Beautiful Days -8ページ目

今、会いにゆきます

監*土井裕泰
出*竹内結子 
  中村獅童 
  武井証
原*市川拓司 

2004年もちろん日本 * 東宝

雨の季節に戻ってくる。そう言い遺して亡くなった澪を思いながらくらす巧と息子のユウジ。そうして1年が過ぎ、本当にふたりの前にあらわれた澪は、記憶をなくしていた。梅雨が明けるまでの、たった6週間の奇跡のおはなし。

泣ける!っていう風評があまりにもつよすぎて、観る前にすこし身構えてしまった。でも、いい映画でした。6週間の中で澪がもういちど妻の顔、母親の顔を取り戻していく過程は、ファンタジーらしいご都合主義は感じられるものの、すごく自然で美しかった。3人がそれぞれ2ベクトルの愛情を持っていて、画面いっぱいにそれが満ちてる。主役の、中村獅童と竹内結子の演技もよかった。大学生の役には驚いた。笑 ラストの、はたちの澪の回想シーンでは、少し説明的になりすぎる部分もあったけれどそこで描かれるまだ高校生のふたりが可愛らしくてもどかしくてたまりませんでした。逆に主人公巧の病気については、若干説明が足りない気もするけれど、主題がはっきりしているからそんなに難は感じなかった。"泣かせる"作為は感じたものの、涙ぐんでしまう小憎らしい映画。

(11月11日(ポッキーの日!)、吉祥寺東宝)

ピエロの赤い鼻 ---effroyables jardins


監*ジャン・ベッケル
出*ジャック・ビルレ 
  アンドレ・デュソリエ 
  ティエリー・レルミット
2003フランス * ワイズポリシー

パパが町の人たちの前でピエロを演じるのが気に入らないリュシアンは、パパの親友から、パパがピエロになった理由を聞かされる。ドイツ占領下のフランスで起きたある出来事を描いた、かなしくも美しいおはなし。

世界はよろこびや愛で満ちている。作中で出てくるそんな一節が、ほんとうに似合う映画だとおもう。物語の大部分は戦中の話だから、本来なら不似合いな言葉なのかも知れないけれど、むしろそういう死と隣り合わせの状況だからこそ、他人をおもう気持ちがきれいにみえるのかもしれない。
シーンは少ないながらも、ドイツ兵のゾゾはもちろん、フィリクス老人の奥様(名前忘れちゃった)が、すごーくすてきだとおもった。愛するということを、きっと現実から理解出来ているひとたち。軸となるふたりの人物描写には少し厚みが足りない気もしたけれど、細かい問題よりも、大筋のテーマと伝えんとしているところに感動しました。

(11月5日、シネスイッチ銀座)

アレクセイと泉 ---Alexei and the Spring

ベラルーシにある小さな村。チェルノブイリ原発事故で放射能を浴び、政府からの移住勧告が出されたあと、地図からも削除された。そんなブジシチェ村を今なお離れない、数十人の老人たちと一人の青年の生活を描く。彼らがその村に住み続ける理由、それは、
「ここにはきれいな泉があるから」。

ほんとうにいい映画。まず、原発事故の被害にあった村の映像、という触れ込みなのに、原発事故の被害の話はほんの少ししか出てこない。あとは約2時間、ひたすら、その村で暮らす人々の平穏な生活を映し出していくだけ。それだけ聞くととても退屈そうに聞こえるけれど、美しい風景と静かな平和をいつくしむ人々の笑顔にひきつけられ続けます。薪を割ったり、糸をつむいだり、ダンスを踊ったりする、なんでもない日常を映した映画なのに、目を離せないのがこの映画のすごいところ。これを日本人が撮ったなんて驚き。上映後、監督さんが自ら舞台で映画の話をしてくれた。とても温厚そうな、やさしげな雰囲気を持つ人。そのときのトークの内容もぐっときた。
この村に住む人たちは、時計もカレンダーももたないけれど、地球のリズムで生きることができる。たべものは全て自分たちで作るから、自分が他のいのちのもとに生きていることを知っている。お金もここでは、大きな価値をもたない。彼らは、ほんとうの豊かさを知っている。
みたいなかんじ。坂本龍一との協力作だそうだけれど、前作「ナージャの村」も観てみたい。まどろんでしまったのがほんとうに悔しい。出回っている映画ではないから、機会を待ちます。

(11月3日、上映会で)

