たまふの書物語まりふ -16ページ目

679 魔法使いルーフィ

ふたたび改札を通り、サンライズ・エクスプレスが来るまで
地下の銀の鈴で待つ事にした、神様たち。
歩きながら、もう閑散としてきた駅の風景を眺めながら

これが旅情と言うものだろうか、なんて
それぞれに思う、4者。


地下1階銀の鈴からは、そのまま高架の東海道本線ホームに
エレベータで上がれるので、そこだけは優等列車らしい雰囲気である。


今は、新幹線がメインとは言うものの、旅の主役はやはり
長距離夜行列車だろう、などと言うのは
人間の感傷であろうか。




「コーノスケ・マツシタはどうして会社に家族の幻想を持ち込んだのだろう?
ソケット・アダプタの特許も公開して儲けをフイにしたり」と、ドイツの神様。


「そうして、日本は一体になって。日本全体が発展しようとしていたんだね。
そういう時代だったんだ。よく、ソニーの商品アイデアを真似したといわれるけど
彼は、そういうアイデアを安くみんなに提供するのが、マツシタの使命だと
思っていたはずだよ」と、アメリカの神。



「そうね、それもひとつの愛かもしれないわ」と、フランスの女神。




それがどうしてこんなに、日本はなってしまったのだろうと
それぞれ、思っている。


やっぱり、本当の日本人とは違うものが
日本人の顔をしてなりすましているようにしか思えない。



そう思う、神様たちだった。




愛があれば、思いやりも生まれるし
それは、たとえひとりで生きていたって変わるものじゃない。


それを、思い出すのが「記憶」だったら。


678 魔法使いルーフィ

「でも、魂ね、ニルヴァーナかな。
それ磨くって、何かいい事あるのかな」と
アメリカの神様は、いかにもそれらしい。

体感できる事が幸せだと思う、物質文明っぽい感覚。


美味いもの食ったり、恋したりって言う
外からの刺激で幸せになる、そういう感覚。



「分かるな。極東の感覚は物質じゃないのさ。
ほら、ブルース・リーは強いけど精神が強くて謙虚でしょう。ああいうのっってカッコイイじゃない。
強かったら威張る、んじゃなくて
強いんだから、非道を許さない、弱い者を守る、みたいな」と、ドイツの神様はカンフーも好きそうだ(笑)。



「それは分かるわ。弱い者守るって
人間らしいじゃない」と、フランスの女神は
庶民のために戦ったジャンヌダルクのように(笑)。




「それが、今は強いから、弱い者は
負けていい、そういう人間以前みたいな
侵略者が多いんじゃな。
さっきのハンバーガーの経営者だって
命令でチェーン店を一杯閉店したんじゃ。
それで赤字が減るのは当たり前じゃ。
でも、働いてたひとの幸せは?


そういうのは遺憾と思う訳じゃな。わしは。



大昔、この日本のな、経営者、例えば松下幸之助は
そういう時、首切りなんてしなかった。

共に苦しもう、がんばろう。

そうする事で、会社と言うものを
家族のように大切にしたんじゃな。



そういう社員は、お客さんも大切にするから
付き合いが続いていく。


それが日本じゃったんじゃな。



目先の金儲けのために、人の心を失うと
ダメなんじゃよ。



もともと、金儲けって幸福になるための道具じゃろ?



