オー、よう来たのワレ。まあ上がっていかんかい。ビールでも飲んでいかんかいワレ。
本日の「そんなに陽のあたらない名曲 」は8ヵ月ぶりとなります、よいこのデンジャラスセレクション シリーズですよ。久しぶりやんけワレ。何しとったんどワレ。
本日のテーマは【おじさん】です。昨今「おじさん」と呼ばれる生き物の存在は世の害悪だとされ、駆除してもよいという風潮が高まってきました。そのため絶滅危惧種指定となっているんだとかで。
しかしおじさんはデリケートで、か弱い生き物でもあります。なにしろ真っすぐしか歩けないため壁にぶつかって死ぬし、太陽光に当たると死んでしまう。仲間が死んだらショックで自分も死に、ゴミ出しへ行ったら鳥につつかれて死ぬ。マンボウ と一緒くらいの生命力しかありません。そりゃ絶滅危惧種になっても仕方ないのも納得であります。
そんなおじさんが本日は主役。当コーナーはファミリーでお楽しみいただくのを目的に展開していくのをモットーとしております。安心・安全が命です。ですので本日は、さまざまなおじさん・おっさん・おじさま・おっちゃんを研究し、どうぞお子さまの情操教育に役立てていただきたいと思います。そこんとこ4629だぜワレ。
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三ツ木清隆『月光仮面は誰でしょう 』 <作詞:川内康範/作曲:三沢郷>
日本におけるヒーロー番組の草創期では、ヒーローが「おじさん」と呼ばれていた。月光仮面しかり、七色仮面しかり。
本曲は1972年のテレビアニメ『正義を愛する者 月光仮面』の主題歌であるが、これは1958年の元祖実写版『月光仮面』で使用された主題歌の、歌詞はそのままだが三沢郷 の作曲によって完全に別のメロディへ作り変えられているという、異例のナンバーとして知られている。ただし三沢氏は歌詞が実写版と一緒であることに気づかぬまま作曲したという。
実写版がほぼ童謡調であり、近藤よしこ&子鳩くるみ会による子どもの声で歌いあげられたものだったのに対し、このアニメ版ではシンコペーションを多用したバックビートのリズムと、後半の華麗な転調などが特徴的なポップス調なものへとチェンジ。さらにボニージャックスによるおじさん声で歌われていた。
これにより、ことカッチョよさに関してはケタ違いに上昇。どのジャンルでも作り直しがあれば「前のほうがよかった」と言われてしまうものであるが、本曲に関しては「こっちのほうがいい」という声も多数あり。加えて間奏パートに定評のある三沢作品の特性は本曲でも生きており、非常に聴き応えがあります。
だがしかし本曲を歌っていたのはボニージャックスだけではなく、三ツ木清隆版、ボーカル・ショップ版、ハニー・ナイツ版なども存在する。ここへ掲載するのは三ツ木清隆版。パイロットフィルムでは三ツ木版が採用されていたそうなのでパチソンではないのはもちろん、カヴァーと呼ぶのも違う気がする。まぁパチソンというのは無名の歌手が歌ってるのが基本であるゆえ、三ツ木清隆は俳優としての知名度も高いのだからパチソン枠には入れ難いか。安定感のあるボニージャックスとはちょっと違う印象で、よくも悪くも三ツ木版は明るく爽やか。俳優にしては上手いし。そういえば後に彼は『秋冬 』を競作で歌ったひとりとなり、ヒットチャートの上位まで行くことになるんだった。
なお三ツ木清隆がこれを歌うことになったのは、彼が当時、川内康範先生の事務所に所属していたからだそうで。だけど同アニメに声で出演したのかというとそんな実績はなく、翌年1973年から川内作品とは関係ない『ウルトラマンタロウ』や『白獅子仮面 』でレギュラー出演。とくに『白獅子仮面』では主演を務めており、特撮史上、もっとも醜悪な顔のヒーローとして現在まで語り継がれています。
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黒沢良、麻里エチコ『おじさまいや? 』<作詞:多木比佐夫/作曲:淡の圭一>
なんだこりゃ。品性あるモテモテおじさまと、それをなんとかしようとする小悪魔ちゃんのやりとりか。昭和中期にみられた、モテモテになりたいおっさんの願望をカタチにしたかんじの歌かいな? 1969年リリースだそうだから、本曲もその仲間に入るんだろうな。
『キッスしてっ』のB面曲。たしかに、おじさま役の黒沢良 氏はかなりなイケボである。おじさんでもおっさんでもない、まぎれもなく「おじさま」と呼ばれるに相応しい雰囲気は伝わってきます。
