#94 里見八犬伝 (1983) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:モンスター
製作国:日本
監督:深作欣二
愛するポイント:馬琴の傑作を見事に換骨奪胎、ひろ子姫も大活躍のアクションファンタジー


滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」は子供のころの愛読書のひとつでした。児童文学シリーズの1冊として小中学生向けに編纂されていたので、あまりにも凄惨だったり官能的過ぎたりする部分は除かれていたようですが、八犬士が集まる過程やそれぞれの生い立ち・特徴をベースにしたエピソードなどをワクワク・ハラハラしながら読んだものです。

ベースとなったであろう「水滸伝」も何度も読み返しましたが、こちらは豪傑が108人と人数が多すぎ、話も長いので「八犬伝」の方が好きでした。
異能のキャラクターが集まり、チームとなって敵に挑むというプロットは、やはり大好きな「七人の侍」(1954)や「サイボーグ009」(1964~)に受け継がれていったものと思いますが、その「七人の侍」の直接的な翻案である「荒野の七人」(1960)はもとより、のちの多くの作品(「プロフェッショナル」(1966)「特攻大作戦」(1967)「汚れた七人」(1968)など)のもとになった(だろう)と考えると、その影響は大きいと感じます。
その大好きな原作を薬師丸ひろ子以下大好きなキャストで映画化した「里見八犬伝」は、もう観る前からワクワクでしたが、原作ではヒロインが活躍する場がそれほどないので、ひろ子姫の役割はどうなるのだろうと気になっていました。

が、それは杞憂でした。歴史上の実話に即した伝奇物語は、鎌田敏夫の脚本によりモンスターストーリー(まあ原作も怪犬八房やら玉梓~たまずさ~の怨霊やら政木狐~まさきぎつね~やらかなりもののけめいていますが)に姿を変え、真田広之千葉真一志穂美悦子らJACの大物メンバーに負けじと姫も大活躍。
これまでの作品にはなかった(と思いますが)濡れ場も臆せず演じ、クライマックスの闘いぶりには鳥肌が立つほど感動させられました(大げさかもしれませんがファンなので)。

敵の面々もなかなかに魅力的で、中でも玉梓を演じた"ウーバーイーツ"夏木マリの妖女ぶりが極めつけ。また唯一の女犬士である志穂美悦ちゃんと敵同士ながらひかれあってしまう萩原流行の闘いもせつなく魅せてくれました。

監督は「仁義なき戦い」(1973,74)の深作欣二。実録ものだけでなく、本作や「柳生一族の陰謀」(1978)「魔界転生」(1981)などファンタジー色の強い作品もダイナミックかつ楽しく仕上げる骨太な職人です。
原作の本格的な映画化を期待していたファン(がいるかどうかは知りませんが)にはかなり「なんだこれ」な作品になりましたが、僕のように原作のキャラクターやエピソードに面白さを感じていたファンには大いに楽しめる換骨奪胎でした。

 

ブロトピ:2024/04/09