金のために心貧しくなったら、無意味じゃ。


威張るのは心貧しい行為じゃ。


」めぐの国の神様は、達観である。

677 魔法使いルーフィ

まあ、それも
真の日本人ではない人達のする事である。

なぜなら、日本人は相互に助け合い、お互いに
魂を磨く事を貴ぶ民族なのだから。


だから、信仰も宗教も
そこには馴染めない。


自らの魂を磨く事が目的。


それ以上でも以下でもない。







東京駅のドーム天井脇に、大きな映像ディスプレー。

そこに、相撲中継のような画面。

スポーツニュースだろうか。


引退した力士の舞の海、が解説をしている。



「見事なものね、スモーレスリング。あれも、魂を磨く事なの?」と、フランスの女神。



「そうだね。元々は力比べから始まったものだけど
勝ち負けが目的じゃなくて。相手をも尊敬して、フェアに戦って、力比べをする。

努力して、尽くす事が目的なんだ。
だから、モンゴルの力士が
ずる休みをして、横綱を首になったりしたのも


それは、アンフェアだから。


魂を磨く、道に外れてるんだからなんだ」と、ドイツの神様。


さすがに神様だけあって、よく解った言葉である。



「フェアって言葉は、なんとなく分かるな」と
アメリカの神様。


かつてのアメリカ合衆国も、開拓と自由を求めて
各国から集まってきた人々の国だった。

だから、フェアである事を信条としていた。


やはり、侵略したい人々が、それを壊してしまったのだけれども。






「すっと前、日本の銀座にマクドナルドができて
あれを侵略だって思った日本人も居たね」

と、ドイツの神様。




「うん、そのマクドナルド・ジャパンに日本人の社長、アップルコンピューターに居た人が
なったりしたんだけど。
それなんか、日本人が日本人を侵略してる見たいだったけどね。

アメリカ本社の手先になって」と、アメリカの神様は笑う。


国籍も、人種も関係なくて。

結局は低次元な欲望の強い人々が
侵略を好んで

そうでない人々は、魂を磨く、ような
高次元の行動に楽しみを見出だす、って
言いたいらしい。

676 魔法使いルーフィ

「愛が必要なのね」と、フランスの女神。


「文学的に言うと、そうだね。もうちょっと
具体的に言うと、異性との関わり、って言うか。
ほら、お母さんだって異性でしょ?
そのお母さんに郷愁を抱けない人達が
淋しいから暴れるんだって、フロイトさんなんかは言うね」と、ドイツの神様は理論的(笑)。


「まあ、男はしょーもないものな」と、アメリカの神様。


一同笑う。そういえば、女の子とお母さんは同性だから
元々、お母さんの愛には幻想をもてないし
女の子は、ふつう、放っておいても異性が接触してくるから
淋しくなりようがない。


それで、お局さまになると
どうしようもなくなる(笑)。

のも、いかにもそれらしい仮説だ(笑)。

674 魔法使いルーフィ

東京駅煉瓦造り駅舎のドームを見上げていた神様たち。


さっきの、エスカレーターイライラ男が(笑)その、ステーションホテルに眠っているのも
何かの偶然である。



神様たちの前を、スタイルの良い女の子が
脚線美を惜し気もなく晒し、歩いていく。

アメリカの神様は、にっこり。

Year!(笑)