しかし主に歌っているのは麻里エチコという方。情報が薄くてどんな女性だったのかはわからなかったのですが、レコードはいくつか出しており、かつて存在した大映レコード の専属歌手だったことだけわかりました。
それにしてもコレ、いまでいうパパ活の歌なんじゃねえの? 全国の残り少なくなった「おじさま」のみなさん、くれぐれも小悪魔ちゃんにはお気をつけください。
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吉幾三『おじさんサンバ 』 <作詞:吉幾三/作曲:吉幾三>
大ヒットした『俺ら東京さ行ぐだ』と『雪國』の間にリリースされたシングルのひとつで、ラップに演歌にと振り幅の広さを見せるIKZOおじさんが、このときはサンバを採り入れたものでありました。
おじさんが、むかし好きだったものをズラズラと並べるだけの内容であり、若い層からは嫌がられる要素じゅうぶんな、まさに「おじさんとは、こうあるべき!」といった方向では手本となる歌と言っていい。
だけど個人的に、そんなおじさんの話を聞くのは嫌いではない。自分が見ていない時代の話を、見てきた人から聞くというのはとても面白く感じるからです。
ただ、この歌に出てくるテレビ番組の『ハリマオ』にしろ『隠密剣士』にしろ、現代ではソフト化もされてるしCSなどで放送もされているため、若い層でも簡単に見ることのできる時代になっている。本曲が世に出た1985年の時点では、まだまだ考えられなかったことが現在では可能になっている。ヘタすりゃハリマオや隠密剣士の裏背景を漁りまくって知識を得た若い層から、おじさんのほうがマウントをとられてしまう可能性もなくはないのだ。やはりおじさんとは、かくも悲しい存在でしかないのであろうか。
それにしてもこの歌の主人公。「 昔からオジサンじゃなかったんだ 」と訴えておりますが、10歳くらいまでの少年期を経たあとは、青年期にあたるであろう20代も30代もすっ飛ばしていきなり40代になってしまったかのような錯覚をおぼえる。ちなみに自分のことを42歳だと申告してるくだりもありますけど、この時点でIKZOおじさんの実年齢は33歳だったとのこと。ぜんぜんおじさんじゃないやんけ・・・。
おじさんサンバ
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伊藤雄之助『四角い函 』 <作詞:ほむら遥/作曲:原田良一>
伊集院光のラジオを聴いていたらコレがかかってきて、ビビッときたので調べてみたら動画があっさりみつかった。
歌っているのは、私が勝手に「映画界の内藤哲也」と呼んでいる伊藤雄之助さん。数々の映画作品に出演された怪優さんですが、当ブログでレビューした『気違い部落 』では主演を張っておられます。その内藤・・・じゃなくて雄之助さんが1977年、おそらく唯一出されたレコードだと思われます(ジャケット上の表記は「雄之助」)。
歌は決して上手くはない。が、これが沁みるのなんの! とりわけ台詞のくだりはしんみりせずにはいられなくなる。問答無用の説得力とはこのことか。石立鉄男 の項でも書いたことがあるが、俳優さんの歌は歌手のそれとは違うアプローチで攻めてくることがありますな。
こんなん若い人では無理ですわ。人生経験を積み、幾度も修羅場をくぐってきた、おじさんにしか出せない味に、どっぷり浸かって沈んでしまいたい。
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眉村ちあき『おじさん 』 <作詞:眉村ちあき/作曲:眉村ちあき>
このたび【おじさん】にテーマを絞ってみたものの、当初はコマが足りなくて、あといくつか面白そうな曲はないかと漁っておりました。だって「おっさん」を乱発する『買物ブギー 』や、タクシードライバーのおじさんにムチャ振りする『その時わたしはTAXIを停めた 』は、もう過去記事で出しちゃってますからね。違うのを出さなきゃですもんね。そうこうするうち偶然ヒットしたのが本曲。
歌詞だけ見たら『おじさまいや?』とか『恋の奴隷 』みたく、昭和おじさんのモテモテ願望に応えるような歌かと思ったんですよ。ところがこれ作った人は、なんとれっきとした若い女子だという。歌詞のなかでは9歳なんだそうで。Z世代かよ!?
