仁義なき戦い 代理戦争(八)「出発」 | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い 代理戦争(八)「出発」

『仁義なき戦い 代理戦争』
映画 102分 トーキー フジカラー

昭和四十八年(1973年)九月二十五日公開

製作国  日本

制作  東映京都


企画  日下部五朗

原作  飯干晃一

脚本  笠原和夫


撮影  吉田貞次

照明  中山治雄

録音  野津裕男

美術  雨森義允

音楽  津島利章

編集  堀池幸三



助監督    土橋亨

記録     田中美佐江

装置     稲田源兵衛

装飾     清水悦夫

美粧結髪  東和美粧

スチール  藤本武

演技事務  森村英次

衣装     豊中健

擬斗     三好郁夫

進行主任  伊藤彰将


出演



菅原文太(広能昌三)



渡瀬恒彦(倉元猛)

山城新伍(江田省一)
成田三樹夫(松永弘)


五十嵐義弘(水上登)

岩尾正隆(浜崎四郎)


田中邦衛(槇原政吉)



監督 深作欣二


☆☆☆

深作欣 二=ふかさくきんじ

☆☆☆

平成十年(1998年)八月十三日新世界東映

にて鑑賞。

☆☆☆
 演出の考察・シークエンスへの言及・台詞

の引用は研究・学習の為です。


 東映様におかれましては、お許しと御理解を

賜りますようお願い申し上げます。


感想文では物語の核心に言及します。未見の

方はご注意下さい。

 ☆☆

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 喪服の男達を乗せたトラックが数台に

渡って走る。倉元や水上が荷台に乗って

いる。山守組の幹部・若衆・若者が集結

し、指揮官は槇原が勤め、広能・江田・松

永が従っている。

 トラックの一団は千原の密葬会場に着く。

浜崎が「兄貴」と槇原に挨拶する。


    槇原「儂らがついちょるけん。一歩

        も引くな。これから小森の所

        へ押し出しちゃれ。出発!」


    広能「待てや。押しだしてどうする

        んない?」


    槇原「どうする言うて殴りこんでやる

        んじゃ。」


    江田「儂ら打本さんと盃しとるんじゃ。

        殴り込みまで出来んわい。」


    槇原「儂一人でどうせいいうんない?」


    広能「指揮官は一人で充分じゃろ。お前

        が殺られたら骨は拾っちゃるけん。」


出発

     槇原「じゃったら、儂も降りるわい。」


  ☆☆☆喪服の男達☆☆☆


 トラックの荷台に沢山の男達が喪服を着て

喧嘩に備えている。凄まじい迫力を出しながら

車は走る。その数も多い。広能・江田・松永と

いった幹部が乗り、倉元ら若衆が号令を待って

いる。

 『仁義なき戦い 代理戦争』の名場面である。


 浜崎に激励を語る槇原。彼がこの大軍の指揮

官で小森に殴りこむ為「出発」と闘志を大声で語

る。


 だが、広能は殴り込みには参加しないと語り、

江田・松永もその意見に同意する。


  「骨は拾っちゃる」と昌三に言われ、槇原は

恐れる。


 いざという時となると怖がって臆する槇原。


 喧嘩する度胸は全く無い。部下に指揮を鼓

舞するが、指揮官自身は殴り合いや流血をす

る気は全く無い。他者に戦わせ、「男をあげる」

名誉のみを取ろうとする作戦だ。


 田中邦衛が槇原の臆病を熱演する。自らは

苦労せず、楽して結果だけをかすめ取るという

狡猾な生き方を槇原は為す。だが、その狡さを

広能に見破られ、戦場に行けと言われたら恐れ

びびり逃げ腰になる。人間の本能的な在り方を

槇原は示している。


 意地悪にニタリと微笑む昌三・江田・松永。「え

えとこづき」して強者に媚び諂って美味しい汁を

たっぷりと吸う槇原の狡賢い作戦に乗せられまい

とする慎重さがあり、いざとなれば、「こんな行って

みぃや」と問いかけて度胸を試す方法である。


 槇原には実際に斬り合い撃ちあう闘志は全く

ない。震える槇原の狼狽を、田中邦衛がたっぷり

と見せる。


 嘲笑の笑みを浮かべつつ、度胸を試す昌三

を、菅原文太が渋く勤める。

 

 この「笑い」が、『仁義なき戦い 代理戦争』の

テーマを表している。

 


 

 
                       合掌


                  南無阿弥陀仏


                       セブン