ドイツの神様も、にんまり。




フランスの女神は、「そういう楽しみがある人達だったら、侵略なんてしないのに」と
真髄を述べる。




「そうじゃの。楽しみ、というか。女の子を見て和むのが普通じゃがな。侵略をするような人達は、そうではないらしい。

まあ、侵略者が男の場合じゃな。」と、めぐの神様。


女の侵略者は、もっと救いがないらしい(笑)
例えばお局さま、みたいなものだろうか(笑)。

673 魔法使いルーフィ

「本当の日本人は、サイレント・マジョリティーなのだろうね」と、ドイツの神様は言う。


「そうかもしれないけれど、日本、と言う国の人達の本当の姿は、一様ではないんだろうね。魂や、道を大切にする人達ではあるんだろうけれど。」と、アメリカの神様。



なぜか、洋食と言う名の日本料理を食べて見て
日本、と言う風土の面白さが理解できたような
西洋の神様たち(笑)だった。




魂を磨く人々は、今はもう少なくなったと
日本人の筆者も、そう思う(笑)。
でも、忘れない限り、いつかは蘇るだろうとも
思う。







神様たちは、そろそろ出雲市行きの
サンライズ・エクスプレスに乗る。


その前に、再構築された
東京駅煉瓦造り駅舎を、見に行く事にした。



ずっと昔に戦争で壊れた、歴史の一部を
元通りに復元する。



あたかも、幾度も蘇る魂のようでもある。



信じていさえすれば、いつかはきっと。



そんなふうに思うと、それは
日本と言う風土の象徴のようでもある。





木や石や、山。
そんなものでさえ、神や魂を見出だす心。

つまり、自然なるもの総てを敬う心は
つまり、己を慎み深く保つと言う事で


自己顕示のような、動物的な行動とは
相反するものだ。



つまり、争いと無縁なところに
和があり、道がある。



そういう人達が生き延び、世代を超えて
受け継いだ魂は、いつかまた蘇る。




科学的に言えば、文化継承は、行動形態は。
脳の構造に影響し、それは遺伝子継承で
次の世代に受け継がれる。



低級な争いに明け暮れる人達は
そういう人種に退化するのに、である。

672 魔法使いルーフィ

「侍の魂か。騎士の心なら分かるが。」と、ドイツの神様は言う。

「正義の闘士なら、わたしも」と、フランスの女神は、ジャンヌダルクのように(笑)。


「でも、ジャパニーズ・ソウルは、樹木や岩にすら宿るんだろう?」と、アメリカの神様。





そう、日本人は自然なるもの総てに魂があると
考える民族である。



そうして、「道」を極める事が生きて行く統べであるとした。



なので、損得など問題なく
人として自然なる八百万の神に恥じなく生きるのが日本人である。





「だから、経済や戦争で負けても
日本人に勝った事にはならないわけか。
なるほど、志を失った事にはならないからな。」と、アメリカの神様は理解する。


そんな表面的な事は、どうでもいいと言うのか。


めぐの国の神様は、日本、大和の国の神様が
なぜ、八百万の神様の中心と言われているのか
なんとなく解ったような気がした。





もっとも、その精神を受け継ぐ
本当の日本人は、少なくなってしまったようにも見える。




しかし、戦わずして勝っていると言う雰囲気はどこか、この国の民全体に漂っているようにも思える。



勝ち組、なんて言っている人物の方が
実は、志の高さとは程遠い人々で


庶民たちは、もともと相手にしていないようにも見える。




それは、歴史的にも日本の社会が
ずっとそうだったようでもある。

671 魔法使いルーフィ

「なるほど、つまり日本人は心を磨く事を
大切にする民族だから
侵略される事など、何とも思っていない訳か。
それで、エスカレーターで押し退けられるのを見て
戦うより、最初から避けるのか」と、ドイツの神様は言う。




「争って、心乱すよりは
多少不利益でも、心の平静を選ぶ、か。なるほど。アメリカは、戦争に勝ったつもりでも
実は、勝った訳じゃないんだな」と
アメリカの神様。


「侍の魂、なのかしら」と、フランスの女神。



「それは、真の日本人だけの心かもしれんが」と、めぐの国の神様。


でも、神の立場としては、黙って見ている訳にもいかんが、と


皆は、思っている。



東京駅、20時。


不思議な夜である。

魔法使いルーフィ

なるほど、その寛容さが日本なのか、と
神様たちは、ほとんど西洋系なので(笑)


そう、納得した。
宗教でも、信仰でも

日本人は曖昧で
クリスマスには、キリスト教、お正月は神道(笑)
お葬式は仏教。


なので、911テロのような精神は
全く理解できない、そんな国民性。



それだけに、悪い人が居ても
追い出したりもしないし
対立もしない。




だから、悪い人を
誰かがやっつけてくれるのを待っている、そんな国だったりもする。

ある意味、それは修業であるかもしれない。



戦いあって、心が傷むよりは
心を平静に保つ事の方が、余程毎日を
心静かに過ごせるかもしれない。



いつかは、天に召されるその時まで。




なんて思う神様たちは、ちょっと人間離れした考えである(笑)当然だが。





思えば、争って生き残るのは動物的な生き方である。



戦っても、心豊かで居られないのなら。



戦わずして無我の境地に至るのも
ひとつの生き方であるかもしれない。



日本の神様は、そう考えているのだろうか、と


めぐの国の神様は、そんなふうにも思う。

670 魔法使いルーフィ

「そうは言うけど、このシチューを美味しいと感じるのだって、結局は
動物を殺して食って来た記憶が、そう感じさせるのさ、人間の。だから、人間どうし相互攻撃するのだけ抑止するのって、難しくないかな」と、アメリカの神様はそれらしい。
スティーヴン・スピルバーグみたいな顔をして(笑)。


「それは簡単さ、食の欲求は単に生理的レベル。攻撃は記憶レベルだから。神経回路が違う。
」と、ドイツの神様は医学的な見解を述べる。



「昔は、日本人だってもっと穏やかだった。
やっぱり、島国らしく島だけで生きているのがいいんじゃよ。飛行機なんか作って行き来しても、ろくな事ない。」と、めぐの国の神様は言う。



「そうね。昔、日本の神様は、嘘をついて懲らしめられた白兎を助けて、介抱してあげた、なんて話もあるくらいね。西洋の感覚だと、悪い事したのに助けてあげるって、優しいけど
それじゃ正義はどうなるの?って」フランスの女神は、いかにも西洋の女らしい。


「いや、それで嘘をついた事を後悔して、もうしなくなればいいんだ。許して貰える事が愛だって。」と、アメリカの神様は、日本に詳しい(笑)。