ヒッチコックとデヴィッド・リンチとジム・ジャームッシュ、スタンリー・キューブリックがないまぜになったような、めくるめく映像の世界。主人公の自堕落さや猥雑さで序盤はどうかな、と思いましたが、物語の運びがすばらしく、象徴性とナゾが次々に問いかけてきて、見入ってしまいました。最後にこの主人公の心象が明らかにされて、いままでとはちょっと違った日常にかえってゆく、見事だなと思いました。現代の若者が常に迫られている健全な決断が生み出す閉塞感、つい陥りがちな陰謀論など、現代文明へのアイロニーも効いています。

途中にさまざまな映画・音楽の引用があり、全てがわかるわけではないけれども、愛に満ちた作品だと思います。アニメーションあり、スプラッターありの手法的なチャレンジも評価したいです。