#71 群盗荒野を裂く Quién sabe? (1966) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:政争・紛争・テロ・スパイ
製作国:イタリア
監督:ダミアーノ・ダミアーニ
愛するポイント:硬派社会派監督が大物演技派俳優で魅せる哀しくも清々しいマカロニ革命アクション

しばしばマカロニ・ウェスタンにカテゴライズされる本作ですが、メキシコ革命を舞台にした「夕陽のギャングたち」同様、マカロニ(イタリア製)ではあってもウェスタン(西部劇)ではありません。
監督も硬派の対マフィア映画「警視の告白」を撮ったダミアーノ・ダミアーニだけに、痛快アクション映画には留まらず、滅びの哀しみをまといつつも再生の希望を爽やかに描いた作品に仕上がっています。
と感じたのは実は初見の時ではなく最近再見してでした。

そもそも再見する気になったのは面白かったという記憶はありながらストーリーを想い出せなかったから。
で確認のために観てみたらやっぱり面白かった、だけでなく心に沁みたというわけで、本でも音楽でもそうですが一度鑑賞すれば十分ということはないな、と改めて思いました。

主役はドル箱3部作では本場アメリカからやって来たクリント・イーストウッドリー・ヴァン・クリーフにやられていたジャン・マリア・ヴォロンテ。この映画の後「ミラノの銀行強盗」「仁義」(3つ☆)と言った娯楽作品のみならず、「殺人捜査」「死刑台のメロディ」「黒い砂漠」などの社会派作品にも多く出演し、イタリアを代表する俳優となりました。
女優ではナンバーワンに好きなステファニア・サンドレッリと共演した「山いぬ」が再見できないのがすごく残念。どこかでDVD化(Blu-rayでも)してくれないだろうか。

共演のルー・カステルはその後あまりお見掛けしませんでしたが、単に自分がヨーロッパ映画を存分に観ていないせいらしく、フィルモグラフィを見る限りなかなか引っ張りだこの俳優さんのようです。
やはりマカロニではヒーローたちにさんざんでやられたものの、セルジオ・コルブッチ監督の異色作「殺しが静かにやって来る」でジャン=ルイ・トランティニャンを倒して名をあげた、これも後年性格俳優として名をはせるクラウス・キンスキー(ナスターシャのお父さん)が、ヴォロンテの弟を好演しています。

マカロニ・ウェスタンはイタリア人(またはラテン?)の感性を無理やり開拓西部の舞台にはめ込んだために若干の違和感が付きまといがちですが、メキシコ革命は舞台としてまさにドンピシャ。マカロニ・ウェスタンってどうも、と言う方に(マカロニ・ウェスタンではありませんけど)こそ観ていただきたい作品です。

 

 

※ジャン・マリア・ヴォロンテ(写真右)とルー・カステル