フーリガン通信 -5ページ目

「フーリガン通信」休刊のお知らせ

日中はせっせと仕事をしている私の場合、通信は夜に書いている。そのため、翌朝のニュースを見て「えっ~、そんなバカな~」ということがたまにある。朝、目が覚めてみたら、昨日とまるで違う展開になっていたりする。


「小笠原&遠藤“新ダブルボランチ”結成」


一気に筆が止まる瞬間。すぐに頭に言葉が浮かぶ・・・「何それ?」  


だからという訳ではないが、本日を以って、当“フーリガン通信”を休刊したい。


実はフーリガン通信は2002年のW杯日韓大会の最中に、私のサッカー好きの仲間に当てた一通のメールとしてその産声を上げた。予想外にウケて転送、転送。私の知らない方も読むようになり、意外な方(例えば自分の会社の役員)からも「面白かったよ」などと声を掛けてもらったりもした。


知っている相手に向かって発信していた不定期メルマガも、だんだ面倒になってきたのでブログに切り替えた。2008年のことである。全く知らない人に読んでもらうのだからと一瞬気合も入ったが、そんなに暇でもなかったし、“魂”の緊張も続かず、“叫び”も息切れが・・・


“魂”のせいにして、日刊、週刊、月刊、隔月刊、季刊。途中、嫌なことがあって“休刊”を決意し、その翌日すぐに“再開”したこともあったし、ただ単純に長期間サボったこともある。


そんないい加減な“魂のフーリガン”であるが、ワールドカップ・イヤーである今年は一念発起、1月は毎日発信しようと心に決めて、せっせと書き続けた。その目標は見事に達成し、2月も5日まで毎日書いた。2月の分は“魂のおまけ”である。


おかげさまでAmebaブログのサッカージャンルも1000位の壁を突破し805位、1日のアクセス数も200を超えた。αブロガーの足元にも及ばないが、毎日何回も更新している訳ではないし、一回の文字数もそれなりに多いから、私の“魂”はこれでも十分に満足している。


なので、今回お休みすることにした。要するにたいした理由もなく始まった通信が、たいした理由もなく終わる。ただ、それだけのことである。


今回ブログを書き始めて、たくさんのペタをもらい、Footballに関して日々語る人が実に多いことを知った。もう、オジサンが声を枯らして叫ぶ必要もないだろう。それも筆をおく一つの理由といえば理由かも。後は皆様に任せて、これからは自分の書いた膨大な量の通信をじっくり読み直してみたいと思っている。


当通信に立ち寄ってくださった全ての読者に感謝するが、特に2002年から長らく付き合ってくれたサッカーの仲間達には大変感謝している。この場を借りて心から御礼申し上げる。


そんな訳でというほどでもないのだが、これまでに頂いたコメント、読者登録も勝手ながら全て削除させていただいた。もうペタ返しもしない。併せてご了承いただきたい。


最後の挨拶までダラダラと長くなってしまった。もう終わりにしよう・・・


最後に、マンUのプレミア4連覇とルーニーのバロンドール、そして皆さまの健康を祈念する。

日本代表の南アフリカでの健闘はついででいい。


本当にありがとう。


Be with Football!  魂のフーリガン


小笠原という“劇薬”の使い方

先のベネズエラ戦のマスコミの焦点は、何といっても小笠原であった。


ドイツW杯以来の3年半ぶりの代表復帰、鹿島アントラーズの王様としてリーグ3連覇、昨シーズンのJリーグMVP、そして現代表の王様・中村俊輔の不調・・・彼が話題になる背景は十分すぎるほど揃っていた。


で、先発した小笠原はどうだったか?


彼が放った2本のミドル・シュートはいずれも見事な軌跡を残しゴール枠を捕らえた。(あえて言わせてもらえば1本目、狙いは良いがパワーがない。スナイデルだったら・・・)

岡崎に送った縦のロングパスも見事。タイミング・角度・スピード・落とし所・バックスピン、すべての要素が詰まった非常にクオリティの高いものだった。


リプレーとニュース以外ではほぼ後半しかゲームを見ていないが、彼がボールに触る機会は安心して見ていられた。多くのメディアも小笠原のプレーは評価していたし、岡田監督も非常に満足していた。


かくして、この“遅れてきた大物”は、十分にその存在感を示し、その“救世主度”も一気に高まった・・・


ちょっと!ちょっと待って欲しい。アントラーズ・サポの反感を買うかもしれないが、私は言っておきたい。


「岡田さん、そんなんでいいの?」


私に言わせれば、小笠原の個人のパフォーマンスは全く心配していなかった。あれくらいできて当たり前。あの程度で「素晴らしい!」と感心しているようでは、むしろ小笠原に失礼。バカにするなという話である。


今回海外組を呼ばないという事情は確かに小笠原を招集するキッカケにはなっただろうが、ここで彼を加えたということは、俊輔や本田の代わりではない。岡田監督は小笠原という完成された部品を加えることで、代表のレベルアップ、新たなオプションを求めたはずである。


その狙いは攻撃の活性化にあった。だから岡田監督は小笠原をMVPを取ったボランチのポジションではなく、攻撃的MFに入れたのである。従って今回の小笠原の評価は、彼個人のパフォーマンスではなく、彼が入ったことでチームとしての攻撃が良くなったか否かで判断すべきである。


その視点から改めて振り返ると、日本の攻撃は決して「非常に満足」な内容とはいえなかった。相手が引いたとはいえ、中澤と闘莉王の前で遠藤と稲本がダブルボランチとなった守備陣の安定は誰もが認めるところだが、小笠原を評価する声は聞こえても、彼が加わった攻撃を評価する声はどこからも聞こえてこない。


