アパート、皮袋の男、そして空気人形
ポタッ・・・ポタッ・・・
流しにこぼれる雫の音が部屋に響いている。
私は木の椅子に腰掛けながら、
吸ったタバコの煙を空に噴出した。
曖昧な時間の様に、
煙もまた曖昧に漂っている。
窓から見える風景は、
いつもと何ら変わりが無い。
昨日、食べ残したサンドウィッチを、
冷蔵庫から取り出し、
ついでにビールも取り出した。
一口また一口頬張っては、
ビールを喉に流し込んだ。
そうして、瞼を閉じた。
私は夢を見ている。
スウェード地の皮袋を被った男が、
開いた二つの穴からこちらを見ている。
黒く開いた穴に男の目は見えない。
ただ二つの黒い穴だけがこちらを向いている。
無表情の黒。
椅子に座った私は、
そんな男を見つめながら、
買ったばかりのパイプレンチを思い切り、
窓に投げつけた。
ガシャリッ!!
ど派手な音を上げて窓ガラスが割れた。
そして、私はゲラゲラと声を上げて笑った。
ゲラゲラゲラゲラ
ゲラゲラゲラゲラ
静寂の部屋に私の狂った声だけが響いた。
ラーメン食らってオーラルセックス。
私のギヤがローギヤからトップへとシフトし、
走り出したんだ。
あの闇へ明日へ昨日へ。
背中が見えないほどに、
疾走したのだ。
そして、傍には空気人形が・・・
それが現実ならば、いたんだ
こんばんはっ!!
革命的制裁で後悔したい私です。
山形の旅を『つづく』としておきながら、
私は日々の何だかだで忘れていた。
だから、その後を画像と共に簡単に書いてみる。
絵になる山形男。
この景色に映える彼も独身だ。
私と同じ、いや彼はまだ若い・・・
おちゃらける社長と私。
何だか二人ともポーズがダサい。
飲み屋のおやっさんと私
意気投合。
また行かせて頂きます。
蔵王お釜
素敵な景色が広がっています。
美しいグリーンのお釜が見えるでしょ?
え?そんな物は見えない?
霧がかかって見えないとおっしゃりますか?
私には見えています。
まるでポストカードの写真の様に。
社長と女の人。
あなたはこれで良い夢を見るのでしょうか?
そう、そしてその女の人は?
いた、やはり居たんだよ。
山形には少女時代がいたんだよ。
私はこの目で見た。
これが仮想現実でなければ、
目の前の光景は本物だ。
そうして、私もまた眠りについた。
さようなら、今日と言う日。
山形には少女時代がいるかも知れないんだ
お盆休みをもらったんだよ。
ぼかあ~どうしようかと考えたんだ。
そうしたらば、稲妻の如く啓示が降りたんだ。
「やまがたへ!!行けっ!!」
「GO!GO!Y・A・M・A・G・A・T・A!!」
そう神が言っている。
ぼかあ、すぐさま道路マップを買って行く準備をした。
カーナビだって?
ノン・ノン・ノン♪
そんなの面白くない。
道に迷ってこそ、
それが車の旅なのだ。
ちなみに今回はゲストとして、
私の勤め先の社長を連れて行くことにした。
二人が目指す頂は、山形県南陽市。
震災後、沢山の物資を持って訪ねてくれた友人に会いに。
そのお礼をする為にぼくらは旅立った。
車はくるくるとタイヤを路面へ擦り付け、
軽快に走り出す。
社長「どう行くの?」
ぼく「え?昨日調べた道を何となく、道はつながっているから着くよ」
社長「高速はどこから乗るの?」
ぼく「高速?乗らないよ、面白くないし」
社長「え゛ー!!下で行くの!?俺、運転しないからね!」
ぼく「いいよ」
社長「俺は寝るからね!」
ぼく「いいよ」
そんなやり取りをしながら、ぼかあハンドルをくるくると回すのである。
一時間・・・二時間・・・三時間・・・四時間・・・五時間・・・半・・・
着いた。
ぼかあ走りきった。
そして、腹が減った。
時計はPM1:00位を示していた。
友人に「飯だ!飯を食わしてくれ!!」
そう懇願して、旨い飯どころへと導いて貰った。
その店は、『そばの店 ひらま』
中華そばが有名らしい。
無類のラーメン好きであり、
少女時代好きのぼかあ、
ワクワクして脇汗が噴出してきた。
く・・・臭いぞっ!!
とか上がり気味のテンションで、
ぼくらは中華そばを汗を吹き流しながら、
食らい、堪能したのである。
あっさりとしていて、でも癖になる。
そんな味のラーメンだった。
ぼかあ満足して、その場で少女時代のMR.TAXIを
「ほらよそ見しないで冒険セヨ♪」などと歌ったような気がする。
こうして今回の旅は幕を開けた。
ちなみに出発の日、8月15日はぼくの誕生日だ。
また一つ歳をとり、
ぼかあ~また一人・・・
つづく
ドラえもんがドラえもんである様に俺は
きんたまごーらが襲ってくる。
ごーらとは何なのか俺は知らない。
ただ金玉が何なのかは、
ご存知、金玉なのだろう。
俺が妖精だった頃の話はしなかっただろうか?