眉村ちあき? スイマセン、この人まったく存じ上げませんでした。現役のアイドル兼シンガーソングライター兼実業家なんだって。
1stアルバム『めじゃめじゃもんじゃ』収録曲とのことですが、ミュージックビデオまで存在する。見てみたさ。聴いてみたさ。そしたらさ、「うおっ、これは凄いぞ!」ってなったさ。ギター一本で歌い上げるスタイルが私的にはよかったのかもしれんね。
いまどきこういう歌を歌えば機嫌を損ねる向きも出てきそうなもんですが、あえてやっちゃってるところに好感が持てます。というのも、昨今では年の差ってだけでケシカラン設定にされる風潮が高まってまして。まるで犯罪者認定されるような空気が強まってきてて。なんかそれだと年の差婚だけどうまくいってる方々に肩身の狭い想いをさせることになりかねんし、小柳ルミ子&大澄賢也ご夫妻にも失礼ですし。父が67歳、母はその姪で19歳だったときの子である戸田切人 さんの存在を否定しかねない。きっと荒井注さんは「なんだバカヤロー」と言ってることでしょう。
そうです、人の心なんてコンプラやら理性やら整合性やら生産性などで収まり切れるものではないのです。この歌は正直でよろしい。全体主義には従わぬ姿勢もよろしい。そしてシンガーとしてなにより大事な、人に伝える力が宿っています。「 バツイチ子供なし 」のくだりが生々しい。
欲を言えばこれの派生版として、おばさんが未成年男子を求める歌『クーガー』とか、若い男子がだいぶ歳上のおばさんを求める『ペタジーニ』って歌も作って、おなじテンションで歌ってみてほしいです。
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内山田洋とクール・ファイブ『イエスタデイ・ワンス・モア 』 <作詞:R.Carpenter、J.Bettis /日本語詞:山上路夫/作曲:R.Carpenter、J.Bettis>
every シャララ every ウォウォ 暇ー♪
これはわりと有名なので、ご存知の方のほうが多いかもしれない。じつは今回のテーマを【おじさん】にしたのは、本曲を入れておきたかったからなのです。先月15日、クール・ファイブのメンバー=小林正樹さんが死去されたので、その追悼の意味をこめてだったんですよ。
『Yesterday Once More』じたいは世界的に有名なカーペンターズのスタンダードナンバーですが、こちらはその日本語版、それもクール・ファイブ18枚目のシングルA面として1973年にリリースされました。で、その最大の特徴というのがリードヴォーカルの歌声にあるのでして。
内山田洋とクール・ファイブといえば、いちばん若手の前川清がヴォーカルを担当し、あとのメンバーが後ろのほうで「ワワワワー♪」ってやってるのが基本スタイル。それを本曲だけ、なぜかいつもは「ワワワワー♪」ってやってるなかのひとり=小林さんがヴォーカルをやってしまってます。なんでそういうことになったのかは20世紀最大の謎なんですが、結果として強烈なインパクトを放つことに・・・まぁ、だいたいが「なぜ?」「どうして?」が脳内をグルグルしながら聴くハメになるという意味でのインパクトなんですが。
ふだんコーラスやってる人がヴォーカルをやると、こうなる――の見本みたいな歌声でありますけれど、じつは私、宮本さんが歌ってるところなら生で聴いたことがあるんですよ。間近で。クール・ファイブの歌を3曲ほど。もちろん感激しましたよ。その当時の宮本さんはカラオケ教室をされてましてね、それなりの歌声だったとは思うんですけど。ゆえにインパクトや破壊力という意味では小林さんの圧勝だったように、いまにしてみれば思えますね。こと声の「おじさん」濃度でいえば小林さんに軍配が上がると思いましたしね。
あ。本曲についてはさまざまなところで考察されたり語られたりされてますので、私なんぞがいまさらモノを言うのも野暮というものでしょう。ここは、もう何年も更新が滞ってるwishy-washyさんの書かれた記事にレビューを譲りたいと思います。
どうですか、うちよりも面白かったでしょう?
