クラシコ イタリア 読本 | ELEMENTS OF STYLE

クラシコ イタリア 読本

 

 

フレンチ アイビーについての社内勉強会の資料を家で探していたら、こんな本が出てきました。

 

 

 

 

1999年に発行されたESQUIRE別冊の ”クラシコ イタリア 読本”

 

 

クラシコ イタリアってなに? と言う方も多いと思いますが、90年代後半にイタリアのクラシックのブームが来た時に、そのスタイルを当時のPITTI UOMOの代名詞であったCLASSICO ITARIA 協会にちなんで、日本ではイタリアのクラシックのことをクラシコ イタリアと呼んでいました。

 

 

ちなみに、このクラシコ イタリアという言葉はイタリアでは通用せず、クラシコ イタリア=クラシコ イタリア協会の事で、イタリアの取引先にイタリアのクラシックをクラシコ イタリアと言うと、 ”それは違う” とよく怒られたものです(苦笑)。

 

 

イタリアのクラシックが日本で広く認知されるようになったのが1990年代後半から2000年代前半だったので、この当時はそんな細かいことよりは、イタリアのクラシックと言うものがどういうものなのかを紹介する方が大事だったのは言うまでもありません。

 

 

この本をあらためて読み返してみると、いまも続く日本のイタリアンクラシックのブームの創成期に発行された本だけあって、当時を知らない人が読んでもなかなか興味深い内容が満載だと思います。

 

 

ということで、今日はこのクラシコ イタリア 読本の内容について紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時イタリアのクラシックを語るうえでこの方は重要な存在です。

 

 

 

 

 

 

ナポリのLONDON HOUSEのオーナー、MARIANO RUBINACCI(マリアーノ ルビナッチ)

 

 

いまは彼の息子のLUCA RUBINACCI(ルカ ルビナッチ)がピッティ スナップの常連でもあり一般的に知られた存在ですが、この頃はマリアーノ ルビナッチがイタリアのクラシックのアイコン的な存在として日本のメディアでも度々取り上げられていました。

 

 

ロンドン ハウスは当時からナポリに行ったら必ずリサーチしなければならない名店で、私も何回かリサーチに訪れました。

 

 

いまではイタリアのジャケットやスーツの特徴的なディティールである、バルカポケットやマ二カ カミーチャ、袖ボタンの重ね付けもこのロンドンハウスから生まれたものです。

 

 

8ページにわたりロンドンハウスとマリアーノ氏のライフスタイルが紹介されていて、いま読んでもとても興味深い内容です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワードローブの公式というページではスーツやパンツやシャツなどの作りや選び方などについて書かれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリアのスーツやパンツやシャツ、ネクタイはどんな作りでどんな特徴があるのか細かく解説されています。

 

 

当時の日本は英国クラシックからイタリアンクラシックの移行期でもあったので、自分もイタリアの服作りについてかなり勉強していた時期だったこともあり、とても懐かしく感じます。

 

 

当時ネクタイの結び方で一世を風靡したダブルノットの解説も懐かしい。

 

 

昨今SNSで質問が多いパンツの裾幅やダブルの幅の話もすでに触れられているのも面白いですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビナッチ氏以外にも当時のイタリアを代表するキーパーソンが紹介されています。

 

 

ミラノのA.CARACENIのマリオ カラチェニ

 

 

 

 

当時これだけ色をつかった着こなしのイタリア人は少なかったので、マリオ氏の着こなしは注目していました。

 

 

自分の中では今でもウェルドレッサーのひとりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナポリのLONDON HOUSEのトゥリオ アットリーニ

 

 

 

 

チェザレ アットリーニのお兄さんで、長くロンドンハウスのサルトをつとめていました。

 

 

日本人でもロンドンハウスでトゥリオ氏に仕立ててもらった人は多いと思います。

 

 

文中にも書かれていますが、当時からイタリアのテーラード業界においてアットリーニ ファミリーの存在は非常に大きいものでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナポリのアンナ マトッツォ

 

 

 

 

当時イタリアのシャツの仕立て屋としてはマトッツォが日本で一番有名だったと思います。

 

 

アンナ マトッツォを最初に知ったのは、当時アットリーニの3兄弟(ヴィンチェンツォ、マッシミリアーノ、ジョゼッペ)がオーダーしているシャツ屋と言うふれこみでした。

 

 

この件について現在はSTILE LATINOのヴィンチェンツォ アットリーニに聞いたところ、確かにこの当時アンナ マトッツォで自分たちのシャツをオーダーしていたそうです。

 


自分も彼女とは数年仕事をしましたが、なかなか大変でした・・・(苦笑)


 

 

 

 

 

 

 

ローマのGATTOのガエターノ バストラ

 

 

 

 

当時ローマのガットと言えば、イタリアで最も有名なビスポーク シューメーカーでした。

 

 

ジョージクレバリーのジョージ グラスゴー氏にガットについて聞いたことがありますが、彼も絶賛していたほどです。

 

 

2006年にシルバノ ラッタンジに買収され、今は日本でもレディーメイドのガットが売られています。

 

 

BEAMSでも2000年前半に仮縫いなしのオーダー会の話があるナポリの知人からありましたが、いま思うとちょっと怪しい話でした・・・(苦笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Vゾーン攻略法の特集では、様々なシャツとネクタイのコーディネートが紹介されています。

 

 

