マイ・ボディガード ---MAN on FIRE
監*トニー・スコット出*デンゼル・ワシントン
ダコタ・ファニング
クリストファー・ウォーケン ほか
原作*A・J・クィネル『燃える男』
配給*日本ヘラルド 公式HP
生きる希望を失った酒浸りの元CIA特殊部隊員クリーシーは、誘拐事件が頻発するメキシコ・シティで、若手実業家に、娘ピタのボディガードとして雇われた。少しずつ心を通わせはじめる男と少女を、突然の事件が襲う。
主演にデンゼル・ワシントン、天才子役と名高いダコタ・ファニング。監督は大物トニー・スコット。錚々たる顔ぶれに、否が応にも期待はふくらむ。が、しかし。
悲しくても救いのあるストーリーが好きなあたしとしては、まず後味の悪さになじめない。ラストのまとめ方も、はっきりいって上手ではない。イメージと違ったせいもあるかな。とりあえず邦題が悪い。コピーが悪い。「信じてる。何があっても、あなたが私を守ってくれる。」は、違う。そしてオープニングから目のチカチカする映像でハードボイルドな雰囲気満開。いやしかし終わってみると、テーマの所在が微妙につかめなくてその意図も、?。ストーリーもなんだか中途半端な感じが否めない。クリーシーのピタへの異常なまでの愛情(?)も、流れでみれば全然説得力に欠ける。ダコタファニングが殺されるのは早すぎて焦ったし、その後復讐に走るクリーシーの変貌ぶりには違和感たっぷり。愛想はなくても心優しいクリーシーは"死の芸術家"にはどうしても見えなかった。
あっでもでもクリーシーがピタに水泳の特訓をするシーンはよかった。ひたむきに練習を重ねるダコタ・ファニングがかわいらしい。ロリコンさんにはたまらないと思います。歯なかったけど。
クィネルの原作は読んだことがないけれど、ファンが観たらがっかりするのでは。期待がおおきかっただけに、ちょっと(いやかなり)残念。
しかしメキシコって怖い国なんですね。誘拐事件が1時間に1件だって。
シザーハンズ ---Edward Scissorhands

数年ぶりに観たシザーハンズ。
なんといっても、エドワードの純真さに胸を打たれる。無垢で、無欲で、そのためにとても不器用で、哀しい運命のもとにうまれた男。人間たちは身勝手で、欲や保身から彼を傷つけることを厭わない。その苦しみは、どうしようもない衝動として彼を襲うのだけれど、他に向けられることはない。エドワードは決して、彼らを責めない。はじめは両手を広げて歓迎されたエドワードは、人々の非情な嘘や誤解によって、クリスマスの夜に街を追われる。ペグの娘キムに恋をするも、抱きしめることもかなわない純粋な思いはやがて、真っ白な雪となって町じゅうに降り注ぐ。
ジョニーデップを初めて知ったのがたしかこの作品。当時はこんなに格好いい人だとは思いも寄らなかった。ティム・バートンの独特な色彩と、幻想的な音楽がぴったりとマッチしたうえに、ジョニーの演じるエドワードの素朴な表情。完璧です。強いていうならおばあちゃんが孫娘に雪が降る理由を語るはじめるオープニングは、「むかしむかし~」のおとぎ話の典型的な語り口なのだけれど、つぎのシーンがいきなりパステルカラーの家並みだからちょっと戸惑った。でも気になるのはそこだけかな。あとはストーリーも映像もふくめた映画の世界にひきこまれてしまいます。ファンタジックな世界観のなかで、寓話的な要素も詰まったとても好きな映画。あたしがジョニー&ティム贔屓なせいもあるかもしれないけれど。
ピーターパン症候群かつジョニーデップ狂なあたしはもちろん「ネバーランド」が楽しみで仕方ないんだけど、こんなのも見つけちゃいました!