攻撃がちぐはぐだったの原因は小笠原の“影力”にあったと私は思っている。周囲が小笠原をリスペクトするのは良いのだが、小笠原に頼りすぎた。


キープ力がある小笠原はボールの収まりが良い。それでいて視野が広く技術が確かだから、任せておけば適切なところにボールをつなぐことができる。


しかし、その結果、普段は前方へのパスの出し手であろうとする憲剛はどこかに消えた。遠藤も稲本も攻撃は小笠原に任せて、前線への飛び出しは抑え目であった。岡崎と大久保は小笠原からのボールを引き出そうと前線で動きが重なった。小笠原も憲剛も中でプレーするためにサイドは空くのだが、SBが上がるタイミングが合わず普段あれだけ拘るサイド攻撃もその「精度」以前に「機会」が少なかった・・・


そう。良いポジショニングでフリーになり、ボールを受けて、ためをつくり、パスを供給する。一人で何でもできてしまう小笠原という選手が入ったことで、普段はそれぞれの役割を分担して機能していた日本の攻撃は軽い機能不全に陥ってしまったのである。


各駅停車のトラップをはさんで、足元から足元に繋がるゆるいパス・・・まるで4年間に戻ったような日本の攻撃は、オシム時代に見られたダイナミズムをすっかり失っていた。岡田監督の“コンセプト”は変わっていないはずなのに・・・


小笠原は優れた選手である。今回のゲームでも明らかになったように、その個としての能力に疑問の余地はない。しかし、彼を一度も招くことなく3年半を過ごしてきた日本代表にとって、影響力のある彼は一種の“劇薬”である。効き目はあるが、その副作用も大きい。


万が一のときの備えに常備はしておきたいが、彼を使う時は、彼に合わせた戦術を取らなければならない。小笠原は岡田監督の言うことは理解はできるだろう。理解とプレーは違うもの。頭で理解はしてもプレー・スタイルはそう変わるものではない。だから、彼を俊輔の代わりに使うと言うことは、これまでの戦術を捨てることを意味する。岡田監督にそれができるとは思わない。かといって使用しないで取っておけば“腐る”ことはドイツで証明済み。今となっては使い方が難しい。


そういえば前任者のオシムも小野や小笠原を招集しようとしなかった。その理由が私にはわかったような気がした。


お前の勝手な思い込みだろって? そうかも知れない・・・


魂のフーリガン

ベネズエラ戦での“驚き”

夢を持てる人は幸せである。私は「W杯ベスト4」という夢も見ていない。日本代表が「世界を驚かせる」とも思っていないし、当然その「覚悟」もない


岡田監督がモチベーションを高めるのは結構だが、それで私のモチベーションが高まる訳でもない。マスコミがいくら煽っても、それで盛り上がることはありえない。「踊る第4連戦」?・・・踊りたい奴は勝手に踊っていなさい。


そんな私でも時間があれば日本代表戦を観てしまうのは、世界を云々する前にまずは「私を驚かせる」プレーを見せて欲しいからである。「驚かせるゲームを」なんて贅沢は言わない。「驚かせるワン・プレー」、「期待できるワン・プレー」、そう、ワン・プレーでいい・・・それぐらいできるだろう。


そう思って観たワールドカップイヤー最初のA代表マッチ・ベネズエラ戦。私がテレビの前に座ったのは前半終了間際であった。全てを観ていないので、ゲーム内容に関する評論は多くの解説者、ライター、ブロガーの皆様にお任せするが、少なくともピッチの上で起きたことで私が「驚かされたこと」は・・・なかった。

・・・ひとつも。


そんな私でも一つだけ驚いたことがあった。それはゲーム後の岡田監督のコメントである。


「べネズエラが素晴らしい準備をして、素晴らしいプレッシャーを掛けてくれた。」


ベネズエラが準備をしたのは、W杯4大会連続出場の強豪に胸を借りるからでも、日本から高いファイト・マネーがいただけるからでもない。彼らには彼らの目標があって、それに向かって準備しているのである。


ベネズエラはW杯南米予選で10チーム中8位と敗退。そんな彼らの目標は2011年南米選手権(コパ・アメリカ)で良い成績を上げ、2014年W杯ブラジル大会に出場することである。確かに、ベネズエラ代表のファリアス監督はゲーム後に「今回の試合を、4年後に向けた努力のスタートラインとして活用したい。」と語っている。


“4年後に向けた準備”でここまでできるのに“4ヶ月後に向けた準備”がこの有り様。

岡田監督や選手達は、これまでどんな準備をしてきたのだろう・・・


もうひとつ印象に残ったファリアス監督のコメントがある。今回のゲームの位置付けについてである。


「(4年後に向けた)その最初の段階として、まず日本という国のあり方を学ぶことにした。日本の秩序だったサッカー、そして非常に低いランクからスタートして、今では世界でも有数のサッカー大国となった日本。この経験を我々の国に重ねることができるのではないか。


多分に“外交辞令”を含んでいることは分かっている。しかし、何の裏付けもないままに代表監督自ら唐突に“W杯ベスト4”を公言し、何のビジョンもないままに日本サッカー協会が“2018-2022年大会招致”大金を使う国の国民として、南米の小国の代表監督の口からこのような論理的なビジョンを聞くこと自体が、私にとっては“驚き”であった。


W杯予選で敗退したベネズエラは謙虚に学ぼうとしている。

3度のW杯の経験で、日本は一体何を学んできたのだろう・・・


「結果は勝てなくて残念ですけど、この試合については満足しています。」


ベネズエラ戦後の会見で聞いた岡田監督のコメントを、本大会後には聞きたくないものである。



魂のフーリガン