先に記述した「二つの大局的な視点」を背景に、
また、EU発“金融クライシス”という暗雲漂う現在、

2012年度に向けての心構えは:
「IT業界を取り巻く環境の急変に備えなければならない」だ。


目の前に「滝つぼ」がある。

「何も起きないと思うよ」とたかをくくっているのかもしれないが、
突如、それに向かって急降下する瞬間・・・・
後戻りできないことに気づく・・・ああ・・・。

「肝心なことは見えないもの」だ・・・いや、
「肝心なことを見ようとしない」のだろう。

それでも、
「オレはそう思わないよ」
「ウチは大丈夫」「きっとなんとかなるさ」

それだけ自信があれば、心配ない。

さもなくば、


<ステップ1: 最優先課題は何か?>


ソフトハウスの社長である「あなた」にとっての
2012年度の「最優先課題」は何だろうか?

think!・・・
think!・・・

個人的な見解で恐縮だが:
「財務体質の改善、強化」こそ、その筆頭に掲げたいのだ。
「Cashを積み上げて万一の事態に備える」こと。

特に、今年は・・・。
「あなた」の会社が「滝つぼ」に落下してもらっては困る。

経営リスクをいかに回避するか・・・
「あなた」の知力が試される年でもある。

さらに攻めの課題を加えて、並列にランキングしていただくのも
大歓迎だ・・・が、「財務体質の改善、強化」だけは外せない。


<ステップ2: シナリオメーキング(1)>


さて、
「あなた」が責任をもって掲げた「最優先課題」の解決に向けて
具体的にどのようなシナリオを描くのか。
そのシナリオこそ、「あなた」が年頭のK/O会議で全社員に語りかける
内容だ。


【第一回】に例としてあげた「数値目標」だけでは、不十分であり、
シナリオとして完結しない。

ここで、過去3年間の予実管理表を紐解いてほしい。
定めた「数値目標」なるものは、現実として達成したのだろうか?
恐らく・・・否。
ソフトハウスの90%は現状維持、昨年並みが精一杯だったのでは
ないか。

「あなた」は「今年も会社は何も変わっていない」ことに気づき愕然
としたこともあったのではないか。
その時、社員の気持ちのゆがみに思いをはせる余裕はなかっただろう。

今年も、このパターンを繰り返すのだろうか・・・


そこで、
次の「命題」の真偽について、自らに問いかけてほしい:

<命題>
「社員の勤労意欲と企業の成長との間に相関関係がある」
すなはち、
「社員のやる気は、“会社が成長しているな“と実感できるときに
スイッチがオンになる」


いかがなものだろう。

また、
「成長」といっても、それは「量的な成長」ばかりではなく、
「質的な成長」をも意味する。

個人的には、この「質的な成長・進化」こそ重要視したいのだ。


<ステップ3: シナリオメーキング(2)>


さて、
「最重要課題」の一つである「財務体質の改善、強化」は
経営上の2012年度の必達目標でもある。

次のステップは、
どうすれば、そうなるのか?・・・具体的に展開しなければならない。

think!・・・
think!・・・


そのための取り組みとして、まずは「ビジネスの原点」に回帰してみては
いかがであろう:

「ビジネスの原点」=「ビジネスを維持・成長させる方法」だ。

「あなた」にとって、それは何か?


ご自分のAnswerをお持ちであれば、心配ない。


さもなければ、
「ビジネスの原点」へのアプローチとして、是非、参考にして欲しいのは:

次の三つの領域(三点セット)から攻めてみることだ。


1. 新規顧客の開拓:

・最も労力・コスト・時間がかかる領域だ。
・新たな「人と人との信頼関係」構築には時間が必要なのだ。
・新たな技術分野への参入を考えるのも面白い。
・「あなた」ならどうする?

2. リピート率を上げる:

・単純に「稼働率」をあげることを意味しない。
・「営業サイドからのリピート」と「技術サイドからのリピート」。
・技術者の育成、達成感、帰属意識の高揚につながる手立てとは。
・「あなた」ならどうする?

3. 取引単価の増額:

・経験年数だけでは、「単価アップ」の実現はおぼつかない。
・社員のスキルを客観的に把握する道とはなにか。
・会社として何を目指すのか。
・「あなた」ならどうする?


さあ、もう時間がない。

上記「三点セット」について、「あなた」の会社として、どのように
取り組み、そして具体的なシナリオに落とし込んでいくのだろうか。

それは、同時に、
あのざわめきから聞こえてきた:

「どんな会社を目指したいの?」
「オレに何してくれるの?」
「わたしは何をすればいいの?」

社員の声に耳を傾け、応えるものであって欲しい。
社員こそ“ダイヤモンドの原石”だから。

・営業部隊のシナリオ:
(オレは何をすればいいの、それはオレにとってどんな意味があるの?)。
・技術部隊のシナリオ:
(私は何をすればいいの、それはわたしにとってどんな意味があるの?)。
・全社、あるいは組織としてのシナリオ:
(会社はオレ達に何をしてくれるの?)。

「三点セット」はそれぞれが密接に絡み合う。
その組み合わせ次第では、大きな相乗効果をもたらすだろう。


こうして、
「あなた」のシナリオはすでに手元にある。
それは、「会社の生き方」を表現したものであり、
「あなた」の会社の「思想」と同義でもある。

そのシナリオを、社員に語りかけ、そして、
日々の活動に結びつけ、尽力し、
四半期ごとに見直しを図り、
「あなた」の会社にとって最も相応しい
「三点セット」のベストミックスを探し求め続けてほしい。

結果として、
例え、量的な売上目標が未達であったとしても、
シナリオに沿ったいくつかの重要な「質的な前進」があれば、
しめたものではないだろうか?

生き残るためには、「質的変化」をコツコツと積み上げるしかない。
それは高利益体質(PL勘定)への近道であり、
健全な財務体質(PL勘定+BS勘定+cash flow)への基盤となる。


毎年、「何も変わらない」は・・・まずい。
「思想」に裏打ちされた「シナリオ」の欠落が・・・まずいのだ。


最後に、
2012年度が、「あなた」の会社、そして全社員にとって、最良の年と
なりますようお祈りしております。


<完>