仁義なき戦い 頂上作戦(七)酔いの悲しみ | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い 頂上作戦(七)酔いの悲しみ

『仁義なき戦い 頂上作戦』

映画 101分  カラー

昭和四十九年(1974年)一月十五日公開

製作国  日本

製作    東映京都

 

企画   日下部五朗

手記   美能幸三

原作   飯干晃一

脚本   笠原和夫


 

撮影   吉田貞次

照明   中山治雄

録音   溝口正義

美術   井川徳道

音楽   津島利章

編集   宮本信太郎

 

助監督    土橋亨

記録     田中美佐江

装置     近藤幸一

装飾     松浪邦四郎

美粧結髪  東和美粧

スチール  中山健司

演技事務  上田義一

衣装     松本俊和

擬斗     上野隆三

進行主任  伊藤彰将

協力     京都八瀬かまぶろ温泉


 

 

 

出演


 

菅原文太(広能昌三)

 

 

梅宮辰夫(若杉寛 岩井信一)

 

黒沢年男(竹本繁)

加藤武(打本昇)

 

内田朝雄(大久保憲一)

野口貴史(岩見益夫)

五十嵐義弘(水上登)

曽根晴美(上田利男)

 

監督 深作欣二

 

☆☆☆

美能幸三はノークレジット

 

黒沢年男=黒沢年夫→黒沢年雄

 

☆☆☆

 画像・台詞出典 『仁義なき戦い 頂上作戦』DVD

☆☆☆

  台詞の引用・シークエンスの考察は、研究・

 学習の為です。 
 東映様にはおかれましては、ご理解・ご寛

恕を賜りますようお願い申し上げます。

 

 平成十年(1998年)八月十六日新世界東映

 平成十二年(2000年)十一月四日十三東映

 にて鑑賞

 ☆☆☆

 河西清の密葬が行われ、打本昇が合掌の後焼香し

退席しようとする。水上・岩見らが広能・岩井・大久保

が待っている事を伝え、相談の席に来て欲しいと頼む

が、打本は広島での急用を理由に断る。

 

 水上は重ねて頼む。

 

    打本「葬式に来てよ。そっちの喧嘩の巻き添え

        喰わされてたまるかい!第一殴りこみで

        もあってみい!儂の命は誰が保証してく

        れるんない!?

 

 二階の席では大久保・岩井・広能が厳しい表情を

浮かべている。打本退席について岩井は「止めなん

だんか?」と問う。

 

   広能は「もうええ」と突き放すように語った。

 ☆☆☆悲しみの泥酔☆☆☆

 

 広能組は河西清の密葬を勤める。打本昇は参列するが

合掌し焼香をすると早く退場しようとする。水上・岩見・竹本

らが、「親っさん・岩井さん・大久保さんとの相談」の場であ

る二階へ昇って欲しいと頼むが、打本は冷たく断る。

 

 広能と槇原の喧嘩の巻き添えを喰うのは堪らんし、もし

殴り込みをかけられたら、儂の命は誰が保証してくれるん

ないと言う悲鳴である。親分であっても人前で開き直って

命が惜しいと本音を語る打本。この人間臭さが強烈な魅力

となっている。強欲だが臆病・小心者で、危険な場所には

絶対に近付かない。我が身大事で保身に汲々とする。

 加藤武の人間探求がここでも光り輝いている。

 

 二階の親分衆の相談の場では、広能昌三が泥酔し、岩

井信一や大久保憲一は心配そうにその酔いを見ている。

岩井は、急いで帰宅してしまった打本を「止めなんだんか?」

と聞く。臆病者であっても責任者の一人として会合に来て

欲しいという気持ちである。

 

 だが、広能は酔いながら「もうええ」と言う。戦意の無い卑

怯な打本はあてにせず、自分一人で山守と戦うという闘志

である。部下の河西が自身の為に命を散らし銃殺されたの

だから、自分が落とし前をつけて山守と命がけの喧嘩をす

るという闘魂である。

 

 

 自らを叱責するように浴びるように酒を飲んで、自身を奮

い立たせようとする昌三。しかし、笠原和夫は、自己否定を

して戦地に行こうとしても、結局は行けず、子分達を抗争か

ら助けられない昌三を描く。『頂上作戦』の主題は抗争で死

んで行く若者達を見て悲しむ昌三の心である。

 

 親分として酔って怒りを現すが、その怒っている相手は、

誰でもない自己自身である。自己への怒りと自分の否定

が泥酔状態を呼ぶ。酔わずにおれない怒りが湧いてくる。

自己自身を怒って、戦おうとするが戦えない。

 

 

 菅原文太が、子分を守り切れなかった親分の苦悩を重厚

に示す。

 

                               

                                 合掌