シモーヌ ---S1M0NE

つくる映画が鳴かず飛ばずで、監督生命の危機に追い込まれた売れない落ち目の映画監督タランスキー。売れっ子女優に作品への出演を取り消され、苦肉の策でCGで完璧な女優を作り上げるんだけど、この女優、シモーヌが爆発的に人気が出てしまう。
ずっと前から観ようと思っていたんだけど、先延ばしになっていた作品。
よかったです。まず全体的なストーリーの組み立てがしっかりしていて、心情の変化にも違和感がない。あの手この手でシモーヌの正体を隠そうとするタランスキーが、すごく間抜けで情けないんだけど憎めない。元妻や娘との絡みも、シモーヌを追い回すマスコミとの闘い(?)も、すごく気持ちいい笑いを誘います。アルパチーノは情けない男の役がかなしいくらいはまっていたし、レイチェル・ロバーツも役にぴったり。出番は少ないけどわがまま女優役のウィノナ・ライダーもいい感じに存在感を発揮して、すごくバランスのとれた映画だとも思う。マスコミ風刺、というか映画界をちょっと皮肉ってる感じがすると思ったら、「トゥルーマン・ショー」と同じ脚本・監督さんなんだそう。ちょっと納得。「トゥルーマン・ショー」もかなり面白かったから、アンドリュー・ニコルはあたしの好みなのかも。
ツイステッド ---TWISTED
監*フィリップ・カウフマン
出*アシュレイ・ジャド
サミュエル・L・ジャクソン
アンディ・ガルシア
2004年アメリカ * アスミック・エース
殺人課に栄転したばかりの有能な女性刑事ジェシカの初仕事は連続殺人事件。ところがひとり、ふたりと殺されていく犠牲者は皆、自分と関係をもった男性ばかり。署内でも孤立するなかで、精神的に追い詰められていくジェシカが事件を解決するまでの話。
予想通りの映画だった。「ラストは衝撃の大どんでん返し」も、予想できたどんでん返し。というよりも、サミュエル・L・ジャクソンとアンディ・ガルシアというキャストだと、見る前に犯人の目星がついてしまう・・・。そんな邪推を覆すような気の利いた演出が欲しかったなあ。特につまらないわけでも、特に面白いわけでもない、そんな映画でした。
(10月13日、吉祥寺バウスシアター)
アイ,ロボット ---I, Robot
監*アレックス・プロヤス出*ウィル・スミス
ブリジット・モイナハン
アラン・テューディック
2004年アメリカ * 20世紀フォックス
ウィルスミスの近未来SFもの。高機能ロボットが普及し、人間のために働くロボットの姿が、日常にすっかり溶け込んだ時代のお話。
ありがちな騒々しいSFアクションだと思って全然期待はしていなかったんだけど、観終わってびっくり、面白かった。大筋のストーリーは読めるにもかかわらず、ハラハラドキドキ。予想できたハッピーエンドにもほっとしちゃった。印象に残ったのは、旧型ロボットが新型ロボットから人間を守ろうとするシーン。新型ロボットは表情が柔らかい分逆にこわいんだけど、旧型ロボットは可愛いの。もののけのこだまみたい。笑 ほかとは違うユニークなロボット、サニーの人間ぽさも、妙に愛嬌があって可愛かった。いや、気持ち悪くもあるんだけどね。大作だけあって映像技術はすごい。っていうかやっぱり何よりウィルスミスはかっこいい。あんな刑事さんに助けられたい、とおもってしまった秋の日でした。
(10月12日、吉祥寺スカラ座)
世界でいちばん不運でしあわせな私 ---Jeux d
監*ヤン・サミュエル出*ギョーム・カネ
マリオン・コティヤール
チボー・ヴェルアーゲ
2003年フランス * アルバトロス 公式HP
幼いときにはじめたある「ゲーム」のせいで、
その後何十年もお互いを好きだと言えない幼なじみのふたりの話。
率直に言うと、期待が大きかったせいもあると思うけど、ちょっとがっかり。ふたりがゲームにあそこまで固執する、というかとらわれる理由もいまいちわからなかったし、映像も、フランス映画らしい可愛らしさはあるんだけどちょっとごちゃごちゃしすぎてる感じがした。何よりあのエンディングはない。ひどい。セメントに固められたふたりを美しいと思える人がいるなら、意見を聞いてみたい。あくまで参考までに。原題は知らないけど、タイトルもいまいちわからないし。一緒に行った友達と、帰り道はしばらく無言になってしまいました。