マリーアントワネットの首飾り ---The Affair of the Necklace



高貴な家に生まれたことを誇りに、奪われた家を取り戻そうとするジャンヌの陰謀を描いた映画。フランス史に残る大事件、「首飾り事件」をベースにした作品。

題材と邦題と雰囲気に惹かれて気になってた映画。が、もののみごとに裏切られた!オープニングはいい感じだった(ような気がした)のに、全てを奪われたジャンヌの苦悩を描きもせず、次の瞬間には"華やかに成長"しててまずびっくり。伯爵と結婚しちゃってるし・・・。全体的には、一貫して心理描写が雑で、説得力がなかった。ジャンヌの家名に対する執念や、彼女を陰謀に駆り立てた経緯が淡々と、とんとんと進みすぎていて、主人公に感情移入できなかった。ジャンヌが処罰された場面から突然アントワネットの処刑にすすむラストの展開は、????結局最後まで、どういう映画にしたかったのかがわからなかった。こんなに大雑把なストーリー展開じゃ、歴史上の大事件も、お金かかった衣装も映像も台無し。というかそもそもヒラリー・スワンクはミスキャスト!由緒正しいフランス貴族の血をひいてるようにはどうしても見えなかった。ハリウッド映画だから仕方ない部分はあるとしても、もっと妖艶で計算高いオーラをもつ美人はたくさんいるのに。
っていうか、ジャンヌ・ヴァロワって、本当の出自は平民だったんじゃなかったっけ・・・ どっちだっけ・・・

フェイク ---Donnie Brasco



我ながら今更?感すらあるけどようやくDVDを借りました。
たった一人でマフィアの巨大ファミリーを壊滅させた、FBIの潜入捜査官ジョー、偽装名ドニー・ブラスコをモデルにした実話もの。

男の友情なんてのに泣かされるのは不本意だけど、感動してしまった。ラストの、全てに気付きながら許容するレフティがあったかすぎて、悲しすぎて。ドニーをまるで息子のように可愛がるレフティの愛情が純粋であるだけに、囮捜査という任務を遂行するうえでの、家庭とのすれ違いの苦しみも重みを増す。囮捜査官のジョニーデップと、出世とは縁がない三流マフィアのアルパチーノってキャストもにくいかんじ。実話を映画化するのってわりと難しいと思うのだけれど、大きな違和感は感じなかった。原題をみると、囮捜査官の苦悩をえがきたかったのかな。でもそれだけじゃないところが、結果的にはバランスよく仕上がってるんだと思う。もちろん全てが実話のとおりではないんだろうけど、囮捜査ってたいへんだなあ。ジョセフ・D・ピストーネはきっと、この先ずっと身を隠して生きなければならない。
いい映画でした。そしてやっぱりジョニーは世界でいちばんいい男だと思いました。


砂と霧の家 ---House of Sand and Fog

監*ヴァディム・パールマン
出*ジェニファー・コネリー
  ベン・キングスレー
  ショーレ・アグダシュルー
2003年アメリカ * GAGA

夫に逃げられ、亡き父が遺した家にひとりで暮らすキャシー。イランから亡命し、裕福を装いながら肉体労働で日銭を稼ぐ元大佐とその妻子。キャシーと恋に落ち、愛の冷めかけていた妻と二人の娘を置いて家を出る警官。海の見える家(House)をめぐる、家(Home)をもとめた人たちの悲しい物語。

とても悲しい映画でした。悪人はひとりも出てこない。みんなそれぞれに、しあわせを求め、なつかしくあたたかい家を求めていただけ。それなのに、傷つくことを避けては通れないせつなさや遣り切れなさが、2時間、いっぱいにあふれ続けた映画でした。キャストがすごく良かった。いかにも賞っぽいけれど。
「世界中を嗚咽させた―」とコピーにあるけれど、少し違うような気がする。激しく襲い掛かる悲劇ではなくて、じんわりとしずかに胸にしみこんでくるようなかなしさ。一瞬だけ、キャシーにじぶんをかさねたりした。

(10月29日)

エイプリルの七面鳥 ---Pieces of April

監*ピーター・ヘッジズ
出*ケイティ・ホームズ
  パトリシア・クラークソン
  デレク・ルーク
2003年アメリカ * GAGA

自由奔放なエイプリルは、家族と折り合いが悪くもう何年も会っていない。今はNYハーレムで恋人のボビーと気ままな同棲生活をしているのだけれど、母が末期癌に侵され、余命いくばくもないことを知った彼女は、感謝祭の日に家族をアパートに招待し、手料理をご馳走しようとする。

