アナウンス
「ご来場のみなさまにご連絡いたします。
 さきほどの男子100m走で、
 第2レーンを走っていた田所くんが
 あまりにスピードを出しすぎたせいで、
 爆音とともに、みなさまの目の前から消えてしまいました。
 
 現在、競技場周辺を捜索しております。
 もう少々お待ちください。
 
 また、男子100m走の順位については、
 ただいま、ビデオにて確認中です。
 
 なお、この件につきましては、混乱を招くため、
 許可がおりるまで、ブログ、Twitterでの
 情報拡散を禁止いたします。
 ご了承ください。
 
 現在、地元の警察、消防に連絡し、
 競技場周辺を捜索しています。
 
 たった今、入った情報によりますと、
 田所くんの捜索範囲を競技場周辺から、
 競技場を中心とした半径500m圏内に拡大したとのことです。
 
 また、田所くんが消滅した瞬間のビデオカメラの映像を
 地元の大学に提出し、解析を依頼しています。
 
 大学の教授の中には、田所くんが時速140kmを超えてしまったため、
 過去の世界にタイムスリップしたのではないか?という見解を述べる者もおりますが、
 無視して解析を進めています。
 
 只今入った情報によりますと、
 田所くんらしき人物が走っている姿が
 商店街の防犯カメラに映っていたとのことです。
 ひとまず捜査班は、商店街の防犯カメラの映像も地元の大学に提出し、
 解析を進める方針です。
 
 みなさまに繰り返しのお願いになります。
 混乱を避けるため、許可が下りるまで、
 この件について、ブログやTwitterへの投稿は
 控えていただきますよう、お願いします。
 すでに、本陸上競技会の公式Twitterが炎上しているとの連絡が入っています。
 許可が下りるまで、ネットへの投稿は控えていただきますよう、お願いします。
 
 只今入った情報によりますと、
 田所くんらしき人物が走っている姿が、5か月前の新聞の写真に掲載されているとのことです。
 さきほど一部教授が述べていた「田所くんタイムスリップ説」が有力視されてきました。
 捜索班は田所くんの捜索範囲を、競技場を中心とした半径500m圏内から半径1km圏内に広げ、
 さらに、過去1年分の新聞の写真も捜索範囲に入れるとのことです。
 
 皆様に再三のお願いとなります。
 本件について、ネットへの投稿はお控えください。
 現在、田所くんと過去の写真とのコラージュが大量にネットにアップされています。
 過去の陸上競技会に田所くんが映っている写真を筆頭に、
 戦国時代の合戦で田所くんが先陣を切って走っている姿、
 宮中で蹴鞠に興じている田所くんの姿、
 荒野の中、マンモスを追い回す田所くんの姿など、
 続々とアップされていますが、捜索に支障をきたすため、
 田所くんのコラージュ写真をネットにアップするのはお控えください。」



物音
「ズドーーーーーン!!」



アナウンス
「・・・なんでしょう?
 今、ものすごい爆発音がトラックの方から聞こえましたが・・・
 あ!!田所くんです!!
 甲冑姿の田所くんが爆音とともに戻って参りました。
 みなさん、盛大な拍手で迎えてあげてください!
 
 やはり、田所くんは過去の世界にタイムスリップしていたのでしょうか?
 あの甲冑がどういう意味なのかはわかりませんが、
 無事、田所くんが戻って参りました。
 盛大な拍手に包まれて、今ゴールです!!
 
 さて、気になる田所くんの100m走のタイムです。
 3時間15分23秒19!
 100m走の記録とは思えない大記録がでました。
 
 みなさんにお願いがあります。
 田所くんのためにも、この記録をブログやTwitterで拡散するのはおやめください。
 100mを3時間15分で走った場合を時速に換算するのはおやめください。
 
 あ、田所くんが走って逃げた!
 やはり、100m走を3時間という記録に逃げ出したくなったのでしょうか?!
 すごいスピードです!
 田所くん、すごいスピードで競技場内を逃げています!!」
 
 
物音
「ズドーーーーーン!!」
 
 
アナウンス
「・・・またものすごい爆音が・・・
 あ!田所くんがいない!!
 現代に嫌気がさし、過去の世界に逃げてしまったのでしょうか?!
 
 どうか、ブログやTwitterへの投稿はお控えください。
 『田所わず』と投稿している場合ではありません。
 田所くんの逃げた先は過去でしょうか、未来でしょうか。
 
 それではここで、棒高跳びの競技の結果、高く飛びすぎて空から落ちてこなくなってしまった
 森崎くんの続報をお届けします。」









【コント・セルフ・ライナーノーツ】

生身の体のまま、時速140kmを出してタイムスリップしたら・・・?

という発想を元に作ったコントです。

完成したころには、そんな設定はどこかに行ってしまいましたが・・・