本日の「そんなに陽のあたらない名曲」はよいこのデンジャラスセレクションをお休みし、特別企画でお送りしたいと思います。
面白くなるかどうかは現時点ではわかりません。たぶんこんな記事を書くのは最初で最後になると予想いたしますので、つまんなくてもおつき合いいただければと思います。
ミノルフォンというレコードレーベルがあります。遠藤実先生の著書『涙の川を渉るとき 遠藤実自伝』によりますと、この会社はコロムビアの専属作曲家から独立して設立した会社で、レーベル名の「ミノルフォン」は当初「太平レコード」にするつもりだったが、同名のレーベルが既に商標登録されていたため、遠藤実の「実」と英語で音を指す「フォン」を合わせた造語なんだそうです。
現在は社名を徳間音楽工業株式会社へ変更されてますが、ミノルフォン株式会社だった時期は1965年から1972年の約7年間であったとのこと。
その7年間のうちにミノルフォンから売り出された女性歌手3名――天馬ルミ子、中野知子、山川ユキ。彼女たちの総称を“ミノルフォン三人娘”と呼ぶ・・・・・・と言いたいところだが、彼女たちが歌手として活動したのはその後です。おそらくこの呼称は後づけだと思います。
とにかくきょうはその特集をやってみたい。やってみます。やってみるのですが、いまになって「まともな記事になるのだろうか?」と、怖気づいております。どうなることやら。
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天馬ルミ子『教えてください、神様』<作詞:杉山政美/作曲:都倉俊一>
トップバッターは天馬ルミ子。小学校4年生で平尾昌晃音楽学院へ入学し小学校6年生でデビューが決定した彼女は1977年、NHK『レッツゴーヤング』のサンデーズとしてテレビに登場。さらに1978年1月には、ピンク・レディーの妹分として歌手として本格デビューする。そのデビュー曲がこれだ。
ジャケ写を見てのとおり、アイドルでこのヘルメットヘアーはいかがなものかと心配になる。「メイクさんはつけてもらえないのか?」「自分で散髪してるのか?」・・・などなど。しかしインパクトは絶大で、ついつい見入ってしまうのだ。とかくアイドルはどいつもこいつも「かわいさ」をウリにしたがるものだが、この人の場合は「面白さ」なのだ。その意味ではビジュアル系なのかもしれない。👷
それだけではない。実際に歌っているのを聴いてビックリした。この人、上手いわ! (◎_◎;)
あまりクセはないタイプで透明感がある。高音の伸びも心地よい。幼いころから勉強をしてるだけあって基本ができている。しかも当時13歳でありながら、時おり大人っぽい色気のようなものまで感じさせている。
これはイイ! アイドルのなかには「歌姫」と呼ばれ時代を築いたスターさんらも数おられますが、その誰よりもイイ。私は好きです、この歌手は。
「教えて下さい 神様
愛とはどんな事」
「あ? なんだって? あたしゃね、耳が遠いんですよ」
「好きな人には全てをあげても
かまわないものですか」
「結婚するまであげないほうがいいものもありますよ。貯金通帳とかね」
「・・・・・・あなたは神様ですか?」
「とんでもねぇ、あたしゃ神様だよ」
いま私のなかでプチ・ルミ子ブーム、きてます。
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天馬ルミ子『その時わたしはTAXIを停めた』<作詞:伊藤アキラ/作曲:川口真>
天馬ルミ子3枚目のシングル。もうこのときには残念ながらヘルメットは被っていないようだ。でも、それどころではありません。
上の、ジャケット裏に歌詞が書いてある画像を拡大してみてください。または耳で音源を聴いてみてください。これは・・・・・・不穏歌謡と呼ぶべきものだろうか?
おじさんあの人死んじゃうわ
死ぬと言ったあの人 本気だわ
緊急事態です(笑)。だって人が自殺する歌なんですから。そりゃタクシーにも急がせますわ。場所も特定されそうな内容です。緊急事態ですから、しょうがないんです。🚖
ですがタクシーの運ちゃん相手に、そんな身の上話をベラベラしゃべっていいのかしら? で、最終的に「待ってて」「あの人をつれてくるわ!」ですからね。
運ちゃんからすれば「そんな人、紹介されてもなぁ~」ってところでしょうね。
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中野知子『恋はBan Bon』<作詞:森雪之丞/作曲:森雪之丞>
スイマセン。私、この方、まったく存じ上げませんでした。 ^_^;
オーディション番組『君こそスターだ!』の第21回グランドチャンピオンだったそうです。
ジャケ写を見たかんじだと、アニメ『UFO戦士ダイアポロン』のヒロイン=ミキッペのような髪型をしています。天馬ルミ子のときもそうだけど、なんでアイドルとして売り出そうとする人たちにこんな雑な恰好をさせるのだろうかと、私は楽しくてしょうがないよ。
しかし歌を聴いてたまげたわ。なんだよ、超清純派な声質じゃん。しかも表現力があって上手い部類だよ。
本曲は1978年4月発売のデビューシングル。サンバ調の明るい曲です。歌のなかでみずからを「ジャジャ馬」と称しています。この当時、ジャジャ馬娘というのが流行ってたんですかね? だから事務所がジャジャ馬キャラで推そうとしてたとか? もっとも、中野知子本人がジャジャ馬だったのかは知りませんけども。
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中野知子『誘惑きっぱりお断り』<作詞:森雪之丞/作曲:森雪之丞>
1978年7月発売のセカンドシングル『ブラックホール』のB面曲。『恋はBan Bon』とおんなじような世界観で、作った人もおんなじ。
ジャケ写ではもともとの短髪にポマード(?)を足し、むかしの和田アキ子か梓みちよ、またはタモリを彷彿させる風体になっている。
これ見たらぜったいアバズレだろうと思われそうなんですけど、声を聴いたらやっぱり清純派・・・を超えてアニメ声に近いものを感じさせてしまう。ギャップ狙いだったのだろうか?