ティムバートン監督、ジョニーデップ主演の「チョコレート工場の秘密」
アメリカでの公開が2005年7月15日。まだまだだなあ。
邦題もついてないし公式サイトもまだ出来てないみたいだけど「The Corpse Bride」なんてのも。こっちはアニメだけど。来秋公開。
楽しみすぎます。
24 --- TWENTY FOUR seasonⅠ
24時間のお話を、実際に24時間の映像にしたドラマ。主人公は合衆国政府機関CTU(テロ対策ユニット)のLA支局長、ジャック・バウアー。彼を中心に描かれる、大統領候補暗殺計画とジャックの一人娘キムの失踪事件。何の関係もなさそうなふたつの事件が時を追うごとに繋がっていく。次期大統領を守るため、妻と娘を守るため、ジャックが孤軍奮闘する24時間。次から次へと人が死ぬ。誰も信用できない。そんな緊張状態が24時間も続く。みているうちに、誰も信じられなくなってくる怖ーいドラマ。善良にしか見えない人も疑う。通行人もとりあえず疑う。ありえない展開もいっぱいなんですが、続きが気になって仕方ない24マジックにみごとにはまってしまいました。24時間観終えたあと若干後味は悪いのだけれども、これもシーズンⅡやⅢに繋がっていくのだと思えば仕方なし。
とりあえずⅢの続きを早く観たい。
ラ・ピエトラ 愛を踊る女 ---QUAND JE VOIS LE SOLEIL
監/脚*ジャック・コルタル出*マリ=クロード・ピエトラガラ
フロラン・パニー
フランソワ・クリュゼ
配給:コムストック
末期癌に冒された一流ダンサー・マルゴが癌を宣告されてからの、短い余生を苦悩しながら生きるさまを描いた作品。
元パリ・オペラ座のエトワール、マリ=クロード・ピエトラガラの最初で最後の主演映画。らしい。あたしはバレエに詳しくない、というよりまったくの無知だから、正直ピエトラガラについてよく知らないけれど、死を前にしたマルゴの踊りは鬼気迫るものがあった。
一本の映画としてみると、ちょっと未完成な印象を受けた。映画、というよりは写真みたい。上映中ずっとネガフィルムをみているような、不思議な感じがした。なんていうか、状況や心情把握にいたるヒントが遠まわしすぎるというか。ぶつ切りにストーリーが進むから。違和感をおぼえたままストーリーが進んでいきそうで初めは焦らされた。シーンごとに訴えてくるものはあるんだけれど、それだけ、かな。ともすれば作り手の自己満足ともとれてしまう。描きたいテーマがある、っていうことは充分に伝わってはくるのだけれど、それをうまく形に出来ているかは微妙なところ。鑑賞前の印象は、死を目前にしてなお踊りへの執念に近い情熱を描いたもの、と予想していたのだけれど、実際は、死への恐怖、生への羨望なんかが前面に出ていたようにおもう。愛とかいのちの大切さとか、欲望とか嫉妬とか、きれいなことからきたないことまで、伝わってくるものはあったんだけどな。死の恐怖や未来への羨望、ジレンマに苦しむ主人公の姿は鮮明でくるしかった。
この題材は、もうちょっと別の描き方があったようにおもう。
(11月26日、新宿武蔵野館)
ハウルの動く城
2日間で日本映画歴代1位の興行収入を記録したらしい。宮崎駿パワーすごいなー。それだけの重みをどうやって処理してるんだろうっていつも思ってしまう。そしてやっと感想。単刀直入に言うと、期待を超えるものでは決してなかった。期待の大きさの所為ももちろんあるんだろうけれど、これが待ち焦がれた宮崎駿の最新作だと思うと、熱烈なジブリファン、というより超熱烈な宮崎ファンとしては少し淋しいものがある。映像から溢れ出す世界観や映像自体の綺麗さはやっぱり最高なんだけれど、それがこの作品のいちばんの見所かも。映像の美しさは宮崎作品の魅力の構成要素の一部であって、魅力それ自体ではないはずなのに、そうあってほしいのに。
