年の暮「男子厨房に立つべし」
男が活躍すべきは年越しの厨房なり
包丁を研ぐ音冴えて去年今年(こぞことし) 竹帚
落語「芝浜」を聴くと、かつて大晦日というと本当に大変だった様子がよくわかります。
とくに商人にとって年の暮は一年で最も忙しいときで、大晦日までに仕入れ先には支払いを済ませると同時に、お客さんに対しては掛け取り(集金)に走り回っていたようです。
除夜の鐘が鳴って新玉の春を迎えると、ほんのしばらくの間だけですが、のんびりとした気分を味わえるものでした。
昔は「ハレ」と「ケ」・・・いわゆる日常(普段)と非日常がはっきりと区別されていました。
したがってお正月やお祭り、その他お祝い事があるときに「ご馳走」を食べていたものです。
おせち料理というのはまさにその代表で、お正月三が日はどこのお店も閉まっていましたので、作り置きした「ご馳走」をみんなでのんびり食べて過ごすのが常でした。
今では大晦日も元旦も、スーパーやコンビニはもちろん、ファストフードのお店もやっていますので、「明日は正月だから」といって、そんなに大騒ぎをすることはないのかもしれません。
でも、年越しそばやお雑煮などを食べることで「ああまた新しい年を迎えられる・・・」という感慨にふけることができるものです。
こんなに狭い日本でも、北海道から沖縄まで大きく違う食文化を最も色濃く感じられるのが、おせち料理だと思います。
土地土地の気候風土が育んだ、食文化がだんだん薄れていきつつあります。
当「親父亭」の厨房では、主として博多流を継承すべく、毎年欠かさず手作りのおせち料理作りに励んでおります。
親父亭で、まず暮の買い物で忘れてならないものは「ブリ」です。
九州から関東に移り住んで、年越しの食文化で大きな違いを感じたのが「ブリ」の存在です。
子供の頃、暮も押し詰まると、いつも母親が大きなブリを買ってさばいていました。
大晦日に刺身とアラで作ったブリ大根を食べ、年が明けると照り焼きや塩焼きがおせちの中に入り、お雑煮にもブリの切り身が入ります。
関東に越してきた最初の年の暮、天然もののいいブリを求めて12月30日に築地市場の場外の魚屋をくまなく回りましたが、まるまる1本のブリを売っている店はありませんでした。
その年はスーパーで養殖物を買ってしのぎ、翌年からはいろいろと情報収集に努めて、関東でも年末に天然物のブリが買える店を知りました。
また、最近は餌や飼育環境の改善で、養殖物でも天然物と遜色のないいいブリができるようになったそうです。
(左)もちろんブリのお刺身です。 (右)刺身と一緒に並んでいるのはカマの塩焼き。
当ブログですでに紹介した「ブリ大根」や「ブリしゃぶ」などもいいですね。
石川県を中心に北陸地方では、なれ寿司の一種「かぶら寿司」にブリが使われます。
塩漬けにした薄切りのカブとカブの間に、やはり塩漬けにしたブリの薄切りを挟み込み、細く切った人参や昆布などと米麹(糀)で漬け込んで醗酵させたもので、なかなかの珍味です。
大晦日といえば「年越しそば」・・・その由来は諸説あり「細く長く生きる」という意味が一般的です。
他に金銀細工師がそば粉を団子にして散らかった金粉を集めていたそうで、「金が集まる」・・・すなわち、金運に恵まれるように縁起を担いで食べるようになったともいわれています。
そばはブツブツと切れやすいので「1年の苦労を切り捨てる」とか、そばは風雨に打たれて倒れても陽に当たるとすぐに立ち直るので「打たれ強くなる」という説などもあります。
いずれにしても、忙しく働いた年の瀬に暖かいおそばで締めくくるというのは、悪くないものです。
当「親父亭」の定番年越しそばは、いたってシンプルです。
ダシはカツオと昆布が主で、おせちに使う椎茸の戻し汁なども加え、醤油、酒、みりん、塩をほどよく加えます。
こだわりは具材に鶏肉を一片加えます。酒をふっておいた鶏肉を沸騰したダシの中に入れると、鶏肉からまた深い味わいが出てきます。
茹でたおそばを水でさらしてぬめりを取ってもう一度熱湯をくぐらせて湯切りをし、かまぼこやネギなどをのせた後に、煮た鶏肉と一緒に熱いダシをかけて出来上がりです。
さて、年が明けてからはほとんど前日までに作ったおせち料理を重箱に詰めることと、雑煮作りで作業を終えます。
「親父亭」では嫁いだ娘たちも、1~2品何か作って持ち寄り、親父亭の亭主および細君とで手分けして作ったものとを加えて、亭主が雑煮を作っている間にお重に詰める作業が行われます。
当ブログですでに紹介した「がめ煮」「トリブタボール」「鶏肉チャーシュー」なども並んでいます。
「博多雑煮」については、改めて紹介します。
具だくさんの「博多雑煮」
最後に、エビを茹でるときのコツを紹介します。
エビは茹でると丸くなって、見栄えが悪くなります。そこで、下準備として串を1本お尻から差し込んでおいて、塩ゆでした後に抜き取るときれいに茹であがります。
ご覧のとおりです。
ちなみに茹で汁は漉して取っておきます。。
冷蔵庫に入れておいて、おせちが飽きたときの味噌汁のダシとして利用しましょう。