インターホン
「ピンポーン。」

奥さん
「はーい。(ドアを開ける)」

セールスマン
「こんにちは、奥さん。サプリは要りませんか?」

奥さん
「ごめんなさい。うち、そういうの断ってるんで。」

セールスマン
「まぁ、お話だけでも聞いてください。」

奥さん
「・・・聞くだけですよ。」

セールスマン
「ありがとうございます。
 奥さん、人前で緊張せずに話せますか?」

奥さん
「1対1とかなら問題ないですが、
 大人数の前だとダメですね。」

セールスマン
「でしょう。そんなときに、こちらのサプリ!『ヒューマンスリー』です。」

奥さん
「『ヒューマンスリー』?どんな効果があるんですか?」

セールスマン
「はい。緊張を和らげる効果があります。」

奥さん
「何か心療内科とかで出る薬ってことですか?」

セールスマン
「いえ。奥さん、人前に出るとき、何かおまじないみたいなことをされたことありますか?」

奥さん
「あぁ。3年前に亡くなったおばあちゃんから、人という字を3回書いて飲み込むと落ち着くって言われて、
 小さい頃よくやってました。」

セールスマン
「はい、それです!」

奥さん
「はい?」

セールスマン
「このサプリ、弊社の工場で人という字を3回書いたものを集めて錠剤化したものです!」

奥さん
「人という字を3回・・・。
 あ、だから、『ヒューマンスリー』か。」

セールスマン
「長野県に工場がありまして、弊社の職員が一粒一粒、人という字を3回ずつ書いて生産しています。」

奥さん
「へぇ。じゃあ手間もかかってるんじゃないですか?」

セールスマン
「ただ、機械化はできません。
 人間の手で人という字を3回書くからこそ、緊張が和らぐものだと信じているからです。」

奥さん
「なんか、理念がドモホルンリンクルみたい。」

セールスマン
「どうですか?お買い上げになりますか?」

奥さん
「お高いんじゃないですか?」

セールスマン
「1日2回、2錠ずつお飲みいただいて、30日分が一袋になって4980円です。」

奥さん
「お試しで1袋だけ。」

セールスマン
「ありがとうございます。
 お試しいただいて、気に入っていただければ、定期購入も可能ですので。」

奥さん
「それはまた、今度考えます。」

セールスマン
「ぜひ、よろしくお願いします。それでは失礼します。」

奥さん
「はいー。」

 


翌日。




インターホン
「ピンポーン。」

奥さん
「はーい。」

セールスマン
「『ヒューマンスリー』の訪問販売の者ですが。」

奥さん
「はいはい。(ドアを開ける)」

セールスマン
「失礼します。」

奥さん
「どうも。」

セールスマン
「今朝、カスタマーセンターにお電話いただいて、
 クーリングオフしたいというご連絡をいただきましたが・・・」

奥さん
「そうなんです。
 昨日、主人にサプリの話をしたら、『それはお前、騙されてるんだ』って言われて・・・。」

セールスマン
「大丈夫です、奥さん。この商品の力は本物です。」

奥さん
「でも、主人も以前、別の会社の同じようなサプリを使ったことがあるらしいのですが、
 全然、緊張が和らげなかったって・・・。」

セールスマン
「それはどこの会社のサプリでしょうか・・・?」

奥さん
「これなんですけど・・・(袋を渡す)」

セールスマン
「あぁ、このサプリですか。」

奥さん
「ご存知ですか?」

セールスマン
「このサプリについては、弊社も存じております。
 サプリを購入し、弊社で分析を行いました。」

奥さん
「どうでした?」

セールスマン
「こちらが弊社のサプリの成分です。(紙を渡す)」

奥さん
「『人』という字が3つ入ってますね。」

セールスマン
「そして、こちらがご主人の使ってたサプリの成分。(紙を渡す)」

奥さん
「・・・うん。『人』が3つ入ってますけど・・・。」

セールスマン
「よく見てください。」

奥さん
「(紙をよく見る)・・・あ!『人』じゃない!『入』だ、これ!」

セールスマン
「そうなんです。」

奥さん
「これじゃ、緊張は和らぎませんよね。」

セールスマン
「その通りです。
 どうします?クーリングオフされますか?」

奥さん
「いや、主人の使っていたものが類似品だとわかったので・・・。
 こっちのサプリを主人に薦めます。」

セールスマン
「ありがとうございます。
 もしよろしければ、本日もう一袋持参しておりますが、ご主人の分もお買い上げになりますか?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。
 気に入っていただければ、定期購入も可能ですので。」

奥さん
「それはまた、今度考えます。」

セールスマン
「ぜひ、よろしくお願いします。
 それでは失礼します。」

奥さん
「はいー。」

 


翌日。


 


