仁義なき戦い 代理戦争（三）笑顔のふたり

『仁義なき戦い　代理戦争』

映画　102分　トーキー　フジカラー

昭和四十八年（1973年）九月二十五日公開

製作国　　日本

制作　　東映京都

企画　　日下部五朗

手記　　美能幸三

原作　　飯干晃一

脚本　　笠原和夫

撮影　　吉田貞次

照明　　中山治雄

録音　　野津裕男

美術　　雨森義允

音楽　　津島利章

編集　　堀池幸三

助監督　　　　土橋亨

記録　　　　　田中美佐江

装置　　　　　稲田源兵衛

装飾　　　　　清水悦夫

美粧結髪　　東和美粧

スチール　　藤本武

演技事務　　森村英次

衣装　　　　　豊中健

擬斗　　　　　三好郁夫

進行主任　　伊藤彰将

出演

菅原文太（広能昌三）

金子信雄（山守義雄）

北村英三（橋詰）

内田朝雄（大久保憲一）

曽根晴美（上田利男）

酒井哲（ナレーター）

田中邦衛（槇原政吉）

監督　深作欣二

☆☆☆

深作欣二＝ふかさくきんじ

☆☆☆

平成十年（1998年）八月十三日新世界東映

にて鑑賞。

☆☆☆
　演出の考察・シークエンスへの言及・台詞

の引用は研究・学習の為です。

　東映様におかれましては、お許しと御理解を

賜りますようお願い申し上げます。

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　『仁義なき戦い　代理戦争（一）白昼の襲撃』

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　　上田は「兄貴」と慕う昌三に大久保憲一

親分が呼んでいることを知らせる。長老大

久保は仮釈放中の身の昌三にとって、ただ

一人の相談相手であった。

　保護司も立ち合いの相談で、大久保は、昌

三の身元引受人に山守義雄親分が名乗り出

ていることを昌三に報告する。

　広能は驚く。かつて戦った山守が自分をも

う一度組の子分にするということに恐怖も感じ

ている。

　　　大久保「この話はの、山守のほうから

　　　　　　　　切り出してきおったんじゃ。こん

　　　　　　　　なが居らな組が持たんいうこと

　　　　　　　　がわかってきおったんじゃろ。

　　　　　　　　それにそっちもなんよの。こがな

　　　　　　　　狭い町で山守と向き合うとった

　　　　　　　　ら付合いが狭くなる一方でうだつ

　　　　　　　　があがるまあが。儂が口きいと

　　　　　　　　るんじゃけん。迷うことはあるま

　　　　　　　　あが。堅気になるんじゃったら話

　　　　　　　　は別じゃがの。」

　　　広能「そがなことはないですが」

　昌三は考えさせてほしいと頼む。退出すると

一台の車が大久保邸に来た。

　　山守義雄親分と槇原政吉だ。

　　　山守「おう、昌三」

　　広能は一礼する。

　　　山守「儂も呼ばれてきたんじゃが、何の

　　　　　　　話じゃった？」

　　　広能「儂のほうは別に」

　　　山守「ほうか、まそのうち飯でも食いに

　　　　　　　来いや。」

　☆☆☆帰ってきた悪の天才コンビ☆☆☆

　2003年のシネ・ヌーヴォの深作欣二特集

で『仁義なき戦い』第一作が上映された際、

金子信雄の山守親分が登場した際、場内

に笑声が起こった。既に現れただけで存在

感が観客の心に起きる。

　涙で若者を罠に嵌めて利用し捨て去り、自身

は権力を拡大する。

　その山守の側に槇原がつき、親分の計画

を助け成就せしめていく。

　金子信雄と田中邦衛が、優しそうな人格に

見せて相手をうまく丸めこんでしまう。人たら

しの巧さに観客も魅了されてしまう。

　オセローが何故イアーゴーの罠に嵌ったか？

マクベスが魔女の甘い預言に引っかかってし

まったか？この問いに答えはないかもしれな

いが、心の底から信頼してくれるのではないか、

という思いに誰もがまんまと嵌められてしまうの

ものではなかろうか？

　泣いて感謝してくれる人、相談に来てくれた

人に応えたい。この誠意に山守・槇原はつけこ

み、笑顔や来談で油断させる。

　今回のシーンでも金子信雄が厳しい視線を

浮かべつつ、笑顔で昌三に親としての顔を見せ

て食事を呼びかける。

　槇原は相談を持ちかける。

　『広島死闘篇』に金子信雄の山守は登場する

が終始厳しい一面を貫く。田中邦衛の槇原は

出ない。『代理戦争』で笑顔や涙で奸計を巡らす

親分・幹部として二人の名コンビが復活した。

　第一作で山守・槇原の策謀に利用され、若杉

を殺され、自身も命を狙われた昌三は、二人の

怖さを知っている。

　『代理戦争』は、二人の冷厳さを知る昌三が、

「もう騙されないぞ」と警戒しながら、又しても

二人に翻弄され、苦しめられる物語なのだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　合掌