クラシコ イタリア 読本
フレンチ アイビーについての社内勉強会の資料を家で探していたら、こんな本が出てきました。
1999年に発行されたESQUIRE別冊の ”クラシコ イタリア 読本”
クラシコ イタリアってなに? と言う方も多いと思いますが、90年代後半にイタリアのクラシックのブームが来た時に、そのスタイルを当時のPITTI UOMOの代名詞であったCLASSICO ITARIA 協会にちなんで、日本ではイタリアのクラシックのことをクラシコ イタリアと呼んでいました。
ちなみに、このクラシコ イタリアという言葉はイタリアでは通用せず、クラシコ イタリア=クラシコ イタリア協会の事で、イタリアの取引先にイタリアのクラシックをクラシコ イタリアと言うと、 ”それは違う” とよく怒られたものです(苦笑)。
イタリアのクラシックが日本で広く認知されるようになったのが1990年代後半から2000年代前半だったので、この当時はそんな細かいことよりは、イタリアのクラシックと言うものがどういうものなのかを紹介する方が大事だったのは言うまでもありません。
この本をあらためて読み返してみると、いまも続く日本のイタリアンクラシックのブームの創成期に発行された本だけあって、当時を知らない人が読んでもなかなか興味深い内容が満載だと思います。
ということで、今日はこのクラシコ イタリア 読本の内容について紹介したいと思います。
当時イタリアのクラシックを語るうえでこの方は重要な存在です。
ナポリのLONDON HOUSEのオーナー、MARIANO RUBINACCI(マリアーノ ルビナッチ)。
いまは彼の息子のLUCA RUBINACCI(ルカ ルビナッチ)がピッティ スナップの常連でもあり一般的に知られた存在ですが、この頃はマリアーノ ルビナッチがイタリアのクラシックのアイコン的な存在として日本のメディアでも度々取り上げられていました。
ロンドン ハウスは当時からナポリに行ったら必ずリサーチしなければならない名店で、私も何回かリサーチに訪れました。
いまではイタリアのジャケットやスーツの特徴的なディティールである、バルカポケットやマ二カ カミーチャ、袖ボタンの重ね付けもこのロンドンハウスから生まれたものです。
8ページにわたりロンドンハウスとマリアーノ氏のライフスタイルが紹介されていて、いま読んでもとても興味深い内容です。
ワードローブの公式というページではスーツやパンツやシャツなどの作りや選び方などについて書かれています。
イタリアのスーツやパンツやシャツ、ネクタイはどんな作りでどんな特徴があるのか細かく解説されています。
当時の日本は英国クラシックからイタリアンクラシックの移行期でもあったので、自分もイタリアの服作りについてかなり勉強していた時期だったこともあり、とても懐かしく感じます。
当時ネクタイの結び方で一世を風靡したダブルノットの解説も懐かしい。
昨今SNSで質問が多いパンツの裾幅やダブルの幅の話もすでに触れられているのも面白いですね。
ルビナッチ氏以外にも当時のイタリアを代表するキーパーソンが紹介されています。
ミラノのA.CARACENIのマリオ カラチェニ
当時これだけ色をつかった着こなしのイタリア人は少なかったので、マリオ氏の着こなしは注目していました。
自分の中では今でもウェルドレッサーのひとりです。
ナポリのLONDON HOUSEのトゥリオ アットリーニ
チェザレ アットリーニのお兄さんで、長くロンドンハウスのサルトをつとめていました。
日本人でもロンドンハウスでトゥリオ氏に仕立ててもらった人は多いと思います。
文中にも書かれていますが、当時からイタリアのテーラード業界においてアットリーニ ファミリーの存在は非常に大きいものでした。
ナポリのアンナ マトッツォ
当時イタリアのシャツの仕立て屋としてはマトッツォが日本で一番有名だったと思います。
アンナ マトッツォを最初に知ったのは、当時アットリーニの3兄弟(ヴィンチェンツォ、マッシミリアーノ、ジョゼッペ)がオーダーしているシャツ屋と言うふれこみでした。
この件について現在はSTILE LATINOのヴィンチェンツォ アットリーニに聞いたところ、確かにこの当時アンナ マトッツォで自分たちのシャツをオーダーしていたそうです。
自分も彼女とは数年仕事をしましたが、なかなか大変でした・・・(苦笑)
ローマのGATTOのガエターノ バストラ
当時ローマのガットと言えば、イタリアで最も有名なビスポーク シューメーカーでした。
ジョージクレバリーのジョージ グラスゴー氏にガットについて聞いたことがありますが、彼も絶賛していたほどです。
2006年にシルバノ ラッタンジに買収され、今は日本でもレディーメイドのガットが売られています。
BEAMSでも2000年前半に仮縫いなしのオーダー会の話があるナポリの知人からありましたが、いま思うとちょっと怪しい話でした・・・(苦笑)
