博物画のお話し(付ピーコックバスの研究)・14
ニグロマクラータ
Cichla nigromaculata
ネグロ河ピーコの最後が、シクラ・ニグロマクラータである。1843年の記載だ。ダレが見たって、イエロー系の特徴が顕著な種だ。
種小名ニグロマクラータは、黒い斑紋がある、って意味だね。オリノセンシス同様に判りやすくていい名だ。属名や種小名は、記載者が勝手に選べる(一応規約に則って)んだけど、最近は簡単には訳の見えないものも多くあるからね。では、いつも通りオレPC画像だ。
赤矢印、胸ビレ後部の腹側部に側線と並行した方向に延びる雲状の黒斑が明瞭。黄色矢印、エラ蓋あたりに明瞭な黒模様がない。体側の黒模様は、基本的に3つが大きく、その間に少し小さめ黒紋、そして黒斑点が散る。
基本的なイエロー系ピーコックバスの模様を踏襲して、黒い斑紋が多いというのが本種のキモだ。分布地は、ネグロ河、オリノコをつなぐカシッキアーレ水路、そしてオリノコ上流となっている。
オレにとってシクラ・ニグロマクラータは、始めて博物画を描くイエロー系ピーコックバスとなった。次のイエロー予定は、オセラリス、モノクルス、ケルベリィ、プレイオゾーナになるんだろうけど、Stuart C Willis によるmtDNA系統研究では、これらを全部一種(シクラ・オセラリス)に統一しようということになっている(笑)。それでは、シクラ・ニグロマクラータ新作を発表いたします
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博物画のお話し(付ピーコックバスの研究)・13
オリノセンシス・2
Cichla orinocensis (2)
テメンシスのとこで記したけど、もちろんオリノセンシスもスポーニング・ベッドを掘っての基質産卵型である。
オレが観察したオリノセンシスの産卵床は、小さな流れが密林から漏れた下手にあった。常に新鮮な水が流れる場所を選定してるんだね。
産卵床には、長さ40センチくらいの枯れ枝が入っていて、そこにびっしりと卵が生みつけられていた。
オリノセンシスは、ネグロ河とオリノコ水系にしかいないようである。現在のIGFAワールド・レコードは、2000年1月にヴェネズエラで釣られた5.71キロだけど、こんなサイズはもちろん滅多にいない。ゴーマルが出たら大きいほうだ。
ネグロ河の支流ブランコ川支流群も本種が多い。
多くの他ピーコックバスにも言えるけど、水中でみたオリノセンシスのヒレは、かなり青っぽい。
オリノセンシスはたくさん釣っているから、これも脳細胞メモリー・イメージ画像は所有している。それでは、シクラ・オリノセンシス新作を発表いたします
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博物画のお話し(付ピーコックバスの研究)・12
オリノセンシス・1
Cichla orinocensis (1)
お次は、シクラ・オリノセンシスで行こう。テメンシスと同じくフンボルトの記載種である。これもまず、博物学者のウォレスが描いたエンピツ画を載せてみよう。
極東島国の熱帯魚界では、昔はけっこう謎めいた魚だったようだけど、名前が示すようにオリノコ河標本の原記載。つながった水路があるネグロ河にも生息している。
特徴は、体側に並ぶ3つの眼状紋である。オレのPCイラストで他のキャラも解析してみよう。
かなり古く(25年くらい前)からたくさんの個体を観ているオレは、イラスト矢印部分、胸ビレ後部の腹側部に側線と並行した方向に延びる雲状の黒斑がないことに注目していた。これはジャイアント系にも共通しているけど、両者は外観や体型、色彩やサイズから同系統とは思えない。メディアの解説ノウガキで、本種はしばしばイエロー系に近縁だと書いてあったけど、オレはまるで信じてなかった(笑)。
イエロー系(画像はシクラ・モノクルス系)にはここに必ず雲状黒斑がある
模様は違うけど、オリノコ河のシクラ・インテルメディアに似たところがあるかも? 、なんても感じていた。だもんで。アクアライフ誌で以前に書いた記事にも、この2つは異端であるとしておいた。
Stuart C Willis による『Simultaneous delimitation of species and quantification of interspecific hybridization in Amazonian peacock cichlids (genus cichla) using multi-locus data』 にmtDNA系統樹が載った。
遺伝子情報を使った系統樹(★がオリノセンシスとインテルメディア)
これを見ると、オリノセンシスとインテルメディアは近くて、他系統と離れた位置にある。やっぱりね(笑)。
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博物画のお話し(付ピーコックバスの研究)・11
テメンンシス・3
Cichla temensis (3)