キャラクターに着眼すると、根っからの悪役が出てこないのは宮崎作品の持ち味のひとつだけれど、サリマンと荒地の魔女はお互いを損ね合っている気がする。もちろんソフィーは魅力的な女の子ではあったしイケメン魔法使いハウルの不敵さも後半の人間くささも好感はもてた。キムタクの声も予想よりは全然よかった。
なんだけど、やっぱり、メッセージ性の弱さと、ストーリーの薄さは否めない。とっても自分勝手な意見だけれど、宮崎駿に単なるラブストーリーなんて、もとめてない。
宮崎駿が監督した作品である、ということは、作品それだけを観ることをとっても難しくする。こんな重圧のなかで、作品を作り上げること。たいへんだなあ。
(11月22日、チネチッタ川崎)
真珠の耳飾りの少女 ---GIRL WITH A PEARL EARRING
監*ピーター・ウェーバー出*スカーレット・ヨハンソン
コリン・ファース
トム・ウィルキンソン
キリアン・マーフィー
2002年イギリス * GAGA
ひとことで言ってしまうと、絵画のような映画。同名のフェルメールの絵をモチーフにした、ノンフィクションの要素をもつ映画。ストーリーはこれといってない。あらすじにしてしまえば1文でまとめられてしまうようなもの。大きな起伏はないし、つよいメッセージ性をもつものでもないし、全体的に、説明があまりなされない。そういう意味でも、フェルメールの絵のような映画だとおもった。なんていうのかな、鑑賞する目としてのわたしたちにすごく自由のある作品。そのぶん、暗喩的な表現はすごく多かった気がしたけれど、それを誤ったとらえかたをすることすら間違いではない気がする。
主役の女優、スカーレット・ヨハンソンが役にぴったり。そしてコリン・ファースはやっぱ素敵。衣装やセットや照明は、当時の雰囲気ばっちりで、作中のシーンの一瞬一瞬がすべて、額縁のなかにおさまった油彩のような、映像のうつくしさがきわだった作品だと思います。
好き嫌いがわかれそう。いや、むしろ分かれないのかな。いや、なんにせよ観てよかった。
(11月19日、早稲田松竹)
ビッグ・フィッシュ ---BIG FISH

自分の人生を御伽噺のように語るエドワードと、そんなほら話ばかりの父のほんとうの姿が知りたい、と願う息子のウィル。病床のエドワードのもとに駆けつけたウィルは、幻想に覆われた父の人生を、親子の対話、ウィル自身の探求のなかでみつけていく。
回想シーンの映像がとにかくファンタジックで、それこそほんとうにおとぎ話を観ている感覚でした。大きな魚の伝説にはじまり、魔女の館、巨人との旅、
旅先で出会ったたくさんの人たち。そういう、空想としか思えないお父さんの回想と、息子の視点からみた現実世界が交互に映しだされる。そのバランスもあたしにはちょうどよく、最後のお父さんが息をひきとるシーンまですんなりと映画に入り込んでいられた。
ただ幻想的なシーンが長いので、ファンタジーが得意じゃない人は退屈しちゃうかもしれないなあ。"あっと驚く死に方"のミステリーには本当に涙を誘われた。ほら話にうんざりしていたはずの息子が、自分のために作ってくれたやさしいお話。ユーモアを加えた目で見たら、人生はこんなにもしあわせいっぱいになるのかな。
事実と空想の境目があいまいで、最後には微妙にはっきりするのだけれど、あのお葬式の部分はどうなんだろう。曖昧なまま終わらせてもそれはそれでよかった気もする。空想がちからを弱めた現実を観客が知ることは必要だったんだろうか。良し悪しの判断はつかないけれど。
なんだかふわふわしちゃう。若いエドワードの恋が素敵すぎてしかたない。サーカス、花畑、旅、空想。キーワードおさえまくりだ!いいなあティムバートン。久々にシザーハンズがみたくなった。
