(自分を抱きしめる女)

 

 

家に戻った葵は元気だった。いつも以上に元気で、涼先輩がパパだったことが嬉しかったらしい。車の中ではずっと先輩の話をしていた。助手席に座る葵の話に耳を傾けながら頷き、時折彼は笑っていた。

 

私は複雑な思いでその情景を眺めている。私の不安の何倍、いいえ何十倍も彼は辛い思いをしている。そんなこと考えると胸が痛くなる。

 

 

彼に気づかれないように外をみる。時々2人の会話に紛れる様に笑う。でも、バックミラーから見える私の姿を見て気がついてしまうかもしれない。彼に心配をさせないようにしなきゃ。私は前を向いて2人の話の中に入り、一緒に笑った。

 

 

 

 

 

 

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「ママ、パパに電話してもいい?」

 

「うん、ちょっと待ってね。」

 

私は葵の携帯に番号を入れる。

 

:もしもし、葵です。はい、こんばんわ。はい、大丈夫です。はい、・・・

 

初めは緊張していた葵だった。でも最後にはいつもの葵の口調になっていた。

 

:うん、ママに変わるね。うん、わかった考えておく。ママー、パパが変わってって。(不思議な感じだった。

 

:はい、変わりました

 

:葵は本当にいい子で、君に似ているところがある。声も君にそっくりで嬉しいよ。(涼先輩の嬉しそうな声が聞こえる。

 

:葵は初めてあった時に先輩をパパかもしれないと感じていたようです。

 

:やっぱり親子だな。僕も娘かもしれないと思っていたよ。葵がパパって呼んでもいいかと聞いてきた時、嬉しかったよ。こんなに嬉しいなんて思ってもみなかった。

 

:私も不思議な感じがします。

 

:そうだね、不思議な感じがするよ。ところで、今日は変わったことはなかった?

 

:はい、ありません。大丈夫です。

 

:良かった。明日学校と会社に弁護士が行くから心配しないでいい。それから、弁護士が立ち会っていない場合に困ったことを聞かれても答える必要ないから。弁護士に任せていると言って回避するようにして欲しい。朝には車が2台そっちで待機ている。運転手も僕が選んだ信用できる人だ。ボディーガードも兼用している運転手だから、葵の心配もしなくていいからね。・・・

 

 

 

 

どんなに説明されても不安だった。生活が一変することが分かっているから。電話を切った後も落ち着かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベットへ入ったその時、携帯が鳴る。ユイ君からだ。

 

:もしもし。

 

:もしもし、雪さん?

 

:うん。(声が詰まる。

 

:大丈夫ですか?車で色々考えている様子だったので。(やっぱり気がついていたんだ。

 

:大丈夫よ。

 

:雪さん、しばらくこれまでのように会えなくなると思います。だから約束して欲しいことがあります。いつも自分の気持ちを抑え込まないでください。僕には本当のことを話して欲しいんです。・・雪さん、大丈夫ですか?

 

 

どんなことも見透かしてしまうユイ君・・わたしは急に弱くなる。

 

:大丈夫・・じゃない。

 

:それでいいんです。我慢したらダメです。どうしたいですか?

 

:わかんない。でも不安で落ち着かないの。

 

:じゃ、一緒に映画見ましょう。

 

:えっ、

 

:僕が言う通りに準備してくださいね。

 

 

私はベットへ横になりipadでユイ君と同じ映画を流す。携帯は繋がったまま映画を見ながらお喋りをする。私はいつの間にか眠っていた。ユイ君は私が寝たら電話を切るから心配しなくていいと言っていた。

 

 

 (ベットの上のipad)

 

 

 

 

 

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下へ降りると車が二台待機していた。葵の運転手さんは若くて素敵な人だった。スーツ姿ではなく、少しラフな格好だが濃紺の清潔感あるきちんとした服装。涼先輩が配慮してくれたに違いない。嬉しそうに手を振る葵を見送る。私の担当は涼先輩の運転手さんだった。

 

 

 

「あの、後20分ほどかかるんですけど大丈夫ですか?」

 

