家の前の大通りを歩いてる。
天気はよく晴れていて、人通りはまばら。
「瞑想とか苦手なのよね」
ふと、そんな事を思う。
瞑想の定義が
善悪や正否といった「正しさという判断」から自分を解放する・・・という意味なら
私は「瞑想タイム」なんて設けなくても常に心がけている。
「瞑想って結局なんなのよ」
ぶつぶつ考えていると、突然身体がジンジンと微振動を始めた。
「あ、これって二重金縛り!」
二重金縛りとは、夢の中で金縛りに似た状態になるもので
抵抗しないでいると予想外の展開になることが多い。(時々なる)
大抵、身体がジンジンブンブンと高振動していって
光に包まれたり、幽体離脱したように視界が上がってったりする。
この時も、自分の意識がスゥっと身体から離れていくのが解ったので
(あ、どうしよ!?)と、一瞬焦ったものの
あまり恐怖心がわかなかったので、好奇心を優先させる事にした。
(まぁいいや、流れにまかせちゃえ・・・)
視界いっぱいの青空を眺めつつ、どこまで浮かんでくのかな~~と思っていたら
ふわ~~っと3~40センチ上がったあたりでストップ。
(え、なにちょっと。これだけ!?)
肩すかしをくらって、「何か変なこと起こらないかな~」とワクテカ待ってみるものの
ふわふわと同じ位置を漂うばかり+(;0゚・∀・) + ワクテカ +
(な~~んだ・・・・終わりか。はずれ?)
若干がっかりして、パッと金縛りを解く。
ふたたび大通りを歩きはじめると、私は急に「走り出したく」なった。
(なんか解らないけど、急がないと————)
ワケもわからず全力で走って、私は住宅街の角をどんどん曲がっていく
(知らない街、知らない道、だけど・・・・)
何か懐かしい気配が近づいてくるような、そんな気がした。
やがて、見覚えのある神社が見えてきた。
「あそこって、随分昔夢に見た神社だ。」
よくある”竹やぶ・玉砂利・赤い鳥居”って感じじゃなくて
建造物の全てが石で出来ているの。石造り。
その硬質な冷たさを感じさせる、独特の雰囲気をよく覚えていた。
神社に入ると、急に真夜中になった。
奥の本殿は暗くてよく見えないけれど
格子のようなものがはめ込まれ、随分前に「封印」されたようだった。
(廃神社になっちゃったのか・・・)
以前、夢で見た際はピカピカの新築だったのに。
今は打ち捨てられたような雰囲気になっている。
ふと、人の気配がした。
数名のおじさん達が忙しそうに境内を走っている。
「忙しくなりそうだ!今回は本当に厄介だ、手に負えるのか・・・」
「どうなるかまるで解らないが、やるしかないぞ」
そんなような事を言いながら、旅立つ準備をしている。
(物騒な雰囲気だな、何かあったのだろうか?)
おじさん達に話しを聞こうと近づくと
私に気づいたおじさんがギョッとした表情でかたまった。
「なんでこんな所にいる!!さっさと帰れ!!」
頭ごなしに怒鳴られムッとしたので
「なにが起こってるんですか?(教えてくれるまで帰らないも~ん)」
と挑発的な態度をとってみた。
「本殿はなんで封印されちゃってるの?中に入ってもいい?」
「あ、バカよせ!!!!」
おじさんが制止する間もなく、私はスィ~っと飛んで格子の隙間から中をのぞこうとする。真っ暗でよく見えない。
「こっちに戻れ!!!!」と怒られたので元の場所へ戻る。
おじさんは、私をどうするかしばらく悩んだものの・・・
切羽詰まった状態で私にかまけてる時間はないと判断したらしい。
「そんなに知りたきゃ、くれてやるわ!!!!」
「!!!!」
突然、私の手を掴むと
手の平(親指の付け根の膨らんでいる所)に、自分の親指をズンっと突き立てた。
すると、おじさんの指先から、青白い稲妻のような光が走り
私の手の中へと吸い込まれていった。
「あとは好きにしな」
何が起こったか解らずボ~っとする私を置いて
おじさん達は慌ただしく、どこかへ出発していった。
神社に一人取り残された私は、その場の雰囲気がすっかり変わっていることに気づいた。
まず、住宅街の中だったはずの神社は
いつの間にか海沿いの崖の上へと移動していた。
見下ろす夜の海は墨の要に真っ黒で、その果てしなさに底知れぬ不安を感じた。
(海の中に、何か居る?)
黒い波の中、青白く光る「布」のような物が見えた。
よく見ると布の先端には顔があり、グルグルと円を描きながら海を泳いでいるではないか。
神社と海はそれなりに離れているハズなのに、あれほどハッキリ見えるのは
それがクジラと同じくらい「巨大」ということ。
(なにあれ・・・・・化け物?)
ゾッとして、思わず1歩後ずさる。
視線を海から神社へ移すと
それまで静まり返っていた境内の暗闇に「濃い」気配が充満しているのに気づいた。
(何か居る?)
およそ友好的ではない視線を感じ、周りを見渡す。

(アレは————)
先ほどの布と同じように、青白く光る「巨大な女のような物」が
本殿のあたりから、じぃっと私を見つめていた。

霧のように徐々に姿を変えながら
それは「私」を捉えたようだった。
(絶対、ヤバイわこれ)
とりあえず、この神社から出ないと
”避けられない危険”が及ぶ。
そいつに背を向け、私は一直線に入り口へ走る
(なんだか身体が軽い、心も静かだ、なんでだろう?)
冷静に考えれば’(多分)絶体絶命の状態で
自分が淡々と生き延びる手段を考えている事に驚いた。
背後から、とつてもなく巨大な気配が近づいてくる
飲み込まれたら、お終いだろう。

私を追う”そいつ”は桁違いに危険な存在なのだと、直感でわかる。
しかし、それ以外にも
大小様々な存在が、いたる空間にひしめいているのを肌で感じる。
(おじさんは、霊感のような何かを私に授けたのだろうか?)
興味深いのは、私が相手を認識すると、向こうも私を認識すること。
「見える」のは必ずしも良いことではなく、むしろ諸刃の剣という訳だ。
(どうやら、引き返せない道に入ってしまったみたい・・・)
神社を飛び出し、さらに私は加速する。
「せめて身の守り方くらい教えて欲しかったなぁ。」
何一つ解らない状況だけど「自分が丸腰」という事は感じていて
「見えるだけ」の今が最も危険なのだと、察していた。
ひとまず、安全なところを探さないと身の振りようがない。
(そんな場所があるのかも、わからないけど・・・)
私は真夜中の住宅街を走っていった。