美術館からモネの絵が白昼堂々と盗まれた。怪しい富豪。それを追及する美人保険調査員。しかし二人は....。
製作:1999年、脚本:レスリー・ディクソン、カート・ウィマー、監督:ジョン・マクティアナン
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
トーマス・クラウン(ピアース・ブロスナン)-企業の経営者、しかし絵画泥棒
キャサリン・バニング(レネ・ルッソ)-保険会社の調査員
マイケル・マッキャン(デニス・リアリー)-刑事
アンドリュー・ウォレス(ベン・ギャザラ)
パレッティ刑事(フランキー・フェイソン)
ジョン・レイノルズ(フリッツ・ウィーヴァー)
フリードリヒ・ゴルチャン(チャールズ・キーティング)
ハインリヒ・ヌーツォン(マーク・マーゴリス)
精神分析医(フェイ・ダナウェイ)
ボビー・マッキンリー(マイケル・ロンバード)
ポール・チェン(ジェームズ・サイトウ)
アンナ・ヌーセン(エスター・カニャーダス)
◆ 補足
「私はどんな映画が好きか?」と自分で考えてみると、一つとしては「登場人物の個性がはっきりしていて、それがよく表現されている映画」が好きである。
本作はどうか?非常に感心した。今まで見た映画の中でも出色である。
美術館からモネの絵が白昼堂々盗まれる。犯人は(警察にではなく我々には)最初から明示される。トーマス。
保険会社は保険金をできれば支払いたくない。キャサリンがかかわってくる。警察の捜査を無視してトーマスに接触する。
キャサリンはトーマスと警察の両方に接触している。なので登場場面が三人の中では一番多い。どんどん勝手な行動をとる。その性格と言動と行動はストレートである。しかしエレガントという雰囲気が漂っている。顔と目つきを見ていただきたい。
本作は「すごいだろ、感心しろよ!」みたいな押しつけがましさがあるが、主役のどちらかを好きであれば、楽しむことができるだろう。もう一つの問題は、アクション場面が少なく会話によって話が展開するので、画面コピーを見ただけでは、本作の展開や良さが伝わらないことである。
本作はスティーヴ・マックイーンの「(1968)華麗なる賭け/The Thomas Crown Affair」のリメイクと言われているが、銀行強盗もの。本作は絵画が対象であり、また絵画固有の話題が多いので「リメイク」と言うには無理があるように感じる。スティーブ・マックイーンの名前を借りたかっただけか?私はスティーブ・マックイーン版は見ていない。
キャサリンがコーヒーを飲む場面が多い。なぜか?タバコを吸う動作の代わりか?トーマスとマイケルもタバコを吸う場面はない。注、レネ・ルッソがタバコを吸う場面は見たことがない。
キャサリンはマイケルのことを常に「警部」と言う。実直なマイケルは、それをいちいち訂正する。
レネ・ルッソ(1954年2月17日-∞)は16歳の時にローリングストーンズのコンサート会場でスカウトされてモデルになった。映画初出演は「(1989)メジャーリーグ/Major League」で35歳の時。これから主演級の女優になったのは驚くべきことである。
■ あらすじ
モネの絵が白昼堂々盗まれた。捜査の結果つぎのようなことが明らかになる。
美術館に展示品が運ばれてくる。石棺のはずだが馬のような形状をしている。しかしその中に盗賊が潜んでおり、セキュリティを突破してモネを盗んだ。
屋上に待機したヘリコプターで盗品を運びだそうとしたが、メンバーは逃げ出すことに失敗して逮捕される。
しかし当該展示室のシャッターは、下に置かれた頑丈なバッグで最後まで下りていない。そしてモネの絵がなくなっている。
警察には見えてないが、我々にはトーマスがシャッターの下の隙間を通ってモネを盗む状況が開示される。
警察は捜査を開始するが、キャサリンが強引に入り込んでくる。マイケルはキャサリンを煙たがるが「冷たいのね~、案外楽しいかもよ」と気にしない。
キャサリンは「犯人が逮捕されたけれども、これは偽装」と断言。また事件当時に展示室の椅子の下に別のバッグが置かれている。これにヒーターが入っており、温度差で映像を認識する監視センサーが無効にされていることを突き止める。事件後は、このバッグがなくなっている。これもキャサリンの指摘。注、トーマスは、このバッグにモネの絵を入れて運び出した。
トーマスは「モネの絵が戻ってくるまでは、自分が持っている別のモネの絵を貸す」と申し出て、この絵が代わりに展示されることになる。
警察の捜査はなかなか進まないが、キャサリンは、過去のオークションでのモネの落札者の一覧からトーマスを抜き出して、簡単に犯人であると断言。キャサリン、大丈夫か?。
そしてトーマスのところに出かけて行って「犯人はあなた」と言ってしまう。マイケルは、このようなキャサリンの行動を批判する。
マイケルはトーマスの自宅を家宅捜索するが成果はなかったようである。
そこでキャサリンは「自分がやる」と宣言。トーマスとデートして、その間にトーマスの上着のポケットからカギを盗み、待機していた人物にカギを渡して複製を作り、デートの終わりまでにポケットに戻す。トーマスも間抜けだな。
キャサリンは、そのカギを使ってトーマスの自宅に忍び込み、他の絵の下に隠されていたモネの絵を盗み出してくる。マイケルは「アメリカには法律がある」と呆れてしまう。そのモネの絵は、まさに盗まれた絵である。キャサリンは得意顔。しかし鑑定してもらうと贋作と判明。キャサリンは怒って、めずらしく汚い言葉を使う。「あのクソヤロー!」。
