顕微授精を行う際の紡錘体観察について
当院では、顕微授精を行う際に紡錘体の観察をしています。
紡錘体とは?
卵子の中には紡錘体と呼ばれる細胞小器官が存在していて、紡錘体の中には染色体が含まれています。そして、紡錘体は細胞分裂の際に娘細胞に染色体を分配していて細胞が分裂する際、非常に重要な役割を持っています。
なぜ紡錘体を観察する必要があるのか?
紡錘体の観察を行うことには以下の2つ目的があります。
① 紡錘体を誤って傷つけないようにする。
② 最適なタイミングで顕微授精を行う。
① 紡錘体を誤って傷つけないようにする。
卵子は未熟な状態(MⅠ期:第一減数分裂中期)から成熟した卵子(MⅡ期:第二減数分裂中期)になる時に第一極体と呼ばれるものを細胞質の外に放出します。
紡錘体は目視することはできないのですが、通常では第一極体の直下の細胞質内に存在するため顕微授精を行う際はそこに紡錘体があると仮定して精子を注入します。
しかし、この紡錘体は必ず第一極体付近に存在するとは限りません。一部の卵子では紡錘体の位置がずれていることがあり、そのまま顕微授精を行うと誤って紡錘体を傷つけてしまう可能性があります。
② 最適なタイミングで顕微授精を行う。
従来は第一極体を放出していることで成熟した卵子(MⅡ期:第二減数分裂中期)とみなしていましたが、実際は第一極体を放出していても成熟していない未熟な卵子である可能性がわかっています。
そこで、顕微授精を行う際に紡錘体を細胞質内に確認することで最適なタイミングで顕微授精を行うことができます。
どうやって観察するのか?
紡錘体を観察するには2枚の偏光板の取り付けた特殊な顕微鏡で観察します。この顕微鏡では、複屈折性のある物質を明暗や色のコントラストに置き換えることができ、それを観察することを偏光観察と言います。紡錘体は複屈折性を持つため偏光観察で非侵襲的かつ容易に可視化し観察することができます。
まとめ
今回は、顕微授精を行う際に紡錘体を観察することの重要性を説明させて頂きました。
紡錘体の位置をしっかりと確認して顕微授精を行うことで誤って紡錘体を傷つけることなく、また正しいタイミングで顕微授精を行うことで受精率や胚発生の向上に影響があると期待されています。