皆さんこんばんは。なじょんしょばのanniです。
この記事はタイトルのとおり、第4回CRM講座のレポです。
今回の講座も会社でリーダやマネジメントを務める中年にはとても刺さる内容でした。
しかし、実は7/8に第5回が開催されたので、この記事はこれまた周回遅れ。それでもよろしければどうぞ。
ちなみに第1~3回の内容はこちら↓。
以下、第4回の概要です。
開催日時:6/10(土) 19:00~21:00
場所:Web
講師:現役機長のHideさんと副操縦士のMoriさん
テーマ:~同時に複数のことをこなすパイロットがたどり着く究極の安全性への考え方:Workload Management~
CRM=Crew Resource Managementとは「マネジメントをする立場として、様々な情報や部下などの能力を最大限に引き出し、最良の結果を出すために必要なスキル」です。
※ Morgenrot(モルゲンロート)さんのHPより
それでは僭越ながら、私の視点から今回の講座の感想を書いてみたいと思います。
尚、文字ばかりだとアレなので、箸休め的に適当に過去or最新の写真を貼りますが、講座の内容とは全く関係がない点は悪しからず。
1. アイスブレイク、前回のおさらいと導入
今回の参加者は今まで参加されていたメンバーさんだったのでお互いの自己紹介はなし。
その代わり時事ネタとして羽田の滑走路でA330×2機が接触した事故についてのお話が。原因は恐らくヒューマンエラーでは?とのことでした。
中の人目線でこういった旬な航空ネタを聞けるのはこの講座の特徴です(笑)
講義はいつもどおりまずはCRMとその構成要素の説明が。
・コミュニケーション ⇒ 第2回
・チーム形成・維持 ⇒ 第3回
・ワークロードマネジメント ⇒ 今回
・状況認識マネジメント ⇒ 次回
・意思決定
前回はチーム形成・維持、今回はワークロードマネジメントなので、チームに次々と訪れる仕事やトラブルをどう捌くかといったお話です。
写真:6/25に自宅上空を飛んでいたアシアナ航空のA380
2. フライトシミュレータによる訓練の動画
今回はMoriさんによる解説でした。
まずは全員でフライトシミュレータによる訓練の動画を視聴。フライト中にトラブルが発生し、機長から副操縦士に矢継ぎ早に指示が飛んで副操縦士は大わらわ。最後は機長がキレ気味になる!?といった内容です。
Moriさん曰く、最初にダメな例を見て欲しかったと。
確かに人間アラ探しの方が簡単で分かりやすいよな~と、思わず納得。
この動画はワークロードがオーバーロード域に入り、パフォーマンスレベルが低下する分かりやすい例でした。
そして何やら聞きなれない言葉が沢山出てきましたが、
・ワークロード:こなされるべき仕事の量、作業量、負荷率。
・パフォーマンスレベル:こなせる仕事の量、処理能力、作業効率。
・オーバーロード:ワークロードの高負荷領域 ⇒ 視野狭窄 ⇒ 混乱・パニック ⇒ 1点集中となり状況認識力が低下。
・アンダーロード:ワークロードの低付加領域 ⇒ 退屈 ⇒ 無警戒 ⇒ 咄嗟の対応が出来ない。
という意味・現象です。
ただ、文字だと良く分からないですよね。CRM講座ではこれをグラフ化したものを見せていただけるので、それを見れば一目瞭然です。
また、
・ワークロードは高すぎても低すぎてもダメ。
・人によって適切なワークロードは違い、それぞれの能力による。
とのこと。
忙しすぎてパフォーマンスが下がるのは分かりますが、適切な負荷がないとパフォーマンスが下がるというのは、なるほどそうかもなと思いました。
この後はタスク、ToDoといった概念の説明が入りますが、文字では伝わらないので割愛します。
そして大事なポイントは、
・手順の標準化によりワークロードマネジメントを効率化できる。
・通常と異なる状況こそワークロードマネジメントは重要になる。
とのことです。
ちなみにここで出てくる用語はコンピュータ用語ではおなじみのもの。意味も大体同じです。
まとめると、効率を求めて常に最高のパフォーマンスレベルを維持できるワークロードで仕事をしていると、トラブルが勃発した際に直ぐにオーバーロード域に入ってパフォーマンスレベルが低下するので、普段から多少の余裕を残して仕事をするのがベスト。
製造業で生産効率=工場稼働率を追求し過ぎて、ちょっとしたトラブルでドミノ倒し的に生産が狂うという事態を連想してしまいました。
しかし、多少の余裕を残して仕事をするというのは、サボっているとか、まだ余力があるなら全力で仕事しろなどと見られがちなので、製造業ではなかなか理解されないのが辛いところです。
写真:6/25に自宅上空を飛んでいたエバー航空のA321
3. プランニング
ワークロードマネジメントは大まかな流れはPDCAサイクルと同じです。
PDCAサイクルはビジネス分野で発展し、ビジネス効率の向上が目的ですが、ワークロードマネジメントはリスクマネジメント分野で発展し、リスク回避が目的です。なので、リスクが予見されたら直ぐにプランを変更するという点が特徴で、PDCAサイクルと違ってどの段階でもプランに戻る可能性があり、情報更新の頻度が高いのがPDCAサイクルとの大きな違いです。
こちらも図解があれば分かりやすいのですが、文字だと伝えるのがなかなか難しいところ。
そしてそのワークロードマネジメントでは得られた情報を基に最初に行うのがプランニングです。
プランニングのポイントは、
① ワークロードが高くなる場合に備えて予め計画し、確認しておく。
② 状況の変化に対応して計画すること。
③ タスクを行うために十分な時間をとること。
で、これを飲食店の例に当てはめると、
① 忙しくなりそうな時間帯(ランチやディナータイム)を予測し、予めメンバーの役割を決めておく。この時、誰が誰のフォローをするのかも決めておくと良い。
