このそんなに陽のあたらない名曲シリーズ、前々から書こう書こうと思ってるのがいくつもあるのね。
 だから、今回こそはやるぞー! と思ってたんだけど、またまた気が変わりました。

 気を変えさせた張本人とはズバリ、モジャモジャのカリスマ(?)こと
石立鉄男
 ということで、まずはこちらを聴いてみてください。


『女嫌いのバラード』『さらば女ともだち』
作詩:福田陽一郎/作曲:三木たかし

 

 この『女嫌いのバラード』というのは一部マニアのあいだでは有名な曲でして、'83年のドラマ『さらば女ともだち』の挿入歌でありました。三木たかしによる作曲なんでありますが、まさしく『ホテル・カリフォルニア』と『夢芝居』を足して2で割ったらこうなる、というのを具現化したみたいな仕上がりでありますた。 (_△_;〃
 しかも歌っているのは杉浦直樹&石立鉄男。よりによって歌手が本業ではないおっさん二人にデュオをさせるという挑戦的な企画であったのです。
 これにより、奇跡のグダグダソングが誕生しました。二重唱本来のウリであるはずの美しいハーモニーはどこかへ吹っ飛び、そのかわり杉浦と石立の噛み合わなさっぷりが最大の聞きどころになってしまったのである。
 お互いに歌を合わせる気がまるで無いためか、サビの終わりの部分が「女嫌いの~、バラードド~」と聞こえてしまう。本来なら、同番組の脚本家が作った「だから、つまり、最終的にはどうしたいのよ?」と突っ込まなきゃならないような歌詞も、この歌声の前には霞んでしまう有様だ。
 も~う、これであなたのハートはガッチリと鷲づかみにされたハズですよね?

 

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 さて、ここからが本日の本題。
 

 

水もれ甲介』。言わずと知れた、石立鉄男・ユニオン映画シリーズの代表作といっていい名番組ですが。
 まぁ、いまさらここで番組の内容について語るつもりはありませんよ。このシリーズは最近でもチャンネルNECOなどで頻繁に放送されてますし、いまならYouTubeにも動画がありますから、ドラマのレビューならどなたかが書いてくだされば。今回のテーマはあくまでも音楽のほうですからね。

 

 

 その『水もれ甲介』には『さみしいナ・・・』という挿入歌が存在していたのですよ。じつはこのたび感銘を受けたのはこっちのほうなのです。ドラマを観ているぶんにはさほど気にはならなかったのですけど、つい最近になってフルコーラス聴く機会がございましてね。
 も~う、ビックリするほど感動しましたザマスよ! これがあの『女嫌いのバラード』を歌ってるのと同じ人なのかと思うくらいに。

 いや、石立さんの歌は決して上手いわけではないですよ。でも、そこがいいんです。沁みるんですよ! (iДi)
 シンガーとしてのテクニックは、たぶん、無い。強いて挙げれば巻き舌がナチュラルなところくらいかな? ・・・いや、よく聞いてみれば「鼻濁音」がちゃんとできており、意外にも基本に忠実だ! このあたりは本業の歌手にも見習ってほしいところ。
 とはいえ音程の頼りなさは
如何ともし難く・・・。
 だけど逆に、上手い人が歌っても曲のよさは伝わらないのではなかろうか。少なくとも面白みはなくなるんじゃないですかね? 前にも書いたことありますけど、歌唱力というのは武器にはなるけど、かならずしもそれが絶対とはかぎらないことがあると思うのです。今回のは、あらためてそれを思い知った気がする、じつに味わい深い一曲でありました。

『さみしいナ…



 ちなみに同番組の主題歌は、この曲のB面に収録されてるそうです。

 

 

 作詞したのは白井章生さんという方らしいのですが、ちょっと情報が薄くて詳細はあまりわかりませんでした。
 その白井さんの詞を、大野雄二さん作曲のメロディが優しく包んでくれてます。ギターの音色も心地いいですね。

 

 

 注目すべきは、やはり台詞の箇所であろうか。

 

「兄ちゃんなぁ、おまえのこといつも想ってるんだ。
母さんのこと大事にしろよ。いいな」


 このへんは流石というべきか、本業である役者の本領が発揮されています。文言そのものはベタだと思うのですが、それを語り手の力量で補ってるような気がします。
 この『水もれ甲介』というドラマには、初回で主人公・三ッ森甲介(演:石立)が不仲であった父・保太郎(演:森繁久彌)の死に際に立ち合う場面がある。そこで保太郎は、甲介と次男・輝夫(演:原田大二郎)は自分の子ではなく、また甲介らの母とされる滝代(演:赤木春恵)の子でもなくて、保太郎が出征したときの命の恩人であるクラタという上官の子であったと告白するのである。
 保太郎の死後、しばらくして甲介はこのことを弟には打ち明けるものの、歳の離れた妹・朝美(演:村地弘美)は事実を知らぬまま・・・たしかそんな展開だったと思うが。
 だから、おそらくこの歌は妹へ向けられたものだと思われます。

 

 

 これね、酔っぱらったおっさんが、しんみりしながら歌うのには最適なバラードなんじゃないですかね。カラオケにあるのかどうかは知りませんけど。
 だけど『女嫌いのバラード』のほうは酔っ払いの度がちょっと高めだなぁ。 『水もれ甲介』から『さらば女ともだち』までには約9年の歳月が費やされてるんですが、このあいだに劣化しちゃったのか? それとも酒の量が多かったのか? それか、もう面倒くさいので杉浦直樹さんのせいにしちゃおうか?
 ・・・でも杉浦さんの名誉のために補足しときますけど、まさか皆さんは杉浦さんを単なる横分けのおじさんだと思ってやしませんか? だとしたらいけません。杉浦さんは日本のテレビ草創期を支えた二枚目俳優さんですからね。こないだも記事にしました『図々しい奴』には、テレビシリーズのほか映画版の2本も含め、全作品に出演されてますしね。スターさんだったんですから。
 もっとも、それと歌唱力では話が別だと言われればそれまでですが。

 

 

 ところで、さっき動画で『水もれ甲介』の1話をちょっとだけ観てみたんだけどね。
 なんか泣けるわ、あれ。 ・°・(ノД`)・°・