Vゾーン攻略法の特集では、様々なシャツとネクタイのコーディネートが紹介されています。
当時はネクタイの色柄がいまと比べるとシックで落ち着いたものが主流でした。
シャツの襟型もセミワイドが主流でレギュラーカラーが少し出てきていた時代です。
今の流れと似ていますね。
ゴージの角度とシャツの襟の角度を近いものにするというセオリーが自然に認知されていた時代です。
靴のページでは、私が一番嫌いだったノルベジェーゼが・・・
当時確かに一部のイタリア人の間では流行っていましたが、正直日本人が思うほど流行っていなかったというのが実情です。
それどころか、当時のイタリアのウェルドレッサーたちは ”田舎者の靴” と揶揄していました。
当時のイタリア人の足元はチャーチが定番で、一部の靴に詳しいイタリア人がエドワードグリーンを好んで履いていたというのが正しい見解だと思うのですが、この本自体がイタリアのクラシック=イタリアのブランドを紹介するのが趣旨なので、そんなことは書けないですよね(笑)。
イタリア人の英国好きは当時からかなり有名な話で、90年代はバブアーやラベンハム、バーバリーのバルカラーやトレンチ、バランタインやウィリアムロッキーのニット、ブリッグの傘、レイノルズケントの手袋など、上げればきりがないほど多くの英国ブランドが現地のショップで扱われていました。
そして、車もレンジローバーやジャガーが人気で、有名なイタリアブランドのオーナーたちも当時は英国車に乗る人が多かったです。
その流れは2000年代も続くのですが、当時の日本はイタリアンクラシックの大ブームなので、とにかくイタリアブランドがなんでもいいという流れでは、イタリア人の英国好きを主張しても多勢に無勢でした(苦笑)。
鴨志田さんと当時私の上司だった松山さん、リデアの田島さんの対談ページも当時の日本のイタリアンクラシックがわかる濃い内容です。
松山さんが冒頭から 「クラシコ イタリアと言うのはクラシコ イタリア協会の事で、イタリアのクラシックをクラシコ イタリアと言うのは適当ではない」と突っ込んでいます(笑)。
忖度が全くなくストレートなのが松山さんっぽいです(笑)。
鴨志田さんの写真がタバコを持っていますが、これも今は完全にNGですね(笑)。
田島さんがデペトリロの前身ともいえるアントニオ ラ ピニョッラの話にも触れているのがとても興味深いです。
この対談は当時を知る人にとっても知らない人にとっても面白い内容だと思います。
そして、この本が自分にとって永久保存版なのは、この特集ページの内容の濃さにあります。
イタリアの高級既製服の誕生秘話を米国や英国の当時の状況と絡め、さらにバルベラ、キートン、アットリーニ、イザイアの関りが詳細に書かれています。
自分もイタリアの既製服に関する文献を色々読んできましたが、遠山周平さんが書いたこの特集は最も素晴らしい文献だと思っています。
おそらく、いま翻訳してイタリアの業界人たちに読ませても、ほとんどの人が唸る濃い内容だと思います。
これを読むだけでも、この本を所有している意味があると言えます。
80年代後半から出てきた英国調の流れも90年代に入ると大きな流れとなり、90年代中頃からは並行してイタリアのクラシックの流れが出てきました。
その流れは並行していくと思いきや、90年代後半になるとイタリアンクラシックの流れが加速していきます。
その背景には英国のブランドやファクトリーの身売りや閉鎖などによる衰退と、優れた製品を英国や米国よりも小ロットかつ安価で製造できるイタリアのブランドやファクトリーに注目が集まったという二つの要因があると思います。
私が初めて出張でイタリアに行った89年にはすでにイタリアンクラシックは現地で確立されていて、日本人がそれを知らない(注目しない)だけという状況でした。
今もあるミラノのドリアー二やティンカーティ、フィレンツェのエレディ キャリーニなど、当時から有名なクラシックのセレクトショップに日本の若造が大人数で入って行き、顰蹙をかったのを今でも覚えています。
そういった意味では、日本でイタリアのクラシックスタイルが一般的に知られるようになって、まだ20年くらいしか経っていないことになります。
この本は、そんなイタリアのクラシックスタイルの波が押し寄せ始めた1999年のもので、いまのイタリアのクラシックスタイルのベースとなったものが書かれていると言えます。
21年前と言えば私は34歳、いま30代中くらいのイタリアのブランドの服を着ている人達はまだ中学生だったということです。
いまその世代の人達がなにげなく着ているイタリアの服が日本に入ってきて広まる過程おいて、知っておかなければならないことがたくさんありました。
知らなくてもいいこともありますが、知ることによって色々な意味でいま着ている服のことを理解できることも多いと思います。
ネットでは出てこない情報も多いこの本。
古本屋さんで数百円から買えます。