トーマスがダンスを踊っているところに出かけて、相手のアンナ(エスター・カニャーダス)に「代わって!」と命令し交代してトーマスと踊る。「私をからかうと後悔するわよ」。蛇足だが、後でキャサリンがトーマスに「抱いて!」と言う場面がある。この時の言い方も、お願いしているのではなく、完全に命令口調。これがキャサリン。
アンナは、登場回数が少なく後でもう一度出てくるだけ。しかしストーリーの中では重要。どうして重要であるかは秘密。
ここで私は前半部分のストーリーを端折りながら述べているが、私が本作をみなさんに勧めているのは、そんなことではない。キャサリンの行動・言動・目つき、キャサリンの個性がはっきりと出ている。ついでに服装もよろしい。これは言葉では表現できないので、ぜひ実際に本作を見て確認していただきたい。きっとキャサリン=レネ・ルッソが好きになる。
キャサリンの心理や行動は、トーマスと接触しマイケルと会話しているので、よく分かる。一方でトーマスの心理はどうだろうか。実はトーマスは精神分析を受けており、精神分析医との会話で彼の心理が我々に説明される。
次第にキャサリンに惑わされて、さらにキャサリンに惹かれていく。精神分析医はフェイ・ダナウェイだが、スティーブ・マックイーン版ではヴィッキー・アンダーソン(←本作のキャサリンに相当)を演じている。
さてキャサリンの調査は、どんどん佳境に入っていく。安直な言葉を援用すれば「体を張って」調査を進めていく。街を腕を組んで歩きショッピング、トーマスと寝る、グライダーに一緒に乗る、カリブ海のトーマスの別荘に出かける。ちなみに別荘にはキャサリンのサイズの服がいっぱい揃えてあった。
我々としては、このくらいに体を張った調査であれば「そのうちにすごい調査結果が....」と期待してしまう。しかし上記のような展開がずんずんと進んでいく。キャサリンはなんだか楽しそうである。はしゃいでいる。
そして「ちゃんと調査してるんだろうか?遊んでるだろ!大丈夫か?」という疑問が出てくる。しかし、このような展開もレネ・ルッソのファンとしてはウェルカムではある。
しかしマイケルにトーマスとアンナが頻繁に会っていることを知らされて、キャサリンは少々不安なようでもある。アンナのことを問い詰めるがトーマスは答えない。
途中省略となるが、トーマスは「盗んだ絵を元に戻す」という決断をする。これは会社を売却し泥棒稼業から足を洗ってキャサリンと一緒になるため。できるのか?できるわけないだろ!
キャサリンは、これをマイケルに話してしまう。ちょっと後悔している雰囲気。厳重な警戒態勢が敷かれる。キャサリンも管理室から見ている。
トーマスが美術館に現れる。前に使ったと同じようなバッグを持ち山高帽をかぶっている。美術館の中を歩き始める。警備陣がしっかりと監視している。
そして同じ格好をした人物が現れる。その数がどんどん増えていく。彼らの動線が交差・交錯しバッグを交換していく。警備陣は、彼らの動きを必死に見張る。
■ ネタバレ
本記事は思っていた以上に参照が多く、また映画を見ていない方も多いと思われので、ネタバレしておく。
◆ アンナ
アンナは有名な絵画の偽作家の娘。アンナも偽の絵を描く。父親が服役しているので、トーマスが面倒を見ている。
トーマスが奪われた(実はトーマスが奪った)モネの絵の代わりに、自分が持っているモネの絵を貸し出すが、これが実は奪われたモネの絵である。
その本物の絵の上に水彩絵の具でアンナが別のモネの絵を描いたもの。このような作業をしているのでアンナとトーマスは頻繁に会っているのだが、キャサリンは二人の関係を誤解する。トーマスも本当のことは言えない。
◆ 火災報知機を誤動作させる
最後の美術館の場面。この美術館では飾っている絵の前に扉があって、火災など何かがあった場合に、扉を閉めて絵を守るようになっている。
トーマスは事前に、その扉の前に鉛筆を置いて扉が閉まらないように細工をしておく。
偽トーマスも含めて多数のトーマスが美術館の中を徘徊しているのが最後の場面。トーマスは発煙弾を投げて火災を偽装する。
火災報知器が動作し、美術館中の絵の前の扉が閉まる。スプリンクラーが一斉に水を噴き出す。
しかし例のモネの絵は扉が閉まらないので水がかかる。水彩絵の具が溶けて、元の本物の絵が現れる。
つまり絵が美術館に戻された。
◆ ラスト
トーマスは、最後のスプリンクラー事件の前に会社を売っている。キャサリンも自分の財産を処分する。
最後は、二人で飛行機に乗って、どこかへ旅立つ。
■ 出演作
◆ レネ・ルッソ
(1992)フリージャック/Freejack
(1992)リーサル・ウェポン3/Leathal Weapon3
(1993)ザ・シークレット・サーヴィス/In the Line of Fire
(1995)アウトブレイク/Outbreak
(1995)ゲット・ショーティ/Get Shorty
(1996)身代金/Ransom
(1996)ティン・カップ/Tin Cup
(1997)バディ/Buddy
(1998)リーサル・ウェポン4/Leathal Weapon4
(1999)トーマス・クラウン・アフェアー/The Thomas Crown Affair
(2000)ロッキー&ブルウィンクル
(2002)ショウタイム/Showtime
(2017)ベスト・バディ/Just Getting Started
(2005)ヘレンとフランクと18人の子供たち/Yours Mine and Ours
(2002)ビッグトラブル/水鉄砲⇒弾丸⇒ミサイル⇒核爆弾/BIG TROUBLE














