南米・鳥獣虫魚・探遊 -17ページ目

アノストミダエを探求する・その10

ポルカ・ドット(水玉)模様ってのは、なかなかシックな感じがするよね。ファッションのほうでもよく使われている。

 

ポルカ・ドットなスカートもある

 

アノストミダエの得意模様の一つが、円形の黒斑を散りばめた体色である。けっこう数多くの種類がいるけど、その中でも粋なヤツが、ヒポマスティクス・ジュリー(Hypomasticus julii)である。アノストミダエの魚族には、上つき(しゃくれ顎)のグループがいるけど、ヒポマスティクス属は顎が下つきになっているのが特徴だ。ジュリー種は、明瞭な黒いドット模様の他に、胸ビレの上部に小さな赤い斑点が並んでいてアクセントをつけている。その赤い斑点が、何に使うために進化したのか、怪人にも判らない。

 

シングー下流域の派手なジュリー種

 

面白いことに、シングー河の本種は、上流部に生息する個体群と、最後の急峻であるベロ・モンテ下流のそれに違いがある。すなわち下流産のものは、ヒレがやけに赤っぽい。

 

シングー上流域の地味なジュリー種

 

もう一つ面白いことに、シングー河の本種には、これまたアノストミダエのそっくりさんがいる。レポリヌス属の一種(たぶん未記載種)だけれど、こいつには胸ビレの上部に小さな赤い斑点がない。

 

ヒポマスティクス・ジュリーとレポリヌスの一種

 

上水中写真は、イリリ川合流付近の岩場で撮影したんだけど、両者は平和的に共存していた。ちなみに右下にある棒状の物体は、プレコのクソである(笑)。

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その9

アノストミダエの魚族は、茹トウモロコシをエサにして良く釣れる。好物の淡水カイメンのエキスに似た味がするのかも知れない。トウモロコシは中南米が原産の栽培植物だけれど、世界三大穀物にノミネートされるほど、このテラ(地球)で重要視されている。おそらく中米のテオシントから1万年くらい前に派生し、南米に広がった。コロンブスがヨーロッパに持ち帰り、ユーロ、アフリカ、アジアに急速に広まった。

 

巨乳もモロコシを食う

 

ブラジルは、USA、中国に次いで世界三位のモロコシ生産国だ。全体としてサピー食用よりも飼料用の生産が多いけど、極東島では馴染みのないバリエーションもある。例えば、怪人も案外と好きであるけど、ソルヴェッチ・デ・ミーリョ・ヴェルジ、すなわち青モロコシのアイスクリーム。

 

青モロコシ味のアイス製品

 

トウモロコシが好きだからってのが理由じゃないけど、アノストミダエには黄色っぽい色彩の種類が多いね。

 

シングーのレポリヌス・マクラータス

 

黄色基色のマクラータス種(Leporinus maculatus)は、シングーの岩場急流に多い種類で、岩を剥がして淡水カイメンの汁が四散すると、真っ先に集まってくる。

 

シングーのレポリヌス・ファシアータス

 

ファシアータス種(Leporinus fasciatus)は黄色と黒のバンドだ。これもよくモロコシで釣れる。フリッタ(揚げ物)にして美味しい種類でもある。

 

ファシアータス種に付着していたチョウ

 

たまに甲殻亜門顎脚綱鰓尾目(チョウ目)チョウ科の甲殻類が付着しているけど、魚が死ぬと勝手に落ちる。

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その8

スポンジボブ・スクエアパンツ(スポンジ・ボブ)ってTVギャグ・アニメがある。極東NHK衛星や教育チャンネルで放映されたから、良い子サピーたちは知ってるかも知れない。主人公は、ビキニ・ボトムのパイナップルの家に住んでいる四角形の海綿動物ということになっている。

 

スポンジ・ボブのTシャツ

 

海綿動物(スポンジ)ってのは、その多くが海綿質繊維(スポンジン)というコラーゲンからできている。一般にフニャフニャの空洞質のイメージなんだけど、石灰質や珪酸質の骨格を持っているものもいる。ほとんどの種類が海に生息していて、その地で大繁栄してるんだけど、淡水の種類もいる。アマゾン地方にも少なくない。古来から先住インディオも存在を知っていて、カウシー(cauxi)と呼んでいた。

 

アマゾンの淡水カウシー

 

