてってもらってた彼女は、バイクの後ろに乗るのが大好きで、


「マックスありがとう♪」


ってほっぺに軽くキスしてリヤシートに跨った。


「じゃぁ俺はキングのザガートに乗っけてもらうか」


 そういってハマーは、折り畳んだカヌーをアストンマーチン DB7ザガート のリヤハッチを開けて収めると、大きな肉体を助手席に詰め込んだ。


 ガザードの運転席に座っているのは、ブルース・ウィルスっぽいハゲ方をしたシブ男、スピード・キング 。彼は去年までマックス、ロン等と共にBarracudaで特殊部隊として戦ってきたが、Barracudaがその任務をDestinyに引き継いだ今、まだ若いDestinyの闘将アドバンを補佐する為、特殊部隊の参謀的役目を負かされている。歳はロン達と同世代である。


 一行は、下ってきたミシシッピ川の10km程上流に設営している今回のキャンプ地に向かって沈む夕日を背に走り出した。


 キャンプ地に着いた頃には完全に日は沈み、ハマーのFORD-650に連結したキャンピングトレーラー からはタープが張り出され、その下に用意されたベンチセットのテーブルが、吊り下げられたランタンの明かりに照らされて、ナイトキャンプを演出する。

 マックス達が釣って来た魚がクレイジー・ドッグの手によって料理されテーブルに並んでいる。クレイジー・ドッグ は、ニコラス・ケイジが高田純次になったような陽気な顔立ちで、みんなをいつも楽しませてくれる。


「お帰りぃ~ローズ・マリーとボンレス・ハム」

「ボンレス・ハムはひどい^^ せめてボンレス・ハマーって呼んであげてよ」

「マリーも結構ユーモアのセンスあるじぁないか。おいらより面白い!

 ワッハハハハハハ。さぁ~ていまハが幾つあったでしょう?」

「えぇ~とね、、1.2.3....6!」

「ざぁ~んねんでした。ハだけに八個でぇ~す^^」

「あぁ~そっか。クレイジー・ドック頭いい!」

「いやぁ~、それを言うなら頭も、だろ? じゃないとおいらの顔は不細工って言ってるように聞こえて仕方ない^^」


とまあ、これがクレイジー・ドッグである。マリーを囲んで楽しく夕食を終えるとマックス・デニーロがキャンピング・トレーラーからアコースティック・ギターを持ってきてマリーが大好きな曲、Stand By Me を歌ってくれた。


When the night has come
And the land is dark
And the moon is the only
Light we'll see


夜がやってきて あたりは真っ暗になって
ただ月だけが 私達が見ている ただひとつの光


No I won't be afraid
Oh I won't be afraid


それでも私は 恐れたりしない 怖がることなんてしない


Just as long as you stand
Stand by me, so


ただあなたが私のそばに いてくれる限りは


 マリーは、バックから水筒を取り出し、心地よい揺らぎに身をゆだね、乾いた喉を潤す。隣に並んだカヌーからハマーが、


「こうやって飲むビールがまた、格別にうまい!」


 と、目を閉じて感慨無量な面持ちで大きな口を開いた。ハマーは黒人特有のヘビーな筋肉質のボディーで、見るからにいかついが、その見てくれに隠れた、深く温和な優しさは、いつもどんな時もマリーを包み込んだ。マリーにカヌーで川を下る楽しさを教えてくれたのも彼であり、今では彼女一人でファルトボートを背負って折り畳み自転車で川くだりに出掛ける事もしばしばで、、、ファルトボートというのは、折り畳むとゴルフバッグより少し大きめの背負いバッグに入るカヌーで、カヌーに乗る時は、逆に自転車を折り畳んでカヌーに積み込んで川を下って行く。


 マリーは、この広大な大地を州を跨って流れゆくミシシッピーを、カヌーで下りながらその土地、土地の土地柄、風習、人柄を肌で感じ取り、それを心に刻んできた。彼女の目標は、在学中にこのミシシッピーを完全に制覇すること。


「ねぇハマーおじさん。どうして水の上ってこんなに気持ちが安らぐのか、私わかったの」

「へ~、凄いな、どうしてなんだ?」


 ハマーは、優しく微笑み返した。マリーは大学の授業で生物の教授が話してくれた「f分の1の揺らぎ」の話をハマーに聞かしてあげた。


 「f分の1の揺らぎ」とは、アメリカのJ.B.ジョンソンという人が真空管の出す雑音を研究中、特徴のあるパワースペクトルを発見し、それをf分の1ノイズ(雑音)と呼んだことから始まる。


