ラ・ピエトラ 愛を踊る女 ---QUAND JE VOIS LE SOLEIL
監/脚*ジャック・コルタル出*マリ=クロード・ピエトラガラ
フロラン・パニー
フランソワ・クリュゼ
配給:コムストック
末期癌に冒された一流ダンサー・マルゴが癌を宣告されてからの、短い余生を苦悩しながら生きるさまを描いた作品。
元パリ・オペラ座のエトワール、マリ=クロード・ピエトラガラの最初で最後の主演映画。らしい。あたしはバレエに詳しくない、というよりまったくの無知だから、正直ピエトラガラについてよく知らないけれど、死を前にしたマルゴの踊りは鬼気迫るものがあった。
一本の映画としてみると、ちょっと未完成な印象を受けた。映画、というよりは写真みたい。上映中ずっとネガフィルムをみているような、不思議な感じがした。なんていうか、状況や心情把握にいたるヒントが遠まわしすぎるというか。ぶつ切りにストーリーが進むから。違和感をおぼえたままストーリーが進んでいきそうで初めは焦らされた。シーンごとに訴えてくるものはあるんだけれど、それだけ、かな。ともすれば作り手の自己満足ともとれてしまう。描きたいテーマがある、っていうことは充分に伝わってはくるのだけれど、それをうまく形に出来ているかは微妙なところ。鑑賞前の印象は、死を目前にしてなお踊りへの執念に近い情熱を描いたもの、と予想していたのだけれど、実際は、死への恐怖、生への羨望なんかが前面に出ていたようにおもう。愛とかいのちの大切さとか、欲望とか嫉妬とか、きれいなことからきたないことまで、伝わってくるものはあったんだけどな。死の恐怖や未来への羨望、ジレンマに苦しむ主人公の姿は鮮明でくるしかった。
この題材は、もうちょっと別の描き方があったようにおもう。
(11月26日、新宿武蔵野館)