PGT-A とは?
着床前遺伝学的検査(Preimplantation genetic testing:PGT)とは、体外受精で得られた胚の染色体を網羅的に調べる検査で、胚移植当たりの妊娠率を向上させるため、あるいは流産率を低下させるために行います。染⾊体の数の異常を検出するPGT-A、染⾊体の構造の異常を検出するPGT-SR、特定の病気の遺伝⼦を検出するPGT-Mといった種類があります。
今回は特に、着床前胚染色体異数性検査(Preimplantation genetic testing for aneuploidy:PGT-A)についてご説明させていただきます。PGT-Aでは、染色体数異常(13, 18, 21トリソミーなど)を検査し、異常のない胚を優先的に胚移植していきます。
対象
・体外受精・胚移植(ART)を2回以上連続して妊娠しなかった方(反復ART不成功)
・流産を2回以上連続で繰り返している方(習慣流産)
※染色体を調べるため性別が判明しますが、男⼥の産み分けを⽬的実施することは現在認められていません。
手順
体外受精を行い胚盤胞になった段階で、TE(将来胎盤になる細胞)を5細胞程度採取します。
胚盤胞は凍結保存を行い、採取した細胞は検査機関にて遺伝学的解析を行います。
当院では、PGT-Aの認可が得られ、臨床での準備を進めております。
ご興味のある方は医師にご相談ください。
培養室に新しいスタッフが増えました
こんにちは。
少し空いてしまいましたが、昨年11月に1名、今年の1月に1名培養室に新しいスタッフが増えましたのでご報告いたします。
2名とも他のクリニックで経験を積んできました。この度ご縁があり、メディカルパークベイフロント横浜の一員として働くことになりました。
新しいスタッフが増えても変わらず培養室一同、皆様からお預かりする大切な卵や精子に真摯に向き合い、治療の手助けになれるよう日々努力してまいります。
今後ともよろしくお願いいたします。
新年明けましておめでとうございます。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
投稿が遅くなってしまいましたが、当院の培養スタッフ2名が昨年11月14・15日に開催されました第69回日本生殖医学会学術講演会に参加させていただきました。
会場には今年のテーマである不育症を主に学ぼうとする全国の胚培養士の方々も集い、大いに刺激を受けました。当院でも用いているCASAの精子DNA断片化リスクの予測への有用性、ZyMot回収精子への短時間遠心処理の影響等大変興味深い演題が多数出題されておりました。
今回の学会参加で得た知識を当院の培養スタッフ全員に共有し当院の患者様の治療に活かしていけるよう努力して参ります。
精子と生活習慣について
不妊治療を進めていくと精子の質について考える方もいると思います。
そこで今回は精子の質に関係すると考えられている生活習慣についてお話したいと思います。
・喫煙
喫煙と精子に関するネガティブな報告は古くより言われています。
喫煙者の精子は非喫煙者の精子と比較して濃度や運動率が低下すると考えられており、
煙草をたくさん吸う人の方がそうでない人に比べてそれは顕著です。
1日に煙草を20本吸う人は、非喫煙者に比べて精子濃度が19%減少するとされ、1日に10本以下の軽い喫煙者でも有意に変化があるとされています。
また、男性側の喫煙は精液検査の結果が良くないだけでなく、実際に体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)の成功率が低下するだけでなく、生児獲得率も有意に低くなるという報告もあります(喫煙者:7.8%vs非喫煙者:21.1%)。1)
・アルコール
アルコールを全く摂取しない人と摂取する人の間では、精液量と正常形態率に悪影響があると考えられています。ただ、その影響については毎日飲酒をする人に限定されるようで、時々飲酒をする人は全く飲酒をしない人と同様あるいは、興味深いことに時々飲酒をする人は全く飲酒をしない人と比較すると運動率が良くなるというデータ一部あるようです。2)
アルコールに関しては、過度でなければあまり関係ないという認識で大丈夫と考えられます。
・熱・暑さ
精子は熱に弱いことで知られています。具体的には体温より高い温度に晒すことは望ましくないとされています。長時間の熱いお風呂やサウナの入浴、熱がこもりやすい肌に密着した下着の着用、膝の上でパソコンを使用、長時間座ったままの姿勢でいる事、自動車のシートヒーターの使用は避けた方が良いと考えられています。また、これらは30歳以上で影響が出やすいようです。3)
・禁欲期間
禁欲期間が長くしてたくさんの精子を提供しようと考える方もいるかと思いますが、禁欲期間が長いと精子が死滅したり、つくられてから時間が経った精子はDNAの断片化率が上昇したりすると考えられています。適切な禁欲期間は2~3日とされています。また、定期的に射精しておくことも重要です。
精子については卵子と違い精子のもとの細胞から成熟した精子になるまで70日ほどかかると言われているので、早めの生活習慣改善を検討していただければと思います。
1). Kovac, J. R., et al. (2015). The effects of cigarette smoking on male fertility.
