皆さんこんばんは。なじょんしょばのanniです。
この記事はタイトルのとおり、第5回CRM講座のレポです。
今回の講座も会社でリーダやマネジメントを務める中年にはとても刺さる内容でした。
しかし、実は8/26に第6回が開催されたので、この記事はこれまた周回遅れ。それでもよろしければどうぞ。
ちなみに第1~4回の内容はこちら↓。
以下、第5回の概要です。
開催日時:7/8(土) 19:00~21:00
場所:Web
講師:現役機長のHideさんと副操縦士のMoriさん
テーマ:Situational Awareness ~あなたは周りを見渡せていますか?パイロットが自身を取り巻く状況を正確に分析するために必要な能力とは?~
CRM=Crew Resource Managementとは「マネジメントをする立場として、様々な情報や部下などの能力を最大限に引き出し、最良の結果を出すために必要なスキル」です。
※ Morgenrot(モルゲンロート)さんのHPより
それでは僭越ながら、私の視点から今回の講座の感想を書いてみたいと思います。
尚、文字ばかりだとアレなので、箸休め的に適当に過去or最新の写真を貼りますが、講座の内容とは全く関係がない点は悪しからず。
1. はじめに
講義はいつもどおりまずはCRMとその構成要素の説明が。
・コミュニケーション ⇒ 第2回
・チーム形成・維持 ⇒ 第3回
・ワークロードマネジメント ⇒ 第4回
・状況認識マネジメント ⇒ 今回
・意思決定
前回まではどちらかというとチームを維持・成長させるためのスキルでしたが、今回はそのチームの能力を活かした積極的な危険予知・回避といったお話です。
写真:7/24の夜間訓練。明日はどうしようかな~。
2. 概要
Situational Awarenessは略してSA。コックピットでは一番大事な考え方で、機長昇格のフェーズでSAのスキルが足りなくて難しいといったケースが多いそうです。
そしてSituational Awareness・・・これは聞きなれない言葉ですよね。直訳すれば状況認識です。しかしSituationalはまあ理解できるとして、Awarenessって何??という方も多いような気がします。
Awarenessという言葉には「気付く・認識する」という表面的な意味だけでなく、「リスクを自ら意識し、主体的に行動する」という部分まで含んでいると理解して、この講義に望むと良いと思います。
ちなみに私の職場ではAwareness Trainingというものがあり、その内容は設計が起こした不具合をメンバーで共有して自分の設計に活かすというものです。
しかし他人が起こした不具合とその後の対応を知識として記憶しておくだけではいずれ忘れてしまいます。なので、不具合を回避するために他の方法はなかったか?どのような取り組みをしていれば良かったのか?などを主体的に考え、自分を鍛えることが大事なんだと私は思っていますが、それが職場に浸透しているか!?と言えばそうでないような気もします(汗)
閑話休題。
Situational Awarenessとは、身の回りで起こっている事象を認識し、それを分析し、これからどのように変化するか予想することだと説明がありました。
そして実はCRMより歴史が古く、世界大戦中のエースパイロットと普通のパイロットの違いを米軍が調べたことがきっかけだそうです。エースパイロットは状況認識能力が高いからこそ相手を撃墜でき、自らは撃墜されないと。これはちょっと分かる気がしますね。
そしてSituational Awarenessは状況認識だけでなく予測と評価が含まれ、以下の3段階に分けられるそうです。
SA Level 1: 環境要因の知覚
・五感による情報の知覚で、視覚と聴覚が7割を占める。
・シチュエーション:信号機 ⇒ 黄色だ!
SA Level 2: 状況の理解
・知覚情報の理解。文字、形象、色彩、音響などの意味の理解。
・シチュエーション:信号機が黄 ⇒ 停止しなければならない。
これはメンバーによる差異が発生しやすく、経験、文化的背景が影響するので、SOPを用いて均一化しているそうです。
例えば海外では黄色信号がなくアメリカ人は混乱する。だからSOP=ルール化すると。
SA Level 3: 未来への反映
未来への影響を予測。タスク遂行に好影響か?悪影響か?取るべき手段は?などを考える。
シチュエーション:信号機が黄 ⇒ 停止しなければならないが、ブレーキが間に合うか?
