IVFについて② | メディカルパークベイフロント横浜のブログ

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受精方法の1つICSIのお話

 

前回のブログではIVFとは何か、IVFの受精方法の1つである一般体外受精について説明しました。

今回は体外受精のもう一つの受精方法である顕微授精について説明します。

 

顕微授精とは

顕微授精とは顕微鏡を覗きながら形態、運動性共に良好な精子を選択し極細のガラス管内に取り込み、それを直接卵子の中に注入し受精を手助けする方法です。顕微授精は卵子1個に対して精子が1個あれば行うことができ精子の数が少ない等で一般体外受精では受精が困難だった場合でも受精卵を得ることができます。正式には卵細胞質内精子注入法と呼ばれ、英語のIntracytoplasmic Sperm Injectionを省略してICSI(イクシー)と呼ばれていることが多いです。

 

 

顕微授精の適応

日本受精着床学会によると、精子数が少ない場合(乏精子症)、精子の運動が弱い場合(精子無力症)などの男性不妊、また、一般体外受精で受精しなかった、もしくは受精率が低かったなどの受精障害が疑われる場合などに適応されます。精液所見が良好な場合、最初は一般体外受精から始めることが多いですが最近では、採卵した卵子の個数や年齢を考慮して初めから顕微授精を選択することもあります。

 

顕微授精に関する様々な技術

Conventional ICSI(コンベンショナル イクシー)

最も一般的な方法。先端の尖ったガラス管を使用して精子を卵子に注入します。透明帯を穿孔する際に針を卵子に押し付ける必要があり、また、細胞膜を破膜する時に卵子の中身を一度吸引する必要があるため、卵子へのストレスが懸念されます。

 

Piezo ICSI(ピエゾ イクシー)

従来のconventional ICSIとは異なり特殊な機械で振動を先端の平らなガラス管に伝え透明帯と呼ばれる膜をくり抜き、細胞質の吸引を最小限にして破ることができます。従来のように卵子に針を押し付け卵子の形を変形させることもないためconventional ICSIと比較して卵子へのストレスが少ないです。

 

PICSI(Physiologic intracytoplasmic sperm injection:ピクシー)

DNAの損傷が少ないと言われる成熟度の高い精子を選別する方法です。

ヒアルロン酸が塗布されたディッシュや高濃度に含んだ溶液を使用して成熟度の高い精子を選別します。

 

 

顕微授精は1個の卵子に対して1個の精子を注入するため、精液所見が不良でも受精卵を得ることができます。また、一般体外受精に発生する多精子受精や受精障害を防ぐことができ、受精率は一般体外受精と比較すると高くなります。

また、顕微鏡下で精子を観察して形態、運動性が良好な精子を選択することができます。

一方、細いとはいえ卵子に穴をあけて精子を注入するので、もともと膜の脆弱な卵子だと変性してしまう可能性があります。また、特殊な道具を使用するため費用は一般体外受精と比較すると高額になります。また、精子の選択が人為的に行われることに抵抗を感じる方もいます。

 

顕微授精の安全性について

Y染色体に起因する男性不妊については顕微授精で生まれてきた子供(男児)に遺伝する可能性があると考えられています。奇形や先天性異常の可能性については、一般体外受精と比較しても変わらないとされています。一部では顕微授精を行う事で奇形や先天性異常の確率が増加するとの報告もありますが、顕微授精を行うに至った夫婦の背景(年齢など)に原因があると考えられていますが今後も検討していく必要があります。

 

まとめ

生殖補助医療で行われる体外受精の2種類の受精方法を前回と合わせて説明しました。

どちらの方法もそれぞれ、メリットとデメリットが存在しており、どちらか選択するのは難しいと思いますが、悩まれた際は今回のブログを参考にしてみてください。