「はい、気になさらないでください。いつでも近くで待機していますので。」

 

「すいません。」

 

 

知らない人でなくてホッとする。これも涼先輩の配慮だろう。私は急いで家へ戻った。

 

 

 

 

 

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会社の近くに着いた。できるだけ目立たないように少し早めの時間。

 

 

「この辺でいいです。」

 

「はい、かしこまりました。」

 

「あの、ずっと待ってるんですか?」

 

「はい、そうです。営業で外出されると伺っています。その際にもお声かけ下さい。週末も待機しています。」

 

「・・お休みないんですか?」

 

「あります。交換しますので大丈夫です。」

 

「そう・・ですか、営業に回る時他の人も一緒でもいいですか?」

 

「はい、大丈夫です。急ぎの場合は連絡頂ければ道路の確認をしておきます。」

 

「わかりました。今日は午前中に1件、午後に2件の外出予定があります。後で行き先をメールしておきます。」

 

「かしこまりました。」

 

「それから、ドアは自分で開けます。」

 

「承知しました。」

 

 

ドアを閉める。外は暑かった。

 

私は歩きだす。

 

きっと会社で噂になるのは時間の問題だと思う。人事担当と直属の上司しか知らない葵のことも、そして涼先輩のこともすぐに知れ渡るだろう。くよくよ悩んでいても仕方ない。ユイ君が言うように今を受け入れ、この状況を危惧するのではなく楽しむと決めたのだから。そうよ。私専属の運転手なんて素敵じゃない。帰りに買い物して帰ろう!

 

 

 

 (運転手付きの車から降りる女性)

 

 

 

 

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「上原君、ちょっと。」

 

部長に呼ばれる。きっと弁護士が着いたんだと思った。

 

「はい。」

 

私は、部長の後を歩く。エレベーターに乗る。部長は15階のボタンを押す。えっ、15階って社長室しかないと聞いていたけど、どういうこと?エレベーターを降りると茶色の絨毯が広がっている。他のフロアーとは別格で壁もシックな茶色とゴールドのラインが施されている。まるで高級ホテルのラウンジのよう。私はドキドキしていた。

 

部長は受付の秘書に話をする。秘書は2回ノックをして、間を置いてからドアを開けた。

 

 

 

 

(社長室のドア)

 

 

 

 

 

部屋からは笑い声が聞こえる。たぶん社長の声だと思う。「失礼します。」部長が言う。私も下を向いたまま「失礼します。」と部長の後について行く。顔を上げると、驚いたことにそこには笑顔の涼先輩がいた。その後ろには男性が1人立っている。

 

 

 

社長が私を見る。

「おっ来たか。さぁ、森本さんの隣に座りなさい。」

 

私は部長の顔を見る。部長は頷く。社長に頭を下げ先輩の隣に座る。

 

「聞いたよ、君だったかニュースの人は。」

 

社長は嬉しそうな顔で私を見ている。私は先輩をみる。先輩は微笑んで頷く。

 

「全部、森本さんから聞いたから心配しないでいい。まさか彼女が森友さんの探していた人とは、なるほど納得です。彼女は我が社のエースの1人で、女性で若くして課長になった優秀な社員ですよ。それでいて男性社員から一目置かれていて誰が口説いてもなびかないと有名らしいです。そうだよな、佐藤君?」

 

「はい、そうです。我が社の男性は誰も声かけられません。女性社員からは憧れの的です。」

 

部長が答える。

 

「そうですか。私が知っている彼女もそういう人です。」

 

涼先輩が答える。社長は私を見る。

 

「これから少し周りが騒がしくなるだろう。だが心配しなくてもいい。できる限りの協力と必要なことはこちらで手配しよう。これでどうですか?」

 

「はい、十分です。運転手と車はこちらで手配してあります。」

 

「そうですか、彼女は出張が多いよな佐藤君。」

 

「はい多いです。海外出張もあります。」

 

「そっか、うーん、、調整できるかい?」

 

「はい、大丈夫だと思います。」

 