 「ゆらぎ」とは、理路整然と並んでいるものが少しずれることを意味し、ものの予測のできない空間的、時間的変化や動きの事を言いう。連続的だけれど一定でない。たとえばそよ風や、小川のせせらぎや潮騒の音のなどがそれである。音だけではない、木の年輪や植物の葉など、輪郭や形状など視覚で認識する物からもこの「f分の1の揺らぎ」は伝わるとされている。宇宙や大自然の中に「f分の1の揺らぎ」に合致すると思われる現象が色々とあり、人間のここちよさと、深いところでつながっているのではないかと考えられている。


 自然界の現象だけでなく、人間が造りだしたモノの中にもこの「f分の1の揺らぎ」は存在する。例えば、絵画や彫刻、音楽などであり、音楽の強弱やテンポ、絵画の濃淡の変化、彫刻の輪郭のラインなどの中に「f分の1の揺らぎ」が存在する。しかし、規律正しく機械的に造りだされたモノの中にはこの「f分の1の揺らぎ」は存在しない。


 赤ちゃんが母親のお腹の中で聞く、母親の心音もまさにこの「f分の1の揺らぎ」を奏でている。


「マリーは、大自然の中で水に揺られている時、お母さんの存在を感じているんだな」
「うん^^」


暖かい春の陽気が


水面に揺らぐ二人を優しく包み込む


If the sky that we look upon
Should tumble and fall
Or the mountain should crumble
To the sea


見上げればいつもそこにある空が
たとえ崩れ落ちてきたとしても
たとえば山が 海の中に崩れ落ちてしまったとしても


I won't cry, I won't cry
No, I won't shed a tear
Just as long as you stand
Stand by me, and


私は泣かない 泣いたりしない 涙なんか 流したりしない
ただあなたが私のそばに いてくれる限りはね


Ben E. King の Stand By Me のリズムに流されて

音もなく水面を滑るように進むカヌー。


川の流れは自由気まま。


そんな川の流れのラインを読みながら

そよ風と相談しながら進んでいく。


静かに湿原の中を進んでいくと

愉快な湿原の生き物たちが

踊りながら挨拶を交わしてくる。


地上とはまるで別世界。


見るもの聞くもの感じるもの

すべての感動に包まれて

小さなカヌーは体の一部となって進んでいく。


アメリカ合衆国中央部の10の州を通って流れるアメリカで一番長い川、ミシシッピ。


 「マリー、ここらでコーヒータイムとしよう」


その10の州の中に、観光で栄える緑豊かな土地、ミズーリ州がある。


 「そうね。でもおじさんは、コーヒーじゃなくてビールでしょ^^」


 マリー・ガーランドは、ミズーリ州最大の州立大学、ミズーリ大学コロンビア校(UMC)に通う学生で、大学の寮で生活を通っている。今、大学はサマー・バケーションで、今日はグランド・ハマー と二人で水面のお散歩中。マリーには沢山の優しくて逞しいおじさんがいる。ハマーもその中の一人で、ケイクの次に一番遊んでくれたツルツル頭の黒い肌のおじさん。歳はケイクよりも若干若い。


 彼女は3歳の時にテロ事件によって孤児となってしまったが、ケイクに引き取られ、一杯の楽しいおじさん達に囲まれて、今ではその不幸な過去を全く感じさせない元気一杯の明るい女性へと成長している。


 このマリーが20年後に、女性として初めてのアメリカ大統領に就任する、など今は知り得る者は無い。そう、彼女自身も、、、。


 ただ彼女は、


 今を誰よりも真剣に一生懸命生きている。

 

 そして、彼女は知る。


 真の人間らしさ、真の優しさ、真の男らしさ、


 そして、真の正義が何たるかを。


 それを彼女に教えてくれたのが、彼女を取り巻くおじさん達であり、それを知りえた彼女だからこそ、彼女は自身の人生に、大きな大きな意味を見出し、そして今だ嘗て誰もなし得なかった、銃社会アメリカから「一般市民の銃所有撤廃」という大偉業を2027年4月2日に成し遂げる。


 マリー・ガーランド、21歳。



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 こういうの見つけると、脇目もふらずに駆け出します。


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 こういうところは、必ず登りだします。

 前に写ってるのはベジータとカカロット、

 Bisonママは完ぺき顔が固まってますよ^^

 娘の余裕か憎すぎる。


100

 こういう奴は、決して逃がしません。

 キャンプじゃないけど新婚旅行の時のスナップです。

 高校2年の時からの長~いお付き合い。


久住高原オートビレッジ
http://www.kujukogen.com/auto/index.php


ここの露天風呂は最高です。


 間違っても裸で高原を走り回らないように。そういう事が平気で出来るんですここの露天風呂は。信じられない程、広大な大自然に自然な形で溶け込んだ露天風呂です。かといってちゃんとプライバシーは守られていて、女性でも安心して大自然の露天風呂を満喫できます。