時代は一昔前のモノですが、当時を知らない世代の人たちにも読んでいただきたい本です。
正しくは ”STILE CLASSICO ITALIANO 読本” かな・・・(笑)
2020春夏トレンド解説動画Vol.5アップしました。
今回はパンツ編です。
是非ご覧ください。
https://www.beams.co.jp/feature/200123/
ISAIA
先日縁あって10年ぶりにISAIAのコレクションを見てきました。
私が最後にバイイングしたのが2010年だったようで、その後もPITTIで毎シーズンブースをチェックしていたのですが、5~6年くらい前にPITTIの出展をやめてから全く縁がなくなっていました。
今回ISAIA JAPANさんのご厚意で久しぶりにコレクションを見せていただいたので、今のISAIAのコレクションを見た感想をレポートさせていただきます。
ショールームのエントランスのディスプレイは、グレーのハウンドトゥースにブラウンのウィンドウペンのスーツ。
柄のスーツに柄のシャツを合わせ、ネクタイも柄と言う、パターン オン パターンのコーディネート。
少し派手な感じのスーツコーディネートは以前と変わっていませんね。
昨今これだけカラフルで派手なチェックのジャケットのバリエーションがあるのはISAIAだけでしょう。
他のブランドで見られるビンテージ調の生地はジャケット、スーツともにほとんどありません。
英国調に見える生地も触ると滑らかで柔らかい生地ばかり。
このあたりは ”柄は英国調でも軽く柔らかく” という昨今の生地の傾向もありますが、ISAIAのコレクションはその傾向が特に強いと言えます。
襟裏のカラークロスはシーズンテーマを表現したプリント生地が使われています。
2020年秋冬のテーマがSOTTERRANEA(ソッテッラネア)と言われるナポリの地下都市なので、そこからインスピレーションを受けた柄の生地を襟裏に使っています。
ここ数年は毎シーズンのテーマに沿ったカラークロスの生地を作って使っているそうです。
ISAIAは以前からカラフルなカラークロスを使っていたので、特に違和感はありません。
ジャケットやスーツの派手さに比べると意外にシックな色柄のネクタイ コレクション。
日本以外の国ではトータルでバイイングするショップも多いので、ネクタイもそのブランドのジャケットやスーツとコーディネートすることを前提にコレクションを組むのが当たり前なんです。
なのでバランス的にはこうなるのが正しいですね。
因みに、一時期ERICCO FORMICOLAがネクタイのディレクションをしていたようですが、今は違うということです。
シャツもネクタイと同様に意外とシックなバリエーション。
それでもこんなストライプが結構ありますから、ISAIAらしいと言えますね。
私がISAIAをバイイングしていた頃はシャツもバイイングしていました。
当時は専業ブランドのアイテムしかバイイングしていなかったので、ジャケットやスーツのブランドのシャツをバイイングするのは珍しかったのですが、ISAIAがその頃あるシャツファクトリーに資本参加してコレクションを始めたというタイミングで、クオリティーに対して値段も手ごろだったこともあり2年間くらいオーダーしていました。
この業界に長くバイイングの仕事をしていると色々なエピソードがあるものです。
それをしっかり覚えている自分にも驚きますが・・・
襟型は画像のセミワイドが現在の定番だそうです。
イタリアのブランドの中では派手なイメージのISAIAでも今やセミワイドが定番です。
水平やそれ以上に開くカッタウェイは、イタリアでももはや古臭いものになっていると何度もお伝えしてきましたが、私が適当なことを言っていないということは、ここでもご理解いただけると思います。
ISAIAの中で最も軽くて柔らかい仕立てのジャケットSAILOR(セーラー)
私がバイイングしていた頃もこのモデルをバイイングしていました。
当時は3ボタンの段返りでしたが、今は2ボタンが主流だそうです。
このピンクのジャケットもかなり派手です。
スーツで一番人気があるのがGREGORY(グレゴリー)
このモデルも当時バイイングしていました。
ISAIAの新しいモデルとして当時ファッション誌でも多く取り上げられていたモデルです。
当時の担当で今は某イタリアブランドの日本法人の社長であるSさんから ”これしかない!” くらいの勢いで猛プッシュされたのを覚えています(笑)。
やはり当時は3ボタンの段返りをオーダーしていましたが、いまは2ボタンが主流だそうです。
確かに、いま3ボタンのグレゴリーを着るとかなりボタン位置が高く感じるので、2ボタンの方がバランスがいいです。
今のISAIAにとっては珍しいこんなモデルもあります。
幅広の襟で大きくラウンドしたフロントカット、前ダーツも裾まで入っているクラシックなナポリのサルトリア風のモデルです。
個人的にはこのモデルが一番刺さるかも・・・