私は慌てる。

 

「あの!」

 

「ん、どうかしたかな?」

 

「仕事は今まで通りさせて頂きたいです。」

 

「だが生活も一変するだろうし、このままのスピードで仕事続けるとキツくなると思うが・・・。」

 

「大丈夫です。電車が車になっただけですから。」

 

その言葉に社長と涼先輩は顔を見合わせて笑った。

 

「あははは、そうだな。確かに君のいう通りだ。じゃ、こうしよう。周りに迷惑をかけると思ったら、佐藤君に相談しなさい。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

ホッとする。社長が先輩に聞いた。

 

「会見で言ってましたが、ご結婚されないんですか?」

 

私は涼先輩の顔を見る。先輩は社長に笑顔で答えた。

 

「はい今まで別々の人生を歩んできたので、お互い生活の基盤が違うんです。ですから、今後も結婚の予定はありません。ですが、彼女は私にとって大切な人であることには変わりありませんので、よろしくお願いします。」

 

「そうですか、わかりました。じゃ、佐藤君彼女のことは頼んだよ。」

 

「はい、かしこまりました。」

 

 

 

部長と私は社長室を出た。

 

エレベーターのドアが閉まる。佐藤部長が壁にもたれかかる。

 

 

(エレベーターの中)

 

 

 

「おーぉ、疲れた。お前さ、俺に言っておけよ。驚いたぞ、社長室から電話があって、俺・・クビかと思ったよ。」

 

「そんな訳無いじゃないですか。それより部長、社長室に行くなら言ってくださいよ。びっくりしたじゃないですか?」

 

「お前、森本涼のこと黙ってて俺にそれ言うか?」

 

 

 

佐藤部長は大学のサークルの先輩で亡くなった夫とも友人だった。葵の事も彼は知っていて総務と掛け合ってくれた。

 

「それは・・すいません。」

 

「まったく。驚かせてくれるよな。とりあえず、会議室で話を聞かせてくれ。それから、弁護士が来てるらしい。後で話がしたいと言ってたから、今日の予定は調整しておくように。急ぎの外回りは前田に振って処理していいから。うちのCMの女優、同じ事務所なんだってさ。だから森本涼が直接来たみただぞ。好待遇なのはそのお陰だな。たぶん社長が箝口令を引くと思うが、俺の予想では無理だと思う。おい、社内外に広がるのはすぐだぞ。覚悟しておけよ。」

 

 

 

 

 

 

佐藤部長の言う通りだった。噂は瞬く間に広がり、午後には社内で誰も知らない人はいなかった。箝口令はすぐに発令された。貼り出しこそしないが各部署の部長クラスが注意事項を説明していた。今後上原雪に対する誹謗中傷・写真などを無断で掲載した場合、法的に処罰の対象になり得ると言う事。彼女に関しての外部への情報漏洩もそれに当たる可能性があると説明されたようだった。

 

 

今日の外回りは全て調整をせざる得なくなり、私は佐藤部長と長い打ち合わせの後、弁護士との打ち合わせに入った。全て終わった頃には2時を過ぎていた。廊下をすれ違う人と挨拶を交わす。今までとは違う空気が漂っていた。仕方ない事だと自分に言い聞かせる。部署へ戻ると皆が私を一斉に見た。シーンとなったその時、

 

「ほら、ただでさえ他の部署の視線が痛いのに、ここだけでもいつも通りにしないと上原課長泣いて辞めちゃうぞ。いいのか?」

 

「私は泣きません、部長。」

 

「そうか、さっき泣いてなかったか?」

 

「ご冗談を。」

 

 

その会話で少し空気が緩んだ。

 

「上原課長、びっくりしましたよ。」

 

「お子さんいるんですか?」

 

「えぇ、そうなの。黙っててごめんなさい。」

 

「森本涼と知り合いなんですね、いいな!」

 

「サインとか貰えたりしないですよね?」

 

私は笑う。

 

「聞いてみるわね。欲しい人は言って。」

 

「私も欲しい!」

 

