仁義なき戦い 頂上作戦(十一)暴力の連鎖 | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い 頂上作戦(十一)暴力の連鎖

『仁義なき戦い 頂上作戦』

映画 101分  カラー

昭和四十九年(1974年)一月十五日公開

製作国  日本

製作    東映京都

 

企画   日下部五朗

手記   美能幸三

原作   飯干晃一

脚本   笠原和夫


 

撮影   吉田貞次

照明   中山治雄

録音   溝口正義

美術   井川徳道

音楽   津島利章

編集   宮本信太郎

 

助監督    土橋亨

記録     田中美佐江

装置     近藤幸一

装飾     松浪邦四郎

美粧結髪  東和美粧

スチール  中山健司

演技事務  上田義一

衣装     松本俊和

擬斗     上野隆三

進行主任  伊藤彰将

協力     京都八瀬かまぶろ温泉


 

 

 

出演

 

菅原文太(広能昌三)

 

 黒沢年男(竹本繁)

山城新伍(江田省三)

加藤武(打本昇)

 

 

渚まゆみ(三重子)

夏八木勲(杉本博)

遠藤太津朗(相原重雄)

 

 

長谷川明男(福田泰樹)

室田日出男(早川英男)

野口貴史(岩見益夫)

 

西田良(高石功)

小林稔侍(谷口寛)

白川浩二郎(楠田時夫)

宮城幸生(松井隆治)

中村錦司(伊丹義一)

 

酒井哲(ナレーター)

 

 

 

 

監督 深作欣二

 

☆☆☆

美能幸三はノークレジット

 

黒沢年男→黒沢年雄

 

夏八木勲の役名はシナリオでは仲本博だが、

本篇字幕では杉本博と表示されている。

☆☆☆

 画像・台詞出典 『仁義なき戦い 頂上作戦』DVD

☆☆☆

  台詞の引用・シークエンスの考察は、研究・

 学習の為です。 


 東映様にはおかれましては、ご理解・ご寛

恕を賜りますようお願い申し上げます。

 性描写・残酷暴力シーンについて言及します。

18歳未満の方・女性の方は閲覧ご注意下さい。

 

 平成十年(1998年)八月十六日新世界東映

 平成十二年(2000年)十一月四日十三東映

 にて鑑賞

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『仁義なき戦い 頂上作戦』(八)「枯れ木も山の

賑わいじゃのう」

https://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12487094589.html

 

 仁義なき戦い 頂上作戦(九)嫉妬が和を阻む 

 

仁義なき戦い 頂上作戦(十)乱闘

 

 打本会事務所では打本昇親分が福田泰樹ら若い

者を叱責する。

 

    打本「こがな写真撮られやがって。この馬鹿

        たれが、県警も新聞も頭にのぼせとる

        時によ、おう!かっこつけて踊る馬鹿

        居るかい?あれらは儂の事業取り消せ

        ほざいとるんぞ!お前等儂に首くくれ

        言うんかい?大体この度の喧嘩はよ、

        広能が勝手に起こしとるんで。儂には

        関係無いんで。わしゃこれから東京に

        行って、桑原代議士に今後の事を相談

        してくるけん。お前等、頭使うてやっとれ

        い!おう、頭をよ!」

 

  シナリオではタクシー運転手古川が強姦事件を

抑えられた事から武田組の若衆織田・丸山に六十

万円を強請取られ、女房からの提案で武田組組員

達に「殺しちゃってつかいね」と言われる。

 

 雨の夜。病院に車が到着し、早川と楠田が入って

行く。

  病室では早川組の松井が癌と戦い点滴を受け

ている。情婦の三恵子と舎弟の杉本博が看病して

いる。

 

   早川「どうなら容態は?」

 

   杉本「もう持たんようです。」

 

   早川「(煙草を吸いながら)迷惑かけに戻って

      きたようなもんじゃの」

 

   杉本「このまま黙って兄貴を男にさせてやって

       つかい!」

 

   三重子「買い物してきますけん。」

 

  中華料理屋店 福田・谷口と仲間が食事・飲酒を

している。

 