そうだ、宮本さんのほかに前川さんの生歌も別の場所で聴いたことがあるんです。いずれもコンサートなどではなく、偶然そういう機会があったんですよね。だから「あと4人」って、ひそかに願っておったのですけども。内山田さんが亡くなり、そして今回は小林さんでしょ。残念だわわわわー。
it yesterday ワン相撲~♪
内山田洋とクールファイブ-イエスタディワンスモア
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以上、6曲。ワレが好きなおっさんはどのおっさんかのぅ?
おいワレもう帰るんけ? 気ィつけて帰ったらんかい。前のドブ川にはまったらあぶないどワレ。
おいワレ、ちょっと待った。待たんかいワレ!
さっき【おじさん】にテーマを絞ったんじゃがコマが足らんので、ほかに面白そうな曲がないか探しとったって書いたがの。そしたら数が多なったんよ。何個かボツにしたんもあったんじゃが、どうしても載せておきたいのもあってのぅ。せやからワレ、もうちょっとだけおれや。ガタガタ言わんとビールでも飲んでいかんかいワレ!
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所ジョージ『泳げたいやき屋のおじさん 』 <作詞:所ジョージ/作曲:所ジョージ>
1999年発売の、所ジョージ16枚目のアルバム『 洗濯脱水 』に収録。同アルバムは坂崎幸之助氏がプロデューサーとなって制作されており、収録曲のほとんどの編曲を坂崎氏が担当している。本曲もそう。
タイトルを見てお察しのとおり『およげ!たいやきくん』のパロディソング。もとはフジテレビ系列の音楽番組『MUSIC HAMMER』で『めざせタイヤキII』として発表され同番組の企画シングル『トンカチ』に収録される予定だったが、もとネタにあまりにも似すぎているという理由でボツとなった曲なんだそうだ。
余計な説明はしたくない。まぁ聴いてみなさい。
ところで。うちの母に所ジョージの本業がミュージシャンだと話したことがあるんですが、どうしても信じてもらえませんでした。これ聴かせたら信じてもらえるだろうか?
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おぅワレ、おっさんちゅうもんはな、酒の一升も飲んじゃってさ、競馬もやっちゃってさ、そのためにさ、思いっきり働くんじゃいワレ。働いて働いて銭ためて、蔵、建てたろうやんけ。てやんでべら坊めやんけ。
そんでいつのまにかカラダこわしてダメになっとるんじゃいワレ。蔵、建てる前に家族からも世間からも見放されとるんじゃいワレ。
おいワレ、おっさんに生まれたからにはのぅ、そんなおっさんとしての生きざまをまっとうしたらんかいワレ!
次回のこのコーナーまで生きとったらのぅ、また会おうで。ほな達者での、ワレ。