肥満、ムーンフェイス、食欲増進
こんにちは。橋本です。
ステロイド薬の大量投与を長く続けると、肥満になりやすくなります。
さらに、ステロイド薬の働きで、食欲がいつもより出やすくなるので、食事や間食をセーブしないと余計に肥満が目立ってくるようになります。
気になるムーンフェイスとは?
ステロイド薬を長い間、多量に内服すると、いちじるしく体重が増えるケースがよくあります。
何で体重が増えるかというと、体の脂肪が増えるんですね。
ステロイド薬を服用して全身的な作用が続くと、脂肪がつきやすくなります。
いちばんわかりやすく出てくるのは、なんといっても顔。
それから、おなか。
ステロイド薬の服用によって顔がまん丸くなる現象をムーンフェイス、または満月様顔貌(まんげつよう・がんぼう)とよんでいます。

いいか悪いかは別にして、わかりやすいネーミングですよね。
また、肩のあたりにも脂肪がつきやすくなることがあって、これを野牛肩(やぎゅうかた)、またはバッファローハンプ(buffalo hump)とよんでいます。
では、なんでムーンフェイスや野牛肩がよくあらわれるんでしょうか?
じつは、ステロイドの内服による肥満は、食欲だけによるものではないのです。
インスリンに反応しにくくなる?
ステロイド薬を内服などで投与して、血液中にのると、インスリンというホルモンにも作用してしまいます。
インスリンは普段、適量に放出されることで、血液中の糖分をうまい具合にコントロールしてくれています。
しかし、ステロイドが全身に作用すると、体がインスリンに対する感受性(かんじゅせい:「反応のしやすさ」のこと)を下げてしまいます。
そうなると、せっかくインスリンが出ていても、体がなかなか反応しないため、血液中に糖分が余りやすくなる。
その余ったエネルギーが、脂肪として体につきやすくなるんですね。
脂肪沈着がおこりやすくなる
ステロイド薬が血液中にのると、脂肪組織にも作用します。
ただ、脂肪組織のステロイドに対する「反応のしかた」「反応のしやすさ」が、体の場所によって違います。
その結果、
・ 顔
・ 首まわり
・ 背中上部
・ おなか
・ 肝臓
といったところに脂肪が沈着(ちんちゃく:「しっかりくっつく」こと)しやすくなります。
中心性肥満とは?
また、ステロイド薬は血液中にのると、体の筋肉にも影響を与えます。
筋肉が血液中の糖分をエネルギーとして使うのをおさえる。
そして、筋肉のタンパク質が分解されやすくなる、といった傾向が出てきます。
これが、脂肪組織への作用が重なると、
⇒ 腕や足は細くなる
⇒ 顔やおなかは脂肪がつく
といった、体の中心部に脂肪がつきやすくなる、「中心性肥満」という傾向が強くなります。

つまり、体の場所によって、脂肪が増えやすくなって、筋肉が減りやすくなるわけです。
筋肉が減ることで、筋力も低下しやすくなります。
高齢者では、今までより体をおこすのに苦労するなどの、ミオパチーとよばれる筋力低下症状が出ることもあります。
実際に子どもは、どのように肥満の変化をたどっていくの?
ただ、このムーンフェイスをはじめとした中心性肥満は、ステロイドの服用をはじめて、すぐに出るわけではありません。
投与を始めてから、3~4週間後ぐらいに出始めるケースが多いようです。
ステロイドによるムーンフェイスや肥満は、ステロイド薬を内服した小児の約70%でおこるという報告もあります。
それだけ、多量、長期の内服ではおこりやすい副作用のひとつなんですね。
また、元々の病気がおさまったのを確認しながら、ステロイド薬を順調に減らし始めても、すぐに肥満は解消されるわけではなく。
ステロイド内服開始から2か月後、3か月後に肥満がピークになることも珍しくありません。
ステロイドをうまく減量していって、プレドニゾロン(ステロイド薬の製品名)で1日10mgを切るような量になると、目立たなくなることも多いといわれています。
病気によっては、1日5~10mg程度のプレドニゾロンを年単位で続けることもよくあります。
そして、病気がおさまり、ステロイドの減量がうまくいって、内服を中止できれば、子どもでは、100日ぐらいで以前の体型に戻る傾向があるようです。
ムーンフェイスになると、正直ショックだけど……
ステロイドで肥満になっても体の機能的には問題はありません。
実際には、感染症をはじめとした、ほかの副作用がおこった場合のほうが深刻です(程度にもよりますが)。
ムーンフェイスは、外見的な変化。
人からもパッと見てわかる変化なので、とくに、女の子や子どもにとっては、もっともショックを感じる副作用かもしれません。
しかし、おこった場合の事態の深刻さからいえば、肥満はある意味、軽い副作用です。
ステロイドの服用を計画的にゆっくり中止できれば、体型は元に戻ります。
それに比べ、感染症は命にもかかわることがあります。
ただ、肥満は、ただでさえステロイド薬によっておこりやすくなる糖尿病を、さらにおこしやすくさせることも考えられます。
そのため、ステロイドで食欲が増すことを理解しつつ、できれば食事や間食をほどほどにセーブするのが望ましいですね。
もちろん栄養不足もいけないです。
先にも挙げたように、ステロイド薬の内服による肥満は、食欲が増すことだけが原因ではありません。
太るのが嫌だからといって、過剰な食事制限、無理な運動をすることは、おすすめできません。
体調を崩し、病状や副作用がひどくなる恐れもあります。ほどほどがいちばんですね。
ステロイドの長期服用中には、糖尿病になる前に気づけるよう、血液検査を定期的に受けること。
血糖値に変化がないか?を知ることも重要です。