「僕も欲しいよ!」

 

キャ!と声があがる。

肩を叩かれる。振り返ると涼先輩がいた。

 

 

 

「森本涼よぉ!!キャ!!」

 

部署は大騒ぎになる。奥にいた女性社員が立ち上がり駆け寄る。私は彼に声をかける。

 

 

「ずっと、いらしたんですか?」

 

「いや、社長と食事に行って来たんだ。弁護士から打ち合わせが終わったと連絡があったから来てみたんだ。ゆき、お昼まだだよね。これ買ってきたら。」

 

「すいません、ありがとうございます。」

 

 

 

「キャ!!ゆきだって、上原先輩すごい。」

女子社員が声を上げる。興奮している社員たちに涼先輩が声をかける。

 

 

 

「おやつを買って来たので皆さんで召し上がってください。」

 

キャぁぁ!!と更に悲鳴が上がる。マネージャーのような男性が幾つもの袋を女子社員に手渡す。部長が近づき、

 

「すいません。気を使って頂きありがとうございます。2人で話があると思いますので会議室へどうぞ。ご案内します。太田さんお茶を2つ用意してくれるかな?」

 

「部長・・でも。」

 

「この状況を落ち着かせたいだけだ。会議室で昼休憩とってきてくれ。森本さんの案内も頼むよ。」

 

「わかりました。」

 

涼先輩はみんなを見て言った。

「みなさん、どうか同じ部署の皆さんでゆきを守ってください。お願いします。サインは後ほど届けさせますから。」

 

女子社員はうっとりしている。男子社員は頷く。

 

「まずはさ、俺がもらうべきだよな。」

佐藤部長が言うと、

 

「ダメですよ、ジャンケンでしょう部長。」「なんでだ。部長が先だよ。」「それ、パワハラですよ。」「ここでパワハラ持ち出すのは!セクハラだ。」「部長〜、それ意味わかりません。アハハハ。」部内に明るい笑い声が広がる。

 

 

 

 

 

私は先輩を案内する。

会議室にお茶が運ばれてきた。

 

 

「ありがとう。」

 

涼先輩は女子社員に声をかける。会釈した後彼女は出ていった。

 

「食べて温かいうちに。」

 

「はい、頂きます。」

 

お弁当を広げる。可愛いお弁当、一口サイズで色とりどりの野菜が可愛くカットされている。

 

 

(色とりどりのお弁当)

 

 

 

 

 

「可愛いですね、食べるの勿体無いぐらい。」

 

「ゆきが好きそうだなと思ったから。」

 

先輩はお茶を飲む。

 

「社長室では驚かせたようですまない。先に言うと構えるかと思って言わなかったんだ。」

 

「はい、その方が良かったです。びっくりしましたけど、一瞬で終わりましたから。」

 

先輩は微笑む。

 

「お菓子の差し入れ余計だったかな・。」

 

「いいえ、助かりました。みんながいつも通りに戻ってくれたのでホッとしてます。涼先輩のおかげです。ありがとうございます。」

 

少し満足気で嬉しそうな顔の先輩。

 

「良かった、ゆきの役に立てて。今日一日オフにした甲斐があったよ。」

 

「今日、お休みなんですか?」

 

「そうなんだ。夜、葵と食事でもどうかな?」

 

「葵、喜ぶと思います。今朝も嬉しそうに車に乗って学校へ行きましたよ。かっこいい運転手さんで喜んでました。」

 

「高校生だから、ボディーガードとして行動する時に目立たないような服装をお願いしたんだ。一緒にいたら、お兄さんに見えるように。」

 

「お兄さんですか?若いしカッコいいから彼氏に見えるかもしれませんよ。」

 

「それはダメだ。もう少し年寄りに変更するか?」

 

顔を見合わせて、2人で声をあげて笑う。

 

 

「じゃ、食事の件は後で連絡する。」

 

「はい、わかりました。」

 

「帰る頃には会社の前で記者が待ってるはずだから、役員用の出入り口を使うようにしてほしい。社長には了承を得ているから。気をつけて。」

 