(9月29日、銀座シネスイッチ)
モナリザ・スマイル ---monalisa smile
監*マイク・ニューウェル出*ジュリア・ロバーツ
キルスティン・ダンスト
ジュリア・スタイルズ
2003年アメリカ * UIP
舞台は1950年代アメリカ。伝統と気品を重んじる名門女子大に、新しい風をもたらそうとする美術史教師のお話。リベラルで進歩的な考えをもつ女性教師キャサリンは、古風な学内では異端視されてしまうんだけど、優秀で生意気な学生たちは、自由で心のこもった彼女の授業、そして人間性に、だんだんと心をひらいていく。
女性が職業につくことがまだあまり一般的でない時代、結婚し、家庭を磨き、夫に尽くすことだけが女性の幸せだっていう考えが、まだ根強かった時代。
キャサリンは、そういう常識をきらう新しいタイプの女性。おカタい同窓会や、学長や、恋人のプロポーズにすら、自分のスタイルを崩さず向き合う姿勢が、実はちょっと頑なになっている部分もあるんだけど、それでもかっこいい。反抗的にみえる学生たちも、それぞれに愛や人生に悩んでいて、じぶんが幸せになれる場所をさがしている。結婚観や恋愛観、しあわせのかたちについて、少し考えさせられた。とはいえ押し付けがましさは全然なくて、観たあとにあったかい気持ちになれる映画でした。あたしの目にすごく魅力的に映ったのは、学生のひとり、ジゼル。軽そうで、悪そうで、実は胸にものすごく熱いものを持っている女の子。そして、他人の気持ちを理解することができるひと。あたしはキャサリンみたいな自分を貫く固さよりも、ジゼルのような、傷付いた人の痛みに気付いて、抱きしめてあげられるやさしさが欲しいなあ。
(9月27日、新宿武蔵野館)
トゥー・ブラザーズ ---the two brothers
監*ジャン=ジャック・アノー
出*ガイ・ピアース
ジャン=クロード・ドレフュス
フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー
フレディー・ハイモア
2004年仏・英 * 日本ヘラルド映画
野生の二頭の虎の兄弟が、捕らえられ離れ離れになってから、また二頭そろってジャングルで暮らすようになるまでを描いたお話。
これは虎をみる映画。たぶん。ストーリーは、予告編だけでほぼ解ります。もともとストーリーあんまり重視してなさそう。展開は遅いし、台詞もなく虎兄弟・虎親子が戯れるシーンが凄く多かったし。簡単に言ってしまえば、内容はすごく薄い。ご都合主義に過ぎるし、ストーリーだけみれば突っ込みどころ満載でつまんない映画なんだけど、虎がかわいい。もう、どうしたらいいのってくらい。是非お友達になりたい。傍にきたら間違いなく怖いけど。CG不使用(だった気がする。違ったらごめんなさい)でこの映像はすごいかも。そして兄弟の片割れを可愛がる少年も可愛かった。あんな子ほしい!
(9月21日、吉祥寺オデオン)
ヴィレッジ ---the village
監*M.ナイト・シャラマン
出*ホアキン・フェニックス
エイドリアン・ブロディ
シガニー・ウィーバー
ウィリアム・ハート
ブライス・ダラス・ハワード
2004年アメリカ
* ブエナビスタインターナショナルジャパン
ホラーかと思ったら違ってほっとした。とはいえしあわせなお話では決してなかった。得体の知れないものが棲む"森"におびえて暮らす村の話。人々は外の世界から隔絶され、その小さな村を一歩も出ることなく生活している。"森"の正体はあとで明らかになるんだけど、結局大人たちは苦しみから逃げているのに、一概にそれを否定することも出来ない。しあわせはたぶん無限にかたちを変えるんだろうけど、この村がその答えになりうることが悲しい。
得意なテーマじゃないせいもあるだろうけれど、飲み下せなかった感アリ。シャマラン監督作品なら、「シックス・センス」のほうがあたしは好きだな。
っていうかシガニー・ウィーバー出てたんだ!あれか!すっかりお年を召して…。
(9月16日、ワーナーマイカルみなとみらい)