太古からインディオたちは、カウシーを採ってきて砕いて、粘土に混ぜて素焼き土器を焼いた。含まれた石灰質や珪酸質が、土器を頑丈にすることを知っていたんだね。

 

淡水カイメンをついばむアノストミダエたち

 

シングーの岩場の清流に潜ってプレコを探しているとき、戦法としてゴロタ石をひっくら返すことがある。石に淡水カイメンが不着していた場合、待つほどもなく色々な種類のアノストミダエが寄ってきて、砕けたカイメンをつつき始める。彼らは、これが大好物なんだ。

 

アノストモイデス・パッシオニス

 

アノストモイデス属は、現在3種類が記載されている小群である。怪人の知り合いのズアノン博士らが、シングー産を模式に、2006年に新種記載したのがパッシオニス種(Anostomoides passionis)である。記載論文には本種の主食は、淡水カイメンで明記されているけど、瓶詰めの茹でトウモロコシでも良く釣れる。パッシオニス種は、同じアノストミダエのレポリヌス・フレデリシー(Leporinus friderici)に良く似ているけど、やや体高があり、眼球がやや小さい。

 

アノストモイデス・パッシオニス(上)とレポリヌス・フレデリシー(下)

 

上画像は、アルタミラ市の前で釣った2個体だけど、同じとこに棲んでいるってことは、何かしらの擬態関係があるのかも知れない。それとも、上はただのメタボ?

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その7

サッカー・ファンならブラジルのリオを本拠地にしているフラメンゴというチームをご存知かもしれない。元サッカー日本代表監督のジッコ(ジーコ)が在籍していたことがある老舗チームだ。2011年~2012年には、ブサメンで知られたロナウジーニョもここにいた。このチームのホーム・カラーのユニホームの色が赤&黒というのは超有名で、それがシンボル的にもなっている。

 

フラメンゴのユニホーム

 

さてさて、このフッチボール・クルービ(サッカークラブ)名を俗称にしたアノストミダエのしゃくれ顎がいる。それがシナプトラエムス・ラトファシアータス(Synaptolaemus latofasciatus)だ。

 

俗称は、フラメンゴ

 

俗称の由来を説明する必要もないよね。怪人が始めてこの魚の存在を知ったのは、TFH(トロピカル・フィッシュ・ホビースト)というとこで出版された図鑑の中だった。ちょっと異様なカラーリングだったんで、自分勝手に超ド珍種じゃあないのか?、というイメージを宿してしまった(汗)。始めて実物を観たのは、1980年代の終わりごろのシングー本流だった。このときは、ちょっちばかし感動したけど、その後にタパジョース上流で潜っても観たし、文献ではガイアナ地方、すなわちアマゾン北岸にも分布している。

 

各地で採集されるが、同一種とされている

 

「赤と黒」って言えば、有名な小説があるよね。19世紀のフランス小説家スタンダールが書いた名作とされている。しかし、マジメな文章が好きくない怪人は読んだことがな~い。

 

名作「赤と黒」の和訳表紙

 

しかながら、……だ。名探偵コナンの「赤と黒のクラッシュ」のアニメならユーチューブからDLしてPCで観たことがあるぞぉ! どぉ~だ、偉いだろぉ(笑)!

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その6

前回、サピー♀が美人に見える要素の一つに角張った顎を挙げたね。極東の島国では、エラという表現も使う。

 

アングラー・ジョー美人

 

サピー♀のアングラー・ジョーは、もともと顔の小さな白人なんか民族で似合うけど、アジア北部の氷河時代で発展したモンゴリアン系では、デカいツラがさらにデカく見えるので嫌われる。小さい顔ってのは、スタイル良く見えるからね。だもんで顎を削る小顔手術の専門病院ってのは、モンゴリアン地区で大流行りだ。しかし、術後は顔がカマキリに見えるぜ、と笑われることもある。

 

カマキリくんの顔

 

余談はさておき、前回の続きであるアノストミダエ魚族の、しゃくれ顔系統のお話しをしよう。同ファミリーには。前出のアノストムス属を筆頭に、数属がしゃくれ顎である。すなわち……

 

1.Petulanos

2.Pseudanos

3.Sartor

4.Synaptolaemus

 

……なんかである。シングー水系にもこれらが生息している。

 

シュードナス・トリマクラータス

 

