白いカラス ---THE HUMAN STAIN
ハリウッド臭さがない、というか良くも悪くもミニシアター的な映画。とはいえアンソニー・ホプキンス、ニコールキッドマン、エド・ハリスにゲイリー・シニーズという名優ぞろいの豪華キャストはハリウッドでしかなし得ないんだけれど。ただ、その豪華さゆえなのか、伝えたいテーマが散漫になっているような気がした。苦しみ抜いたコールマンが、最後に愛によって救われた、という流れは陳腐ながら嫌いではないんだけどなあ。加えるならキャストはなんとなくリアリティがなくて、黒人のアンソニー・ホプキンスにも、無教養な田舎掃除婦の二コールにも違和感ありまくり。残念。それにしても、ゲイリー・シニーズが椎名きっぺいにしか見えないときはどうすればいいんだろう。
TROY
トロイ on DVD。制作費がかかってるだけあって映像は迫力。船団の出航のときはどきどきしました。ストーリーは神話的な要素を省いたぶん、原型の叙事詩より軽薄なものになってるんじゃないかとおもう。ちゃんと読んだことないけど。オーランドブルームのパリス王子は単なる世間知らずで情けないおぼっちゃま。ヘレンとの愛については必然性がかたられない上、ダイアン・クルーガーは可愛いんだけど大国を戦争へ導くほどの絢爛な魅力が足りないような気がする。だから大戦争に至る経緯でいまいちのめりこめないんだよね。男優が豪華なぶん女優陣はいまひとつ?にしてもブラピかっこよすぎでしょこれ。いいのか。いいか。エリック・バナのヘクトルも見事に完璧な王子だったけど、アキレスの肉体美には負けました。あたしは英雄のおはなしが好きらしい。
SAW ---ソウ
監*ジェームズ・ワン(案)
出*リー・ワネル(脚本・案)
ケアリー・エルウェズ
ダニー・グローバー
モニカ・ポッター
2004年アメリカ * アスミック・エース
公式HP
とうとう観ちゃったSAW。同系統として挙げられる『es』とか『CUBE』とか実は観てないので,比較対象がないうえ怖いのが先行しちゃってあんまり穿った見方はできないけど(から?)全体的によく出来た映画だとおもいます。ジグソウの正体は若干強引で腹が立つけど、騙されたのがくやしいからかも。お前かよ!みたいな。視点が最後まで定まらないことはちょっと不満。
っていうか細かいこととかどうでもいいや。悔しいけど小心のせいであんまり冷静に観れませんでした。全然こわくないよって聞いてたのに嘘だし。ぐろいし。予想以上にこわかった。びくびくしてました。でも実は、あたしよりたけしゃんのほうがびびってました。へへ。
(12月22日,銀座シネパトス)
ターミナル ---The Terminal
監*スティーブン・スピルバーグ出*トム・ハンクス
キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
スタンリー・トゥッチ
原*アンドリュー・ニコル
2004年アメリカ * UIP
公式HP
ひとことでいえば大人のための童話?現実的なファンタジー。トム・ハンクスは純粋すぎる大人の役がほんとうに似合う。でもこれ、ただの英語が喋れない人にしては言動が幼すぎると思ったのはあたしだけ・・・?そこここに散りばめられた微笑ポイントはさすが。客席のあちこちからほほえましい笑い声。あたしもわらった。ただ、"約束"と"恋愛"がどちらもささやか過ぎて拍子抜けした感はアリ。キャサリンは可愛かったけど、正直なくてもよかったかも。描くならもうちょっと力入れてほしかったな。とはいえ大げささや大胆さのないほんわかしたコメディで、安心して観れました。トム・ハンクス、やっぱり大好き。ポーラーも早く観なきゃ・・・
(12月21日、新宿スカラ)
シルヴィア --- Sylvia
監*クリスティン・ジェフズ出*グウィネス・パルトロウ
ダニエル・クレイグ
配給*ザナドゥ、エレファントピクチャー
公式HP
死後ピュリツァー賞を受賞したアメリカの女性詩人、シルヴィア・プラス。
自分の才能に、そして愛に苦しみ生きた彼女の実話をもとにした物語。
くるしい映画だった。ゆたかな才能を持ちながら、世間に認められない焦りや不安、また詩人としての名声を順調に得ていく夫への嫉妬から、徐々に心のバランスを崩していくシルヴィア。そのひずみは詩作においてだけでなく、夫婦生活にも影響を及ぼしていく。テッドは彼女にとって、愛し合い尊敬し合い、理解し合える最良の伴侶なのに、詩人としてのプライドと彼への愛情の大きさが彼女を苦しめ、追い詰めていく。その様があまりにも痛々しい。あまりにひたむきで、正直で、繊細なぶん傷つきやすいシルヴィアは、浮気した夫をもう一度迎え入れようとする。そして、かなしい結末に至る。一生懸命なだけじゃ、しあわせになれない。
シルヴィアの苦悩が身近に思えた分、ほんとうにくるしい映画でした。