    福田「親父はよ、銭残しちょるけん。喧嘩は馬

        鹿らしゅうて出来んじゃろうがよ、儂ら

        早川みたいな外道に舐められて、道を

        歩けるかいや?のう」

 

 三重子が入店して「焼き蕎麦。急いでね」と店員に

語りかける。三重子の入店にかつての恋人福田は

喜び、隣席に座り挨拶する。

 

    三重子「ヤッチン」

 

    福田「やっぱり、三重子か」

 

    三重子「達者で居ったん?」

 

    福田「おう、そっちもよ。しばらく見んけん。皮

        が剝けちょるけん。誰かと思ったわい。」

 

    三重子「三年じゃけんね。うちも大人になった

         んよ。あんたのような馬鹿とは手が切

         れて。」

   

    福田「何処行っとんない。ちぃと痩せたかの?」

 

  福田は手を握り、三重子は払う。

 

    三重子「うちはね、あんたにヌードスタジオに

         売り飛ばされた事未だ忘れとらんの

         よ。」

 

    福田「言うなや。あん時は儂も足軽口で考え

        が浅かったんじゃけん。おい、こっちに

        も酒くれい。」

 

  打本会の柳井が早川の車が駐車されているこ

とを報告しにきた。福田は何処に潜ってるか調べて

来いと指示し、「儂がトっちゃるけん」と豪語する。柳

井は親父に怒られると心配する。福田は親父が東京

に居り、留守の間にやりあげたるんじゃと方針を語る。

 柳井と谷口らは早川の滞在先を調べに行く。

 

  福田は三重子に早川憎しの心を語る。

 

    福田「のう、知っとろうが、早川よ。あん外道親

       分に破門された言うて弓引いとるんじゃ。

       ま、見とれい。儂がどれ程の男になっちょ

       るか。ほいじゃが、別嬪になったの。」

 

  福田は腹に隠し持っている拳銃を見せる。

 

  雨の夜車の中で福田と三重子は想いが再燃し結ば

れる。別れがたい気持ちが二人に起こる。

 

    三重子「又会うて」

 

    福田「なんじゃったら荷物纏めて儂のアパートに

       移ってこいや。」

 

     三重子「ほんまに」

 

  三重子は病室に戻り、楠田に早川の居所を聞く。楠

田は知り合いの家に寄っとられますと説明する。

 

    三重子「打本会の連中がつけとるんよ。あんた

          ら外に出んよう云うてやって。」

 

  楠田は「はい」と言って出て行く。

 

    杉本「姐さん。打本会がつけとるいうのは誰に

       聞かれたんですか?」

 

    三重子「誰って、見たんじゃけん、うちが。」

 

  三重子のスカートのホックが外れているのを杉本

は目撃した。

 

    杉本「あんた!ヤッチンに会うたんじゃないだ

        ろうね?」

 

    三重子「会う訳ないじゃろうね」

 

 杉本は三重子を抑えて、ヤッチンこと福田のキスマ

ークを発見し、彼女に怒りを抱き、平手打ちを喰らわ

す。

 

    杉本「兄貴は命捨てに帰ってきておられるの

        に!出てけ!」

 

 三重子は号泣し、松井に縋りつき、「なんね、うちは

早川も打本も関係ないんじゃけん、何が悪い?」と泣

く。

  ★残酷な暴力場面について言及します。ご注意

   下さい

  雨の夜の中華料理店の路地。福田は立小便をして

いた。そこへ杉本・楠田らが襲い掛かり彼を刺し、懐の

拳銃を奪い取り、「来いや」と語って拉致した。    

 杉本・楠田らは福田を殴り蹴り、虐め暴行した。福田

は手を刺され悲鳴を上げる。杉本は「腐れ外道!」と

怒鳴り、福田の鼻を斬る。

 

    「お前を売ったのは三重子じゃ!ざまあ見やが

     れ」

 

 激痛で苦しむ福田に対して、杉本は銃を乱射して銃殺

する。

   テロップ 昭38・9・17 福田泰樹死亡

 

   ナレーター「この凄惨な事件をきっかけにしてそれまで及び  

          腰だった両陣営の若者達は堰を切ったように暴

          走し激突した。」

 

