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メディカルパークベイフロント横浜のブログ

横浜駅東口より徒歩2分、婦人科・不妊治療のクリニック「メディカルパークベイフロント横浜」のスタッフブログです。

 

原田院長の誕生日でした

 本日出勤スタッフでの一コマ、みんないい笑顔です。お誕生日おめでとうございます!

 

 

タイムラプスインキュベーターに関するフォーラムへ参加しました

 都内で行われたタイムラプスインキュベーターに関するフォーラムに参加してきました。フォーラムという言葉は集会・公開討論の様な意味で使用されます。今回は当院で使用しているインキュベーターに関する情報のアップデートを目的としました。

 

 当院での診察にて、タイムラプスという言葉を聞いた方もいらっしゃると思います。保険診療に組み合わせることができる技術に「タイムラプス培養」というものがあります。お預かりした受精卵をカメラ撮影しながら培養する事ができる技術です。当院ではエンブリオスコープ(ES)と呼ばれる最新の培養器を導入しており、この技術に対応する事ができます。

 

 このカメラ撮影ですが、10分間隔で行われております。時代も進化し、そこから得られる膨大な情報を元にAIによるスコアリングを行う事が可能となってきました。AIによるスコアリングとは「胚(受精卵)評価ツール」を指します。

 

 体外受精の原則として、妊娠の可能性が高い胚を選び移植するというものがあります。そこで大切なのが「妊娠の可能性を評価する」という点です。通常は、胚評価を培養士の目で行います。培養士が顕微鏡で見て、良い悪いを判断します。「グレード」や「ABCランク」といった事を聞いた方もいらっしゃるかもしれません。培養士の目で判断しますから、当然主観が入りますし、施設によって判断基準もばらけてしまいます。

 

 AIスコアリングではビッグデータを元に、妊娠の可能性に対し客観性の高い評価ができます。当院では、移植される胚の選択基準として「培養士の目による評価+AIスコアリング評価」を組み合わせております。

 

 この様に、我々の臨床の場に利用されるようになってきたAIですが、当院も年末にヴァージョンアップする事になりました。より精度があがるとの事で、臨床成績に繋がる事を期待しています。今回のフォーラムで得た情報を参考に、AIスコアリング評価を活用していきたいと思います。

 

今回は先進医療の1つであるSEET(シート)法についてご紹介します。

 SEETとはstimulation of endometrium embryotransfer:子宮内膜刺激胚移植の略称になります。

 

 子宮内で起こる着床という現象の裏側では、受精卵と子宮内膜の間で“クロストーク”というものが起こっています。クロストークとは細胞間の相互作用の事で、細胞と細胞が様々な物質を介して生物学的な現象を引き起こすことを意味します。具体的には子宮内膜の分化誘導により受精卵が着床し易い状態になると考えられています。

 自然妊娠の場合、着床前に受精卵が子宮内を漂っており、その間にクロストークが起こっていると考えられています。しかし、通常の胚移植では子宮内を漂う時間が短いためクロストークが不十分ではないか?というのが本法の考え方になります。

 

 SEET法では胚の培養に使用した培養液を用います。5-6日間、胚の培養に使った培養液には胚自身から産生された成長因子が含まれています。この因子含有培養液を凍結し、移植の前に子宮内に注入する事でクロストークを誘導させます。その後、追いかける様に移植を行います。

 

 実はこの方法自体は昔からよく知られておりました。生殖医療ガイドラインでは「SEET法が臨床的妊娠率を改善するかは不明だが、改善を認めた報告も散見されるためオプションの1つとして考慮される」と記載されております。また、「2007年の臨床研究で着床率改善のための方法として示唆された」とされたことから、2022年より先進医療として観察研究が開始され、現在エビデンス構築が行われております。

 

 ご希望の患者様は、採卵決定までに診察にてご相談ください。原則、胚盤胞が凍結できた周期のみ保存可能で、保存期間は1年となります。

 

無事二台目の培養器が納品されました

 当院で採用しているタイムラプスインキュベーターの二台目が無事納品されました。合わせて現行の培養器もメンテナンスが終わり、引き続き安全に使用する事ができそうです。

 

 お陰様で、患者様が増えてきております。それに伴い治療件数も増え続けているため培養器増設の計画を立てていましたが、納期にある程度時間がかかってしまったため、漸く納品日を迎える事となりました。

