【コント】甲子園

西暦３０２０年
甲子園運営本部

部長
「（写真を見ながら）こっちが西暦２０２０年の甲子園球場・・・。」

部下
「はい。
　そして、こちらが今年・・・つまり西暦３０２０年の甲子園球場です。（写真を渡す）」

部長
「（写真を見る）・・・なるほどな。」

部下
「こうして見ると一目瞭然です。」

部長
「確かに、この１０００年の間に
　甲子園球場のグラウンド全体が２ｍほど下がっているようだな。」

部下
「はい。西暦２３００年頃からホームランの本数が如実に減ってきていました。
　当時は球児たちの技術力の低下ではないか、と言われていました。
　しかし、この写真を見てください。（写真を渡す）」

部長
「これは？」

部下
「西暦２０２０年と西暦２５２０年のベンチにいる監督の写真です。
　彼らの目線に注目していただきたいのですが・・・。」

部長
「あぁ、２５２０年の方が目線が下を向いているな。」

部下
「はい。
　この目線の違いを見て、
　初めてグラウンドが下がっているんじゃないかと気がつきました。」

部長
「逆にこのときまで気づかなかったんだな。」

部下
「そして、理由の目星も付いています。」

部長
「どんな理由だね。」

部下
「これです。（写真を渡す）」

部長
「（写真を見て）試合に負けた球児たちだな。」

部下
「はい。
　彼らが試合に負けた時、甲子園球場の土を持って帰る風習は
　１０００年以上前から行われてます。」

部長
「まさか・・・。」

部下
「そうなんです。
　１０００年以上かけて、少しずつ少しずつ土が持っていかれた結果、
　グラウンドの高さが２ｍ下がっていたのです。」

部長
「数の力ってすごいな。
　甲子園球場を２ｍ下げるって・・・。」

部下
「このペースで土を持っていかれると、
　西暦５０００年には、甲子園のグラウンドは地下になります。」

部長
「いや、高校野球ってそんな文字通りアンダーグラウンドなスポーツじゃないから。」

部下
「このまま掘り進められると、
　地下に埋まってる何かが出てくるんじゃないかと言われています。」

部長
「・・・何かって？」

部下
「埋蔵金とか・・・。」

部長
「だとしたら逆に見てみたいぞ。
　泣きながら甲子園の土を集めてる球児が埋蔵金掘り当てるところ。」

部下
「見たいですか？」

部長
「見たいよ。
　『うわぁぁぁぁぁーーーーんんんぁぁぁぁあああっ？！』ってなる瞬間。」

部下
「甲子園の主旨がブレるんで、やめましょう。」

部長
「見たいけどなぁ・・・。」

部下
「まず、埋まってること確定じゃないですから。」

部長
「そもそも甲子園の土を持っていくって風習はなんなんだ？
　持ってって何に使うんだ？」

部下
「保存用と観賞用じゃないですか？」

部長
「いや、自宅で甲子園の土を観賞してる若者って、なんだか心配になるぞ。」

部下
「『ほら、また土なんか観て』って言われそうですね。」

部長
「・・・いまからでも遅くないから、返してもらうか。」

部下
「全部回収できますか？
　なんせ１０００年以上前から持ってかれてますからね。」

部長
「確かに・・・。
　では、これ以上土を持っていかないように球児たちに促そう。」

部下
「それ、実はやってまして。」

部長
「そうなのか？」

部下
「昨年の大会から、球児たちに土を持っていかないように促しているのですが・・・。（モニターをつける）」

当時のＶＴＲ

スタッフ
「（泣きながら土を集める球児を覗き込みながら）なんで持ってくの？
　ねぇ、なんで持ってくの？
　それ、なんに使うの？
　あんまりおいしくないよ？」

球児
「（スタッフを無視して土を集め続けている）えっぐ・・・・！えっぐっ・・・！！」

部下
「（モニターを消す）・・・あまり効果はありませんでした。」

部長
「聞く耳持ってなかったな。」

部下
「今年はもうちょっと強い口調で言いたいと思います。」

部長
「そもそも、なんで負けたチームは土を持って帰るんだ。」

部下
「・・・ひょっとしたら負けたチームは・・・。」

部長
「負けたチームは？」

部下
「土がついたからじゃないですか？」

部長
「あー・・・。」