これはSA Level 2より更に差が出るそうです。確かに目の前の状況にどう対応するかは知識と経験が大きく影響しますもんね。
写真:8/13新潟空港にて。トキエアのカウンターです。
3. Monitor
SA Level 1=環境要因の知覚。まずは目の前にある・感じるの情報に気付くことです。更に個人の状況認識はチーム・組織に共有されて初めて効果を発揮するとのことです。
なので、
・今ある状況を、声に出して共有する。
・新しい情報も、声に出して共有する。
・何か変更を加えた時も必ず報告する。
を遵守し、パイロットさん2名はお互いのSA Levelを上げるために敢えて声を出すそうです。例えば雲を発見したら「あそこに雲があります」と意図的に声を出すことで、
・自分が気付いていることをアピールする。
・相手が気付いていない場合は相手も雲を認識できるので有効。
・相手が勝手に不必要な情報だと認識している場合もあるので、気付き(Awareness)になる。
といった効果が得られます。
なので必要かどうかは分からなくても共有することで、相手の状況認識能力の向上にも繋がり、更には相手・自分が間違っていることに気が付けるということで良いことずくめ。
ただし、これは良好なコミュニケーションを取れる真柄であることが前提です。それには第2回で学んだコミュニケーションスキルや、第3回で学んだチームビルディングスキルを活かす必要があるという訳です。
なので、この講義に先立って上記2つの講義があったんだと気が付きました。
写真:8/20富山空港にて。最近、CAさんとグランドスタッフさんの制服の違いが分かるようになりました。
4. 警戒
SA Level 2=状況の理解。気付いた情報に対し、思い込みとや先入観を廃して現状を正しく認識することが重要とのことです。でもこれは分かっていても案外難しかったり。
その要点は、
・一点集中に陥らないように注意する。
・問題意識を持って十分に確認する。
・なにかおかしい時は一度リセットする。
・今それをして良いタイミングか?良く考える。
とのこと。
それを実感するために、まず動画を視聴して一点集中すると如何に他の情報を見逃すかを体験しました。
また、思い込みについては、コールサインが似ているデルタ航空1328便とサウスウェスト航空3828便の同時離陸の事例や、実際にHideさんやMoriさんが飛んでいて、管制官からは明らかに自分が呼ばれているのにコールサインが似ている他機に無線を勝手に取られた事例を紹介していただきました。
こうしたパイロットさんの生の事例を聞けるのはこの講座の特権です。
写真:8/22小松基地周辺にて。この翌日は伊丹・神戸へ。我ながらアホです。
5. 予測
SA Level 3=未来への反映。ということで、正しく認識した状況からどの様な未来を予測し、その後の行動を取るか?です。
その要点は、
・現状から今後の状況を予測する。
・何が起きるか潜在的な危険性があるか予測する。
です。
先ほどの「警戒」の時と同じく、未来予測=危険予知を体感すべく、雨天時や左折時の自動車運転の危険予知トレーニング動画を視聴しました。
運転免許証の更新時に視聴する機会がありそうな動画でしたが、内容はいずれも秀逸で考えさせられるものがありました。これはこの講義を受けた後に見たというのも大きいかもしれません。
また、TCAS(Traffic alert and Collision Avoidance System=空中衝突防止装置)に関する動画も視聴。ちなみにTCASとは、飛行機同士がお互いをモニタし続けるシステムで、2機が近づくと飛行機を上昇させるか降下させるかをパイロットさんに指示してくれるものです。
尚、講義ではTCASと管制のどちらを優先すべきか?という質問がありました。
正解はTCASが優先なのですが、昔は管制が優先だったそうです。ある時、JALが管制を優先してニアミスを起こしてけが人が出たため、TCAS優先になったとのこと。
人が介在するとヒューマンエラーを排除できないので、機械を優先するようになってきたということです。また、最近はオートパイロットTCASが搭載されているので、パイロットが上昇・下降の操作をする必要すらないそうです。
しかしそれでもパイロットさんはTCASを鳴らさないために周囲を警戒し、近づいてきている飛行機に気が付いた場合は、TCASが鳴ってもすぐに対応できるように備えているとのこと。
やはり流石です。咄嗟の状況でもパニックにならないように備える。まさにSituational Awarenessという訳です。
ちなみにTCASが発動した場合は「TCAS RA(Resolution Advisory)」と管制に伝え、回避行動に移るとのこと。TCAS発動=衝突25秒前なので一刻の猶予もなく、管制許可をもらっている場合じゃないんですね。
また、Hideさんがこの前久々に「TCAS RA」のコールを聞いたと言ってました。
写真:8/24伊丹空港にて。私にとっては夢のような場所でした。
6. PDCAサイクル
航空業界ではPDCAは古く、また実施しにくいとの説明がありました。
そこで、主にANA系が使うRADARプロセスや、OODA、STPD、DCAP、PDRといった概念の説明がありましたが、私も初めて聞くものばかり。
一応それぞれの解説もありましたが、実践にまで繋がる話ではなかったのであまり興味が湧かなかったのが正直なところです。(すみません)
写真:ドイツ人から地ビールと特大ジョッキが届きました。
7. 感想
この講義では「2. Monitor」の「敢えて声に出して言う」というのが新しい発見でした。
私の生業とする設計業務では短期的に刻々と状況が目まぐるしく変化するということはほぼないのですが、中・長期的にはあります。そのような状況変化をチームのメンバー全員が正しく認識し、お互いをフォローできるようになれば納期遅れに対応しやすいなぁと思いました。まさにSituational Awarenessだと思います。
しかしながら、それぞれが忙しすぎてそれどころではないというのが現状です(苦笑)
そして、そこで登場するのが第3回で学んだワークロードマネジメントということになるのかなーと。やはり、組織というものは大事だなと改めて思わされた次第です。
既に開催が終了してしまいましたが、第6回CRM講座は、
開催日時:8/26(土) 13:00~15:00(Web)、19:00~21:00(Web)
テーマ:Decision Making(意思決定)~あなたは独断で動いていませんか?チーム内のあらゆるリソースを活用して最善の決断へと導くリーダーに必要な能力とは~
です。
これまでの講義の集大成となる内容でした。近日中にとはいきませんがおいおいレポをアップしたいと思います。
おわり。