 

 

 増設の計画については、当院の担当培養士がしっかり調整・準備をしてくれたのでスムーズに進めることができました。慣れない英語の資料を和訳してもらったり、聞きなれない「ワット」や「ボルト」なども考慮し設置を決めたりと、頑張ってくれました。

 

 今年も残すところあと僅かとなりました。残りの診療も増設した機器を以て、より安定した環境で卵に向き合っていきたいと思います。引き続き宜しくお願い致します。

 

2022年11月から開院1年の治療実績です

 開院より一年となりましたので、こちらで治療実績をご報告致します。通院される患者様におきましては1つの参考値としていただければと思います。

 40歳以上の方の成績が上昇致しました。要因は色々考えられますが、1つに新規導入となった培養液の効果もあったと感じております。年明けには改めて2023年分実績として更新できればと思っております。引き続き宜しくお願い致します。

 

学会に参加してきました

 当院培養士が先日学会に参加して参りました。日本生殖医学会と呼ばれるこの学会は不妊治療・生殖医療に関して国内で最も大きな学会と言えます。今回は金沢で行われましたが無事に終了し、多くの知見を持ち帰る事ができたと思います。 引き続き今後のARTに活かしていきたいと思います。

 

 

受精方法の1つICSIのお話

 

前回のブログではIVFとは何か、IVFの受精方法の1つである一般体外受精について説明しました。

今回は体外受精のもう一つの受精方法である顕微授精について説明します。

 

顕微授精とは

顕微授精とは顕微鏡を覗きながら形態、運動性共に良好な精子を選択し極細のガラス管内に取り込み、それを直接卵子の中に注入し受精を手助けする方法です。顕微授精は卵子1個に対して精子が1個あれば行うことができ精子の数が少ない等で一般体外受精では受精が困難だった場合でも受精卵を得ることができます。正式には卵細胞質内精子注入法と呼ばれ、英語のIntracytoplasmic Sperm Injectionを省略してICSI(イクシー)と呼ばれていることが多いです。

 

 

顕微授精の適応

日本受精着床学会によると、精子数が少ない場合(乏精子症)、精子の運動が弱い場合(精子無力症)などの男性不妊、また、一般体外受精で受精しなかった、もしくは受精率が低かったなどの受精障害が疑われる場合などに適応されます。精液所見が良好な場合、最初は一般体外受精から始めることが多いですが最近では、採卵した卵子の個数や年齢を考慮して初めから顕微授精を選択することもあります。

 

顕微授精に関する様々な技術

Conventional ICSI(コンベンショナル イクシー)

最も一般的な方法。先端の尖ったガラス管を使用して精子を卵子に注入します。透明帯を穿孔する際に針を卵子に押し付ける必要があり、また、細胞膜を破膜する時に卵子の中身を一度吸引する必要があるため、卵子へのストレスが懸念されます。

 

Piezo ICSI(ピエゾ イクシー)

従来のconventional ICSIとは異なり特殊な機械で振動を先端の平らなガラス管に伝え透明帯と呼ばれる膜をくり抜き、細胞質の吸引を最小限にして破ることができます。従来のように卵子に針を押し付け卵子の形を変形させることもないためconventional ICSIと比較して卵子へのストレスが少ないです。

 

PICSI(Physiologic intracytoplasmic sperm injection:ピクシー)

DNAの損傷が少ないと言われる成熟度の高い精子を選別する方法です。

ヒアルロン酸が塗布されたディッシュや高濃度に含んだ溶液を使用して成熟度の高い精子を選別します。

 

 

顕微授精は1個の卵子に対して1個の精子を注入するため、精液所見が不良でも受精卵を得ることができます。また、一般体外受精に発生する多精子受精や受精障害を防ぐことができ、受精率は一般体外受精と比較すると高くなります。

また、顕微鏡下で精子を観察して形態、運動性が良好な精子を選択することができます。

一方、細いとはいえ卵子に穴をあけて精子を注入するので、もともと膜の脆弱な卵子だと変性してしまう可能性があります。また、特殊な道具を使用するため費用は一般体外受精と比較すると高額になります。また、精子の選択が人為的に行われることに抵抗を感じる方もいます。

 