上写真は、シングーのアルタミラ対岸に注ぐイガラッペで採集した個体。本種は、昔はアノストムス・トリマクラータスとされていた。

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その5

サピー♀が美人に見える要素には色々あるけど、西洋諸国風では上向きの大きな眼、上向きの強い鼻、張り出した頬骨、大きな口唇などの他、意外に顎の形が問われる。例えば、割れあご、角張った顎などだね。

 

ディンプルド・チン(割れあご)の女の子

 

成長期サピーの顎の育成には個人差がある。下顎の発達が悪いと、ネズミ顔っぽくなる。上顎の発達が悪いと、しゃくれ顔となる。軽い症状の後者は、ブラピなんかその傾向だけど、横顔美人(美男)に成りやすい。重度で発達の悪い場合、現代では手術とトリートメントで修正が可能になっている。

 

発達の悪いサピー上顎は修正できる

 

さて魚族アノストミダエに於いて、極端なしゃくれ顔を特徴にしているジーナス(属)たちがいる。本科名のベースになったのは、もちろんアノストムス属だけれども、もともと、「アナ=上向き+ストムス=口」、を意味して創設された学名である。

 

顎が上に向いているアノストムスの一種

 

カマルゴ2004の「シングー魚族の研究」論文のリストでは、同河川に生息するアノストムス属が4種挙げられている。すなわち……

 

Anostomus intermedius

Anostomus ternetzi

Anostomus trimaculatus

Anostomus sp.

 

中の一つであるテレネッツィは、シングー中流辺りに多く生息している黒いストライプが明瞭な種類だ。下の画像はピンが甘いけど、シングー本流のイリリ合流地点より数キロ下流の岩場で撮影したもの

 

水中のテルネッツィ

 

本種は、水深1メートルくらいの大岩の影を好んでいた。垂直の岩壁に付着したエサを剥がすの適した顎の構造になったのではないだろうか?

 

続く

 

【お知らせ】

 

本日からまた旅行で、ブログは一時休憩です!

 

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アノストミダエを探求する・その4

今日も、お話しを脱線から始めることにした。ブラジルの東北地方ってのには、有名で美しい海岸が多い。昔むかしのこと、怪人は東北ブラジルの一角であるセアラ州フォルタレーザの海岸でウツボを釣ったことがある(笑)。ウツボはどうでもいいけど、2014年のミス・セアラになったメリッサ・ガージェルは、同年の候補者の中で一番のチビだった(たっぱ168cm)けど、見事にミス・ブラジルの栄冠を勝ち得た。ミス・ユニバースでは、ファイナリストのトップ15に入ったけど、トップ10には入れなった。

 

メリッサ・ガージェル

 

彼女を登場させたのは、セアラ州のお話しを起こすための、単なるいつもの伏線なんだ(笑)。セアラ州でも最も内奥の乾燥熱帯地方にアラリッペ山地というとこがある。ここは中生代白亜紀前期(1億数千万年くらい前)の魚類化石、翼竜化石、恐竜などの爬虫類化石が豊富で、世界的にも知られている。さて、カラシン目の最古の化石は、アラリッペ地方のサンタナ層で産出するサンタニクティス・ジアシィ(Santanichthys diasii)と言われている。同じ骨鰾上目に抱合されるコイ類、カラシン類、ナマズ類たちが分岐は、中生代と考えられている。北ゴンドワナ大陸で発生したカラシンの先祖は、約1億年前に分離したアフリカと南アメリカの両者に生息していたはずだ。

 

サンタニクティス・ジアシィ化石の頭部

 

さて、カラシン目のアノストミダエの化石種を紹介しよう。1898年、アルゼンチンが誇る古生物学者の鬼才フロレンチーノ・アメギノは、エントレ・リオス州のイツサンゴー層(新生代新第三紀・中新世後期……1千万年くらい前)から発掘された脊椎動物の頭部化石を基にして、アリノレムール・スカラブリニー(Arrhinolemur scalabrinii)という霊長類、すなわちサルの絶滅新種を記載した。

 

レポリヌス・スカラブリニーの頭部化石

 

ところが、百年の時を経た2002年に Neotropical Ichthyology という科学雑誌で、「これは猿じゃあなくって、実はお魚でしたわよ~ん!」という論文、Arrhinolemur scalabrinii Ameghino, 1898, of the late Miocene - a taxonomic journey from the Mammalia to the Anostomidae (Ostariophysi: Characiformes) が大発表された(大笑)! 1千万年前には、アノストムス科魚族は、すでに現在とほぼよく似た形質を備えていたのだから、このファミリーの起源はもっと古いに違いない。