「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

>>>>>

 

無事に家に着く。記者に遭遇することもなかった。葵も何事もなかったよう。ただ学校でみんなに聞かれたらしい。どうして運転手付きの車で来たのかと・・そこで葵は「魔法使いがいるんだって言っておいた」と笑っていた。

 

しばらくして迎えの車が到着した。

 

 

 

 

 

 

葵が選んだのは中華料理。

 

お店は涼先輩が予約していた。お洒落な店内で、テーブルには美味しそうな料理が並んでいる。メニューを見ていないけど、きっと高いはず。まだ次々と運ばれてくる。

 

「こんなに食べれるの?」

 

「残ったら、持って帰るといいよ。」

 

「そっか、パパはこの中でどれが好き?」

 

「八宝菜かな。葵は何が好きなんだ?」

 

「絶対、エビチリ!」

 

「絶対海老チリか、あはは。じゃ、持ち帰り用も注文しておこう。」

 

「やったー!あとね、杏仁豆腐も好きだよ。」

 

「じゃ、デザートは杏仁豆腐だな。」

 

「うん、決定!!」

 

 

 

2人はあっと言う間に打ち解けていた。先に電話で話した事が良かったんだと思う。葵はすんなり涼先輩のことをパパと呼んでいた。本当に家族のようだった。きっと誰が見ても家族にしか見えない。

 

 

 

(テーブルいっぱいの中華料理)

 

 

 

 

 

デザートが運ばれてくる。

 

 

 

「そうだ、ほら約束のプレゼント。」

 

「やった!!本当にいいの?」

 

「いいよ、開けてごらん。」

 

 

 

新作のiPhoneとipadだった。

 

「いいんですか?こんなに高価な物。」

 

「あぁ、これからは今まで出来なかったことを2人にしたいんだ。だから、返すなんて言わないで欲しい。」

 

「言わない!言わない!絶対返さないよぉ。」

 

葵が首を横に振る。私と涼先輩は笑う。

 

「ママにはないの?」

 

「大丈夫、ママのは家に届けてあるから。」

 

「OK!」

 

「あははは、葵は面白いな。」

 

「今時の高校生はこんな感じだよ。」

 

 

 

2人は今までの時間を取り戻すようにたくさんお喋りをした。車でも話は尽きない。

 

 

 

「葵、アイスクリーム食べて帰ろうか?」

 

「うん!食べたい!」

 

「じゃ、ママは今日疲れているから先に帰してあげよう。」

 

「いいよ。」

 

 

私は2人に手を振る。疲れていた。気力、体力どちらも限界だった。先に帰しくれた涼先輩に感謝していた。明日も仕事だ。お弁当の準備もしないといけない。するべきことを考えるだけで疲れが増す。でも仕方ないことだった。これを乗り切っていかなければ。

 

 

鍵を差し込みドアを開ける。明かりが点いていた。消し忘れたんだわ。靴を並べて部屋の奥へと進むと、ユイ君がいた。

 

「どう・・して。」

 

「森本さんから連絡があって陸と一緒にきました。鍵は千佳さんが開けてくれました。今日は疲れたでしょう。大丈夫ですか?雪さ・・・。」

 

思わず駆け出していた。

 

彼の胸に思いっきり飛び込む。

 

 

その勢いに押されることなくしっかりと受け止める彼。抱きしめながら優しく頭を撫でてくれる。何回も何回も・・その手の温もりが私の心を溶かしていく。気を張っていた体が心が解放されていった。

 

 

何もいらない、

ただ彼だけが必要だった。

 

 

 

「よく頑張りましたね。」

 

彼の顔を見上げる。

 

「今日の雪さんも、よく頑張りました。」

 

頬を涙が流れていく。

 

 

 

そっと頬にキスをする。涙を拭くように反対の頬にも・・キスをする。そして力強く私を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 (抱きしめ合う男女)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、『再び開いたパンドラの箱』

 

 

 

 

 

 

 

第18話再び開いたパンドラの箱

 

 

 

 

 

 

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