<12月16日、汐留FS>
きみに読む物語 ---THE NOTEBOOK
監*ニック・カサヴェテス出*ライアン・ゴズリング
レイチェル・マクアダムス
原*ニコラス・スパークス『THE NOTEBOOK』
配給*GAGA 公式HP
とある療養施設にいる、老人性痴呆で思い出を失ってしまったひとりの老婦人のもとへ通う男がいる。手には彼女に読み聞かせるための1冊の本。それは、1940年代アメリカ南部の小さな町の、ある夏の恋の物語。
何もかも投げ出してかまわない。そう思えるような恋をしてしまった二人の話。材木置き場で働くノアの住む田舎町に、夏の間だけやって来る大金持ちの娘アリー。
身分違いの恋、親の反対、夏の終わりとともに訪れる別れ。アリーはその夏を思い出に変え、新しい恋もするのだけれど、結婚を前におとずれた思い出の町で、ふたりはもう一度、あの夏の恋を思い出す。情熱は壁を乗り越えることが出来るのか。愛の力は奇跡を成し得るか。テーマや設定はものすごくありきたりで、何度も何度も使い古されたもの。若い二人の恋だって、見方によっては無節操で馬鹿馬鹿しく見えるかもしれない。「出口調査の満足度94%」のコピーにも、半信半疑で挑む。
だけどやられた。やられてしまった。きらきらする映像のうつくしさとレイチェル・マクアダムスの可愛らしさが、もう反則級。素晴らしい作品に仕上がってます。すっごい好きだこれ。貞操観念が足りないとか、ありきたりとか、アメリカ的とか、そんな批判は聞きたくありません。いいのそんなのどうでもいいの。『加速する純愛ブームの真打ち登場!』ってコピーは最低だけど、中身はよいです。おすすめです。恋がしたくなります。2月5日公開なので、もう是非是非。
<12月14日/ヤクルトホール>
恋に落ちる確率 ---Reconstruction
監/脚*クリストファー・ボー出*ニコライ・リー・カース
マリア・ボネビー
クリスター・ヘンリクソン
配給*アーティストフィルム 公式HP
友人や恋人に囲まれ、平凡でしあわせな生活を送っていたアレックスは、ある日、美しい女性アイメに出会う。運命の女性だ、と思えるひとに。しかしその運命的な恋に落ちた瞬間から、彼の周囲が狂い始める。住んでいた部屋が忽然と消え、今までの友人や恋人は彼を知らないと言う…。
カンヌ映画祭批評家週間最優秀作品賞ならびにカメラドール受賞のデンマーク映画。それだけで一筋縄でいかない映画だということはわかるけど、やっぱり難しかった。『Reconstruction』これもまた、邦題を信じるとひどい目に遭う映画です。
同じ女優が演じるふたりの恋人。夢か現か判断のつかない設定とストーリー。観ているうちに『?』がいくつもいくつも浮き出てくる。カメラドールをとっただけあって、アーティスティックというか玄人好みの映画だと思う。けれど、観終わったときにあきらめに近いふしぎな満足感が得られる。夢でみたような運命の人。今愛しているはずの恋人と、同じ顔をした運命のひと。彼らの持っていたものは、だんだんとreconstructionされていく。恋の仕方なさ?みたいなのをすごく抽象的に描いている視点はとってもおもしろい。単純に楽しめる映画ではないかもしれないけれど、是非もう1回観てみたい。ちなみに公式サイトにこんなのもありました。
それにしても、公開3日目にしてひどい空き様だったんだけど、なんでだろう…。
<12月13日、シネセゾン渋谷>
ホワイト・ライズ ---Wicker Park
監*ポール・マクギガン
脚*ブランドン・ボイス
出*ジョシュ・ハートネット
ローズ・バーン
ダイアン・クルーガー ほか
配給*日本ヘラルド
恋する気持ちが生み出した、せつない嘘をめぐるラブストーリー。大筋でいえばすれ違いものがたり。愛し合うふたりが目と鼻の先にいるのに、お互いをみつけだせない。マシューがリサをおもう気持ちはとてもまっすぐで、アレックスのマシューへの気持ちも、とてもまっすぐで。決して交わらないふたつの恋がせつなさたっぷりに描かれていて、マシューとリサを見つめるアレックスの目が、せつなく涙をそそります。でもあたし、すれ違いドラマってあんまり好きじゃないんだよなぁ。たった今マシューが出てきたドアにリサが入っていくなんて。やだやだ、早く二人を出会わせて。早くしあわせにしてあげて。ただ映画全体に流れる空気?というか雰囲気はすごく好きで、なんといっても雪の舞い散る冬のシカゴがとっても綺麗。涙の似合う街だなあシカゴ。マイ・ボディガードのあとだからか邦題も気にしてみたんだけれど、これはいいな。「ホワイト・ライズ」この嘘に本当に罪がないかはわからないけど、そのもととなる気持ちのひたむきさと、映画をつつむ雪景色とぴったり。
ジョシュ・ハートネットはおいしい役どころだった。彼はこういう好青年役が似合うなあ。
(12月11日、関内MGA)