 

 

 

 

当時はネクタイの色柄がいまと比べるとシックで落ち着いたものが主流でした。

 

 

シャツの襟型もセミワイドが主流でレギュラーカラーが少し出てきていた時代です。

 

 

今の流れと似ていますね。

 

 

ゴージの角度とシャツの襟の角度を近いものにするというセオリーが自然に認知されていた時代です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

靴のページでは、私が一番嫌いだったノルベジェーゼが・・・

 

 

 

 

当時確かに一部のイタリア人の間では流行っていましたが、正直日本人が思うほど流行っていなかったというのが実情です。

 

 

それどころか、当時のイタリアのウェルドレッサーたちは ”田舎者の靴” と揶揄していました。

 

 

当時のイタリア人の足元はチャーチが定番で、一部の靴に詳しいイタリア人がエドワードグリーンを好んで履いていたというのが正しい見解だと思うのですが、この本自体がイタリアのクラシック=イタリアのブランドを紹介するのが趣旨なので、そんなことは書けないですよね(笑)。

 

 

イタリア人の英国好きは当時からかなり有名な話で、90年代はバブアーやラベンハム、バーバリーのバルカラーやトレンチ、バランタインやウィリアムロッキーのニット、ブリッグの傘、レイノルズケントの手袋など、上げればきりがないほど多くの英国ブランドが現地のショップで扱われていました。

 

 

そして、車もレンジローバーやジャガーが人気で、有名なイタリアブランドのオーナーたちも当時は英国車に乗る人が多かったです。

 

 

その流れは2000年代も続くのですが、当時の日本はイタリアンクラシックの大ブームなので、とにかくイタリアブランドがなんでもいいという流れでは、イタリア人の英国好きを主張しても多勢に無勢でした(苦笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴨志田さんと当時私の上司だった松山さん、リデアの田島さんの対談ページも当時の日本のイタリアンクラシックがわかる濃い内容です。

 

 

 

 

 

 

 

 

松山さんが冒頭から 「クラシコ イタリアと言うのはクラシコ イタリア協会の事で、イタリアのクラシックをクラシコ イタリアと言うのは適当ではない」と突っ込んでいます(笑)。


忖度が全くなくストレートなのが松山さんっぽいです(笑)。

 

 

鴨志田さんの写真がタバコを持っていますが、これも今は完全にNGですね(笑)。

 

 

田島さんがデペトリロの前身ともいえるアントニオ ラ ピニョッラの話にも触れているのがとても興味深いです。

 

 

この対談は当時を知る人にとっても知らない人にとっても面白い内容だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この本が自分にとって永久保存版なのは、この特集ページの内容の濃さにあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリアの高級既製服の誕生秘話を米国や英国の当時の状況と絡め、さらにバルベラ、キートン、アットリーニ、イザイアの関りが詳細に書かれています。

 

 

自分もイタリアの既製服に関する文献を色々読んできましたが、遠山周平さんが書いたこの特集は最も素晴らしい文献だと思っています。

 

 

おそらく、いま翻訳してイタリアの業界人たちに読ませても、ほとんどの人が唸る濃い内容だと思います。

 

 

これを読むだけでも、この本を所有している意味があると言えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

80年代後半から出てきた英国調の流れも90年代に入ると大きな流れとなり、90年代中頃からは並行してイタリアのクラシックの流れが出てきました。

 


その流れは並行していくと思いきや、90年代後半になるとイタリアンクラシックの流れが加速していきます。

 

 

その背景には英国のブランドやファクトリーの身売りや閉鎖などによる衰退と、優れた製品を英国や米国よりも小ロットかつ安価で製造できるイタリアのブランドやファクトリーに注目が集まったという二つの要因があると思います。

 

 

私が初めて出張でイタリアに行った89年にはすでにイタリアンクラシックは現地で確立されていて、日本人がそれを知らない(注目しない)だけという状況でした。

 

 

今もあるミラノのドリアー二やティンカーティ、フィレンツェのエレディ キャリーニなど、当時から有名なクラシックのセレクトショップに日本の若造が大人数で入って行き、顰蹙をかったのを今でも覚えています。

 

 

そういった意味では、日本でイタリアのクラシックスタイルが一般的に知られるようになって、まだ20年くらいしか経っていないことになります。

 

 

この本は、そんなイタリアのクラシックスタイルの波が押し寄せ始めた1999年のもので、いまのイタリアのクラシックスタイルのベースとなったものが書かれていると言えます。

 

 

21年前と言えば私は34歳、いま30代中くらいのイタリアのブランドの服を着ている人達はまだ中学生だったということです。

 

 

いまその世代の人達がなにげなく着ているイタリアの服が日本に入ってきて広まる過程おいて、知っておかなければならないことがたくさんありました。

 

 

知らなくてもいいこともありますが、知ることによって色々な意味でいま着ている服のことを理解できることも多いと思います。

 

 

ネットでは出てこない情報も多いこの本。

 

 

古本屋さんで数百円から買えます。

 

 

時代は一昔前のモノですが、当時を知らない世代の人たちにも読んでいただきたい本です。

 

 

正しくは ”STILE CLASSICO ITALIANO 読本” かな・・・(笑)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020春夏トレンド解説動画Vol.5アップしました。

 

 

 

 

今回はパンツ編です。

 

是非ご覧ください。

https://www.beams.co.jp/feature/200123/