ゴージラインが高いのでもう少し傾斜をつけたらもっと良くなると、余計なお世話的なアドバイスをしてしまいました(笑)。
どうしても気になるところがあると、バイイングするしないに関わらずアドバイスしてしまうんです。
それだけ洋服に対して真剣だということでお許しください。
このMUSA(ムーサ)というモデル、日本ではあまり人気がなく、ほとんど売られていないそうです。
いまのISAIAのイメージではないですが、自分にとってはBEAMSがISAIAを初めてバイイングした90年代初め頃のISAIAのイメージなので、とても懐かしい感じがします。
コートはジャケットのセーラーと同じく最も柔らかく軽い仕立てのPORTOFINO(ポルトフィーノ)というモデルが人気だそうです。
もともとニットの上に羽織るようなイメージで作られたモデルなので、ジャケットやスーツの上に着るにはワンサイズアップで着た方が良さそうです。
今の自分の着方だと2サイズアップでもいいかなと言う感じです。
着用感は確かに軽いですね。
生地も柔らかくて軽めの生地が多いので、ニットの上にさらっと羽織るといい雰囲気かもしれません。
久しぶりに見るISAIAは以前と変わらずイタリア的な派手さと艶のあるコレクションでした。
昨今の流れで多くのブランドがクラシック回帰の流れに向かうなか、ISAIAは他のブランドと違う独自性を際立たせたブランドイメージを確立しているという印象を受けました。
90年代はクラシコイタリア協会のメンバーで、KITONと並びナポリを代表するブランドと言うイメージが強かったISAIAも、いまや ”インターナショナル クラシック” という雰囲気を感じさせるブランドになりました。
実はBEAMSが90年代にISAIAをバイイングするようになったきっかけは、ナポリのブランドだからと言うことではなかったのです。
きっかけは当時パリでHERMESと並び称されていたARNYS(アルニス)
画像は全て90年代前半頃のアルニスです。
ここのスーツを作っているのがナポリのISAIAだということを知り、インターナショナルギャラリーで上の画像にもあるフィッシュマウス(セミピークド)のアルニス風のジャケットやスーツを別注でオーダーしたのが始まりなのです。
因みに、当時のアルニスのパンツを作っていたのが、いまBEAMSで展開しているBERNARD ZINS(ベルナール ザンス)。
そして、アルニスと双璧だったHERMESのジャケットやスーツを作っていたのがベルベストでした。
このように、80年代や90年代前半はイタリアのクラシックがメジャーではなかったので、その存在を知るきっかけとなったのがARNYSやHERMESなどのフランスブランドだったのです。
イタリアのクラシックが日本で広まり始めたのは90年代中頃からで、メジャーになったのは90年代後半くらいから。
そう考えると、日本でイタリアのクラシックがメジャーになってからまだ20数年くらいしか経っていないのです。
来月行われる社内の勉強会のテーマが ”FRENCH IVY”
それを語るうえでアルニスの存在は欠かせないので、このタイミングでISAIAのコレクションを見られたのもなにかの縁かなと思っています。
ISAIA JAPANさん、ありがとうございました。
良い勉強になりました。
来月の勉強会、アルニスつながりでBEAMSとISAIAの歴史をしっかり説明したいと思います。
随分会っていませんが、GIANLUCA ISAIAにもよろしくお伝えください。
ISAIA
2020春夏 トレンド解説動画Vol.4 アップしました。
今回はジャケット編です。
是非ご覧ください。
ミラノ ショールーム 続報
なかなか更新できずすみません。
現在2020秋冬のメインコレクションの展示会真っただ中で、毎日空いた時間に少しづつ書き足すくらいしかできず、なかなか更新できない状況です。
メインコレクションのオーダーは順調ですが、中にはなかなか厳しい内容のブランドもあります。
ここにきて、色々な意味でサプライヤーとディストリビューターの企画力や提案力が問われる時代になったなと言うのが実感です。
日本の展示会も始まっていますが、今回はミラノ ショールーム 続報でHERNOのコレクションについてです。
2020春夏から継続した流れであるニュートラルカラーのダウンもしっかり展開していました。
春夏に続き秋冬もニュートラルカラーの流れがあるので、今回の出張でもニュートラルカラーのアウターは結構見られました。
LEONの2月号でも ”冬の白” という特集でニュートラルカラーのアイテムがたくさん掲載されているので、気になる方はチェックしてみてください。
庶民の私は汚れが気になりますが、こんなダウンをさらっと着れたら本当に素敵ですね。
上品なライトグレーのバリエーション。
ライトグレーのダウンは素材が悪いと安っぽく見えてしまうのですが、さすがにHERNOはラグジュアリー感のある色だしです。
