(止まっている電車の前で)


大輝さくら
(向き合って立っている)

さくら
「東京に行っても、私のこと忘れないでね。」

大輝
「あぁ。」

さくら
「私も忘れない。」

大輝
「あぁ。」

さくら
「向こうに着いたら、連絡して。」

大輝
「(時計を見る)そろそろ出る。
 行かなくちゃ。(電車に乗る)」

さくら
「年末には帰ってきてね!」

大輝
「あぁ!」

さくら
「手紙送る!!」

大輝
「あぁ!」


(電車動き出す)


さくら
「(電車と並走しながら)あたし忘れない!!」

大輝
「あぁ!」

さくら
「待ってるから!!」

大輝
「あぁ!!」

さくら
「あたし・・・あたし・・・!!」


(電車、行ってしまう)


さくら
「・・・行っちゃった。(立ち尽くす)」

 


彼らの先祖も同じような経験をしていたのです。



(置いてあるカゴの前で)


大輝さくら
(向き合って立っている)

さくら
「江戸に参勤交代に行っても、私のこと忘れないでね。」

大輝
「あぁ。」

さくら
「私も忘れない。」

大輝
「あぁ。」

さくら
「向こうに着いたら、連絡して。」

大輝
「(太陽を見る)そろそろ出る。
 行かなくちゃ。(カゴに乗る)」

さくら
「参勤交代が終わったら帰ってきてね!」

大輝
「あぁ!」

さくら
「矢文送る!!」

大輝
「あぁ!」

家臣
「(カゴ動き出す)下にー!下に!!」

さくら
「(カゴと並走しながら)あたし忘れない!!」

大輝
「あぁ!」

さくら
「待ってるから!!」

大輝
「あぁ!」

さくら
「いつまでもあなたのこと想ってる!!」

大輝
「あぁ!」

さくら
「あたしの殿はあなただけだから!!」

大輝
「あぁ。」

さくら
「忘れないでね!!」

大輝
「あの・・・。」

さくら
「いつまでも!!」

大輝
「えーと・・・。」

さくら
「絶対に!!」

大輝
「(カゴを運ぶ人に)すみません!
 もうちょっとスピード出ませんか?!」

さくら
「あたしは絶対忘れない!!」

大輝
「彼女ずっとついてきてるんですけど!」

さくら
「生涯あなたに着いていきます!!」

大輝
「まいてください、彼女を!」

家臣
「下にー!下に!!」

大輝
「『下に』とかいいんで、横見てください!」

さくら
「これ、お水です!(水を差しだす)」

大輝
「(受け取る)なんかマラソンの伴走者みたいになってるから!
 斬新でしょ、大名行列で伴走者って!」

さくら
「矢文送ります!」

大輝
「この近距離で矢文送らないで!
 刺さるから!」

さくら
「そ・・・、それは私の気持ちが届くということですか?!」

大輝
「あ、違う。
 そういう刺さるじゃない。」

さくら
「向こうでの活躍、祈っています!」

大輝
「ホント、スピード出ませんか?
 あ、これ使ってみようかな。」


(カゴから、にんじんの付いた棒が伸びてくる。
 にんじんをカゴを運ぶ人の前に垂らす)


大輝
「ほーら、大好きなにんじんだよー。
 これでスピード出してー。」

家臣
「下にー!下に!」

大輝
「ほらほらほらー!
 にんじんだよー!(にんじんを揺らす)」

家臣
「下にー!下に!」

大輝
「ほーら、どうだい?
 おいしそうだねー!食べたいねー!
 食べるにはスピード出さないとだねー!」

家臣
「下にー!下に!」

大輝
「・・・どうかな、これでまいたかな?(カゴの外を見る)」

さくら
「私たちはいつも一緒にいます!」

大輝
「しっかりついてきてるし!
 ってか、スピード全然出てないじゃん!
 にんじんキライなの?
 にんじんだよ?」


(カゴが止まる)


大輝
「・・・?
 どうしたの?何かあった?」

家臣
「殿。今日の宿場です。」

大輝
「1日ついてきちゃった!!」

さくら
「あたし、寝袋あるんで。」

大輝
「準備万端!!」

 


翌朝


 

(置いてあるカゴの前で)


大輝さくら
(向き合って立っている)

さくら
「江戸に参勤交代に行っても、私のこと忘れないでね。」

大輝
「・・・。」

さくら
「私も忘れない。」

大輝
「うん。このくだりいる?
 昨日もやったよね?」

さくら
「向こうに着いたら、連絡して。」

大輝
「この流れ、異例の二日目に突入なんだけど。
 もう乗るよ?(カゴに乗る)」


家臣

「(カゴ動き出す)下にー!下に!」

さくら
「参勤交代終わったら帰ってきてね!」

大輝
「よくそのテンション保てるね。」

さくら
「絶対忘れないでね!!」

大輝
「そのテンションで一晩話しかけられ続けたから、寝不足なんだけど。」

さくら
「矢文送るから!」

大輝
「だから、送らないで。危険だから。」

矢が刺さる音
「ズボッ!!(カゴに矢が刺さる)」

大輝
「送ってきた!!
 聞いてる?!危険だから!!」

さくら
「届け、私の想い!!(矢を射る)」

矢が刺さる音
「ズボッ!!(カゴに矢が刺さる)」

大輝
「届いてる届いてる!!
 敵に回しちゃいけないってことは伝わった!!」

さくら
「あなたはわたしのもの!!(矢を射る)」

矢が刺さる音
「ズボッ!!(カゴに矢が刺さる)」

大輝
「怖いー!!
 参勤交代にストーカーついてきてるー!!
 周りの者も止めてよ!
 主が命の危険に晒されてるのだから!!」
 


2週間後



(四方八方から矢が刺さっているカゴの前で)


大輝さくら
(向き合って立っている)

大輝
「ぐすん・・・。ぐすん・・・。」

家臣
「殿。江戸に着きましたぞ。」

さくら
「へへっ!来ちゃった!」

大輝
「うん。一部始終見てた!!」

 

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

ドラマによくある電車での別れのシーンを、むりやり参勤交代に置き換えるというシチュエーションを作ってみました。

参勤交代って過去のコントでもいろいろやってますが、使いやすい素材なんですよね。

 

【上演メモ】

人数:3人

大輝

さくら

家臣

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★★★☆
備考:カゴの用意や矢が刺さる演出、カゴと並走するさくらを表現するための演出など、いろいろ課題があります。

実際に演じるよりも朗読劇向けかもしれません。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】天使と悪魔の二択の話#5
【コント】ブーメラン先生
【コント】報酬とペナルティ
【コント】崖
【コント】男子100m走

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

・内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。

・お題をいただいてから、公開までに数か月かかることがあります。

・公開までにアメブロを退会された場合、公開を見送る場合があります。

 

↓こちらでも面白いブログがきっと見つかる!はず。
にほんブログ村 お笑いブログ 自作面白ネタへ
にほんブログ村


お笑い&ジョーク ブログランキングへ