体育座りをしている子供たちの前に大人ひとり。



先生
「さぁ、見てるんだ、子供たち。
 今から先生が、このブーメランを遠くに投げるからね。
 すると、遠くに投げたブーメランがこっちに戻ってくるんだ。」


子供たち
「ほんとー?」


先生

「本当さ。見てるんだよ、子供たち。
 (子供たちに背を向けて、ブーメランを投げる。)えいっ!!」


子供たち
「うわぁ!飛んだー!」


先生

「さ、もうすぐブーメランが戻ってくるよ。」


子供たち
「わくわく。わくわく。」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
「(ブーメランをキャッチする)ほら、戻ってきた!!」


子供たち
「うわー、すごーい!!」


先生
「どうだい、ブーメラン。すごいだ・・・」



(もう一つブーメランが飛んでくる)



先生
「あぶなっ!!(ブーメランをキャッチする。)」


子供たち
「うわー、すごーい。1つなげたら、2つ戻ってきたー!」


先生
「いや、2つ目は違う・・・」


子供たち
「先生!もう一度やって!!」


先生
「いや、2つ返ってくることはないんだ・・・」


子供たち
「アンコール!アンコール!!」


先生
「いや、2つ目は先生にもよくわからない・・・」


子供たち
「もう一回!もう一回!」


先生
「・・・もう一回だけだぞ。」


子供たち
「わーい!」


先生
「いくぞ!えいっ!!(子供たちに背を向けて、ブーメランを投げる。)」


子供たち
「わくわく。わくわく。」


先生
「さぁ、もうすぐブーメランが戻ってくるぞ。」


子供たち
「うん!」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
「(ブーメランをキャッチする)ほら、戻ってきた!!」


子供たち
「うわー、すごーい!!」



(もう一つブーメランが飛んでくる)



先生
「うわっ!(キャッチする)これがわからないんだよなぁ。」


子供たち
「わー、また増えたー!」


先生
「いや、増えることは今回教えたい事の本質じゃないんだ。」



(もう一つブーメランが飛んでくる)



先生
「(キャッチ)3つ?!」


子供たち
「すごい!さらにスケールアップした!!」


先生
「違う違う。あとから飛んできたブーメランは違うんだ。」


子供たち
「先生、もう一回!」


先生
「完全に増えるところに興味を持っちゃったみたいだけど・・・」


子供たち
「もう一回!もう一回!!」


先生
「もう一回やってもいいけど、あとから飛んできたブーメランは違うんだよ。」


子供たち
「つべこべ言わずにな・げ・ろ!!」


先生
「わかったよ・・・。わかりましたよ・・・。」


子供たち
「わーい。」


先生
「じゃあ、先生が投げたブーメランは1つだけだというのを証明するために、
 ハルト、このブーメランにキミの名前を書いてくれ。(ブーメランとペンを渡す)」


ハルト
「うん!」


先生
「なんか、マジックやるみたいになってきたけど・・・」


ハルト
「書いたよ!(ブーメランとペンを返す)」


先生
「ありがとう。それじゃ、投げるよ。えいっ!(ブーメランを投げる)」


子供たち
「わくわく。わくわく。」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)


子供たち
「すごーい!先生、カッコいい!!」


先生
「どうだ!!」



(砲丸が飛んでくる)



先生
「あぶなっ!!(よける)」


子供たち
「すごーい!ブーメランじゃないのも飛んできた!」


先生
「何で砲丸が飛んでくるんだ・・・
 (ブーメランを確認する)ほら、最初のブーメランにはハルトのサインが入ってるだろ?」


ハルト
「うん!」


先生
「残りのブーメランにはハルトのサインが・・・ある?!」


ハルト
「あ、この砲丸にもボクのサインが書かれてる!」


先生
「え?なになに?!
 こわいこわいこわい!
 増えたの?!分裂したの?!
 砲丸に至っては、もうワケがわからないし。」


子供たち
「もう一回見たい!」


先生
「もういいよ!」


子供たち
「今度は何が飛んでくるのか見たい!!」


先生
「先生、それどころじゃないんだ。
 先生、自分の中に秘めていた能力が今、開花しようとしてることに動揺してるんだから。」


子供たち
「な・げ・ろ!
 な・げ・ろ!!」


先生
「・・・わかったよ。」


子供たち
「やったー!」


先生
「じゃあ、ハルトのサインが入ったこのブーメランを投げるよ。」


ハルト
「うん!」


先生
「えいっ!!(ブーメランを投げる)」


子供たち
「わくわく!わくわく!!」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)



(砲丸が飛んでくる)



先生
(よける)



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)



(矢が飛んでくる)



先生
(よける)



(ヤリが飛んでくる)



先生
(よける)



(自転車が横切る)



先生
(よける)



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)



(銃声がする)



先生
(マトリックスのようによける)


子供たち
「うわー、いろいろ飛んできたねー」


先生
「もうないか・・・?!もう飛んでこないか?!」


ハルト
「すごい!飛んできたもの全部にボクのサインが入ってる!!」


先生
「(周囲を警戒しながら)先生、もうやらないぞ・・・?!」


子供たち
「うん!もう十分堪能した!」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
「まだくるか!?(キャッチ)」


子供たち
「先生、もういいよ。」


先生
「(周囲を警戒しながら)先生だって、やりたくてやってるわけじゃないんだ。」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
(キャッチ)


子供たち
「まだ飛んでくるね。」



(砲丸が飛んでくる)



先生
「(よける)やばい。完全に止まらなくなってる。」


子供たち
「先生、もうボクたち帰っていい?」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
「(キャッチ)待ちなよ!先生、まだ終わってないんだぞ!」


子供たち
「先生、さようなら!!」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
「(キャッチ)勝手に終わるな!」


ハルト
「帰ろう帰ろう。」


先生
「ちょっと待て、ハルト!お前だけは帰るな!
 お前のサインが入ったブーメランや砲丸が、もう恐怖のかたまりに見えてくるんだ!」


ハルト
「今度はちゃんとした色紙にサインしてあげるね。(帰る)」



(ブーメランが戻ってくる)



先生
「(キャッチ)そういうことじゃないんだ!!」




先生は翌日から長期休暇に入り、今もまだ、復帰していません。


ブーメランのように颯爽と戻ってくることを期待しています。




ハルト







【コント・セルフ・ライナーノーツ】

ゲームの設計をしているときにものすごい時間差で戻ってくるブーメランというのを考えて、

そこから広げたコントです。


最初は時間差で飛んでくるブーメランを書いていたのですが、ちょっと読みにくかったので、

方向性を変えて、こんな感じになりました。