1982年のイギリス映画。目覚めると自殺未遂を試みる身元不明の青年。女性精神科医ファーマーが診察するうちに、周囲の人の身の回りに異常が起き始める。怪しい事件を体験するのだけど、どれも幻覚であって現実には起きていない。どうやら青年が無意識のうちに本人の悪夢を周囲に体験させているらしい。

 

そしてファーマー医師の周囲だけに現れる謎の女性。どうやら青年の母親らしいのだけど…。

 

舞台はアメリカなのだけど、描き方はいかにもイギリス、字幕のフォントもいかにも60~70年代のイギリスという感じで、へたうまというかださいというか。怪奇現象も心理スリラーとしての気味悪さはいろいろあるのだけど、対処する人間たちには論理的なところは少しもないのがイギリス映画の特徴ですね。あまり解決したらめでたい、という感じでもなく、バッドエンドを予感させる終わり方。

 

まあでもいいんです。イギリスだから。

 

で、一つだけ、重要な追記。主役の青年、何か他に目立った役を演じてたかな、と思って調べたら、なんと「マダム・セクレタリー」のラッセル・ジャクソン秘書官の人でした。全く見た目が違うのでわからなかったけど!あと、青年をすぐ電気ショックで治療しようとする頭の悪い精神科医は、「レイダース」で最後に爆発しちゃう考古学者ベロックを演じた人です。

 

ウェズリー・スナイプス主演、ジョン・バダム監督の作品。スカイダイビングの映像が豊富で、「この映像どうやって撮ったの?」と思うようなカットもたくさん。

犯罪の手口というのは、それほど巧妙ではなく、夜闇に紛れてスカイダイビングで屋上に着地して政府の機密情報を盗むというもの。そのためにハッキングの天才を刑務所からさらう、という少し回りくどい設定になってます。

後半がビルの中で銃撃戦、格闘になってくるので「ダイ・ハード」的なシーンもありますが、アクションの妙味はいまいちかな。

ゲリー・ブージーお得意の狂気の悪役が今回も炸裂しています。

スカイダイビングスクールの世話焼きおばちゃんが見た顔だな、と思ったら「ツイン・ピークス」でローラ・パーマーの母親サラを演じたグレイス・ザブリスキでした。ヒロイン役のヤンシー・バトラーは映画・テレビで少し出演作がありますが、あまり大ブレイクはしなかったようです。

 

ピアース・ブロスナンのいつも相手の一枚上をいく、余裕のある怪盗ぶりは確かの魅力で、それと対抗するようなレネ・ルッソのやり手捜査官ぶりがどうぶつかり合うか、というところです。

結果的には、ちょっと一方的すぎてバランスを欠く結果になったかな、というか、思いの外、どきどきハラハラはしなかったような気がします。

盗みの手口とかはまあまあ面白かったにしても。

レネ・ルッソをそんなに脱がさなくてもよかったんじゃないか、というのもひとつ気になったところ。

 

シリーズの第1作にして超えられない最高傑作。

やはり構造として、アウトサイダーのアクセル・フォーリーが、身勝手ながらも口八丁手八丁で周囲を巻き込んでいって、初めはあきれていたビバリーヒルズの行儀のいい刑事たちが次第に彼のペースに染まっていく、というプロセスを見せたことに魅力があります。

まず最初にビリーが、そして次にタガートが、刑事として何を大事にするべきか、自分で考えて選択していく、という心理がよく描かれているのが、今更ながらによく分かります。

ロニー・コックスの警部補が、最初は全然融通の利かない堅物だったのが、最後に署長に筋の通った説明をするところ、やはりいいなと思いました。

その意味では、最初から関係性が成立してしまっているパート2以降が、それほどのカタルシスをもち得なかったのは仕方がないのかな、とも思います。

監督のマーティン・ブレスト、作品数がそんなに多くないのですが、傑作「ミッドナイト・ラン」につながるアクションやサスペンスの前兆がすでにこの作品で見られているな、と気づくポイントもいくつかありました。



ケーブルで放送したので録って見たけど、これ泣いちゃうくらいよかった。

92年ごろにニューヨークにいた時、MTVのチャンネルで「マッハGo Go Go」をそのまま流していて、すごく人気があった。その直後から、ジョニー・デップ主演で映画化される、とか噂は流れていたんだけど、いろいろ事情があったのか延期に次ぐ延期で、結局2008年の公開。

最初はちょっとティム・バートン風の極彩色だなぁと思って見ていたけど、最後にはちゃんとウォシャウスキーらしい、「自分は何者かを知る」というモチーフが前面に出てきた。

ちらっと写真で見た印象よりもエミール・ハーシュがカッコいい。クリスティーナ・リッチも、ジョン・グッドマンも、スーザン・サランドンも、その他のキャストもみんないい。