あまり色を使わず、ホワイトパンツとナチュラルトーンのニットと合わせるとリッチ感のあるコーディネートになります。
ちょっとブルネロ クチネリ風でしょうか・・・
ベージュの色だしも素晴らしい。
トレンドカラーのイエローを少しさしたようトーンのベージュは他のブランドではあまり見られない色だしです。
HERNOのオリジナリティーが感じられます。
今回のPITTIでも多く見られた赤系のバリエーションも展開していました。
色としてはこのあたりが一番難しいでしょうか。
アウターに使うには中々難しい色だけど、流れのカラーだからしっかり入れておこうという感じでしょうか。
今回のPITTIではかなり赤系のカラーが打ち出されていましたが、どちらかと言えばニットやアクセサリーが多かったので、アウターで赤を使うのはなかなか難易度が高い印象です。
昨今の流れを考えれば、中綿系のアウターでもミリタリーグリーンはハズせません。
こんな素材を切り替えたミリタリーテイストのモデルもありました。
素材で2トーンにするあたりがHERNOのデザイン力ですね。
これ以外でもニットとの切り替えやダッフルコートなど、モデルのバリエーションもかなり多く展開していました。
定番のネイビーもしっかり展開しています。
イタリアはネイビーが定番と思われている方も多いと思いますが、ダウンに限ってはブラックが定番で、PITTIの会場でも街中でも本当にブラックのダウンを着た人が多いんです。
なので、これだけネイビーのバリエーションが多いとネイビー好きの私にとっては安心感があります。
自分もブラックのダウンは30代の頃に一度着たきりですから、今でもついついネイビーに目が行ってしまいます。
今回は時間もあったので、とにかく試着しまくりました(笑)。
その中からBEAMSのオーダーには全く関係ない、あくまでも個人的に気になったモデルをご紹介します。
少しドロップショルダーでゆったりしたシルエットのショップコート風のコート。
このコートは表地はウールで裏地に中綿が入っていますが、ダウンではなくサーモアという保温性のある人工ダウンを使っています。
因みにサーモアはダウンの1.8倍温かいと言われているので、自分的には中綿はダウンでなくても全く問題ありません。
最近はこんなゆとりがあって軽く羽織れるコートが気分なので、見た目は普通のウールのコートで実はダウン並みに温かいというのは、普段ジャケットやスーツの上に着ることもできるのでいいですね。
肩のラインが綺麗なラグランのバルカラーコート。
このコート、中綿どころか裏地が背抜きの普通のウールのバルカラーコートです。
”だったらHERNOじゃなくてもいいでしょ” と言う方の多いと思いますが、このコート普通のコートブランドのモノより良くできているんです。
肩のラインや襟元が上がった感じやシルエットと着丈のバランスがとてもいいんです。
ブラウンの大柄グレンプレイドと言うのも 自分的にはかなりささりました。
来秋冬はバルカラーの流れが来ていて、今回の出張でもかなりバルカラーを見ましたが、色々見た中でもこのコーとはなかなか良くできたコートでした。
裏ボア付きのシンプルなミドル丈のパーカー。
裏ボアが付いているので中綿は入っていないのかと思いきや、インテックと言う撥水性と保温性を兼ね備えた人工ダウンが入っています。
来秋冬はフード付きのアウターの流れが来ているのですが、意外とこのくらいシンプルなモノは他のブランドには少ないので、カジュアルなダウンをあまり着ない自分にとってはささるモデルです。
コート系はゆったりして着丈が長いものが多いので、スポーティーなアウターはこのくらいの着丈の方がすっきりしていていいですね。
HERNOの定番でもあるモッズパーカー風のダウン。
BEAMSでも毎年何かしら展開しているモデルです。
自分がHERNOのコレクションの中で純粋なダウンを購入するとすればこのモデルですね。
モッズパーカー風のモデルは数型ありますが、自分的にはシルエットと着丈の長さを考えると、このモデルが一番いいですね。
少し細めなのでワンサイズアップで着ると丁度いいかなと言う感じです。
私はサイズ表記にはこだわらないので、実際に着てみて自分がしっくりくるサイズのものをいつも購入しています。
袖がダウンで身頃がムートンのパーカー。
HERNOは秋冬は毎シーズンムートンを展開していますが、ダウンとのコンビネーションは初めてでしょうか。
これは高級感があっていいですね。
当然ちょっとお高いですが・・・
ひとつ気になったのがフードにワイヤーが入っていること。
フードの形を自由に変えられる仕様なのですが、逆にっフードの形が決まらず落ち着かない感じなんです。
最近この仕様チラホラ見ますが、気になるのは自分だけでしょうか。
フロントと裾に入っているパイピングもいいですね。
大人っぽくてリッチな雰囲気が感じられます。