② ランチが予想以上に忙しい ⇒ ディナーで飲み物が不足しそう ⇒ 今の内に夕方納品で発注する。
③ ディナーも早い時間から忙しくなりそうなので、早めに仕込みをして時間稼ぎをする。
といった具合になるかと思います。
まとめると、常に情報を収集し続け、その時々の状況に応じて臨機応変に対応しながら、その先に発生するかもしれない問題を予測し、計画を修正していくということだと私は理解しました。
また、このスキルはその人の経験値に大きく左右されるような気がしますが、手順化することである程度は誰でも捌けるようになるのかなと。これが2項の最後で述べた「手順の標準化によりワークロードマネジメントを効率化できる」ということなんでしょう。
写真:新潟空港展望デッキ。7月の3連休に行けると良いなーと。
4. 優先順位付け
人間は、
・脳の構造上、同時に複数のタスクを処理するのには不向き。
・マルチタスク(同時並列作業)は人間のパフォーマンスを大きく低下させる。
・仮に同時に複数の仕事をこなしているように見えても、それは複数のタスクを素早くスイッチして処理しているだけ。
・パフォーマンスを維持するには、タスクを絞らなければならない。
という特性を持っているそうです。
そのため、そのタスク(作業)の優先度と処理に要する時間を把握することが重要になってきます。
ではどの様に優先度を決定するかですが、重要性と緊急性でマトリクスを作り、A~Dにランク分けするそうです。
例えば、
A=重要度:高×緊急度:高=エンジン火災 ⇒ 緊急事態
B=重要度:高×緊急度:低=少しの燃料漏れ ⇒ 直ぐには墜落しないが、放置すると燃料切れになる)
C=重要度:低×緊急度:高
D=重要度:低×緊急度:低
と言った具合に分類するそうですが、低優先度のタスクは優先順位付けを間違っている可能性もあるので注意が必要とのことです。
また、「これは今すぐやらなくてはいけない」は割と簡単ですが、「これは今やらなくても良い」ことを判断・認識するのも重要とのことで、選択肢を上手く絞るのがコツだそうです。
こういったリスク評価(アセスメント)をマトリクスで重み付けするという手法は、いまや製造業でも当たり前になってきました。
ただ、製品開発の段階でやるものなので、スピード感という意味ではワークロードマネジメントとは対極のものかもしれません。なので製造業では重大性が4つ、可能性が6つで4×6=24パターンのマトリクスになることが多いと思いますが、即断即決を求められるワークロードマネジメントでは2×2=4パターンぐらいに留めてシンプルにしておかないと、使いにくいんだろうなと思いました。
ちなみにエアバス機のパイロットのゴールデンルールの紹介がありました。
それはFLY(Aviate)、NAV(Navigate)、COMM(Communicate)の3つだそうで、
① FLY:まず飛ばす。墜落させない。
② NAV:どこに行くか決める。
③ COMM:コーパイ、客室、会社、管制と連絡する。
上記の①、②、③の優先順位だそうです。
良く考えれば当たり前なのですが、緊急時でもこれらが頭から飛ばないよう日頃から備えておくのが大事なのだと思いました。
そしてマネジメントとして重要なのが、
・全員が自分の仕事を確実にこなせるようタスクを配分する。
・自分自身、そして他のメンバーのパフォーマンスをモニタする。(頑張り屋さんは自分をモニタできないことがある。)
・ワークロードを適切に配分する手段を有効活用する、あるいは導入する(オートパイロットを活用し、その余裕を他のトラフィックの警戒に回すなど。)
とのことです。
しかし、緊急時に自分自身のパフォーマンスを客観的にモニタするのはとても難しそうです。パイロットさんの場合はそれも訓練して鍛えているのでしょうか。これは講座で聞き忘れた疑問です。
写真:4月以来行っていないのでそろそろ・・・
5. イースタン航空401便墜落事故
最後は上記の動画を「誰が、何をしていた?」という観点で視聴し、墜落事故に至った原因を参加者で意見交換しました。
問題が発生した際のタスク配分のミスが大きな事故に繋がるという例を紹介していたき、今回の講義は終了しました。
写真:航空自衛隊部隊マークピンバッジをフルコンプリート!!
6. 感想
この講義を聴きながら、私の職務である開発・設計というオペレーションにどのように応用すべきかと思案していましたが、通常業務ではそれほど外乱があるわけではないのと、1フライトといった短い時間ではなく、数か月といった長いスパンで考える必要があるので、仕事にすぐに応用できるほどまだ頭の中が整理出来ていないのが実情です。
ただ、市場トラブルで緊急対応が必要な時はこのスキルは直ぐに応用できそうで、短時間でトラブルを上手く収束出来る人は、仕事の優先順位付けがとても上手な印象があり、なるほどなと思いました。
あとは、パイロットさん達がどのようにこのスキルを磨いているのか?
概念は理解できても、それをどう訓練してどう実践するのが一番難しいところだと思うので、そういった実例を紹介していただけるとより一層素晴らしい講義になるなと思いました。
既に開催が終了してしまいましたが、第5回CRM講座は、
開催日時:7/9(土) 13:00~15:00(Web)、19:00~21:00(Web)
テーマ:Situational Awareness~あなたは周りを見渡せていますか?パイロットが自身を取り巻く状況を正確に分析するために必要な能力とは?~
です。
こちらも第4回から連続性のある内容で大変参考になりました。近日中にレポをアップしたいと思います。
ちなみにラストの第6回は、
開催日時:8/26(土)
テーマ:意思決定
これまでの講義の集大成となる内容なので、復習をしてから挑みたいと思います。
おわり。