いや、今はする気はないのだが、
さすらいの妖精であったあの頃の話は・・・
車と私
連休ちゅー事で、
久しぶりに
「走りに行こうか?ねぇ?その辺どうなのよ?」
と、どこからか問われた気がしたので、
走りに行くことを決めた。
「もう瓦礫にはうんざりなんだよっ!!」
そう語気を荒げ、
私は、海を離れ陸へ山へと走り出した。
目的地は特に無く、山形方面へ、
そう何となく漠然と合法的かつアグレッシブに決めた様な気がした。
私はハンドルをそっと撫ぜ、
キーを右に43度程捻った。
キュキュキュンブロブロブロと、
懐かしい音で車は息を吐き目覚めた。
「おはようマイケル、目的地は?」
そうキッドが聞いてきたが、
私はマイケルではないし、
車はキッドでもない。
僕らがナイトライダーでは無い事にそこで気づく。
そうして、車と私は、
震災の町を脱兎の如く離れたのである。
久しぶりの地は懐かしき風景を車窓に流し、
私はそれを記憶の袋から出しては戻す作業を続けた。
今、私の住む町は酷い臭いと、
蝿の大群が占拠している。
あそこにはベルゼバブが降臨しているのかもしれない。
気づけば、車は私を遠くまで運んでいた。
最上川舟下り終点。
海の日の終わりを、川で過ごした人々が集っている。
私はその集いへと紛れ込み、
一人で来ているニオイを消し去り、
その中を闊歩した。
そして、便所へ赴き小便をした。
隣のオヤジが、
「お前一人で来たのか?」
などと聞くわけも無く、
私は誰に気づかれることも無く、
風景の一部と化し、一部の私は彼らを眺めた。
家族、恋人、友人、ペットetc・・・
それぞれがこの地を誰かしらと訪れ、
この日を楽しみ、疲れ、明日へと向かうのである。
私は?
勿論一人である。
私は一人の絶対王者なのだ。
助手席はと言えば。
カメラ、財布、携帯、地図、目薬、怨念、キャップ、コーヒー、バッグ。
が、あるばかりである。
私は帰り路を急ぎ、
ハンドルを撫ぜた。
「行こうかキッド」
そう一言呟き、
夕闇から夜へと向かい走り出した。
私はナイトライダー。
その言葉に間違いはない。
茜色から藍色へ。
私はそうして走り出す。
ライダー、ONLYライダー(ひとりぼつちのね・・・)
夜が来ます
暗闇の町に住んでいる。
音も極めて少ない。
ここに生きた人々は、
建物と共に、
ここから去って行った。
やり場のない悲しみが、
この闇に溶けている。
(空想)
僕は鍵を掛けた部屋にこもったまま、
外に出る事を拒否した。
四畳半の畳の部屋には、
万年床を白熱灯が照らしているばかりだ。
この夏の暑さを、緩和する扇風機もない。
僕はだらだらと額そして、体中から放出する汗を流している。
気休めにタバコを吹かし、
白い煙をため息と共に吐き出す。
淀んだ空気にそれは消えた。
トントン
部屋の扉が叩かれている。
来訪者だ。
僕は扉の前まで行き、
「何ですか?」そう尋ねる。
相手は言う。
「君を迎えに来ました」
「何故ですか?」
「知っているはずです」
僕は考えました。
そして、答えも見つけました。
この扉を開けることは当分ないでしょう。
僕はまた万年床へと戻り、
目をつぶりました。
(返る)
僕はこの町の闇に溶けています。
可笑しそうに笑う女の子
てるてるてる
てるてる
てる
陽が照っているかと
いいや
火が照っているのだ
てる
ズラをかぶったあいつらがやって来たんだ
そう言えば
昨日降った雨の水たまりで
赤い長靴の女の子が遊んでた
じゃんぷ
じゃんぷ
バシャ!バシャ!!
しぶきを上げては
クスクス
クスクス
と本当に楽しそうに笑っていた
遠いぼくの記憶の扉が開いている
あの日の自分がそこにいる
ズラのやつらは相変わらず
こっそりと
だがこっちに気づかれるほどのズボラさで
こっちを見ている
だからマキビシをまいた
あいつらはそれを踏んでは
驚いて飛び上がった
じゃんぷ
じゃんぷ
クスクス
クスクス
と本当に楽しそうに僕は笑ったんだ
赤い長靴の子と
白いハイソックスの僕
純白ソックスの僕は
ハイテンションで
全裸でサックス
吹けないけれども
全裸でサックス
そうして僕は
吊り橋の上から
全裸で
じゃんぷ
じゃんぷ
ジャンプ!!
女の子が
クスクス
クスクス
と笑ったんだ
本当に楽しそうに笑ったんだ
パブロフの犬
きんたまが、
あああきんたまが
ききききんたまが
ころがっている
きんたまの「きー!!」
「きみがあまりにも素敵だから」
きんたまの「んー!!」
「んんんんんんー!!」
きんたまの「たー!!」
「巧みな話術で」
きんたまの「まー!!」
「マナカナのマナが好き」
が、ころがっている
が、光の速さでころがっている
遥か空にボーイング
きんたまのボーイング
行過ぎた日常が飛んでいる
昨日アムリタを飲み過ぎた所為か?
リポビタンDではなくアムリタの所為なのか?
私はただただ考える
布団の中で考える
きんたまの「きー!!」
の事を
∞
無題
生きている。
あの日から一月とちょっとが過ぎた。
未だ現実を上手く飲み込めていない。
現在、所により店は開けられている。
瓦礫が撤去されれば、
以前とは何ら変わりの無い、
町並みに戻っている。
しかし、少し離れた場所では、
倒壊した家や、流された車、
そして、瓦礫の塊があちらこちらに残されている。
あの日に壊れた現実が、
そこに転がっている。
それはただ乱暴に転がっている。