 小学生だった息子(次男)は裸で高原を駆け回って女風呂を探索してました。ここの露天風呂は混浴では無いのですが、阿蘇方面の温泉は結構混浴が多いですね。キャンプに嵌ったのは多分そのせいでしょう。どうやら親子の血は争えないようです。

前を走ってる車は、取りあえずぶち抜かないと落ち着かないのは何故でしょう。


でも、免許書が金色なのは、


技術です^^

 昨日は4月馬鹿ということで、更新しませんでした。でも実はこそっと更新してますので更新記録はまだ続いています。さて、いつまで続くやら。っていうか先月は3ヶ月分ぐらい書き込んでますね。読むのも大変でしたでしょう。次はサードギヤにシフト叩き込んで、思っきり引っ張ります。引き離されないように、気合入れてついて来てくださいね。 走り出したらエンジン・ブロウなんて考えません。レッドゾーンに叩き込めです。


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 30代の頃、家族5人と知人の家族とかと一緒に、4駆のスペースギアで良くオート・キャンプに出かけたものです。雪山は4駆で走るともう爽快。がぁーと車体を滑らせて------気持ち良いくらい滑ります。かといってアクセル踏み込むと、しっかりグリップ取り戻すんですね。

やりすぎて側溝に嵌ったりしてませんから^^


 スペース・ギヤの前はローレルのオートマに乗ってましたけど、筑後川の河川敷(人けのないダートですね)でおもっきりパワードリフトさせたり、アクセルターンでぐるぐるまいまいして、乗ってる子供を喜ばしてあげてたら、オートマでなんであんな事が出来るの?って見ていた知人の元ヤンキー奥さんが首傾げてました。


 スペース・ギヤで海に行ったら子供を乗せて既に海の中を走っていました。いや、これも人けのない海岸ですよ。4駆と思ったら何でも出来ちゃうんですね。でも塩水って鉄を錆びさせますから、真似しない方が良いですよ。帰ったら速攻でスティーム洗車場に行きました。川も走りましたね。子供が喜びそうな事は、なんでもやる私です。そうやって子供をワイルドに育てましょう^^


環境美化を損なわない程度に!
スタッグしない程度に!
横転しない程度に!


知人のジープで崖を下り降りた時は、ちょこっとビビりました。


下が見えなきゃ
普通ビビるでしょう!


でも下りだしたら快感^^

ジープで崖を下らせてくれた知人の4駆ショップ
http://www.beeline-4wd.com/
私に4駆とキャンプの楽しさを教えくれた凄くいい人です。


でも今の私には、4駆も車すらありません。

ミニカーで我慢してます。


誰か私に車を恵んでください!


でもいいんです。去年250のビック・スクーター買っちゃいましたから、


取りあえず、スピード中毒は満たされています。




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 ケイクとキャサリンは帰り道、桜の名所として世界的にも知られるワシントンD.C.のポトマック河畔に立ち寄った。今が丁度満開である。


「ケイクが車じゃなくて地下鉄で行こうなんて、

 なぁ~んか変だなって思ってたんだ」


「そうなんだ。実はここの桜を見たくてね」


「それにしても綺麗ねぇ。あっちの桜はもっと綺麗だわ。」


 キャサリンは滅多に目にする事のないその桜の見事な美しさに、いつにも無く心が躍っていた。ケイクは大きな桜の木の下の芝にハンカチを敷くとキャサリンを呼んでそこに招いた。


「まぁ~座ろうや」


 そう言ってケイクは芝に横たわって腕枕し、満開の桜を見上げて満足げに浸ってる。隣に腰をおろしたキャサリンが同じように桜を見上げてケイクに言った。


「本当はマリーちゃんと来たかったんでしょ」


「あぁ~、マリーにも見せてあげたいな」


「マリーちゃん今どこ?」


「ハマー達とキャンプにいってるよ」


「そうか、今スプリング・バケーションだったわね、カレッジ」


「俺もついて行きたかったなぁ~。キャンプ」


「いいじゃないの、私とこうして花見が出来て^^
 なんなら、膝枕してあげましょうか?」


「お~、いいの?」


「ん~今日は特別^^」


この二人が出来てるのかどうかは、わたしは知らん。ただ言える事は、


短くもはかない人生を

思いっきり華やかに
咲き誇っている桜の雄姿は
見る者全ての心を躍らせる


それは
この時が来るのを
ただひたすら耐え忍んできた
忍耐のつぼみのみが持ちえる
蓄積されたエネルギーの

炸裂だからだ


咲き渡る満開桜の青空に
Van Halen の I Can't Stop Loving You
が共鳴する


Wild-Bison 第二部 END


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このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。
ストーリーはフィクションであり実在する国家・団体・企業・作品・HP・個人等とは一切関係ありません。




