皆さんこんばんは。なじょんしょばのanniです。
↑の記事で少しだけ紹介しましたが、3/11(土)に受講した第1回CRM講座の詳細です。
それではまず概要を。
開催日時:3/11(土) 13:00~15:00
場所:東京都大田区蒲田(私はWeb参加)
講師:現役機長のHideさんと副操縦士のMoriさん
テーマ:~CRMはなぜ必要か? Human FactorとTEMの重要性を学ぶ?~
CRM=Crew Resource Managementとは「マネジメントをする立場として、様々な情報や部下などの能力を最大限に引き出し、最良の結果を出すために必要なスキル」です。
※ Morgenrot(モルゲンロート)さんのHPより
それでは僭越ながら、医療機器の開発・設計に関わる機械系エンジニアの視点から今回の講座の感想を書いてみたいと思います。
尚、文字ばかりだとアレなので、箸休め的に適当にレアな写真を貼りますが、講座の内容とは全く関係がない点は悪しからず。
1.全般
今回の講座は大雑把に言うと「CRMを学ぶための、Human FactorとTEMの概念や定義を理解する」でCRMの入門編という内容です。
まずテーマになっているHuman Factorとは人的要因という意味で、そこから人間はミスをする生き物(Human Error)であるという話に繋がります。
また、TEM=Threat and Error managementは、Threat:脅威・兆し、Error:誤り・基準から逸脱すること、Management:管理する、の略語で、日常に潜む事故の原因となりうるものを認識・排除・対処し、事故の発生を可能な限り低減するというものです。
この最初に概念や定義を理解するという行為は一般にはあまり馴染みがないかもしれません
対して医療機器設計者は、関係法令や本質的に安全な医療機器を設計するための手法であるリスクマネジメント(ISO 14971 / JIS T 14971)やユーザビリティエンジニアリング(IEC 60601-1-6 / JIS T 60601-1-6)といった国際規格=概念・定義を理解する必要があるので、この手の講義は割と慣れていてその重要性も理解しています。
また、パイロットさんも法令・法規やマニュアル類に触れる機会が多いので、同様だと思います。
そして聞きなれない言葉の解説が多くなるので割と退屈になりがちですが、分かりやすい事例を織り交ぜて解説されていたので、参加者の皆さんも集中力を保てたのではないでしょうか。
特にLCCでの旅行という事例は飛行機での旅に慣れている参加者さんには取っつきやすいテーマだったと思いました。逆に私はLCCを使ったことがないので「なるほど、そういうものなのか」と、良い勉強になりました。
ちなみに私は医療機器の法令・規格関係の外部講習を受講することがありますが、上手な講師の方は「ここからは定義の話になるので退屈になりがちだけど、これを理解しないと次の話に繋がらないので頑張りましょう」とか、途中に参加者の興味を惹くような事例や話題を織り交ぜています。
Morgenrotさんもそのような工夫が随所に見られ、この講義のために内容を相当練ったのではないでしょうか。また、理屈っぽくならないような話の進め方も非常に良かったです。
写真:多分フランクフルト国際空港。ルフトハンザのBoening 747には良くお世話になりました。
2. Human Factor
人間はミス(Human Error)をする。医療機器もこれを前提に設計し、誤操作や誤認識を誘発しにくいインタフェイスを備えるのはもちろんのこと、操作者がミスをしても患者さんに危険が及ばないよう機器側で防護するような安全機構を盛り込みます。
医療機器とは法規制化や手順化の有無の違いがあるものの、こういった設計は製造業全般で取り組まれていることだと思います。
また、機器自身の故障や誤動作に対しても患者さんに危険が及ばないようフェイルセーフ(Fail safe)という信頼性設計を行います。ちなみにこの点については航空機の方が遥かに高いレベルで設計されていると思います。
ただし、これらは合理的に予見可能なものに限られ、予測不可能で突発的な事象(エラー)に対しては設計的に考慮するのは難しく、これが事故がゼロにならない理由でもあります。
少し濁した書き方をしますが、私が設計に携わった装置で装置自体は異常を検知して警報を出して一旦は安全に停止したものの、操作者がその異常状態を解消せずに警報のリセットを何度も行った結果、警報・停止⇒リセット・運転再開⇒警報・停止が何度も繰り返され、最終的に患者さんへ被害が及んだという事故がありました。
操作者は「異常状態は解消しており、警報が出るのは装置側がおかしいからだ」と思い込んでいたようで、これは勘違いという典型的なヒューマンエラーです。
もちろん数回の警報リセットではこのような事故は起きない設計になっているので、上記の操作は設計側の想定を超えるものでした。
こういった設計側では防ぐことが難しい予測不能なエラーをも可能な限り排除しようという取り組みが次に述べるTEMで、我々設計側が手の届かない部分です。
