子供は育っていく過程に於いて、まず一番身近にいる親から「何か」を感じ取って行く。その親から感じ取った「何か」がその子の、その後の人格形成に大きく影響していく。その「何か」が優しさであったり、包容力であったり、怒りであったりと様々な訳だが、とにかく子供は敏感にそれを感じ取る。
しかし、マリーは物心が付き始める3歳という時期に両親を亡くした。
だが彼女は、いつも大自然の中から「何か」を感じ取り、そばにいる沢山のおおじさん達から色んな「何か」を感じ取り、彼女が感じ取ってきた「何か」は、恵まれた環境にある子供達よりも、遥かに多くの蓄積となって、彼女の心を大きく大きく養っていった。
マリーは一人、薪の横でロッキング・チェアーに揺られながら夜空を見据えていた。
彼女は空を見上げるのが大好きで、昼間の澄み渡る青空には、大地の全ての生命に燦々と降り注ぐ太陽のエネルギーと包容力を感じ、それは彼女にとっては父親のような存在でもあった。
大学の寮生活の中でたった一人で、傷つき挫けそうになっても、夜空に輝く満天の星たちが、優しく彼女を包み込んでくれた。
「ありがとう、、、」
「俺にありがとうってか?」
ふと横を見るとトレーラーからキングが、皮ジャンを引っ掛けてくわえタバコで薪にあたりに来た。
「キングにもだけどね、、、パパとママに・・・
私ね、パパとママと一緒に過ごした記憶殆どないけど、、、
子供の頃は、パパとママのいる子達が
うらやましかったりもしたんだけど、、、
でも、私のパパとママは、
私に一杯色んなものをプレゼントしてくれたの、、、」
「俺もそのプレゼントの中に含まれてますかね?」
「もちろんよ、、、」
「俺もマリーから一杯プレゼントもらったぜ、、、ありがとな」
そう言ってキングはタバコをふかした。
「どんなプレゼント?」
「さぁあな、それは内緒だ」
キングは皮ジャンをマリーの膝にかけて、
「じゃあ、俺はそろそろ寝る」
と言ってタバコを薪に投げ捨てると背中ごしに
「おやすみ、マリー」と言ってトレーラーに入っていった。
きらめく夜空に
マリーの
Amazing grace の歌声だけが
透き通るように
とけこんでいった。