精子と生活習慣について
不妊治療を進めていくと精子の質について考える方もいると思います。
そこで今回は精子の質に関係すると考えられている生活習慣についてお話したいと思います。
・喫煙
喫煙と精子に関するネガティブな報告は古くより言われています。
喫煙者の精子は非喫煙者の精子と比較して濃度や運動率が低下すると考えられており、
煙草をたくさん吸う人の方がそうでない人に比べてそれは顕著です。
1日に煙草を20本吸う人は、非喫煙者に比べて精子濃度が19%減少するとされ、1日に10本以下の軽い喫煙者でも有意に変化があるとされています。
また、男性側の喫煙は精液検査の結果が良くないだけでなく、実際に体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)の成功率が低下するだけでなく、生児獲得率も有意に低くなるという報告もあります(喫煙者:7.8%vs非喫煙者:21.1%)。1)
・アルコール
アルコールを全く摂取しない人と摂取する人の間では、精液量と正常形態率に悪影響があると考えられています。ただ、その影響については毎日飲酒をする人に限定されるようで、時々飲酒をする人は全く飲酒をしない人と同様あるいは、興味深いことに時々飲酒をする人は全く飲酒をしない人と比較すると運動率が良くなるというデータ一部あるようです。2)
アルコールに関しては、過度でなければあまり関係ないという認識で大丈夫と考えられます。
・熱・暑さ
精子は熱に弱いことで知られています。具体的には体温より高い温度に晒すことは望ましくないとされています。長時間の熱いお風呂やサウナの入浴、熱がこもりやすい肌に密着した下着の着用、膝の上でパソコンを使用、長時間座ったままの姿勢でいる事、自動車のシートヒーターの使用は避けた方が良いと考えられています。また、これらは30歳以上で影響が出やすいようです。3)
・禁欲期間
禁欲期間が長くしてたくさんの精子を提供しようと考える方もいるかと思いますが、禁欲期間が長いと精子が死滅したり、つくられてから時間が経った精子はDNAの断片化率が上昇したりすると考えられています。適切な禁欲期間は2~3日とされています。また、定期的に射精しておくことも重要です。
精子については卵子と違い精子のもとの細胞から成熟した精子になるまで70日ほどかかると言われているので、早めの生活習慣改善を検討していただければと思います。
1). Kovac, J. R., et al. (2015). The effects of cigarette smoking on male fertility.
2).Elena Ricci., et al. (2017). Semen quality and alcohol intake: a systematic review and meta-analysis.
3). CJ McKinnon., et al. (2022). Male personal heat exposures and fecundability: A preconception cohort study.