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山川ユキ『新宿ダダ』<作詞:石坂まさを/作曲:石坂まさを>
この曲はそこそこ有名なので、知ってる方もおられると思う。
歌手のなかには、スイッチが入るとふだんのキャラクターとは違い魔物のような姿に豹変する人がいる。代表例が山本リンダで、あれを見てドン引きしてしまうチビッコは数いただろうと容易に想像がつく。
そこへいくと、この山川ユキ。“やさぐれ”“ズベ公”といったフレーズが彼女のためにあるのではないかと思わずにいられない。そして、これほど歌舞伎町とションベン横丁の似合う歌手もいないだろう。歌い手としては当時18歳にして「ロックもソウルもブルースも演歌もゴッタ煮の味わい」と評されるほどの濃い系な実力派。
この人はふだんのキャラも歌ってるときも、そんなに変わらない雰囲気をまとっていたらしい。好き・嫌いは大きく分かれただろうな。
1977年発売、彼女のデビュー曲が『新宿ダダ』だ。『夢は夜ひらく』の石坂まさを氏によって作られただけあって、決して恵まれた生い立ちにあるとはいえない少女の、暗くて重い人生が詰まっているような一曲になっています。
さよなら母ちゃん
さよなら父ちゃん
昭和の時代、夕方の時間帯に放送してたB級アニメのEDで使われてそうな世界観。東映のヤクザ映画でもいいけどね。こんなのを歌ってるアイドルなんて、いまいないでしょ。歌えないでしょ、いまのアイドルでは軽すぎて。ゆえに私は再評価を求めたいのです。
やさぐれダダイズム演歌ロックの決定版。
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山川ユキ『ウラトビサスケ'78』<作詞:かまやつひろし/作曲:かまやつひろし>
山川ユキ3枚目のシングル。ソウル&ディスコな演奏。山川のヴォーカルはアニメ声に聞こえる瞬間が何度もあって、『新宿ダダ』のときとは違う引き出しを開けてくれたかのような印象を抱いた。かといって彼女のキャラから逸脱してるわけでもなく。「ああ、この人だったらこういうのもやりそう」と思わせる。
ただ、なんて歌ってるのか聞き取りにくい(笑)。こざる(「こじゃる」に聞こえるけど)が出てくるお話だろうことは、わかる。こざるが何かのまねをしているらしいことも、なんとなくわかる。でも全体的には何を言いたい歌なのかが、さっぱりわからない。
歌詞を読んでみた。それでも、わからなかった(爆)。かまやつひろし一流の、ことば遊びなんだろう。たぶん意味を求めること自体、ナンセンスなんだろう。
この人は本当にアイドル扱いされてたのだろうか? アイドルに「さるぐつわ」が出てくる歌詞の歌を歌わせてたのだろうか?
透明感のある天馬ルミ子や中野知子らと比べると異質でクセのある山川ユキの声には抵抗のある向きもいるんではないかと予想しているが、しかし好きな人には大ご馳走に映るんだろうなぁ。
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山川ユキ『カメラのさくらや』<作詞:さがらよしあき/作曲:小林亜星>
かつて「カメラのさくらや」で使われていた初代CMソング。あのパワフルなヴォーカルを担当していたのも山川ユキだった。同店舗へ行ったことのある客の耳には彼女の歌声がこびりついてることだと思う。
なお、さくらや新宿東口駅前店は現在、ビックカメラに継承されている。そういえば新宿の大型カメラ店が何か欠けたような気がしてたのは、そういうことだったのね。
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彼女たちがミノルフォン時代にリリースした全シングル曲が収録されたCDは、2010年8月に発売されています。
#ミノルフォン三人娘
— 左卜全温度Cheer&ひまわりちゅーりっぷ🌻920701🌷 (@_30776506271) March 20, 2022
『歌謡曲番外編 ルミ子・知子・ユキ ミノルフォン三人娘シングル・コレクション』#天馬ルミ子、#中野知子、#山川ユキ という選りすぐり三人娘の全シングルAB面曲を収録した、悪夢のような一枚。 pic.twitter.com/gN7JuS07wg
そんなわけでミノルフォン三人娘の特集記事をやってみたんですけど。
彼女たちはアイドル(?)として売り出されながらも、近年では当たり前とされる表面的な「かわいさ」はあまり前面へは出されていないように感じる。そのかわり歌にかけてはちゃんとしている。アイドルというよりも、歌手である。だから私は興味を持てた。
だが歌手としての活動期間は短い。モッタイナイ。再評価されるべきだ。だから私はこうして特集を組んでみた。需要があるかは別として。