先日三越劇場見学の記事で、三越お抱えの設計事務所・横河工務所が

日証館も手掛けていた、という話を書きました。

今日はその日証館の内部見学について。

 

下の写真に写っているとおり、このビルには、日本橋公証役場が入っています。

もともと様々な証券会社が入居していたビル、という触れ込みでしたが、

玄関のテナント一覧を見たところ、現在は公証役場が1階の一部を占めているほか、

実に様々な業種が入居していました。

聞いたことのある名前としては、ぺんてる健康保険組合・企業年金基金とか。
あとは会計事務所、不動産会社、法律事務所、会計事務所、ロジスティック関連の会社などなど。
 

 

 

 

以前日本橋で川下りをした際、船から渋沢栄一の銅像が見え、ガイドさんが、

氏の邸宅が近所にあった、といった話をしていました。

正確にはこの日証館のある場所が邸宅だったと今になって気づきました。

(自宅設計者は辰野金吾らしい。)

もっとも1901年に邸宅を例の飛鳥山に移したため、それ以降は事務所として使用。

1923年・大正12年の関東大震災の際、氏はまさにこの事務所で揺れを体験したそう。

御本人は無事ではあったものの、建物は灰燼と化しました。

その跡地に建てられたのがこちらの建物です。

日証

場所           東京都中央区日本橋兜町1-10

竣工年●●●●●   1928年

建築前の用途     渋沢栄一邸宅

設計         横河工務所
施工         清水組
 


 

 

三越劇場のように華美ではないものの、オフィスビルにしては装飾的。

床に幾何学模様を入れるなど手間をかけています。

 

 

 

特に天井が美しい。

 

 

もともとあったと思われる大理石の古い柱に、

改修で付け替えられたと思しき柱飾りがくっついて、

さらに防犯カメラが2つ。

新旧入り乱れた造作が楽しいな。

 

 

階段の大理石はそこそこ傷んでいていかにもオリジナル。

 

 

個人的に大きな発見(?)はこのポスト。

「郵便凾」ゆうびんばこ、と書かれているんですが、これもオリジナルでしょう。

脇に郵便物回収時間(取集時刻)が書かれていて、どうやら現役!

しかもこれ、ただの郵便箱ではないっぽい。

 

 

 

こちらの写真↓上1段目の2枚も日証館の郵便箱です。

左の写真からわかる通り、上に細い出っ張りがくっついています。

となると、これはメール・シューター。

恐らく上から郵便物を落下させて下で回収する仕組み。

真空管で物を押し出すエア・シューターは使ったことがあります。

 

表面プレートには、Cutler Mail Chute Co.の文字。

カトラー社という、メールシューターに特化した会社みたい。

むむ、この会社名、聞き覚えがある。

明治生命館で見かけました(2段目の2枚)。

形状はずいぶん違いますが。

 

そこでアメリカの郵便ミュージアムのサイトをチェック:
Cutler mailing system
Cutler's company was the sole manufacturer of mail chutes and receiving boxes until 1904. During those 20 years, the company produced more than 1600 receiving boxes,
and continued to produce them for several more years.

 

1904年までは(おそらく全米で)唯一のメールシューターの会社だったと。

製造は1910年ぐらいまで続いたみたいですが(1904+ several more years)

となると、1928年竣工のこのビルにこれがあるのは少々謎??

(これ以上深入りは辞めます。)

 

(上2枚:日証館 / 下2枚:明治生命館)明治生命館の郵便箱にもCutlerの文字。

 

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以下写真6枚:

右上の写真に写っている廊下の模様。ちょっと寄せ木細工っぽく見えます。

左上の天井の写真からもわかるとおり、天井に凹凸があるので、光に陰影ができて

惚れ惚れします。

 

 

 

建築祭は、いうなればで大人の社会見学。

なかなかよい機会でした。

 

 

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