ムートンは彼らの専業ではないですが、こういう細かいところがしっかりできているのもHERNOのいいところです。
モッズパーカー以外は ”HERNOでこんなモデルあるの?” と思われる方がほとんどだと思います。
HERNOはモデル数がとにかく多く、日本に入ってこないモデルもたくさんあるんです。
というか、全モデルを展開しているショップはどこにもないでしょう。
今回も300型以上のサンプルがあったので、すべてを試着するのは無理でしたが、オーダーのピックアップが終わった後に時間があったので、気になるモデルを全て試着して、あくまでもバイイングとは関係ない個人的に気になったモデルをご紹介しました。
上段のコート2型は特に従来のHERNOのイメージではないので、日本で展開するショップはほとんどないでしょうね。
モッズパーカーはBEAMSでも毎シーズンなにかしら展開するので、来シーズン購入しようかなと思っています。
自分は目立つマークの入ったダウンが苦手なので、HERNOのような悪目立ちしないオトナっぽいラグジュアリー感のあるダウンが好みなんです。
有名ブランドでありながらリアリティーのあるプライス設定もこのブランドのいいところです。
サンプル着て笑顔でカラーカード見ている私・・・
いいモノ見て盛り上がる。
こういうことが大事なんです。
だからサプライヤーやディストリビューターの企画力や提案力は大事。
モノを見て気分の上がらない展示会に笑顔はありません。
笑顔のないバイイングにお客様の笑顔はいただけませんから・・・
今回はV-ZONEについてです。
是非ご覧ください。
PITTI UOMO 97 続報.2
国内の展示会が始まりました。
これから2月末までほぼ毎日展示会まわり。
内容が良くて気分が上がるブランドもあれば、全くダメで意気消沈して終わる場合もあります。
昨年11月のプレコレクションから始まり、イタリア出張でメインコレクションをチェックして、すでに ”ここはダメそう・・・” というブランドも結構あるものなんです。
そう思いながらもBEAMSは全てのブランドをしっかりチェックするのですが、かなりの確率で ”やっぱりダメでした” となるのが実情です。(苦笑)
今まで内容が良かったブランドが急にダメになるケースも最近は多いので、やはりコレクションの内容を今まで以上にしっかりチェックしてオーダーしていかなくてはならないと思っています。
今回は前回に続きPITTI UOMOの続報で、ここ数年躍進が続くDRAKE'Sのコレクションについてです。
ブースの大きさが6倍?くらいになったDRAKE'S。
今までのブースはネクタイを主力にしていた頃のブースだったので、トータルで展開する今となっては手狭なのは当たり前でしたが、ブースの広さがいきなり数倍になるというケースは私のバイヤー人生の中でも見たことがありません。
それだけドレイクスの勢いを感じます。
ディスプレイはPITTI出店ブランドの中では、どこにも似たものが無いドレイクス独自の世界観です。
ドレスとスポーツやミリタリー、アウトドアをミックスするのがドレイクスらしいテイストです。
ネルシャツはアメリカンヴィンテージ風のダブルポケット。
自分にとっては80年代のアメカジ風でとても懐かしい感じがします。
ダブルポケットのシャツは来秋冬の流れですが、ここまでアメリカンテイストのモノはイタリアブランドには見られません。
これを英国の工場で作るというのも、英国のファクトリー事情を知る自分にとっては感心するばかりです。
綺麗な色のシャギードッグのクルーネックにネルシャツ、ピーコートという、私のようなプレッピー世代には懐かしいコーディネート。
ニットの色目やボーダーの柄も、70年代や80年代のMEN'S CLUBで見たようなアイビーやプレッピー感のあるバリエーションです。
個人的にささったのがこのコート。
チェンジポケットの付いたラグランスリーブのバルカラーコート。
これはかなりいいですね。
白黒のグレンプレイドとヘリンボーンという、モノトーン柄のコートにインナーはカラフルなブロックパターンのニットやチェックのインナーダウン?を合わせ、モノトーン×カラーのコーディネートにしています。
このコート個人的にかなりささったのですが、少し問題が・・・
画像を見てもわかるのですが、フラップポケットがかなりハネて浮き上がっています。
これは直した方がいいと営業の責任者にアドバイスしたのですが、なんとなく空返事・・・
すごくいいコートなので、きっちり直してくれることを願いたいですね。
アーガイル柄が彼らにとっては来秋冬重要なパターンと言っていました。
自分も今回のPITTIはアーガイル柄が出てくるかなと予想していたのですが、思ったほど多くなかったなと言うのが正直なところです。
フェアアイル→クリケットとくればアーガイルが来るだろなというのは、トラディショナルなテイストをわかる人間にとっては容易に予想できることなので、彼らの打ち出しには共感するものがあります。
