ドル三部作とわたくし(4K復元版日本初一挙公開記念)(※1) | 映画の楽しさ2300通り

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世界的なマカロニ・ウエスタンブームの火付け役とされる「荒野の用心棒」(1964)に続き同じ監督・主演・音楽で製作された「夕陽のガンマン」(1965)「続・夕陽のガンマン」(1966)の三作をこれまでは"ドル箱三部作"と呼んでいましたが、最近米国での呼び名"Dollars Trillogy"に合わせて"ドル三部作"と呼ぶようになったようなので、これまで"箱"をつけていた自分も今後はそう呼ばせて(書かせて)いただきます。

さてこのドル三部作。僕にとって「シェーン」が映画を本格的に観始めるきっかけとなった作品とすれば、映画にのめりこむもととなったのがこれら三作品でした。
まずは三作に共通する顔ぶれを見てください。僕が一番好きな俳優で、好きな監督としても上位に入るクリント・イーストウッドが主役。ナンバー1とは言えませんが大好きな監督であるセルジオ・レオーネの演出。そして映画音楽家として最高に好きな(愛してる)エンニオ・モリコーネが音楽を担当。まさしく我がドリーム・チームによる作品たちだったわけです。

三部作でイーストウッドファンになってからさらに「ダーティハリー」(1971)でとりこになり、監督デビュー作の「恐怖のメロディ」(1971)も公開直ぐに観て「やっぱり主役兼監督は難しいのかな」などと生意気にも思ったのですが、今ではその「恐怖のメロディ」も愛する映画に仲間入り。
先日観た「クライ・マッチョ」でイーストウッド主演作品はほとんどすべて(シルヴァーナ・マンガーノの相手役的な「華やかな魔女たち」を除き)観ましたし、師匠とされるレオーネやドン・シーゲルに肩を並べる名匠となった監督作品もあと2,3本を残すのみとなりました。

セルジオ・レオーネはフランソワ・トリュフォーについでイーストウッドやジャン=ピエール・メルヴィルと同じくらい好きな監督となり、寡作と言うこともあって鑑賞待機中の「ロード島の要塞」を除く6作品を観、うち4作品(※2)は愛する映画となっています。

エンニオ・モリコーネの映画音楽はとにかく群を抜いて好き。フランシス・レイだ、ジョン・ウィリアムスだというファンも多いでしょうが僕はモリコーネイチオシです(とは言え「太陽がいっぱい」(1960)のニーノ・ロータ、「冒険者たち」(1967)のフランソワ・ド・ルーベも2番目くらいに好きですが)。
特にドル三部作のサントラLPはCD以前のレコード時代に購入して今でも持ってるし、これまで観た映画の中で最高の映画音楽はやはりレオーネが監督した「夕陽のギャングたち」(1971)だと思ってるくらい。ちなみに「ギャングたち」も同じレオーネの「ウエスタン」(1968)も30cmLPを持ってます。
モリコーネはとにかく多作で、事前情報なく観た映画のクレジットに突然名前を発見して驚いたり嬉しくなったりすることがしばしば。例えば「スキャンダル 愛の罠」(1985)なんて映画や、日本の大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」(2003)でも音楽を担当しているので彼が担当した映画を網羅するのはかなり難しいのです。
とは言え(「ニュー・シネマ・パラダイス」ファンは異論があるでしょうが)やはりレオーネとのタッグが最高です。正直、モリコーネの音楽がレオーネ作品の格と質を数段引き上げたと言って過言ではないでしょう。

これらの大物以外にもドル三部作の波及効果はありました。

「用心棒」ではアメリカ風の芸名(ジョニー・ウェルズ)を名乗っていたジャン=マリア・ヴォロンテも、後に続く「夕陽のガンマン」を経て「群盗荒野を裂く」(1967)で主役を獲得。演技派スター俳優としてのイタリア、ヨーロッパでのその後の活躍はいうまでもないでしょう。

「夕陽のガンマン」に出演したリー・ヴァン・クリーフ。米国製ウエスタンで「真昼の決闘」(1952)以来長く脇役を演じ、交通事故により一時は引退も考えたらしいですが、この作品でイーストウッドやヴォロンテを完全に食ってしまう存在感を見せ、「続・夕陽のガンマン」を経てマカロニの大スターに。「怒りの荒野」(1967)ではマカロニ界(?)のプリンス、ジュリアーノ・ジェンマを貫禄十分にリードし、マカロニ衰退後はハリウッドに凱旋して人気シリーズの4作目「荒野の七人・真昼の決闘」(1972。因縁を感じさせる邦題ですね)ではユル・ブリンナージョージ・ケネディに続く三代目クリスを演じました。

 

そしてもう一人の大物俳優が「夕陽のガンマン」でヴァン・クリーフと対立するクラウス・キンスキー。やはりこの後、「殺しが静かにやって来る」(1968)でジャン=ルイ・トランティニャンと死闘を演じ主役級に。その後は「アギーレ 神の怒り」(1972。未見)や「ノスフェラトゥ」(1979)などで知られる大スターとなりました(※3)。


以上のように公開以降のスタッフ、キャストの大活躍はもちろん、マカロニ・ウェスタンを国際的檜舞台に立たせただけでなく、本場西部劇に影響を与えたドル三部作ですが、そのマカロニ・ウェスタンは(それ自体は衰退したとは言え)ストーリー構成や演出作法、さらには精神性において以降の西部劇以外のアクション映画(例えばトニー・スコット監督の1990年版「リベンジ」)にも多大な影響を与え、若い頃の僕のようなアクション映画好きを大いに興奮させ楽しませてくれたのです。

このようにドル三部作は僕が映画好きを名乗る原点のひとつなのですが、ここまででかなり長くなったので、その内容(ちょっぴりネタバレあり)については別途記事にしたいと思います。

 

※1:写真は2024年3月22日より4K復元版の日本初一挙公開が決定したドル三部作のポスター

※2:「荒野の用心棒」「続・夕陽のガンマン」「ウエスタン」「夕陽のギャングたち」

※3:残念なことにクラウス・キンスキーは我が子に対する性的虐待の事実によっても有名なようです。

 

ブロトピ:2024/04/02