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その3

ブラジルの西中央部地方マット・グロッソ州にノブレスという街がある。付近の丘陵斜面からの湧水が多く、それを観光にして町おこしをしている田舎である。いくつかの遊泳ポイントがあって、潜ってお魚さんたちと遊べる。グランデ・オガワも魚類水中写真の愛好家グループを率いて何回か行ったことがある。

 

きれいな湧水ノブレス水中遊泳

 

ノブレス地域で最もよく観れるアノストミダエは、レポリヌス・フレデリシー(Leporinus friderici)だ。上写真の矢印()の魚たちである。レポリヌス類は、ブラジルでは一般に、ピアウ(Piau)と呼ばれる。フレデリシーのことを、Piau-três-pintas、すなわち3つの模様があるピアウ、と呼ぶこともある。

 

ピアウ・トレス・ピンタ(レポリヌス・フレデリシー)

 

ノブレス地域が含まれるラ・プラタ河水系には、まだたくさんのアノストミダエがいるけど、有名どころをもう2つだけ挙げておこう。一つは、レポリヌス・マクロセファルス(Leporinus macrocephalus)である。本種は、かなり大型に成長し、全長50cmくらいまで育つ。そんだから現地の名称は、ピアウアスー、すなわちピアウ(レポリヌス類)+アスー(インディオ語で大きいの意)となっている。地方によって、訛ってピアブスーと発音するサピーもいる。

 

ピアウアスー(レポリヌス・マクロセファルス)

 

怪人がマット・グロッソ州クイアバにアジトを持っていたころ、乾期になるとしばしば、バハンコ・アルトというクイアバ河畔に釣りに行った。狙いは、ミレウスやミロソマなどのパクー類、そしてピアウ類でトウモロコシの粒をエサにした。バハンコ・アルトの一部には、岸辺の崖がエグレているポイントがあって、その奥がピアブスーの通り道になっていた。うまく奥にシカケを落とすと、コツコツというアタリ、合わせると強引なパワーで暴れる45センチ級がよく釣れた。

 

ピアパーラ(レポリヌス・オブスシデンス)

 

ピアパーラ(Leporinus obtusidens)もラ・プラタ河水系の代表的なアノストミダエだけど、どちらかっていうとアルゼンチンやパラグァイ方面の中流部に多い。ピアパーラ釣りは、イグアス川に近いパラナ河のアングラーに特に好まれている。

 

パラナ河のピアパーラ釣り

 

怪人も昔むかし、パラナ河でピアパーラ釣りをやったことがあるけど、あまり面白くなかった(笑)。レポリヌスの引きは強いし、楽しいターゲットであるんだけれど、現地で使う重装備のモーターボート+タックルで狙うほどの獲物に思えなかった。

 

怪人とピアパーラ

 

こういう魚は、ノベ竿とかフライの#5番くらいで掛けると実に楽しいんだ!

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その2

カラシン目の魚族は、18の科(ファミリー)に分けられている。その内の4科がアフリカに生息している。アフリカン・カラシンの一角であるアレステス類は、かつては熱帯アメリカと共通したカラシン科であるとされていたが、現在は別科として分離された。アレステス科で有名なのは、ヒドロキヌス属、すなわちアフリカン・タイガー・フィッシュ類。最大種のムベンガ(いわゆるゴライアス・タイガー)は、最近なぜか流行(笑)になってしまった怪魚ハンターたちが好んで狙うモンスター。ヒドロキヌス属には、5種類がいて熱帯魚ホビー世界でも人気がある。

 

可愛いアフリカン・タイガーの一種

 

カラシン類の中心地は、もちろん新世界だ。北米南部からアルゼンチンまで14科、約1400種が分布している。その中には4科25属260種で構成されるアノストムス上科 (Anostomoidea)というタクソン(分類単位)がある。4科とは、すなわち……

 

クリマタ科

プロキロドス科

アノストムス科

キロドス科

 

本シリーズの主題にしている「アノストミダエ」ってのは、上記のアノストムス科を意味している。同科の魚は、12属137種とされているけど、今後さらにもう少し増えるだろう。未記載の種が多く残されているからだ。