これは素敵な映画でした。問題児なはずのエイプリルが、死を間際にした母のために慣れない料理をする姿はせつなくもほほえましい。対する母親のほうも、エイプリルにまつわる嫌な記憶を払いのけながらNYへ向かうんだけど、車内での家族の会話もユーモアたっぷりで、会場中が笑いであふれるシーンも何度か。もうちょっと重々しく親子愛を描いたお話だと思っていたけど、いい意味で裏切られた。
家族のひとりひとりはちろん、個性豊かなアパートの住人たち、エイプリルの恋人ボビーなどなどキャラクターも魅力的。多くを語り過ぎない(説明的でない)ところも、アパートでのエイプリルの奮闘ぶりと家族の会話が交互に映される構成もよかった。とくにラストの、静止画の連続のあとの家族写真までの流れは凄く好きだなあ。エイプリルがドアを開けてからは一言も台詞がなかったんだけど、それが絶妙で。
こういうお話は、ストーリーが単純なぶん、話の進め方で大きく左右されると思うんだけど、大成功だと思います。おみやげのハンカチが可愛かったのも高ポイント(笑)幸せいっぱいな気分にさせてくれた映画。

(10月22日、銀座ヤマハホール)

トゥーウィークスノーティス  ---Two Weeks Notice




内容はわかりやすいラブストーリー。ハーバード卒の敏腕弁護士ルーシーと、NY有数の大富豪ジョージの恋の話。慈善事業に力を注ぐルーシーは、軽薄で頼りないジョージに我慢ならないんだけど、辞表<<トゥーウィークスノーティス>>を出してから、自分の気持ちに気付きはじめる。

ありきたりで何の仕掛けもない、ひとことで言えば普通すぎるくらい普通のラブコメ。でも意地悪な視点を除けば、素直に楽しめる可愛らしい作品。ハラハラもドキドキもないけれど、ほんわかあったかい気分になれちゃいました。ストーリーよりもキャラクターの味と会話を楽しむ映画、かな。印象にのこったシーンも幾つか。何といってもやっぱりヒューグラントはいい味出してます。ネクタイひとつ自分で決められないダメ男っぷりが、ああも可愛らしく見えてしまうのはどうしてなんだろう・・・。ラスト、ルーシーの家の狭さに驚きの声をあげているシーンにはやられた。何の社会的メッセージも、奇を衒ったトリックも、気の利いた小細工もないけれど、ふつうのラブストーリーにふつうに満足できる人なら充分に楽しめる映画だと思います。

ノッティングヒルの恋人  ---Notting Hill



ノッティングヒルで書店を営むハンサムだけど平凡なバツイチの男性ウィリアム・タッカーと、"世界でいちばんの美人"ハリウッドスターのアナ・スコットとの恋の話。

観よう観ようと思っていて、なかなか観れていなかった映画。感想は・・・うーん。結果がハッピーエンドなのは分かりきっているから、過程を楽しみながら観たかったんだけどちょっと失敗した。アナの魅力が、"美人であること","スターであること"以外に感じられなかったのが原因かな。もうひとつ、アナがどうしてタッカーに恋してしまったのか、そのへんがうまく伝わってこないことも。周りの人はベタ褒めしていたので、ひょっとしたらあたしの性格が悪いのかなあ・・・(悲)ヒューグラントもジュリアロバーツもわりと好きなんだけど、この映画でいちばん良かったのは、タッカーの脇を固める友人たち。クレイジーな同居人、彼に恋するタッカーの妹、車椅子の元恋人とその夫などなど、味のあるキャラクターがいっぱい。そんな感じでありえないと思うところもあったけど、ラスト、記者会見でお互いの気持ちを確認し合う場面はおもわず微笑んでしまいました。

ラブ・アクチュアリー  ---Love Actually



クリスマス目前のイギリスを舞台に、首相とメイド、小さな男の子と同級生、作家とポルトガル人などなど、19人の男女が織り成す幾通りもの愛が少しずつふれあいながら進んでいく。

これはね、すごーくいい映画だった。もう、ほんとに胸が熱くなった。展開が都合よすぎると感じる点も幾つかあるんだけど、逆にそのくらい出来すぎてるほうがこういう映画にとってはいいのかも。登場人物が多くて混乱するかと思ったけど、それも杞憂に終わった。個人的には親友の花嫁に恋する男性の恋がせつなくて好き。隠し通してきた彼女への想いがバレて苦しむ姿も、クリスマスの夜の告白も、そのあと、「充分だ」って彼女の家をあとにする表情もよかった。のた打ち回りました(笑)
愛すべき19人とともに、文句なく幸せな気分になれる作品。クリスマスに、好きな人とみることをおすすめしたい映画☆