ピーコックバス類の産卵は、浅めで水通しの良い砂浜に産卵床を掘って、そこに木の枝などを置き産みつける、いわゆる基質産卵型である。そしてペアで卵を外敵から守る。孵化した稚魚もペアで守っていて、稚魚がシャワシャワと水面にさざなみを作るんで、その下にビッグワンが2尾いることが判る。親魚がディスカスのように体表から栄養液(いわゆるミルク)をだして稚魚に与えるのかどうか、オレは知らない。
シクラ属は、スズキ目ベラ亜目に分類される。アマゾンを代表するカラシン類やナマズ類は、どちらかって言うと進化上で低位群の魚族だけんど、スズキ系の魚は、真骨魚類としては高位群である。カラシン・キバ魚の頭骨アートをやっているけど、彼らの前上顎骨は頭骨部に固定式になっていて、顎は単に上下に開くだけの構造になっている。しかし、スズキ系の魚では、前上顎骨が遊動式で口を開くと同時に上顎をジャバラみたいに突き出せる種類が多くいる。
ピーコックバスの顎もそうなっている。オレはまだピーコ・スカルを組み立てたことないけど、この部分が面白い造形になるかも知れない。
ピーコックバスをランディングしてボガで口を開いた形で写真を撮ると、前上顎が突出する。今回の博物画では、わざとそうしたイメージで描いてみた。テメンシスはたくさん釣っているから、脳細胞メモリー・イメージ画像は無数に所有している。それでは、シクラ・テメンシス新作を発表いたします
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博物画のお話し(付ピーコックバスの研究)・10
テメンンシス・2
Cichla temensis (2)
シクラ・テメンシスは、同属の中で最大、いや同科(シクリッド)中で最大に成長することで知られている。世界中のキ印アングラーがアマゾンに集結するのも、この魚のせいだね。巨大なヤツが現われるキャパは、おそらくネグロ河水系にある。しかし、レコード級は水位が極端に下がった年以外は簡単ではない。何度かブログで書いているけど、ネグロ河の水位は近年かなり気まぐれである。地球温暖化のせいかも知れない。年によっての違いが大きく、今年は下がるのか下がらないかの予測が難しい。
近年では、2010年が超低水位の年だった。上の写真は、マナウスの外れにあるポンタ・ネグラ砂浜の空撮である。流入しているのは小型支流のタルマン川だ。画像の左下端にある緑の草が生えた陸地を見たのは始めてだった。この年、オレは9月始めにペルー・アマゾンからマナウス⇒アルタミラと進み、10月にパンタナルのピキリ川でフィッシング(124cmのピンタードをルアーで釣った)、その後ノブレスの水中探遊してタパジョース河源流に入り、11月にはまたペルー・アマゾン、2011年1月にウカヤリ河を遡って原種ネオンテトラ探索、そして2月にアルタミラ入り、という超グレート・ジャーニーしてたんで、良シーズン・フィッシングのネグロ河には行けなかった。
この恐ろしく水位が下がった2010年は、もちろんネグロ河の巨大ピーコックバスの大当たり年だった。現在のIGFA(国際釣り連盟)のレコードは、この年の11月3日にネグロ河のサンタ・イザベル付近で釣られた13.19キロとなっている。この年ネグロ河に入る好運児だったのが、ボンバダのテルちゃんで10~12キロをバンバン釣ったそうである。超デカいのを掛けて、こいつはワールド・レコードいただきだぁ、って怪物にリップローラーのごついヒートンが広がって逃がしたんですよぉ(涙)、って言っていた。
翌シーズンの2011年暮れ~2012年初頭、ネグロ河の水がま~るで引かなかった。悲しいことに、オレに3人のネグロ隊員チームがあった。数キロ弱まではでたけど、大物は出なかった。
明けてその翌シーズン、2012年暮れ~2013年初頭、水はまずまず引いた。2012年11月にオレは隊員とネグロ河に入った。ボンバダのテルちゃんとネグロ河畔のバルセロスで会うはずだったんだけど、彼は地元カメ料理に当たって具合が悪くて(笑)、すれ違いになった。
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博物画のお話し(付ピーコックバスの研究)・9
テメンンシス・1
Cichla temensis (1)
最新作画は、ピーコのシクラ・テメンシス、シクラ・オリノセンシス、シクラ・ニグロマクラータである。この学名の羅列を聞いて、その意味が判るサピーはたいしたもんだ(笑)。まあ、アイスポット・シクリッドのマニアとか、ピーコックバスの学名探求に身を捧げるオタク系アングラーなら即座に見抜けるでしょう。そうです、ブラジル・アマゾンの北岸に流入する最大の支流ネグロ河に生息する種類たちである。新作の完成を祝して、前にやったブラジル高原系ピーコの続編、「博物画+シクラ属の研究」シリーズをブチかます。始めは、テメンシス種から。まず、18世紀の博物学者のウォレスがネグロ河奥地で描いたエンピツ画を載せよう。