写真:ボスニアヘルツェゴビナ。看板が全く理解できませんでした。
3. TEM (Threat and Error Management)
先ほども書いたとおり、TEM=Threat and Error managementは、Threat:脅威・兆し、Error:誤り・基準から逸脱すること、Management:管理する、の略語です。
医療機器のリスクマネジメントで言う、ハザード(Hazard)、危険状態(Hazardous situation)、危害(Harm)に似ているというか、むしろそれより分かりやすく私としては馴染みやすい概念でした。
あまり詳しく書くとネタバレになりそうなので控えますが、例えば車を運転するとき、気温が低くて凍結していそうというのはThreatで、スピードを出し過ぎたがErrorです。でも路面凍結を想定して速度を抑えて走行すればスリップ⇒事故は防げる訳で、予めいろんなことを想定して対処しておけば、事故は未然に防げるというのは良く聞く話だと思います。
ちなみにThreatに「隣の機長がめちゃめちゃ怖い」を例に挙げられていたのは流石パイロットさんだと思いました。今回の参加者さんの特性からこの手の話は盛り上がりますね(笑)
そして今回の講義ではLCCでの旅行を事例に、どんなThreatが潜んでいたか?どんなErrorが発生していたか?どう対処していればこの最悪の結果に至らなかったか?などを自分達で考えてみるという実技もありました。
後になって考えてみるとイロイロ思い浮かぶのですが、実際にリアルタイムでThreatを認識していくのはトレーニングを積まないとなかなか難しいです。
そのためパイロットさんも訓練するとのことですが、今回は概要なのでサラッとした紹介で終わりました。なので実際にどんな訓練なのかは第2回以降で詳しく紹介されると嬉しいなと思いました。
最後の方に不確実性とResilience(レジリエンス)という用語が出てくるのですが、時間が押していたのもあったせいか、少し駆け足だったように思いました。
特にResilienceはもう少し詳しく聞いてみたい話だったんですが、TEMから少し先の話になるような気もしますし、こちらも次回以降のお楽しみということで。
写真:ドイツのド田舎の教会。この街で日本人は超珍しいらしく、ジロジロ見られます。
4. おわりに
私の部署には2人の新人がいるのですが、Aは頭の回転が早くて割となんでも器用に卒なくこなすタイプ。やる気を前面に出さないので大人しそうに見えるけど、やる気がないわけではなく割と素直。また、冗談も言えるので、世の中を上手く渡っていきそうなキャラです。
もう一人のBは不器用でミスもめちゃくちゃ多く、同期のAとも比べられるのでミスが目立ちやすく何かと苦労しているタイプ。ただ、素直で明るく返事は良いのでどことなく憎めず「仕方ねぇなあ~」と許してもらえるキャラ。ただ、私は割と短気で口も悪いので、同じミスは2度までは許すけど、3度目ともなると流石に機嫌が悪くなります。
しかし今回の講義のとおり人間はミスをする。言われれば当たり前のことなのですが、昭和な職場ではミスをする=弛んでいる・注意力散漫・気合が足りないなどと取り扱われるように思います。でもそれで片付けると、ミスが再発した場合に注意した方は「またか!!」と怒り、ミスした方は叱られるばかりでモチベーションもだだ下がり。職場の雰囲気も悪くなり、悪循環に陥っていくのではないでしょうか。
しかし人はなかなか変えられないので自分が変わるしかないのかなと考えていますが、この講義でそのヒントが得られば良いなと思っています。
また、世の中仕事が上手な人がいますが、そんな人は仕事を受けた時点であらゆることを想定し、どうすれば仕事が上手く回るかをよく考え、上手くいかなかったときの次の手を予め用意しておくというのが得意なんだと私は考えています。
これは一種のTEMで、本人は自身の努力、過去の経験、センスで半分無意識的にやっていることなので他人が真似したり教わったりすることが難しい。しかしTEMという概念とその実践方法を知れば、誰でもある程度はそれを真似できるようになるのでは!?と理解しました。
今回の講義は概念や定義を学び、少し実践してみるという内容だったので、次回以降はより具体的な実践方法(トレーニング方法も)が語られると嬉しいなと思いました。
ちなみに第2回CRM講座は、
開催日時:4/15(土) 13:00~15:00
場所:東京都蒲田周辺 or Web
テーマ:~パイロットの立場からコミュニケーションの重要性に迫る。パイロットが実践するコミュニケーション術~
です。
仕事するうえで人との関わり合いは避けられませんが、それが少しでもより良いものになれば、今まで以上に楽しく働けるのではないでしょうか。普段の日常生活も同様です。この講座で楽しく生きるためのヒントが得られればと思っています。
尚、参加費は現地参加:3000円、Web参加:2000円で、セミナーなのに超破格。ご興味のある方は是非。変な勧誘もないのでご安心ください(笑)