ベネズエラ戦での“驚き”
夢を持てる人は幸せである。私は「W杯ベスト4」という夢も見ていない。日本代表が「世界を驚かせる」とも思っていないし、当然その「覚悟」もない。
岡田監督がモチベーションを高めるのは結構だが、それで私のモチベーションが高まる訳でもない。マスコミがいくら煽っても、それで盛り上がることはありえない。「踊る第4連戦」?・・・踊りたい奴は勝手に踊っていなさい。
そんな私でも時間があれば日本代表戦を観てしまうのは、世界を云々する前にまずは「私を驚かせる」プレーを見せて欲しいからである。「驚かせるゲームを」なんて贅沢は言わない。「驚かせるワン・プレー」、「期待できるワン・プレー」、そう、ワン・プレーでいい・・・それぐらいできるだろう。
そう思って観たワールドカップイヤー最初のA代表マッチ・ベネズエラ戦。私がテレビの前に座ったのは前半終了間際であった。全てを観ていないので、ゲーム内容に関する評論は多くの解説者、ライター、ブロガーの皆様にお任せするが、少なくともピッチの上で起きたことで私が「驚かされたこと」は・・・なかった。
・・・ひとつも。
そんな私でも一つだけ驚いたことがあった。それはゲーム後の岡田監督のコメントである。
「べネズエラが素晴らしい準備をして、素晴らしいプレッシャーを掛けてくれた。」
ベネズエラが準備をしたのは、W杯4大会連続出場の強豪に胸を借りるからでも、日本から高いファイト・マネーがいただけるからでもない。彼らには彼らの目標があって、それに向かって準備しているのである。
ベネズエラはW杯南米予選で10チーム中8位と敗退。そんな彼らの目標は2011年南米選手権(コパ・アメリカ)で良い成績を上げ、2014年W杯ブラジル大会に出場することである。確かに、ベネズエラ代表のファリアス監督はゲーム後に「今回の試合を、4年後に向けた努力のスタートラインとして活用したい。」と語っている。
“4年後に向けた準備”でここまでできるのに、“4ヶ月後に向けた準備”がこの有り様。
岡田監督や選手達は、これまでどんな準備をしてきたのだろう・・・
もうひとつ印象に残ったファリアス監督のコメントがある。今回のゲームの位置付けについてである。
「(4年後に向けた)その最初の段階として、まず日本という国のあり方を学ぶことにした。日本の秩序だったサッカー、そして非常に低いランクからスタートして、今では世界でも有数のサッカー大国となった日本。この経験を我々の国に重ねることができるのではないか。」
多分に“外交辞令”を含んでいることは分かっている。しかし、何の裏付けもないままに代表監督自ら唐突に“W杯ベスト4”を公言し、何のビジョンもないままに日本サッカー協会が“2018-2022年大会招致”に大金を使う国の国民として、南米の小国の代表監督の口からこのような論理的なビジョンを聞くこと自体が、私にとっては“驚き”であった。
W杯予選で敗退したベネズエラは謙虚に学ぼうとしている。
3度のW杯の経験で、日本は一体何を学んできたのだろう・・・
「結果は勝てなくて残念ですけど、この試合については満足しています。」
ベネズエラ戦後の会見で聞いた岡田監督のコメントを、本大会後には聞きたくないものである。
魂のフーリガン