1943年10月28日 フィラデルフィア・エクスペリメント 参考ソース


 それは、成功すれば世界を変革したであろう、壮大な実験であった。巨大な軍艦を、一瞬にしてありえないほど離れた場所に移動させる。もしそれが可能になったなら、航空機はおろか、大陸間弾道弾の必要性さえ失われる。


 そして、実験は行われ……


 実験そのものが、歴史の闇に葬られた。実験は成功だったとも、失敗だったとも言われている。その真偽を確かめる術はない。軍艦は確かに移動したとも言われているが。移動した先には、ある者は柱に、ある者は隔壁に。船と人が「融合」した、地獄図があったとも言う。


 やがて時は流れ、そのような実験があったことさえ、覚えている者も少なくなった頃、軍の高官が次々と暗殺される事件が起こった。当時(1999年)FBI捜査官だったキャサリンがこの事件を調査していたが、厳重な警備をものともしない、不可解な手口に捜査は困難を極め、犯人を特定することさえできないまま、暗殺も終わりを告げる。


 捜査中、何かしら得体の知れない大きな圧力がFBI組織内にまで及び、キャサリンはこの事件を犯人を突き止める事無く捜査を打ち切らざる負えなかった。その後、彼女はFBIを離れJusticeに入り、事あるごとにその事件を追及してきた。


 そして、ついに彼女はその事件の核心部に辿りつつあった。


 彼女は最近になって、当時この実験に関っていた陸軍高官とコンタクトをとる機会を得、実験の意外な展開を知る。


 兵器や兵員を移動させるという意味においてあの実験は、確かに失敗だった。しかし、高官の話によれば、当初の目的とは違った形で実は実験は成功していたと言う。生還した乗組員の数人の体にある変化が起きていた。それは全く別の意味での最強の兵器を造り上げる成果を確かにあげていた。当時その事に気づく物もないまま実験は失敗したものとして葬られたが唯一人だけその事に気づいていた人物がいたという。


 高官は、「最後に一つ。これは私の独り言だと思って聞いてくれ」とくいをおし、次のようにキャサリンに語った。


「海軍も、陸軍も、あの実験は失敗だったと考えている。

 陸軍、航空隊、後の空軍の一派は、実験そのものを阻害しようとさえした。
 積極的だった者たちでさえ、将来性に見切りをつけた。だが……」


「だが?」


「実験の直後、あの実験の全てのデータを持ち出し、

 姿を消した陸軍高官がいる」


「その後の彼の消息は完全に不明だ。それだけではない。
 彼の前歴をたどったところ、彼の出生、生育過程、その他
 様々な経歴に不審な点が続出した。情報の改竄どころではない。
 『捏造』された記録としか思えんのだ。『彼』は、最初から存在
 しなかった。そうとしか考えられない」


「誰なんです? その男の名は?」


「私にそれを口にする権限はない。知りたいのであれば自分達で調べる事だ。
・・・エリア51を」


 その陸軍高官の言葉通り、ロンのエリア51の調査結果からとんでもない事実が浮かび上がった。その資料を持ってキャサリンは、ケイクと共にある人物を尋ねた。既に70を過ぎた老人ではあるが鋭い眼光と、威圧感を持って発せられる重く響きのある声に国防総省長官という重職を経験してきた人物ならではの貫禄を未だ漂わせていた。これまでの調査内容を提示したケイクに彼は静かに語りかけた。


「フィラデルフィア実験、か。ずいぶん古い話をほじくりかえしたものだな・・・」

「あの実験のあと全ての試料を持ち出した人物こそ、

 その後エリア51において

 インプラントによる人体実験を繰り返してきた人物なのでは?」

ケイクの問いに彼はしばし考え込み意を決したかのように喋り出した。


「この件について私が口を開けば、私も即座に消されてしまうだろうが、

 ここまで君達が調べているのなら、話しても差し支えないだろう。」


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このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。
ストーリーはフィクションであり実在する国家・団体・企業・作品・HP・個人等とは一切関係ありません。