コーデュロイのジャケットにアーガイルというコーディネートも、アイビー世代の私にとってはとても懐かしく感じます。
タイドアップのスーツはコーデュロイ。
パッチ&フラップのポケット、センターベントという、アメリカンモデルのスーツです。
オックスフォードのストライプBDにストライプのタイというアイビー的なコーディネート。
最後のリアルアイビー世代の私にとってはささりますが、このテイストはBEAMSではBEAMS PLUSのテイストなので、少し見慣れた感じもします。
下段のベージュのストライプのBDがいい雰囲気ですね。
個人的にも着たい感じです。
オーダーの時チェックしてみます。
ネクタイはご覧の通りクローゼットのネクタイのようなディスプレイ。
昔からドレイクスを知る人の中には、”ネクタイがこんなに少なくなっていいの?” という声も聞かれそうですが、自分は今やPITTIはオーダーの場ではなく、プレゼンテーションの場なので、これでいいかなと思います。
ネクタイは彼らにとって重要なビジネスであるのは今も変わらないので、ショールームでしっかりフルコレクションを見てオーダーすればいいだけの話だと思います。
靴はドレイクスのトレードマークとも言えるデザートブーツとラッセルモカシン風のブーツ。
”ドレイクスの服に合う靴はこれ” と言うメッセージでもあります。
上のコーデュロイのスーツにデザートブーツを合わせてもいいですね。
デザートブーツはフレンチアイビー的な靴でもあるので、個人的にも今また履きたい靴です。
英国製の頃のクラークスのような細身のラストのデザートブーツが欲しいなと思っています。
アイビー、プレッピーテイスト満載のコレクションですが、中には?というアイテムもあります。
コレクションの中のほんの一部ですが、この辺は我々日本人にとってはちょっとキビしいですね・・・(苦笑)
日本以外の国ではニーズがあるのかもしれませんが・・・
2020年春夏はアイビーやプレッピーの流れがあり、その流れは2020年秋冬も継続しています。
イタリアのブランドはそのテイストを取り入れてはいるものの、ドレイクスのようなわかりやすく雰囲気が伝わるブランドはほとんどないのが実情です。
ドレイクスのクリエイティブ ディレクターのMICHAEL HILL(マイケル ヒル)は、父親がターンブル&アッサーのネクタイデザイナーだったCHAELES HILL(チャールズ ヒル)。
そして、MICHAEL DRAKE(マイケル ドレイク)の下でネクタイやスカーフのデザインを学んだ、言わば英国ネクタイ業界のサラブレッドと言える存在です。
そんな彼が英国人でありながら、これだけアメリカンなテイストのブランドをディレクションできるのも、彼が英国やイタリアだけでなく、フランスやアメリカや日本のマーケットもしっかり理解してディレクションしているからなのだと思います。
それは、先代のマイケル ドレイク自身が、英国人でありながら英国ではなくイタリアやフランス、米国、日本をメインマーケットとしてブランドを展開し、世界有数のネクタイブランドとなったというブランドヒストリーを継承していると言えます。
20年以上前であれば、英国=サビルロー、ジャーミンストリートという感じで、他国のモノなど寄せ付けない感じもありましたが、英国も世代が変わりファッションも随分グローバリズムが浸透しました。
今やロンドンで人気のセレクトショップには英国ブランドはほとんどなく、イタリアや米国、日本のブランドが大半をしめています。
それだけ時代は変わったと言うことですね。
古きよきものには敬意を払いつつ、新しいモノは積極的に取り入れる。
英国の新しい世代の柔軟な感性が、ドレイクスのコレクションには感じることができます。
そんなPITTIでも異彩?を放っていたドレイクスのロンドンのショップが、サビルローに移転オープンしました。
場所は9番地というど真ん中。
9番番地と言うと、隣がDEGE & SKINNER、その隣があのHUNTSMAN & SON というサビルローの中でも一等地と言える場所です。
店内も奥行きがあって広々しています。
現地に行かれた方は是非行ってみてください。
DRAKE'S
https://www.drakes.com/editorial/our-savile-row-flagship-is-open/
2020年春夏トレンド解説動画 VOL.2 アップしました。
今回はスーツ編です。
是非ご覧ください。
PITTI UOMO 97 続報
先週の土曜日に帰国しました。
今回はパリのストライキ以外はトラブルもなく、移動が多かったので大変でしたが、無事に終わったと思いきや日曜日の夜から高熱が出て、何年かぶりに会社を病欠しました。
因みに、インフルエンザではありませんでしたが、血液検査の結果何かの菌に感染しているとのこと・・・
抗生剤を飲んで一日で何とか平熱に戻ったので重い体を引きずって出社すると、西口も芹沢もマスクをしていて体調不良・・・