 

アノストミダエ代表のアノストムス属の魚

 

アノストムス科の魚族の特徴は、まず基本的なカラシン類のキャラ……すなわち、鱗がある、脂ビレがある、顎に歯がある、の3つを踏襲しつつ、身体が細長い(コイ型~ウグイ型)、口が小さくて尖っている、主上顎骨(しゅじょうがくこつ)が小さく、前上顎骨(ぜんじょうがくこつ)が大きい、e.t.c.。キャラの中で難解かも知れない最後の特徴について、下の画像で紐解こう。

 

シングー産アノストミダエのレポリヌス(アノストムス科)の頭部骨格

 

このスカルは、グランデ怪人のハンドメイド作品だ。矢印()が主上顎骨で、矢印()が前上顎骨。大きさがずいぶんと違うのを見てくれ。画像を見ているついでに、その歯は上顎も下顎も、たったの一列であることにも注目してちょうだい。これもアノストムス科の特徴の一つなんであ~る。

 

底をついばむレポリヌスの一種(ラプラタ水系の遊水地)

 

食性の最近の言葉に、デトリタスってのがある。生物遺体や生物由来の物質の破片や微生物の死骸、あるいはそれらの排泄物を起源とする微細な有機物粒子のことであるね。アノストミダエたちは、主にデトリタス食性を持っている。だもんで、底などをついばんでいることが多い。

 

続く

 

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アノストミダエを探求する・その1

今日から新シリーズを始めるぞ!

 

おさかなには、軟骨魚類と硬骨魚類の2つがあるよね。前者は、サメやエイの仲間で、全身の骨が軟らかいから判りやすい。しかし、最近の後者は、扱いが難しくなった。硬骨魚類は、古くから一つのタクソン(分類単位)と扱われてきたんだけど、近年の考え方では、硬い骨を主体に持つ全ての脊椎動物、すなわち両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類といった連中もひっくるめて硬骨魚類と同一群であるとする考えが主流となってきたからだ。

 

サピーも実は、硬骨魚類だったのだ!

 

さてさて、硬い骨を持った魚たち(あくまで魚たち)の淡水生息族の中の大群に骨鰾上目(こっぴょうじょうもく、Ostariophysi)ってのがある。現生魚類の約28%の8000種に近い魚種を包含している。淡水魚に限れば、約68%すなわち過半数以上の得票を得ている。主なキャラクターは、ウェーバー器官(labyrinth organ)という聴覚器と浮き袋をつなぐ一連の小骨片があることで、それが「骨鰾」の呼称の由来となっている。ウキ袋の振動を聞くことができるので、聴覚に優れている。

 

コイ類のウェーバー器官とウキブクロ

 

40年くらい前まで、このウェーバー器官を持つ、コイ類、カラシン類、ナマズ類たちは、単にコイ目(もく)というオーダーで一まとめにされていたが、現在では、オーダーまで格上げされた。さらに以前は、ナマズ亜目の中の下位だったデンキウナギ類(ナイフフィッシュ類)もオーダーに格上げになった。すなわち……

 

コイ目(order Cypriniformes)・・・3000種くらい

カラシン目(order Characiformes)・・・1700種くらい

ナマズ目(order Siluriformes)・・・3000種くらい

デンキウナギ目(order Gymnotiformes)・・・180種くらい

 

以上の中で熱帯アメリカで活躍していない魚族は、コイ目である。コイ目の魚の重要な特徴に、咽頭歯だけを歯として使っているということがある。すなわち、この魚族は、顎などに歯が生えていない。脂ビレ(背ビレと尾ビレの間の肉質のヒレ)がないのもコイ類の特徴の一つである。

 

コイ目の最大種パーカーホ

 

カラシン目の魚族は、アフリカと熱帯アメリカで活躍する骨鰾類である。形態的にコイ目の魚と似たところが多い。違いは、カラシン類には、(退化したグループもいるけど……)顎に歯が生えている、そして一般に(退化したグループもいるけど……)脂ビレを持っていることだ。

 

多くのカラシン類(画像はドラード)に脂ビレ(矢印)があるけど、サーモン類とは遠縁である。

 

昔むかしの博物学時代の学者さんは、脂ビレの存在からカラシン類をサケ類に近縁でないかとも考えたが、それらの類縁は遠い。

 

続く

 

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