本種は、史上最強の博物学者と謳われるフンボルトが親友の植物学者ボンプランとオリノコ水系とネグロ河源流を踏破したときに得た標本から1821年に記載された。いわゆるジャイアント・ピーコックバス系の代表格だ。
本種の外観的な特徴は、以下の3つがキモである。
①3本の黒いバーは、側線を越えて腹部まで細長く、直線的である。この直線的というトコが重要で、他のジャイアント・ピーコックバス系では、ここの太さが変わったり途切れたりする。②頬部の黒雲状の斑紋は、他のジャイアント・ピーコックバス系より大きめに広がる。③胸ビレ後部の腹側部に、側線と並行した方向に延びる雲状の黒斑がない。
マップの①は、もちろんネグロ河水系である。中下流にはまったく急流がない河なので広範囲に分布している。
ネグロ河の大きな支流ブランコ川系支流にも広く生息する。
マップ②は、オリノコ水系である。ネグロ河とカシッキアーレ水路でつながっているから当然と言えば無論の分布領域だ。
マップ③は、ネグロ河傍系のプレート・ダ・エヴァ川、ウルブー川、ウァトマン川河口部~バルビーナ・ダム下までの小型河川。
マップ④は、マデイラ水系の下流部である。
マップ⑤は、オリノコ河の支流だけど、人為移植で入ったと聞いている。有名な釣り場にヴェネズエラのグリ・レイクがある。
マップ★は、グリーン・ディスカスで有名なテッフェ湖。文献では、ここも分布地になっているけど、オレは確認していない。
以上の画像を見ただけでは、外観上の地域ヴァリエーションの区別は難しい。でも微妙な違いはあるに違いない。分布の辺境部で同じジャイアント系であるシクラ・ピニーマとの交雑が考えられるからだ。
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博物画のお話し・外伝
最近、新たに3枚のピーコックバス博物画が完成した。その新作の発表の前に外伝を入れる(笑)。
最近、財団法人深田地質研究所という機関から、年報の2004年度版の第5号に載っていた論文をPDFにしてもらって送っていただいた。ありがとうございました。論文のお題は、以下のものである。
Miocene coleoid (Cephalopoda) from Chichibu-machi Group, Japan
日本語にすると、「日本の秩父町層群より産した中新世の鞘形類(軟体動物)」になる。論文の要旨は、こうなっている。埼玉県秩父盆地の秩父町層群平仁田層のシルト岩から産出した鞘形類スピルリロストラ類の特徴を記載し、Nipponirostra jeletzkyi を提唱する。岐阜県の瑞浪層群からかつて記載された種類などと比較検討し、この標本産出の意義を考察する。
鞘形類には、絶滅したベレムナイト、そして現生のイカやタコが含まれている。この中の十腕形類、すなわちイカ類には、4つの目(もく)がある。コウイカ目 Sepiida、ダンゴイカ目 Sepiolida、トグロコウイカ目 Spirulida、ツツイカ目 Teuthida である。3番目のトグロコウイカ類は、現生種はたったの1種類、すなわちトグロコウイカ (Spirula spirula) しかいない。
本種は、深海性で生態は余り詳しく判っていない。珍しい種類でダイバーが出会うことも多くないらしい。このイカは体内にアンモナイトのような不思議な殻を持っている。この殻はけっこう丈夫かつ浮力があるんで、しばしば海岸に打ち上げられる。好んで蒐集しているサピーもいるらしい。
本種は熱帯に多いみたいだけど、まれに極東の島国にも漂着する。もし北原白秋さんが拾ったら、「名も知らぬ、深き海より流れ寄るトグロコウイカの殻一つ、故郷の海を離れて、汝はそも、波に幾月…… 」、と詠んだかも知れない(笑)。
さて、1967年ころ当時大学生だった立石徹さんが埼玉県秩父盆地で奇妙な化石を採集した。円錐状の殻に隔壁があった。立石さんは、その標本を国立科学博物館の古生物第二研究室のO博士のところに持っていった。そのころのオレは、その研究室の研究補佐員として机を持っていた。O博士が、ちょっと研究してちょうだい(笑)、と仰った。オレは、既知だった国内外の種類と比較し、その特徴から新属じゃあないかなぁ、と思って標本の特徴とイラストを描いたとき、ちょっとおフザケで(笑)、 Nipponirostra gen. et sp. nov. (新属新種のニッポニロストラ)と書いておいた。その直後にオレは極東の島国を離れて、研究を部屋に置いたまま地球の裏側アマゾンに飛んだ。とんだことに、そこに定住することになった(笑)。それから四半世紀の時空が過ぎた。なんとその標本が記載されたのである。えぇ~と、論文の筆頭記述者は、もちO博士、それに立石徹さん、それにそれにオレさま(笑)。
へへへ、オレもついに新属新種の記載者さまになったんだゼ(大笑)!
この論文にはこんな博物画(?)が載っている。アーチストは、もちオレさま(笑)。まだ睾丸の美青年だったころの作品。懐かしいけど、あまり上手じゃないなぁ。
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