オッサンの私がハードスケジュールについていけていなかっただけと思いきや、若い二人も実は相当きつかったようです。
まあ、3人とも現地で具合が悪くならなくて良かったとポジティブに考えた方がいいですね。
今回は現地でアップできなかったPITTI UOMOの続報です。
FINAMOREは綺麗なチェックと無地のカラーシャツが目を引きました。
今回のPITTIは意外とチェックのシャツが多かったと言う印象です。
そして、無地のカラーシャツも同じくらい多く見られました。
下段のダブルポケットのシャツはコーデュロイ。
ダブルポケットの流れがあるので気持ちはわかるのですが、個人的にはフィナモレのイメージじゃないなと言うのが正直なところ。
いくら流れとは言っても、ナポリのハンドメイドのシャツ屋がここに手を出さなくてもいいのになと個人的には思います。
ジャケットのディスプレイはカラーシャツにタイドアップ。
?と思う人も多いと思いますが、実はこんな感じのコーディネートは今回のPITTIではチラホラ見受けられました。
ORIANはブースの壁面をモノトーンでまとめていたので、この流れでいくのかなと思いきや、いつも通りのプリントおしでした。
日本では秋冬のプリントシャツは難しいですが、これだけおしているということは、日本以外の国でかなり需要があるということでしょうね。
オリアンも無地のカラーシャツを展開していました。
フィナモレに比べると発色が暗いですが、これもオリアンっぽい色だしですね。
最近イタリアのシャツブランドでも増えている機能素材のシャツをオリアンでも展開していました。
イージーケア、ストレッチ、防汚、防水と色々ありますが、好き嫌いは別としてこういうシャツがイタリアブランドでも増えているのは間違いない傾向です。
機能素材のニーズが増えているのは理解しているので否定する気は全くないのですが、いろいろなブランドで同じような実演されてアピールされるとなんとなく気持ちがなえてしまう自分がいます。(苦笑)
「こういうのもあるよ」 くらいでアピールされるのがいいですね。(笑)
CIRCOLOのブースもモノトーンとカラーの打ち出し。
モノトーンは白×黒ではなく、グレー×アイボリー。
来秋冬はこんな柔らかなトーンのモノトーンも多くなりそうです。
カラーはこんな感じです。
今回のPITTIで特に目についたベリー系のトーンはやはりチルコロでもやっています。
その他の色もグリーン、イエロー、オレンジと、ほぼトレンドカラーを網羅しています。
セットアップの提案が多かったのも今回の特徴です。
こんなビンテージ調の柄もありました。
プリントでビンテージ調の柄を表現するというのは新しいですが、ジャージにビンテージ柄はなくてもいいかなというのが個人的な印象。
でも色々なことにチャレンジするのはいいことですね。
今回もスタンドがいつも賑わっていたので、チルコロの勢いは衰えずという印象です。
FRANCO BASSIはジャガードの打ち出し。
ここ数年続いたビンテージ調のプリント柄をジャガードに置き換えた打ち出しです。
ジャガードになると重厚感が増すのでブリティッシュな印象が強くなります。
イタリアのブランドでこのような提案はほとんどなかったので非常に新鮮に感じます。
90年代の英国調ブームから2000年代に続くイタリアンクラシックブームの流れの時はジャガードタイの人気が圧倒的だったので、プリントタイがこれだけ増えると次はジャガードタイが来るのは容易に予想できますが、まさかフランコバッシがここまでやってくるとは思いませんでした。
個人的には下の画像のイエローを差し色に使ったストライプが刺さりました。
ブルー×イエロー好きな配色なんです。
ひとつだけ気になった点は、パネル柄のバリエーションが多すぎること。
特にパネル柄の雰囲気に合わない今っぽい色柄のものが結構あったのが個人的には?でした。
なんでもいいと言わないのが私のポリシーなので、いつも通り正直な感想を隠さずレポートしました。
代理店の方々には怒られそうですが、これも私の役割。
来週から国内の展示会が始まりますが、いつも以上に厳しめに行こうと思います。(笑)
お客様に喜んでいただけなくては意味がありませんから・・・
お待たせしました。
2020年春夏トレンド解説動画アップしました。
第一回目はスプリングアウターについてです。
是非ご覧ください。
https://www.beams.co.jp/feature/200123/



























































































































































