レースの時代設定こそ近未来に移植されてるけど、元のアニメへの愛もハンパない。越部信義さんのテーマ曲もサントラにふんだんに生かされていて、エンドクレジットでは元音源も使ってた。

エンディングで、アニメの吹き替え音声らしき英語のセリフがいくつか流れたので気づいたけど、アニメで使われたセリフをそのまま劇中で使っているところも結構あるみたいだ。もしかしたら90年代に大ヒットした時も、この吹き替えにしびれた人が多かったのかな、とか思った。

公開時にはゲームっぽいCGが不評で興行的にも不振だったらしい。レースが本当に好きな人は、レースシーンの映像については言いたいことがいろいろあるのかも知れない。90年代の熱狂のタイミングは逃したにしても、もっと愛されてもよかったんじゃないかなぁ。

 

リドリー・スコット制作のシリーズで、1シーズン・10話で終わってしまったシリーズを見ました。

 

原作は3冊あって、当初は映画で3部作にしようとしていたみたいですが、うまくいかなかったらしくテレビシリーズに変更になったらしいです。結果的には1シーズンで打ち切りの憂き目にあいました。

 

10歳の少女がさらわれて、吸血鬼ウイルスの人体実験にさらされる、という話なのでなかなか大人の感覚どうなってんだ、と思いますが、このウイルスが鳥インフルエンザを初めとするいろんな病気を治す万能薬として期待されている、ということで踏み切ると。少女をさらうのが仕事だったFBIの捜査官が、途中で心変わりをして、彼女と一緒に逃亡するけど、結局つかまってしまう。

 

少女にはウイルスが注入されるけれど、若さ故か適応が早く、吸血鬼には変わりきらず、施設に囚われている最初の吸血鬼のマインドコントロールも逃れて抵抗する、というお話。

 

結局最後には12人の吸血鬼たちが施設を脱走して、全米が脅威にさらされ、世界の他の国から核攻撃を受けてしまう、という、なかなか衝撃的な終わり方でした。

 

原作はまた、90年以上後の世界を舞台に展開したりしているんですが、だいぶドラマは原作にはないキャラクターやサイドストーリーを追加してました。打ち切りになった関係か、最後はだいぶ駆け足に。回収されない伏線もたくさんあったのは惜しかったです。

 

 

ヒッチコックとデヴィッド・リンチとジム・ジャームッシュ、スタンリー・キューブリックがないまぜになったような、めくるめく映像の世界。主人公の自堕落さや猥雑さで序盤はどうかな、と思いましたが、物語の運びがすばらしく、象徴性とナゾが次々に問いかけてきて、見入ってしまいました。最後にこの主人公の心象が明らかにされて、いままでとはちょっと違った日常にかえってゆく、見事だなと思いました。現代の若者が常に迫られている健全な決断が生み出す閉塞感、つい陥りがちな陰謀論など、現代文明へのアイロニーも効いています。

途中にさまざまな映画・音楽の引用があり、全てがわかるわけではないけれども、愛に満ちた作品だと思います。アニメーションあり、スプラッターありの手法的なチャレンジも評価したいです。

 

アガサ・クリスティものはあまり見てこなかったんだけど、心を入れ替えて「クリスタル殺人事件」を見てみた。

1980年作品とだいぶ前の作品。アンジェラ・ランズベリーは「ジェシカおばさん」の人だけどミス・マープルを演じたのはこれだけ。殺人が起きるとすごくうれしそうにする変態ぶりはなかなか面白い。

3作のオプションがあったけどアメリカで不振だったのでこれだけになったようだ。

ミス・マープルは前半で足を痛めてなかなか現場に行かずに甥っ子の警部が大半の捜査をするんだけど、この甥っ子役のエドワード・フォックスがなかなかチャーミング。

ロック・ハドソンを初めてちゃんと見た感じ。往年の大女優、という役どころのエリザベス・テイラーもなかなかの達者ぶり。若き日のピアース・ブロスナンもチョイ役で出ている。

終盤に昔の再現シーンがあって、オーケストラの指揮者がジェームズ・コバーンに見えたのだけど、クレジットに名前がないので見間違えかもしれない。

 

これをシリーズと呼べるのかどうか微妙な感じですね。

地球のエネルギー問題を解決するために宇宙ステーションで作業していたらそれが暴発して、地球が消えてしまった!?その理由は?と探っていくわけで、ある意味宇宙を舞台にした「FRINGE」にも似た展開。途中でクルーが一人ずつ死んでいく、とか裏切りがあるとか、「エイリアン」シリーズのお約束ものがあるので、飽きはしませんが、ちょっと期待感とは違う方向に行ったような。

地上側でのストーリーがあることが、逆にある意味のネタバレになってしまっている、というのも残念で、ちょっと違う作りにした方がよかったんじゃないかなと思いました。