#012 怒りの荒野 I giorni dell'ira (1967) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:西部劇
製作国:イタリア
監督:トニーノ・ヴァレリ
愛するポイント:リー・ヴァン・クリーフの悪さが痛快!マカロニの粋を集めた快作

マカロニ・ウェスタンを本場西部劇と肩を並べる高みに押し上げたのは、セルジオ・レオーネクリント・イーストウッドによるいわゆる「ドル箱3部作」だということに異論はないでしょうが、一時期とはいえ世界中で愛されるまでにマカロニを盛り上げたのは、ジュリアーノ・ジェンマ「荒野の1ドル銀貨」「南から来た用心棒」)、フランコ・ネロ「続・荒野の用心棒」「ジャガー」)、リー・ヴァン・クリーフ「復讐のガンマン」「西部悪人伝」)、テレンス・ヒル「風来坊」「ミスター・ノーボディ」)らの俳優陣、セルジオ・コルブッチ(上記フランコ・ネロ作品のほか「殺しが静かにやって来る」)、トニーノ・ヴァレリ「さすらいの一匹狼」)ら監督たちの力が大きいと言えます。
特にここで名前を挙げた監督・俳優は、粗製乱造と言われるマカロニのなかでも、比較的質の高い作品を提供していました。

その中のスター二人、ジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフが主演し、トニーノ・ヴァレリがメガホンをとった作品がこれ。ドル箱3部作を除けば、後でご紹介する「真昼の用心棒」とともにマカロニ・ウェスタンの頂点といえる作品となりました。

中でもとにかく本場での下積みで鍛えたリー・ヴァン・クリーフがかっこいい。同じジャンルの映画に出していながら彼を活かせなかった脚本・演出が、本場西部劇の衰退とマカロニの隆盛を招いたと言えるかもしれません。

対するジュリアーノ・ジェンマは当時日本では大人気。韓流ドラマほどの登場頻度はないので比べにくいかもしれませんが、甘いマスクと器械体操で鍛えた身のこなしにより、当時の女性映画ファンにはヒョンビンなみの人気があったように思います。男性のファンに限ればジェンマのほうが多かったのではないでしょうか。

これにリズ・オルトラーニモリコーネ同様、数他のヒット映画音楽を作った作曲家・指揮者)の音楽とくればこれは「役者は揃った」。あとはヴァレリの演出で極上のマカロニ料理の出来上がりというわけですが、「怒りの荒野」は韓国でもヒットしたのか、カン・ドンウォンハ・ジョンウ「群盗」は本作のテーマソングを効果的に(ごきげんに)使っていました。
ちなみに「群盗」は韓国版マカロニ・ウェスタンといえるので、マカロニ好きの方はぜひ一度ご賞味ください。

キャスティングのよさがストーリーの面白さにつながっていますが、それについてはネタバレしそうなので別途とさせていただきます。