仁義なき戦い 代理戦争(七)「今日の泣き」 菅原文太八十四歳誕生日 | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い 代理戦争(七)「今日の泣き」 菅原文太八十四歳誕生日

『仁義なき戦い 代理戦争』

映画 102分 トーキー フジカラー

昭和四十八年(1973年)九月二十五日公開

製作国  日本

制作  東映京都


企画  日下部五朗

原作  飯干晃一

脚本  笠原和夫


撮影  吉田貞次

照明  中山治雄

録音  野津裕男

美術  雨森義允

音楽  津島利章

編集  堀池幸三



助監督    土橋亨

記録     田中美佐江

装置     稲田源兵衛

装飾     清水悦夫

美粧結髪  東和美粧

スチール  藤本武

演技事務  森村英次

衣装     豊中健

擬斗     三好郁夫

進行主任  伊藤彰将


出演



菅原文太(広能昌三)




山城新伍(江田省一)
堀越光恵(弘美)




金子信雄(山守義雄)

成田三樹夫(松永弘)

加藤武(打本昇)


阿波地大輔(小森安吉)

宇崎尚韶(野戸呂勇)

宮城幸生(千原)

酒井哲(ナレーター)


田中邦衛(槇原政吉)



監督 深作欣二


☆☆☆

堀越光恵→堀越陽子

深作欣 二=ふかさくきんじ

☆☆☆

平成十年(1998年)八月十三日新世界東映

にて鑑賞。

☆☆☆
 演出の考察・シークエンスへの言及・台詞

の引用は研究・学習の為です。


 東映様におかれましては、お許しと御理解を

賜りますようお願い申し上げます。


感想文では物語の核心に言及します。未見の

方はご注意下さい。

 ☆☆

 

 

怒り昌三


   広能「待っとるけん!」


 昌三は打本に怒りを爆発させ、松永に止め

られる。村岡組跡目に立てなかった無念を、

全て広能の腹黒い策略に引っかけられたと

する打本に、明石組には村岡さんと盃しとら

んと言うたもんがどうやって跡目に立てるの

かと糺問する。打本は涙を流しつつ、山守を

潰しちゃる時に真っ先にこんなを的にかけちゃ

ると脅し、昌三の激怒の炎は燃え上がった。


 昌三が去ると、震える打本に小森と野戸呂

が近寄る。


 山守の辱めに怒った打本は舎弟の小森が

対立している槇原の舎弟浜崎を攻撃する。

 小森対浜崎の争いは、打本対槇原の戦い

の代理戦争の性格にもなり、その激しさは

更に増した。


 岩国基地付近の特飲街路上で浜崎組の

千原が野戸呂らに襲われ刺殺された。



 山守は妾宅の弘美の部屋で、弘美とその

朋輩達と花札をしていた。槇原は広能・松永

・江田ら幹部が集まったことを告げる。山守

は武田が不在であることを問い、松永は持病

で彼が出席できないことを語った。


   山守「話言うんはよ。この度の浜崎と小

      森の喧嘩よのう、これを組の喧嘩と

      して買うちゃれ。浜崎は槇原の舎弟

      なんじゃけん。あの小森言うんを一

      辺潰しちゃってよ、打本の外道もぶし

      ゃあげちゃったれい。あの外道言う

      たら仲裁人のふりして小森のケツ掻

      いとるんじゃ。差し当たり明日の浜崎

      の葬式によ、各自の組からトラック部 

      隊編成して岩国に繰りこましちゃれい。

      指揮は槇原、お前が取れ。解散。」


   松永「待ってつかあさい。うちは未だ合併

       して間無しですけん、もう少し時間

       をかけてガッチリ組を固めてからの

       ほうが、それに小森は豊田会と近い

       し、打本には神戸が後ろにおるん

       ですよ。こがな喧嘩、本気で考えて

       おられるんですか?」


   山守「ほう、大したもんじゃの、お前。今迄

       若衆は沢山連れたが、若衆から意見

       されたんは初めてじゃ。儂もええ若い

       もん、持ったのお!」


   松永「そう云われては物も言えんですよ。」


   山守「お前等がそがにやる気が無いいうん

       ならそれでええよ。儂一人でもやる

       けん。打本みたいな外道に舐められ

       てよ、儂がどれ程苦しんどるか。おう、

       村岡さんから預かった大勢の若衆は

       可愛いけん、無理にも意地を立てと

       るんど。この心がお前らに分かって

       たまるかい!」


 山守は泣き出す。弘美が慰める。江田が注意・

叱責し、松永は山守に詫びる。山守は上機嫌に

なり、「総指揮は儂が取るけん、何でも相談に来

い」と語る。



    山守「お父ちゃんも昔取った杵柄じゃけん。」




 山守は喜んでホステス達を連れて食事に出か

ける。



    広能「今日の泣きは出来が悪かったのお。」


 江田が問う。広能は槇原を男にする為に、自身

や松永・江田を抑え込もうとしていると解説する。


    広能「こがいな喧嘩、馬鹿臭うて出来るか

        い!」


  ☆☆☆激怒と警戒☆☆☆


 広能昌三は責任転嫁と逆恨みをする打本昇

に怒りを露にする。松永の諌めで殴ることは思

い止まるが激怒の感情は爆発させる。


 このシーンの菅原文太の凄みは強烈で圧倒

される。

 加藤武の怯えの演技も凄まじい。


 浜崎と小森の戦いで千原が犠牲になり、宮城

幸生が短い出番で、殺されるやくざの悲哀と一瞬

の悲劇を勤める。


 山守は弘美達と花札をしながら、広能・武田・

江田らに千原の葬儀を襲い槇原の指揮に従う

ようにと指示を出す。


 松永が危険な戦いであると意見を語ると、山守

は泣き出す。泣き落としで松永は詫びて、山守は

機嫌を直して弘美達を食事に行く。


  金子信雄の泣きの演技はこの第三部でも光り

輝いている。


 広能は冷静に「今日の泣きは出来が悪かったの

お」と解説し、槇原を男にする為の親父の策略で

あり、「馬鹿な喧嘩はできるかい」と明言する。


 もはや泣きでは騙されない昌三である。


 山守・槇原の智謀・策略に対して冷静に対応

する昌三を、菅原文太が重厚に勤める。


広能 洞察


 菅原文太師

 八十四歳お誕生日

 平成二十九年(2017年)八月十六日


 


                       合掌


                  南無阿弥陀仏


                       セブン