インターホン
「ピンポーン。」

奥さん
「はーい。」

セールスマン
「『ヒューマンスリー』の訪問販売の者ですが。」

奥さん
「今、開けまーす。(ドアを開ける)」

セールスマン
「失礼します。」

奥さん
「毎日すみません。」

セールスマン
「いえ。

 今朝、『ヒューマンスリー』2袋のクーリングオフのご連絡をいただきましたが・・・。」

奥さん
「昨日、主人に話をしたら、
 『なんでクーリングオフするように言ったのに、もう一袋買ったんだ』って言われまして・・・。」

セールスマン
「なるほど。では、契約解除ということで。」

奥さん
「はい。申し訳ないです。」

セールスマン
「いえ。ところで奥さま。『ヒューマンスリー』の期間限定特別版のお話ってお伝えしましたでしょうか?」

奥さん
「え、期間限定特別版?
 何ですか、それは?」

セールスマン
「通常版は『人』という字を3回書いたものを錠剤化しています。」

奥さん
「はい。」

セールスマン
「今月限定で『人』という字を一粒につき、4回書いて錠剤化しています。」

奥さん
「それ、絶対、緊張和らぐじゃないですか!」

セールスマン
「そうなんです!」

奥さん
「お値段は?」

セールスマン
「4980円。据え置きです。」

奥さん
「今月だけ?」

セールスマン
「今月だけです。」

奥さん
「お値段変わらず?」

セールスマン
「お値段変わらずです。」

奥さん
「なるほど・・・。(考える)」

セールスマン
「どうなさいますか?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。ご主人の分は?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。では、2袋ということで。」

奥さん
「はい。」

セールスマン
「気に入っていただければ、定期購入も可能ですので。」

奥さん
「それはまた、今度考えます。」

セールスマン
「わかりました。それでは失礼します。」

奥さん
「はいー。」

 


翌日。


 


インターホン
「ピンポーン。」

奥さん
「はーい。」

セールスマン
「『ヒューマンスリー』の訪問販売の者です。」

奥さん
「はーい。(ドアを開ける)
 すみません。4日連続で。」

セールスマン
「いえ。

 昨日、購入された『ヒューマンスリー』2袋をクーリングオフしたいとのことですが・・・」

奥さん
「主人に話をしたら、『お前は俺の言ってる話の本質がわかってない』って言われて・・・」

セールスマン
「なるほど。奥さんは風見鶏なんですね。」

奥さん
「ありがとうございます。」

セールスマン
「褒めてないですよ。それでは契約解除ということで。」

奥さん
「はい。」


「(外から)ワン!ワン!」

奥さん
「こら、リュウ!お客さんに向かって吠えないの!」

セールスマン
「大丈夫ですよ、奥さん。犬を飼われてるんですね。」

奥さん
「えぇ。番犬として重宝してます。」

セールスマン
「(袋を取り出す)これ、弊社で作っているドッグフードなのですが・・・」

奥さん
「ドッグフードも作っているんですね。」

セールスマン
「はい。『犬』という字を3回書いて、ドッグフード化したものです。」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。ご主人の分は?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。では、2袋ということで。」

奥さん
「はい。」

セールスマン
「気に入っていただければ、定期購入も可能ですので。」

奥さん
「それはまた、今度考えます。」

セールスマン
「そこだけは冷静なんですね。それでは失礼します。」

奥さん
「はいー。」

 


翌日。


 


インターホン
「ピンポーン。」

奥さん
「はーい。(ドアを開ける)
 すみません。毎度毎度。」

セールスマン
「はい。クーリングオフとのことですが・・・。」

奥さん
「えぇ。主人から、
 『いろいろと意味がわからない。『犬』という字を3回書く意味もだし、俺の分を買った意味もだし。』って言われて・・・。」

セールスマン
「奥さんを間に挟むより、私とご主人が直接、話をした方が早い気がしてきました。」

奥さん
「ありがとうございます。」

セールスマン
「褒めてないですよ。では、契約を解除いたしますね。」

奥さん
「何度もすみません。」

セールスマン
「構いませんよ。」

スマホのバイブ音
「ウィーン!ウィーン!ウィーン!」

奥さん
「(電話に出る)もしもし。
 あら、信子おばさん。どうしたんですか?
 ・・・それなら、いいサプリ知ってますよ。

 今、セールスマンの方がいらしてるので、聞いてみますね。」

セールスマン
「どうされました?」

奥さん
「主人のお義母さんからなのですが、

 今後、町内会でダンスを披露することになったらしいんです。

 緊張するから何とかしてほしいと言われて。」

セールスマン
「ほぅ。」

奥さん
「もしよろしければ、『ヒューマンスリー』を一袋、購入できませんか。」

セールスマン
「それはそれは。ありがとうございます。
 よろしければ、『犬』という字を3回書いたドッグフードをセットで購入されますと、お安くなりますが。」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。ご主人の分は?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。
 両方、ご購入された方に、
 武田鉄矢さんが『人』という字を3回書いた『ヒューマンスリー・金八エディション』という商品もございますが。」


奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。ご主人の分は?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。ペットの分は?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。亡くなったおばあさまの分は?」

奥さん
「買います。」

セールスマン
「ありがとうございます。定期購入は?」

奥さん
「それはまた、今度考えます。」

セールスマン
「そこだけは揺るがないんですね。」

 

 

 

 

 


【コント・セルフ・ライナーノーツ】

『人という字を3回書くおまじない』から広げたコント。

設定自体は3月くらいから思いついていたのですが、

うまくまとまらず、暖めてました。

 

さて、5月6日で当ブログは5周年を迎えました。

ブログタイトルは何度か変わりましたが、コントブログという根底は変わりません。

 

これからもよろしくお願いします。

 

【上演メモ】

人数:2人

奥さん

セールスマン

 

所要時間:4分~5分
難易度:★☆☆☆☆
備考:日常の一場面であり、セットもいらず、衣装も特別なものは不要です。

実現が難しい演出もないので、演じやすいと思います。


↓twitterです。

(もふもふって名前ですが、僕です。

コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
Twitter

↓こちらでも面白いブログがきっと見つかる!はず。
にほんブログ村 お笑いブログ 自作面白ネタへ
にほんブログ村


お笑い&ジョーク ブログランキングへ