2).Elena Ricci., et al. (2017). Semen quality and alcohol intake: a systematic review and meta-analysis.
3). CJ McKinnon., et al. (2022). Male personal heat exposures and fecundability: A preconception cohort study.
当院で行っている採卵の刺激方法についてご説明させていただきます
卵巣刺激の目的、期待できる効果![]()
目的:
卵巣刺激とは体外受精を目的として採卵を行う際に多くの卵子を得る目的で行います。本来1回の排卵につき1個の卵子が体外へ排出されます。ですが、刺激を行うことで卵胞と呼ばれる卵子が入っている袋を複数個育てることにより、多くの卵子を得ることができます。
期待できる効果:
複数個の卵子を得ることで、胚盤胞と呼ばれる移植する状態まで成長した卵子をより多く得られる可能性を高めることができ、その結果1度に多くの卵子を培養することにより採卵回数を減らすことができます。
OHSS:卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome)![]()
卵巣刺激にはOHSSと呼ばれる副作用があります。卵巣刺激で使用する薬により、卵巣の中にある卵胞が腫大して様々な症状を引き起こされます。主な症状として以下のものが挙げられます。
さらに重症化すると血液濃縮が進み、肺水腫や血栓症を起こす可能性があります。予防法、治療法が確立されつつありますが注意が必要な合併症です。
当院では、以下の予防を行っています。
1.卵子成熟のトリガーとして、OHSSを引き起こす可能性があるオビドレル(hCG)とスプレキュア(GnRHアゴニスト)の併用ではなくスプレキュアのみ使用する
2.カバサールの内服
刺激方法には様々な方法があり、これらは患者様のご希望やご年齢、AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能を示す数値)、過去の治療成績などを考慮して決定します。
今回はPPOS、Antagonist、Short法をご紹介します。後半では、CC(クロミッド)、AI(レトロゾール)、自然周期法、Long法、についてご紹介させていただきます。
~高刺激~
PPOS(Progestin-primed Ovarian Stimulation)![]()
方法:FSH又はhMG注射とプロゲステロン製剤(排卵抑制)を内服、採卵2日前に卵子成熟のためスプレキュア(又はオビドレル)を投与
Antagonist法![]()
方法:FSH又はHMGの注射を連日行い、卵胞の発育を確認してアンタゴニスト注射(排卵抑制)を併用、採卵2日前に卵子成熟のためスプレキュア (又はオビドレル)を投与
Short法![]()
方法:スプレキュアを連日使用、d4からFSH又はHMGの注射を連日行い、採卵2日前に卵子成熟のためhCGを投与
以下、当院で行った各卵巣刺激法のd5胚盤胞到達率と当院で行った各卵巣刺激法の件数の割合を示しました。
各刺激法の胚盤胞到達率は中央値70.1%、学会報告中央値は62.7%でした。また、刺激法別で見ると有意差があるデータが示されましたが、これはShort法を行う方は症例に偏りがある可能性が影響していると考えられます。刺激法はクロミッド服用、PPOSを多く行っている結果となりました。
CASA(精子運動分析装置)の導入が決定いたしました
CASAとは、AIが精子濃度や運動率を自動解析する機器の事を言います。
これまでの精液検査はWHO検査項目(精液量、精子濃度、運動率、正常形態率)のみの、培養士が計算盤を用いる検査でしたが、CASAの導入により平均速度・直進速度・直進性・頭部振幅といった「人では測定する事が困難な精子機能」を評価する事が可能になります。
〇平均速度・・・精子進行方向性速度の平均値
〇直進速度・・・真っすぐに引いた直線に沿って精子頭部が始めに通過した点と最後に通過した点の間の平均速度