顕微授精の安全性について

Y染色体に起因する男性不妊については顕微授精で生まれてきた子供(男児)に遺伝する可能性があると考えられています。奇形や先天性異常の可能性については、一般体外受精と比較しても変わらないとされています。一部では顕微授精を行う事で奇形や先天性異常の確率が増加するとの報告もありますが、顕微授精を行うに至った夫婦の背景(年齢など)に原因があると考えられていますが今後も検討していく必要があります。

 

まとめ

生殖補助医療で行われる体外受精の2種類の受精方法を前回と合わせて説明しました。

どちらの方法もそれぞれ、メリットとデメリットが存在しており、どちらか選択するのは難しいと思いますが、悩まれた際は今回のブログを参考にしてみてください。

 

 

当院に卵・精子をお預けしている方へ ご連絡です

 

 体外受精に関する検体の保管につきましては1年に1度、延長更新の手続きが必要となります。当院は11月で開院1年となりますので、当院で凍結保存した受精卵などの更新手続きが来月より始まります。

 

 詳細についてはHP上部メニュー<不妊治療<凍結保存の手続きから確認いただけます。

 

 当院で治療を行い卵・精子をお預けされている患者様は一度ご確認いただくようお願い致します。ご不明点がございましたら、受付窓口の方までお問合せください。

 

 

新しい先進医療Zymotについてご説明します

 今回は体外受精の精子調整方法の一つ、膜構造を用いた生理学的精子選別術について説明したいと思います。この方法は3月に先進医療として認められたZymotと呼ばれるデバイスを用いて行う調整法になります。

 

 従来の精子調整は密度勾配法+Swim upであり、密度勾配法は多くの良好精子を選別できるメリットがある調整法です。そのあとSwim upを行い、運動性がよい精子を回収する事ができます。

 ただし、密度勾配法は遠心分離によって精子にDNA損傷を引き起こす可能性があると報告されています。

 

 そこでDNA損傷を起こさない方法として開発されたのがZymotです。

 Zymotには特殊な膜があり、8㎛の小さな穴が開いています。この膜を精子が流れる過程では、頭が大きい奇形精子は通過できず回収されません。このマイクロレベルで起こる流体技術を用いてDNA損傷を起こす事なく、運動性がよい正常形態精子を回収する事ができます。

 

【Human Reproduction, Volume 33, Issue 8, August 2018より一部引用】

 

 上は精子調整方法別で比較したDNA損傷率(DFI)の結果です。Zymot群のDFI中央値は0%(四分位範囲:0~2.4)で密度勾配法+Swim upの中央値6%(四分位範囲:2~11)より有意に低い事が分かります。

原精液DFIが高いサンプル(DFI範囲:31~40)の場合も密度勾配法+Swim up後DFIの中央値15%(四分位範囲:11~19)、Zymot後DFIの中央値0%(四分位範囲:0~1.9)でZymot群のDFIが有意に低い事がわかります。

つまり遠心分離による精子へのDNA損傷を起こす可能性を回避できる事と、DFIが高い精液はZymotを使ってDNA損傷が低い精子を選別できる事が示されています。

 

 

 精子DNA損傷は胚発生3日後の胚盤胞発生率、妊娠率、流産率に悪影響を及ぼす事が知られています。精子DNA損傷率が高く、受精後の胚発生が不良の方にZymotをおすすめします。ご興味がある方は診察にてお問合せください。

 

 

新しい先進医療として、Zymotスパームセパレーターを導入します

 体外受精において、新しい先進医療であるZymot(ザイモート)スパームセパレーターを導入します。この技術は精子に負荷を与えないように設計された特殊な精子選別機器を使用し、良好精子を回収するものです。

 

 兼ねてより準備をしておりましたが、本技術の実施機関として漸く承認を受けることができました。それに伴い、院内での勉強会を行いました。培養室スタッフも、理論の整理を行い、使用感のチェックを行っております。

 

 

 実施機関となったことで、保険による体外受精でこの技術を併用する事が可能になりました。横浜エリアでは当院が2施設目との事です。特に顕微授精による治療を行っている方が対象となりますが、ご興味がある方は診察時にお申し付けください。実施費用が別途かかり、原則10月の採卵の方からが対象です。

 

 この技術の詳細は次回のブログでご紹介します。