 高石が拳銃を乱射する。

 

 森田が江田省一の配下に捕えられ、拷問に遭う。「殺せ」と叫

ぶ森田。車の中から江田が問う。

 

    「半殺しは可哀相じゃけん、帰すか眠らすかどっちかに

     しちゃれ」

 

  丸山が「儂がやりますけん」と森田殺害に名乗りをあげる。

「やめてつかい」と森田が命乞いをする。丸山が無残に刺殺

する。

 

 シナリオでは逃げる丸山が古川運転手に見つかり、逃走中

であることも知られ、怒った古川の呼びかけでタクシー運転手

達の袋叩きに遭う。

 

    ナレーター「こうした殺傷事件の頻発にたまりかね

           た広島市中心街の住民たちは遂に町

           ぐるみの暴力追放運動に立ちあがった。

           組員達は警察の厳しい追求を受けて検

           挙されていったのである。」

 

  武田組丸山勝 懲役12年

 

  早川組杉本博 懲役18年

 

  広能組の前では警察が厳重に監視をしていた。竹本ら

若い組員達は語り椅子を警察の車の前に置く。警察は公

務執行妨害で放り込むぞと威圧する。竹本は「大掃除じゃ」

と語る。

 

  広能は厳しい表情で様子を見つめる。

  

     ナレーター「その頃広能は呉署の厳重な監視下に

             置かれ全く動きを封じられていた。そ

             れに加えて広能の指導部ともすれば

             神戸明石組は関東に進出しようとし

             て地元組織の激しい抵抗を受けてその

             収拾に追われて、広能を応援する余力

             はなかった。それを見たライバル神和会

             実力者伊丹義一が二代目を襲名して力

             のバランスに依る共存を図ろうとしてい

             た。」

 

   広能昌三は厳しい視線で警察を見つめる。

 

   岩見が「武田から電話です」と知らせに来た。

 

      広能「武田が?」

 

 

 ☆連鎖☆

 

 打本昇は事業の免許を取られる心配がある中で新聞に

写真を撮られた福田に怒りを爆発させる。「儂に首くくれ

言うんか?」という悲嘆は彼の本心であろう。

 名優加藤武が打本の欲望の強さと強かさを粘り強く演

じる。

 病院のシーンでは宮城幸生の病気の演技が凄惨で迫力

豊かだ。

 敵味方に分かれて在ることとなった福田泰樹と三重子

が中華料理店で再会し、女は男に売られた過去を嘆き、

男は女に自身の実力を見せたいと思い、互いに大変な

状況にある緊張感もあってか、想いを再燃させる。

  二人が雨の夜の車の中で結ばれるシーンは、深く切

ない。恋人の松井が重篤ということもあってか、三重子は

思わす昔の恋人福田との恋の再燃に燃えてしまう。

 病室で杉本に全てを見破られ、殴られ悲しむ。

 

 渚まゆみの体当たりの演技は迫力豊かだ。

 

 女に暴力を振るう狂気を、夏八木勲が鬼気迫る迫力で

演じ切る。

 雨の夜の福田リンチ・拷問のシーンは、本作の暴力

表現の中でも特に凄惨・残酷である。

 

 深作欣二は暴力描写を徹底して、犠牲者福田の哀

れさを描き切って、暴力への痛みを語る。

 

 福田虐殺事件から、早川対打本の抗争は激化し、江

田の冷酷な命令を受けた丸山が森田を無残に刺殺す

る。

 

 シナリオでは前述の通り、強請られていたタクシー

運転手古川が逃走中の丸山を見つけて仲間と一緒

に殴り倒すシーンがある。

 昨日まで強請られ追われていた者が、今日になれ

ば立場の逆転で追う者となる。暴力の連鎖は抗争中

の人間関係を突然激変させる。

 

 広能昌三は警察官達の包囲を鋭く見つめる。

 

 菅原文太の視線の演技が光っている。

 

 菅原文太没後五年・六回忌命日

 

 令和元年(2019年)十一月二十八日

 

 

                           合掌

 

                        南無阿弥陀仏

 

                          セブン