〇直進性・・・直進速度/平均速度
〇頭部振幅・・・精子頭部の平均進路に対する横方向へのずれの大きさ
ただ、機械が自動で測定するとなるとどれくらい信用していいものなのか疑問に思いますよね。CASAには以下の報告があります。
”手動で行う方法に比べて、遥かに客観的に正確に再現性のある測定が可能となる”
Menkveld et al,1990
”自動化された方法による評価の正確性及び再現性の誤差は7%以内である”
Garrett & Baker , 1995
女性側に原因が無く精液所見にも異常が見られなくても、妊娠に繋がらず長く険しい不妊治療の道のりを歩んでいらっしゃるご夫婦もいらっしゃいます。その為、精子機能をより詳しく評価する必要があります。
これまでメーカーと打ち合わせも兼ねて準備に長い時間をかけておりましたが6月より運用開始予定です。
自費診療5,000円となります。過去に当院で検査された方も他院で一度検査された方も、再検査できますので是非ご検討してみてください。
新卒の方が入職されました
4月より培養室に新しいスタッフが増えました。先日大学を卒業したばかり、新卒のスタッフとなります。同大学は培養士も多数輩出されている業界では有名な大学の1つです。獣医学部を卒業ということで、動物の卵や精子を扱う研究室に在籍し培養技術の基礎には触れてきたようです。
ただ、ヒトの卵を取り扱うにはまだまだ時間がかかると思いますが、周りの先輩方の仕事をみて、質問して、コツコツやっていくしかありません。
自分が新卒の時は20年近くも前...記憶も朧気です。天真爛漫な姿勢、その若い力に負けないようにしなければ...と感じます。社会人がスタートして約半月、これからも沢山の事に触れ、考え、経験し、そしてどこへ行っても通用する培養士になってほしいと思います。
顕微授精を行う際の紡錘体観察について
当院では、顕微授精を行う際に紡錘体の観察をしています。
紡錘体とは?
卵子の中には紡錘体と呼ばれる細胞小器官が存在していて、紡錘体の中には染色体が含まれています。そして、紡錘体は細胞分裂の際に娘細胞に染色体を分配していて細胞が分裂する際、非常に重要な役割を持っています。
なぜ紡錘体を観察する必要があるのか?
紡錘体の観察を行うことには以下の2つ目的があります。
① 紡錘体を誤って傷つけないようにする。
② 最適なタイミングで顕微授精を行う。
① 紡錘体を誤って傷つけないようにする。
卵子は未熟な状態(MⅠ期:第一減数分裂中期)から成熟した卵子(MⅡ期:第二減数分裂中期)になる時に第一極体と呼ばれるものを細胞質の外に放出します。
紡錘体は目視することはできないのですが、通常では第一極体の直下の細胞質内に存在するため顕微授精を行う際はそこに紡錘体があると仮定して精子を注入します。
しかし、この紡錘体は必ず第一極体付近に存在するとは限りません。一部の卵子では紡錘体の位置がずれていることがあり、そのまま顕微授精を行うと誤って紡錘体を傷つけてしまう可能性があります。
② 最適なタイミングで顕微授精を行う。
従来は第一極体を放出していることで成熟した卵子(MⅡ期:第二減数分裂中期)とみなしていましたが、実際は第一極体を放出していても成熟していない未熟な卵子である可能性がわかっています。
そこで、顕微授精を行う際に紡錘体を細胞質内に確認することで最適なタイミングで顕微授精を行うことができます。
どうやって観察するのか?
紡錘体を観察するには2枚の偏光板の取り付けた特殊な顕微鏡で観察します。この顕微鏡では、複屈折性のある物質を明暗や色のコントラストに置き換えることができ、それを観察することを偏光観察と言います。紡錘体は複屈折性を持つため偏光観察で非侵襲的かつ容易に可視化し観察することができます。
まとめ
今回は、顕微授精を行う際に紡錘体を観察することの重要性を説明させて頂きました。
紡錘体の位置をしっかりと確認して顕微授精を行うことで誤って紡錘体を傷つけることなく、また正しいタイミングで顕微授精を行うことで受精率や胚発生の向上に影響があると期待されています。
















